たくさんの人の目が気になるお葬式で問題行動だらけのわが子葬儀では、普段顔を合わせることが無い人たちがたくさんいるし、みんな黒い服で静かな独特な雰囲気があります。そんな中、幼い子どもと一緒に参列するというだけでも大変なのに、発達障害のあるわが子が長い時間耐えられるわけもなく、会場では人前で床にゴロンと寝転んでしまったり、大きな声を出してしまったり、走って祭壇の物を触りに行こうとしたり、蝋燭の火を吹き消そうとしたりなど、それはそれは大変なことばかりでした。Upload By みんでもまだ「Pには障害があります」とはハッキリと言えない時期だったので、障害を理由に言い訳をするわけにもいかなかったし、「まだ小さいから仕方ないね」「悪戯をしたい時期だよね」と周りの人たちには思ってはもらえていたかもしれませんが、「躾のできていない子」だと誰かに思われていたとしても仕方ないなと思っていました。でも人の視線を気にしてばかりでは私自身の心がもたないので、せめて近しい人たちには私の不安を知っておいてもらいたいと思い、Pには発達障害の疑いがあることを簡単に話はしていました。そして退席しやすい位置に座らせてもらい、何かあったら無理をせずに退室するようにしていました。Upload By みん退室してからは会場を歩いたり、控室で過ごしたり、それでもまだ人目が気になるときは駐車場へ行き車の中で過ごしていました。絵本やシールブック、音の鳴らないおもちゃをたくさん用意して持って行っていたのでそれらで遊ばせたり、飲食が可能な場所ならお菓子やジュースを与えたりして何とか時間を潰していました。Upload By みん人の目が気になるなら、自分たちのほうからその場を離れる葬儀中はヒヤリとしたこともたくさんありましたが、できるだけ癇癪を起こさないようPに無理をさせないことが1番でした。誰かに話しかけられても無視をしてしまったり、大人しく座ることもできなかったけれど、それならもうその場から離れるようにすることが私にとっても1番でした。今回は幼いころ冠婚葬祭に出席した話をしましたが、今後もそういう機会はあると思います。Pの身体が大きくなった今、冠婚葬祭の場ではPの言動は目立ってしまうこともあるかもしれませんが、そんなときは家族や周りの人たちに少しでも理解してもらい、決して無理はせずに参列できればと思います。執筆/みん(監修:鈴木先生より)葬儀への参列に関するコラムは、発達ナビでもほかにいくつか掲載されています。別のケースでは参列せず引き返したということもありました。今回は何とか参加できたので素晴らしいことだと思います。それにはみんさんがP君の好きなおもちゃを持参したこと、そして何よりもずっと参列するのではなく、退室しやすい位置に座り無理せずに控室で過ごせたことが良かったのだと思います。事前にVTRでどういったことをやるか予習させることも重要ですが、全ての時間参加することは不可能に近いので今回のように退室しやすい(例えば最後列の)座席に参列することが重要です。学校の座席でも廊下側の最後列にいたほうが自由に特別支援学級へ出入りできるのです。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月13日予定が崩れるのを何より嫌っていた長男楽しいお出かけや家族での旅行など、計画を立てたらすぐにでも子どもたちに教えてしまっていた私。だけど子どもが小さいうちはとくに体調を崩しがちで、予定通りにいかないことってありますよね。わが家も旅行前日に子どもの突然の発熱により、旅行を泣く泣くキャンセルしたことがあります。それだけならまだともかく、それによって長男は癇癪を起こすのですからたまったものじゃありません。自分のせいで予定がキャンセルになったときもおかまいなしに、手足をバタバタさせてギャンギャン泣いていました。Upload By 星河ばよ前もって予定を言うのはやめたそんなことが続き、私は子どもたちに前もって予定を伝えることをやめました。お出かけも旅行も、当日いきなり決行!です。