2021年2月10日 19:10
「愛しい」は「かわいそう」の意味も! 2つの心理を表すワケ
会話の中で使わないのはなぜ?
「愛しい」の用途については、少し不思議なところもある。小説などの文章や歌詞の中には出てくるのに、日常会話であまり使わないのはどうしてなのだろう。
「それは古い言葉ならではのわかりにくさがあると思います。そもそも意味も複雑です。文章の場合は、それがむしろ言葉の深みにつながりますが、会話となると『好き』と言ったほうが簡単だし、伝わりやすい。だから話し言葉の中ではあまり使われないのでしょう。ただ、このようにありきたりの話し言葉になると、言葉の意味が軽くなってしまう。やはり『愛しい』と言ったほうがふさわしい感情はありますし、とてもいい言葉でもあるので、日常会話でも使う人が増えるようになったらいいなと思います」
とはいえ、安易に使いすぎると、言葉の価値が下がってしまうという。
「たとえば『絆』なんて、そうですよね。本当はとてもいい言葉なのに、一時期使われすぎて、空々しい印象になってしまった。言葉の意味を実感せずになんとなく使っていると、嘘っぽく聞こえてしまう。だから『愛しい』も、まずはその意味をきちんと理解することが大切だと思います。実感できていないうちに使うと変な感じがすると思いますが、何かに対して愛しいという感情が納得できたときには、違和感なく言葉にできるはず」