2022年6月12日 06:00
金子鮎子さんが開いた“精神障害者雇用への扉”天皇陛下にご報告も
今なら問題でしょうが、当時は仕方ないと思いました」
だが、転んでもただで起きない。これを機に、幼少期から関心があった心理学について学ぼうと、週に1度、仕事帰りに東京カウンセリングセンターに通い始めた。
「そこの先生が、うつ病の当事者が集まる会を作ったというので、手伝いに行くようになったんです」
ここで出会ったのが、心の病いに苦しむ当事者や、その家族だった。
「幻覚や妄想などがある統合失調症は、10代で発症する人も多く、回復までに長くかかります。ひきこもりになると、本人も家族も苦しいし、家族間の関係性も悪くなってしまう。さらに、周囲からは偏見の目を向けられて、社会で孤立していました」
幼少期の劣等感が思い出され、人ごととは思えなかった。
「人は誰しも、深刻な出来事が重なれば心の病いになりかねません」
金子さんは、知り合いの精神科医やカウンセラーなどと一緒に、1971年に障害当事者が集まる「日曜サロン」と、家族が集う「家族会」をオープン。「日曜サロン」は、現在までなんと50年以上も続いている。
「心の病気のことって人に話しにくいじゃないですか。だから、心置きなく話せる場所を作れたらと思ってね。