夕飯の献立も前もって伝えるのはやめました。これから大人になって生きていくうえで、急な予定変更などいくらでもあるでしょう。子どものうちにその耐性はつけておきたい、と思わないわけではありません。かと言って、早急に身につける必要もないと思っています。少しずつ慣れていけばいいのです。…とまあ要するに私は繰り返される長男の癇癪に懲りたのでした。しかしながら当日いきなり決行することで「急な予定変更」とは無縁になり、長男の癇癪の頻度がグッと低くなりました。長男も私もお互いにストレスが減ったように感じられているので、良しとしておいてください(笑)。現在はだいぶ軽減されたと思っていたけど…そして現在小学5年生になった長男。予定変更への耐性はだいぶついた様子、と私は思っていたのですが、どうやら少しひいき目になっていたようです。それは、学校でプールの授業が予定されていた日のことでした。長男は朝からプールの授業を楽しみに登校したのですが、プールの授業が始まるころに雨がぱらついてきてしまったのです。先生の判断により急きょプールは中止に。朝から楽しみにしていた長男は急な予定変更に耐え切れずに、衝動的に教室にあった椅子を蹴ってしまったのです。私は、長男が帰ってきたあと特別支援学級の担任の先生からの連絡帳でそのことを知らされ、ぼうぜんとしてしまいました。連絡帳に震える手でお詫びの文を書いたのを今でも覚えています。Upload By 星河ばよ後日、学校に行く用事があったため先生にお会いし、お詫びの言葉と共に頭を下げました(ちなみに長男もその場にいました)。先生は優しく笑って「お気になさらないでください」と言ってくれ、続けて「幸いにも椅子は誰にも当たっていない」ということを教えてくれました。とりあえず私は胸をなでおろしましたが、引き続き申し訳なさは消えませんでした。家庭では急な予定変更が起きないように事前に工夫していましたが、事前の対応がしきれずに予定変更になることがあったとしても、長男はだいぶ落ち着いてきたと感じていました。しかし、この一件により長男は予定変更(特に楽しみにしていることの変更)はまだ苦手なんだ、ということを知りました。気持ちの切り替え方を一緒に考えていく小さいころに比べたら少しは落ち着いたけれど、いまだに急な予定変更には気持ちの抑えがきかなくなって癇癪を起こしてしまう長男。幼いころは床に寝転がってジタバタやってる程度でしたが、これから成長をしていって椅子を蹴るだけでは収まらなくなるのではと、先行きが不安になります。話は変わるようですが、長男は寝る前に必ず「本を読んで」と言います(最近ではおもに子ども向けテレビゲーム雑誌の読み聞かせが多いです)。いつもいつも、時間がないときも必ず「読んで」と懇願します。試しに私が「読まないとどうなるの?」と聞いたところ、「(心が)爆発する」と言ってました。癇癪を起こすときもおそらくそういう感覚なのかなぁと妙に納得してしまいました。気持ちの切り替え方について、今はすんなりとはいかなくても大人になるまでに少しずつうまくできるように、長男と一緒に考えていきたいと思っています。Upload By 星河ばよ執筆/星河ばよ(監修:初川先生より)予定が崩れることで癇癪を起こしてしまう長男くんのエピソードをありがとうございます。特性として、見通しがあった方が安心して取り組めるタイプのお子さんの場合、見通しを知らせることは手立てとして有効な面があります。ただ、一方で、長男くんの場合のように、その予定が崩れたときに大混乱するから、だったら知らせない方が逆にいいという場合もありますね。見通しが立ったがゆえに不安がめきめきと高まるタイプのお子さんに対しても、見通しをどう出すと良さそうかというところは検討点になると思います。一般的には、見通しを提示した場合には、成長に合わせてそこに「急な変更が入るかもしれない」ということも言い添えて見通しを出すようにしてゆきます。見通しはあるけれど、変更の余地あり、という幅のある見通しを共有するというものです。