2023年2月27日 18:00
本谷有希子、『掃除機』日本初演で演出家として新たなチャレンジ 「物事の捉え方が“なんとなく変わったような”気持ちになるお芝居にできたら」
数回におよぶワークショップ、ディスカッションを経て、稽古に入ったが、そこで「自分なりのつくり方を探すのに苦労しました」と苦笑交じりにふり返る。
「“私らしさ”というものは、私の書く戯曲の中にあるもので、演出で自分らしさを見せてきたわけじゃなかったと実感しました。稽古序盤は自分の好きなように演出してみたら、すごくシンプルな味付けになったんですよね。悪くはないのかもしれないけど物足りない。どうやって自分の“色”を着けていこうかと……。そこで戯曲の言葉と俳優の身体の関係性をもう一度、捉え直すべきだなと感じて、言葉で表現することと身体で表現することを別々に走らせるという試みをして、少しずついろんなものが見えてきました。舞台美術も最初は具象セットだったんですけど、途中で抽象にガラッと変えてもらって。そこから、またイメージを捉え直しました。
しゃべる家電、3人の父親役、家族以外の“他者”
本谷も俳優陣も岡田の演出で上演されたドイツ語版の初演の資料は見ずに今回の日本語版に臨んでいる。例えば、劇中の一家の80代の父をモロ師岡、俵木藤汰、猪股俊明の3人で演じるが、これは本谷の決断で実現したアイディア。