2024年5月10日 19:00
【観劇レポート】歌舞伎町に歌舞伎がやってきた!中村屋がおくる“極上の初物”「歌舞伎町大歌舞伎」
『流星』より、左から)中村長三郎、中村勘太郎
続いての『流星』は、前半と後半で趣がガラリと変わる面白い一作。前半は七夕の夜、年に一度の逢瀬を楽しむ牽牛と織女のロマンチックな恋模様が描かれる。パステルカラーの雲が舞台いっぱいに広がるファンタジックな世界の中、牽牛と織女に扮するのは、勘九郎の息子たち、中村勘太郎と中村長三郎。しっとりした恋の舞踊だが、まだ13歳と10歳のふたりが踊るとなんとも可愛らしく、微笑ましい。そこに飛び込んでくるのが、勘九郎扮する流星。彼は長屋に住む雷夫婦がケンカを始めたと牽牛と織女に注進する。
『流星』より、中村勘九郎
カミナリ様が長屋に住んでいるという設定自体が面白いが、夫婦の嫉妬に幼い子ども雷の仲裁、隣家の雷ばあさんまで登場する大騒ぎ。これを舞踊の名手・勘九郎がひとりで、コミカルにテンポよく演じ分けていく。4役をお面を取り換えつつ演じ分ける場合もあるが、勘九郎は手に持つ小道具のみで演じ分けるのが見事。中華テイストな神様の世界から、江戸の下町へと飛躍する大胆さも歌舞伎らしく、また親子三人の共演もほっこりとする、楽しい舞踊劇だ。
『流星』より、左から)中村長三郎、中村勘九郎、中村勘太郎
七之助と虎之介の相性ピッタリ! 人情と、笑いと、幸せな余韻が揃った名作が誕生
休憩をはさみ、最後は『福叶神恋噺』。