長男くんのエピソードを読む限り、急な変更で感情的に荒れるのは自然なことのようにも思います。旅行に行けなくなる、プールに入れない。それはお子さんからしたらきっと悲しく、やるせないことです。単に変更が出ただけでも不穏になるのに、そこに「楽しみにしていたのに」が乗っかっていたらそれはそれはつらかろうと思うのです。そういう意味では、気持ちの切り替え方法をどうするかというよりも、まずは、その悲しみやつらさを別の形で出せるかどうか(そもそもその体中に湧きあがる情動が「悲しい」「つらい」「嫌だ」という気持ちであると同定できるか)というところからかなと感じました。癇癪が起きているときにその話をしても入らないと思うので、収まってから、「悲しかったね」「残念だったね」などの言葉を与え、その湧きあがるものに名前をつけられるといいと思います。そのうえで、「悲しいとき・つらいとき、どうする?」ということを話題にしたいです。床でじたばたしたり、椅子を蹴ったり。感情に飲み込まれてしまうとそういうことをしてしまうのはそうだろうなと思います。しかし、大きな体でそれをやると危ないということ、ケガをしたり何かを壊してしまうと自分や周りの人がそのことで悲しくなってしまうこと(悲しみが増えること)も図解するなどして伝えたいです。「じゃあ、悲しくなったとき、どうする?」。いくつか案を出して、そうなったときに試せるといいですね。そういう意味では学校とも連携して、今試そうとしている方法を共有できているといいと思います。気持ちの切り替えは、その前の爆発的な気持ちの名前を知り、「悲しいね」など、周囲の大人からその感情を認めてもらい、そのあとでようやく気持ちの手綱を握ることができ、切替に至る。そんなふうに考えています。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月12日特性のある子ども2人連れての暗闇体験わが家には、こだわりが強い小学5年生の娘と、感覚過敏で不安になりがちな小学1年生の息子がいます。その2人の子どもとある体験に参加したときのエピソードです。私は以前、視覚障害のある方の世界を体験できる「暗闇体験」に参加しました。自分の身体すら見えない真っ暗な部屋に入り、視覚障害がある人が使う白杖をたよりに90分間のプログラムに参加します。普段当たり前に見えているものが「見えない」という状況に怖さも覚えましたが、誘導してくださるスタッフの方の声、一緒に参加している方の声が聞こえてくると少しずつ不安がなくなっていきました。そして、聞こえる音、触れる感覚を研ぎ澄ますことで、知らなかった世界を知っていき、心まで解放されていきました。帰宅後は、わが子たちにもこの体験の話をしました。娘と息子に話すと前のめりに「行ってみたい!」と言いました。怖がりな息子なので、多少の不安もありましたが、私もぜひ子どもたちに体験してほしいと思い申し込みました。申し込みから「暗闇体験」の当日までは1週間ほどありました。当日が待ちきれない子どもたちは「真っ暗な世界ってこんな感じかな?」と家の中で目をつむって歩いてみたり、イメージを膨らませていました。Upload By ユーザー体験談不安なんてない?誰よりも張りきっていた小1息子はいよいよ、「暗闇体験」当日になりました。その日参加していたのは、私と子ども2人、ほかに4人の参加者がいました。真っ暗な部屋に入る前に、アテンドを担当する視覚障害のあるスタッフが事前の説明を丁寧にしてくださいました。待ちに待ったこのときが来たので、娘も息子も真剣に話を聞いていました。特に息子は、誰よりも張りきっていました。いつもは恥ずかしがり屋なのに大きな声でその場にいるみんなに自己紹介をして、「エイ、エイ、オー!」と言いました。Upload By ユーザー体験談事前の説明が終わると、アテンドの方の指示を聞きながら暗い部屋に入ります。体験したことのない暗さ…私が初めて体験したときは「少し怖い」と思ったけど、子どもたちはどんな感想を持つだろう?そんなことを考えていたら、「むり、むり、むりだ」とさっきまで張りきっていた息子の不安そうな声が聞こえてきました。