2021年10月31日 06:00
シンママで女性漫画家の水野英子「私にしか描けない物語がある」
「でも、長男が物心つくまで、長編連載は断念し、短編や短期連載でしのぐしかありませんでした」
収入は最盛期の4分の1まで落ち込んだ。
「ただ、子どもを持ったことを後悔したことは一度もありません。作風も変わりました。以前は激しく切り捨てるような描写もしていました。ですが子どもと向き合って、全てをゆったりと受け入れるしかないんだなと気づいたのです。日が昇り、日が沈む、ありのままに、自然のままに(笑)」
とはいえ、仕事で妥協しない姿勢は微動だにしていない。
86年から『別冊婦人公論』で連載を開始した『ルートヴィヒII世』では、ドイツまで3度、自費で取材に赴いた。ライフワークという思い入れもあったが、連載途中で雑誌が休刊。
それでも水野さんは屈しない。
「自分にしか描けないテーマと筆致がある」
そう信じて、00(平成12)年ごろからしだいに自費出版にシフトしていった。
10年には、日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞した。
「いまでもやりたいことは山ほどあります。プロットが入道雲のように頭のなかに湧いてくる。マンガ家とはそういうものです。描いていれば幸せという人にしか、マンガ家は務まりません」