この男、いま世界で最も特異な才能を発揮しているフィルムメイカーかもしれない。スペインの鬼才として名を馳せる監督、アレックス・デ・ラ・イグレシア。唯一無比のオリジナルが存在する彼の作品は世界に多くの熱狂的なファンを持つ。まだ知名度の低い日本でももっと注視したい存在だ。
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ヴェネチア映画祭で監督賞を受賞するなど、数々の受賞歴を持ち、輝かしいキャリアを誇るイグレシア監督だが、そんな自身のステータスや名声にはまったく興味なし。いわゆる作家主義やアート系とはまったくの対極をいくサービス精神溢れる作品を一貫して発表している。その点について本人はこう明かす。「僕としては自分から生まれたアイデアをひとつひとつ形にしているだけ。
僕としてはただ自分の作りたい映画を作っているだけだよ」
今回同時公開となる2作品でも彼のスタンスは変わらない。『スガラムルディの魔女』では人食い魔女の聖地に迷い込んでしまったドジな強盗団ご一行の必死の逃亡が、『刺さった男』では頭に鉄筋が刺さり動けなくなった元エリート広告マンの運命がとてつもないテンションで描かれる。一見すると奇想天外にして荒唐無稽。でも、そこに現代社会への警報ともとれる痛烈なメッセージが隠されていたりもする。