そして、泣き出してしまったのです。小学生になり、人前で泣くことがもうほとんどなかったので、「本当の真っ暗闇」が心底怖かったのでしょう。私は、手探りで息子を見つけ、息子の手を握って「ほら、お母さんここにいるよ。手もつないでるし、大丈夫だよ」と声をかけてみましたが、息子は「こわい、むり、もう出る」と何度も言いました。どんどんパニックになっているのが伝わりました。娘も、一緒に参加していた方々も、アテンドの方も「大丈夫だよ」「みんないるよ」と優しく声をかけてくれましたが、息子は「こわい、こわい、むりだ」と泣き続けました。Upload By ユーザー体験談息子のパニックに焦る母…。スタッフの方はアテンドの方は、息子と手をつないでくれ、優しく声をかけ続けてくれました。もしかしたら暗さに慣れてくれば不安を乗り越えられるかもしれない、とちょっと希望を持っていましたが、パニックは治まることはなく、どうにも難しそうでした。このままパニックが続くと、周りの方たちに迷惑をかけてしまう。せっかくの体験なのに…、一緒に参加しているみなさんも楽しみにしていたはずなのに…。しかし、同じく楽しみにしていた娘(一度決めたら止めたくない)は途中で帰るとは言わないでしょう。頭の中でいろいろなことが駆け巡ります。それに、ここで私たち親子だけが外に出るというのも、プログラムを中断してしまうことになり申し訳ない…。何が正解なんだ…と焦っているとアテンドの方が息子に「難しそうかな?ほかのスタッフのお姉さんが一緒にいてくれるからちょっとお外で待っててみる?」と聞いてくださいました。その言葉を聞き、息子は安心したのか泣くのを止めて「うん」と言いました。続けて「お母さんがいなくても大丈夫かな?」と聞くと「うん、大丈夫」という息子。真っ暗の部屋の中で、声だけでやり取りしているので、息子の表情は全く分かりません。はじめての場所で、親から離れて待っていることはできるのかな、と心配がなかった訳ではありませんでしたが、顔は見えなくとも息子がアテンドの方の問いかけにしっかりと答えているのを聞き、きっと大丈夫だと信じて、私も「よろしくお願いします」と言いました。ずっと息子に寄り添ってくれたスタッフや参加者の方々息子がほかのスタッフの方と明るい別室で待っていることになり、娘と私、4人の参加者の方と暗闇でのプログラムを再開しました。娘はどんどん暗闇に慣れていき、ほかの参加者の方と会話をしたり、楽しそうな声が聞こえました。息子の件で申し訳ないという気持ちを抱えつつも、娘だけでも参加できてよかったなぁと心の中で思っていました。プログラム終了まで残り15分になったころ、アテンドの方が「息子くんが、戻って来れるみたい」と教えてくれました。どうやら、ほかのスタッフの方と過ごすうちに元気を取り戻し「もう一回行ってみる」と自分から言ったようでした。ほかのスタッフの方と、また真っ暗な部屋に戻ってきた息子は「ただいま!もう、怖くなくなった!」とはじめに入室する前くらいに元気な声で言いました。一緒に参加していた方々も「待ってたよ」「よく戻ってきたね」と迎え入れてくれました。最後の15分は、息子も楽しそうに参加することができました。息子のパニックを見極めて、対応してくださったアテンドの方、スタッフの方、あたたかく息子の気持ちに寄り添ってくださった参加者の方々に感謝の気持ちでいっぱいでした。Upload By ユーザー体験談不安になりがちな子どもに新しい世界を見せる勇気息子はもともと、怖がりで、いつもと違う状況が苦手です。幼稚園のときは、避難訓練などのいつもと違う雰囲気と大きな音が苦手で、その度にパニックを起こしていました。加えて多動なところがあったりするので、周りに迷惑をかけてしまう心配や、本人の負担も考えてこれまでなにかを「体験する」というプログラムを極力避けてきました。新しいことを知ってほしいという思いもありつつも、親の私自身がその勇気が出なかったのです。