男はそれをガマンできない【彼氏の顔が覚えられません 第36話】
いつか、ネットのニュースで読んだことがある。男性何名かにアンケートを取って、「ガリ痩せの女性」と「ポッチャリだけど巨乳の女性」のどっちがいいか答えてもらったところ、7~8割くらいが「ポッチャリ」を選んだそうだ。
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思うに、これは聞き方に問題があるように思えてならない。「スレンダーで美乳の女性」と「デブな女性」だったら、似たような選択肢ではあるけれど、結果は完全に逆転していたことだろう。
「ガリ」と「スレンダー」、「デブ」と「ポッチャリ」というワードの違いもあるが、要は「乳」だ。このアンケートからわかるのは、男は女の乳しか見てないと、そういうことなのだ。
――なんてことを、自分自身で痛感したのが2月14日。渋谷のせまいスタジオでシノザキと二人きりになったとき。
イズミという愛しい恋人がいながら、俺は別の女の、ぴったりしたTシャツによって強調されたふくよかな胸に、男の性ゆえの妙な興奮を覚えていた。
「ほら、やっぱりタニムラ君も暑いのよ。顔真っ赤。上着脱いだら?」
なんて、少し前屈みの姿勢で上目遣いになりながら話しかけてくる。Tシャツの胸元から谷間が覗いている。冷静に考えたら、ただの脂肪。なんでこんなものに、ついつい見入ってしまうのだろう。
諸説聞いたことがある。
男はマザコンだから、母親の乳を吸った幼少期の記憶が忘れられないからだと。だがそれを言うなら、女だって母乳で育つ。なぜ女はマザコンにならないのかの説明ができない。
今のところ俺の中で納得いっているのは、動物学的なセックスシンボルだからだという答えだ。雄のゴリラが、雌の大きな尻を見て興奮するようなもの。2足歩行の人間の場合は、なかなか尻まで目が届かない。その代わりとして、尻より目が届きやすい胸が大きく発達したと。