2023年12月30日 07:00
演劇界にも活気が戻った1年 演劇ジャーナリスト・大島幸久が振り返る、2023年お芝居myベスト
『闇に咲く花』は神社の神主・牛木公磨を演じた山西惇が巧い。山西は4月に新国立劇場『エンジェルス・イン・アメリカ』でも見事な演技。舞台俳優として脂が乗っている。『連鎖街のひとびと』は千葉哲也の存在感が際立った。
③野田秀樹のキラキラと輝く才能には嫉妬さえ覚える。『兎、波を走る』(東京芸術劇場・7月5日所見)も奇抜な発想力、言葉のゴロ合わせ、コトバ遊び。その演出は俳優の声量、発声のトーンを変えさせて人格や人物を浮かび上がらせて秀逸だった。
『NODA・MAP第26回公演「兎、波を走る」作・演出:野田秀樹撮影:篠山紀信
2年ぶりの新作は母娘の物語。
脱兎の高橋一生、アリスの多部未華子、その母の松たか子、さらに大倉孝二、秋山菜津子、山崎一といった個性派俳優を野田はビジュアルな装置・衣装と早いテンポの演出によって自在に演じさせた。見る者を不思議の国に迷い込ませて想像力をかき立てたが、それにしても舞台の松たか子は野田ワールドで光る。
『ART』より©インプレッション
④小川絵梨子の演出が冴えていたのが『ART』(パブリックシアター・5月30日所見)だ。小日向文世、イッセー尾形、大泉洋という腕達者の3人がここぞとばかりに芸を競った上、それぞれに芝居を自由に発揮させて動かしたのだから面白いに決まっている。