でも、そんな息子も小学生になり、見通しが立たない状況でのパニックが起こりにくくなっており、本人も「行きたい」と言ったので今回の「暗闇体験」は、きっと息子の第一歩になる!と信じて、私は申し込んだのでした。そんな中での息子の体験中のパニック。あのときに私も娘も途中で参加を止め、帰ることになっていたら「やっぱり息子には、このような体験は無理だったんだ。新しいことに挑戦するのはまだ難しいのかもしれない」といろいろなことに対してもまた消極的な気持ちになってしまっていたかもしれません。しかし、今回、そんな息子に対してあたたかく対応してくださったアテンドはじめスタッフの方々と参加者の方々のお陰で、体験に参加することができ、息子にも乗り越える力があると知ることができました。人によって、できることできないことや、できるようになるペースは違うと思いますが、息子の気持ちを聞きながら、周りの方にも協力していただきながら、少しずつ新しいことにも挑戦してみようと思えるような経験になりました。イラスト/にれエピソード参考/カワカワ(監修:初川先生より)息子さんにとっては、想像していた暗闇よりも、もっともっと暗闇だったために混乱してしまったのかもしれませんね。混乱し怖さに打ちのめされそうになっていても、スタッフの方と外に出て待つと言えたのは、怖がりで新しいことが苦手な息子さんからするとおそらくかなりの成長だったのではないでしょうか。さて、お子さんがパニックのような保護者の方からしても予期せぬ展開を見せたとき。親子でその場を撤退するのも1つの対処法ではありますが、今回のように、スタッフの方々のお申し出やご対応に少し委ねてみる、というのも1つですね。お子さんに日頃接しているスタッフの方(こうしたイベントのスタッフのみならず、学校や地域のイベントでも同様に)ですと、さまざまな予期せぬ展開に慣れていたりうまいことご対応くださったりする場合もあります。お子さんによき体験をしてほしいという思いで運営されていると、今回のように息子さんが“よき体験”と思えるよう計らってくれる(最後、また中に戻ってこられるように安心を取り戻し、そう向けてくださる)こともあります。いつもそうなるとは限らないかもしれませんが、そうした大人は結構いらっしゃるんじゃないかなと思います。お子さんの様子によって、また周りの状況によっても変わってきますが、体験者さんが勇気をもってスタッフさんに少し委ねてみたことそれ自体も、よき体験となられたのではと思います。
2023年03月11日こだわり、絶対音感、集団指導はムリ…発達障害があるわが子の「習い事」体験談ゆきみさんの息子さんのけんと君は、数字、アルファベット、地図など、3歳になるころから興味があるものには一直線!しかし、構音障害があり、集団行動や人の話を聞くのも苦手だったため、習い事に興味はあっても、どんな習い事を選べばいいのか全くイメージがわかなかったそうです。しかし、けんと君本人の強い希望でそろばん教室に通うことになり…。寺島ヒロさんの二人のお子さんには自閉スペクトラム症(ASD)があります。妹のいっちゃんは3歳のとき、まだうまく言葉を話せなかったにもかかわらず、どうしても「やりたい!」と猛アピールの末、ピアノを習い始めました。周囲から将来を期待されながらも、9年間通ったピアノ教室をあっさりと辞めてしまった理由、そして今になってその経験がどう役立っているかなどについて、書いていただきました。まりまりさんの次女は現在小学5年生。2年生の3学期のときに場面緘黙(選択性緘黙)の診断を受けています。小学2年生のとき、大好きな工作や絵を学べる習い事をお姉さんと一緒に始めたそうですが、1年後お姉さんがその習い事を辞めることになり…。吉田いらこさんの長女、ゆいちゃんは小学6年生。小学5年生のときに軽度知的障害、自閉スペクトラム症(ASD)、場面緘黙の診断を受けています。まだ障害に気づいていなかった幼児期から小学校低学年にかけて、ゆいちゃんはいろいろな習い事に挑戦していましたが、1ヶ月ほど経つと行くのを嫌がるようになり、なかなか続けることができなかったそうです。