2021年10月31日 06:00
シンママで女性漫画家の水野英子「私にしか描けない物語がある」
5~6人の仲間で、赤塚らから話を聞くだけのつもりが、集まったマンガ家は30人を超えていた。
「みんな同じ不安を抱えていたんでしょう。家の居間はあふれんばかりの状態でした」
ところが後日、この勉強会のことが雑誌社に漏れ伝わり、首謀者は水野さんと決めつけられた。
「労働組合を作って、雑誌社に圧力をかけようとしたと捉えられたようです。参加した人は皆、編集に相当絞られ、マンガ家をやめた人もいました。フリーの仕事の私たちに組合なんて作れるわけがなくて。ただの勉強会だったんです」
水野さんの『ファイヤー!』も突然、連載が打ち切りになった。
「多分、勉強会が影響していたと思います。
結局、女がやったから『生意気』ということ。でも、私は悔いていません。男女関係なく権利を主張できる社会になるための先駆けになれた。マンガ界の役に立てたという思いがあります」
連載終了後しばらくして妊娠に気づく。
「うれしかったです。私にもようやく人間らしいできごとが訪れたという思いが込み上げてきました」
72年3月、未婚のまま出産。シングルマザーへの世間の風当たりはいまとは比べものにならないほど冷たく、厳しかったが、水野さんは右手にペン、左手に乳飲み子を抱いて描き続けた。