2022年12月30日 06:00
元秘書・長尾玲子さんが初告白 寂聴さん、たった一度の弱音「私、傲慢だったわね」
瀬戸内が言うんです。自分のために出家したけど、出家してわかったのは、そうじゃないんだと。世のために働かなきゃいけないんだと。『こんなことなら、出家するんじゃなかった』とこぼしながらも、本当に身を削るように一生懸命にやっていましたね」
■忘れられることを恐れた寂聴さんのことを、これからも書いていく
寂聴さんと強い信頼関係を築きながら、長尾さんが’10年に秘書を辞めたのにはこんな理由があった。
「直接のきっかけは、私が体調を崩したからです。瀬戸内の仕事をして3回、倒れていますが、特に最後は毛細血管が破裂して目と鼻と耳から血が噴き出したほど。このころは19kg痩せました。辞めたあとは私もシングルマザーになったりして、なかなか直接は会えませんでした」
今も思い出すのは、長尾さんだけに見せていた、人間らしい姿だ。
「瀬戸内は、いつも自分が世の中から忘れられることをいちばん恐れていました。『5年もしたら作家は忘れられる』が口癖だったほど。
作家としてもですが、やはり一人の人間として、みんなに忘れられたくなかったのでは」
晩年には、こんな言葉も漏らしていたという。
「あたしの作品で残るのは、西行について書いた『白道』などの評伝と『源氏物語』、あとは『夏の終り』くらいだろうね」