そんな中、ゆいちゃんが今度は「バイオリンをやりたい」と言い始めて…。丸山さとこさんの息子、コウ君は中学1年生。学習塾には通っていませんが、コウ君のひとことがきっかけで、タブレット用の勉強アプリを家庭学習に取り入れることになりました。タブレット学習を始めてみて分かった、発達に凸凹のある子どもならではの「学習アプリ」のメリット・デメリットを、母目線で書いていただきました。さいごに今回の「習い事」特集では、発達ナビライターさんからさまざまな体験談をお寄せいただきました。「今はこんな習い事があるのか!」「わが子にもこんな習い事なら合っていそう」などと参考になるエピソードも多かったのではないでしょうか。親子とも無理なく、楽しく続けられる習い事が見つかるといいですね!コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月11日保育園の行事に参加できなかった息子しのくんは現在4歳11ヶ月、発達障害グレーゾーンの男の子です。しのくんは保育園に通っていますが、参観日や運動会などの保育園の行事では、私を発見するなり駆け寄ってきてしまうので、2歳ごろからずっと行事に参加することができていませんでした。私は、その度にほかのお友達としのくんを比べてしまったり、保護者の目も気になってしまい、「しのくんは、どうしてできないんだろう?」と真剣に悩んだ時期がありました。そんなしのくんですが、4歳直前のころにあった生活発表会では、私の方に来ることなく(来ようとしたが途中で踏みとどまった)、最後まで舞台で演技をすることができて、とても感動したのを覚えています。しかし…成長したと喜んだのもつかの間、次の参観日で…4歳2ヶ月ころにあった保育園の参観日では、しのくんは私を発見するなり教室を出て、またもや私のほうに来てしまいました。教室へ戻るよう促しても、私の近くを離れようとしません…。最終的にはそのまま教室の外で、加配の先生と私としのくんの3人で、参観の時間が終わるまでおしゃべりをして過ごしました。もう、みんなと同じように行事に参加できるようになったと思っていたので、この出来事に私はとてもショックを受けました…。Upload By keikoまたこっちに来たらどうしよう!怖くなった母は…このことがきっかけで、私はその参加日から約2週間後にあった保育園の行事、音楽会に参加するのが怖くなりました。しのくんがこっちに来て、音楽会を台無しにしてしまったらどうしよう!?と思いましたし、カメラに写るのが大好きなので、ほかの保護者のカメラに写りにいって、迷惑をかけたらどうしよう!?という不安が私を襲います…。Upload By keikoたくさん悩んだ末、私は音楽会へ行くのをあきらめました。代わりに、しのくんが言うことを聞く、夫と義父の2人に行ってもらうことにしたのです。2人は「(私が行っても)大丈夫じゃないの?」と言いながらも、快く「行く」と言ってくれて、私は心からホッとしました。保育園の先生からは、私が音楽会に行かないことを伝えると…「お母さん、大丈夫よ。お母さんのところに行ってもいいじゃない。見に行ってあげたら?」と、とても温かいお言葉をいただきました。しかし…当時の私は「もし○○になったら」ばかり考えて、一人で勝手に不安になってしまい…結局音楽会には行くことができませんでした。音楽会は、夫が動画を撮ってきてくれたので見てみると…しのくんは最初から最後まで客席に来ることなく、きちんと参加することができていました。私は、「しのくん凄い…!」とその動画を見て感動しました。Upload By keiko当時を振り返って今思うこと当時を振り返ってみると、やっぱり保育園の先生の言うとおり、ちゃんと見に行ってあげればよかったなぁと思います…。周囲の目を気にするあまり、しのくんの気持ちを第一に考えてあげられなかったことを今は後悔しています。現在、4歳11ヶ月になったしのくんは、もう私のほうに来ることはなく、しっかり行事に最初から最後まで参加できるようになりました。