2022年9月13日 13:00
播磨屋の芸を偲び、面影をそこかしこに見つけながら。 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」第二部観劇レポート
提供:松竹(株)
二世中村吉右衛門一周忌追善として、今月歌舞伎座では秀山祭九月大歌舞伎が上演されている。その第二部の一幕目は秀山十種の内『松浦の太鼓』。吉右衛門の当り役のひとつが松浦の殿様、松浦鎮信だった。今回は兄の松本白鸚が弟(二世中村吉右衛門)を偲んで八十歳にして初役で勤めると知り、その心意気に胸打たれる思いだ。
赤穂浪士のひとりが登場する忠臣蔵スピンオフだ。浅野内匠頭が江戸城内で吉良上野介に斬りかかったその翌年、元禄15年の暮れ。しんしんと雪の降る中、俳人の宝井其角が下駄の歯の雪を落としつつ歩いていると、両国橋のたもとで思いがけない人物に出会う。煤払いの笹売りに身をやつしているが赤穂浪士のひとり、大高源吾にほかならない。
子葉という俳名も持つ其角の弟子のひとりだ。その身過ぎ世過ぎを語り、主の敵討ちについてはすっぱり思いきったという源吾。其角がその煤けた姿に同情し松浦侯から拝領した黒紋付の羽織を貸すと、源吾が綴れの着物の上にありがたく羽織る。その瞬間、浅野家家臣のころの姿が立ち上るようでハッとする。別れ際、其角が「年の瀬や水の流れと人の身は」と句を詠むと、源吾は「明日待たるるその宝船」