野澤亘伸はなぜ世界で20年間、子供の貧困を撮り続けるのか
アフリカでは学校へ通えるだけでも、恵まれているのだと思います。『将来は高校の物理の先生になりたい』と話していました」
20年に及び、世界の子供の貧困を撮り続けていくことで、野澤さんの人生観や考え方にはどんな影響が生まれたのだろうか。
「日本でもたくさん取材・報道するべき問題があるのに、なぜ海外の取材をするのかという意見はあると思います。でも日本の問題も海外で報じられることで、それがどう捉えられているのかを客観的に知ることができます。内から訴えるよりも、外から訴える方が影響が大きいこともある。また、最初は現地に行く以上、取材の成果を残さなければならないという任務としての意識が強かったのですが、次第に報道も一つの“縁”だと感じるようになりました。自分はこの国のこの人たちに出会う“縁”があったのだと思っています」
今回の出版に当たり、「親子で読めるような本にしたい」と思ったという野澤さん。史上最年少でタイトルを獲った国民的棋士・藤井聡太七段(当時)と師匠・杉本昌隆八段も取材した話題作『師弟』でも、撮影だけではなく、自ら執筆している。
情熱的な写真家でありながら、客観的な視点を失わない姿勢は今回の著書でも貫かれている。