もちろん、行事を見に行くときの不安は今もあります。ですが、不安な気持ちはしのくんにもあると思うので、お互いの不安を和らげるためにも、今日は○○なことがあるからね。と状況を先に伝えておくようになりました。この件を忘れずに、親子で見通し不安に負けないように事前にできる準備はしつつ、そして何より、しのくんの気持ちを第一に考えて行動していきたいと思います。執筆/keiko(監修:初川先生より)自分のところに来てしまうかもという不安から音楽会の参観を見送られたエピソードをありがとうございます。その判断はさぞ葛藤されたことだろうと思います。自分のせいで、子どもが発表を抜けて、台無しにしてしまったらどうしよう。そして、そんなわが子の姿を見てしまったら、ほかの子どもとの違いにいたたまれない気持ちになるに違いない。さまざまな思いがあったことと思います。さて、思うには、未就学児の子どもたちにとって、保護者参観日は特別なものでありつつも、一方で、日常の延長でもあるんだろうと感じます。つまり、本番だからちゃんとやる、そういう気持ちや理解はいつごろ育つんだろうかということです。本番だから頑張る、お母さんやお父さんが見ているから頑張る、そういう意識が育つのは結構個人差があるのではないのでしょうか。例えば、「明日はお母さんが見に行くから、一番かっこいい演奏聞かせてね!」という約束をしたとして、それが実行されるのだとしたら、それはそれで約束を覚えていて、不安緊張興奮さまざまありつつも実際そう振舞えるというなかなかのマルチタスクだと思うのです。親のところに来ずとも、気分が乗らずに、あるいは普段との違いから緊張するなどして練習通りにはできない子どもは少なくないでしょう。本番を本番として、最高のものをと思うのは実は大人だけで、子どもはもっとのびやかに、あるいは自分の不安などの気持ちに正直に過ごしているのかもしれないと感じます。子どもによっては、(より日常に近い)リハーサルの方が得意なお子さんもいます。本番にだけ特別な価値を置くのはやっぱりちょっともったいないなと感じてしまいます。非日常でありつつも、やっていることは子どもたちからしたら練習や日常と同じことで、そこに大好きなお母さんお父さんがいたらそこに惹かれるのは自然な反応だろうと思うのです。そういう意味で参観日におけるお子さんの発達がどんなものかを知るという意味で、「また(まだ)お母さんのところに来ちゃったね」で本来はいいのだろうと思います。いずれそのあたりが育ち、「もうお母さんのところに来なくなったね」の日が来るでしょう。しのくんは、お母さんが音楽会に来なかったことをどう思っているのか、そこがちょっと気がかりです。どんな姿であれ、お母さんに見ててほしかったんじゃないかなと思います。大人は子どもが立派にやっていると自然と褒める言葉が出てきたり、笑顔になったりしますが、でもその際の「立派」とは結構相対的なものではないか(ほかの子どもと比較していないか)というところは気を付けておきたいところですね。難しいのは行事だと練習の成果の場として設定されがちなので、どうしてもまなざしが評価的になびいてしまいます。もちろんよきことはよきとしても、でも、どちらかというと、子どもがぐんぐん日々育ちゆく中の一端を見ているにすぎないので、まだお子さんが「本番だから」を真に理解し自分のモチベーションもそこに持っていけるまでは、あくまでも行事設定の日常場面を参観しているという心持ちでもいいのではと思います。そうは言っても、周りのお子さんや保護者の目が気になったりするのはあるだろうなというのも分かります(なので、多かれ少なかれ葛藤されるのはあるだろうなと思いつつ…)。そして、親がわが子の振る舞いや言動に不安になるのはよくあることですが、それをお子さんにぶつけないことは大事なことだなと感じます。保育園の先生に「行かない」ことを話せたのはよかったですね。行くか行かないか迷う、うちの子ちゃんとやれるか不安。そうした気持ちはお子さんとの間で話し合うよりも、園の先生にお知らせしたり、パートナーと話し合ったり、大人の間で抱えていくとよいと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月10日良いことだらけと聞いていた療育手帳Upload By カタバミ療育手帳を取得するということに身構えてしまう方は多いと思います。でも私は、まちゃが2歳10ヶ月で正式に自閉スペクトラム症と診断されてから週に1回発達センターで療育を受けつつ、発達障害のあるお子さんがいる友人がSNSで「療育手帳を取得したら良いことがたくさんある」と発信しているのを読んでいました。でもそのときはまだ発達障害に関して、特に制度に関することは分からないことだらけで「療育手帳というものがあるのか」とぼんやりとしか分かっておらず、すぐにまちゃに療育手帳を取得させようとは思っていませんでした。思い返すと、発達センターにも通い始めたころで、これからメキメキと成長するかもしれないと考えていたと思います。療育手帳と受給者証って何?Upload By カタバミ2歳の後半から週に1度、まちゃは発達センターで少人数での療育を受けるようになり、私は療育に集まるお子さんたちが児童発達支援事業所というものにも通っていることを知りました。そして児童発達支援事業所に通うには受給者証というものが必要だということも教えてもらいました。児童発達支援事業所に通うには必要なものがあることがだんだん分かってきたころ、まちゃの2歳年上のお姉ちゃんの幼稚園の同じクラスにきょうだいに障害のあるお子さんがいるママがいて、お話をする機会があり、思い切って質問をしたら受給者証と療育手帳の取得についてとても丁寧に分かりやすく説明してくれました。また同じころにほかのママが「療育手帳を持っていると利点がたくさんある」と話しているのも聞きました。私はまずは受給者証がほしかったのですが、療育手帳についても持っていた方がまちゃのためになると聞いていたので、療育手帳の取得と受給者証の取得を同じ時期に決心しました。取得のための相談窓口というところに緊張して電話をしたら、いつもの発達センターにつながったのでホッとして脱力したのを覚えています。すぐにまちゃの担当の臨床心理士に話がいき「まちゃくんなら取得できるだろう」と言われて、許可が必要だったのかと意外に感じたことも覚えています。児童相談所での発達検査Upload By カタバミ療育手帳の申請をしてから約2ヶ月後に児童相談所で発達検査がありました。まちゃと同室か別室で待つか聞かれて私は同室を選びました。優しい声の若い女性が問題を出してくれたせいかまちゃはリラックスしていて、パズルの問題などは前のめりになって考えて応じていました。しかし「これをこうしてください」など、言葉で説明される問題に入った途端、まちゃは困ったようなはにかんだ表情になりました。このころは今よりもっと発語もなかったため、私にはしゃべることができないまちゃが『問題を解きたいんだけど、何を言ってるのか分からないよ〜』と言ってるように見えました。まちゃは機嫌も悪くなく、やる気もあるけど本当に分からないようで、そこからあとの時間は私へのまちゃに関する長い質問タイムになりました。私は「まちゃはこんなこともできる」「あんなこともできる」と、無意識にまちゃはいろいろ理解していてできることも多いと説明したと思います。発達検査のあとUpload By カタバミ発達検査によってまちゃには知的障害があることが分かり、小児科医から知的障害の程度は「軽度よりの中度」と言われました。今から考えると遅過ぎてあきれますが、そのときになってようやく私は療育手帳の重みを感じてショックを受けた気がします。「まだ幼いので今後言葉が出れば結果はガラッと変わりますから落ち込まないように」と言われました。そのあと、発達センターの療育の先生からも「療育手帳の取得のための検査は言葉が出ていないと低く出るんですよ」と言われました。でも、数週間後にかかってきた児童相談所からの電話では「身辺自立などできていることも多いので軽度です」と言われました。良かったのか悪かったのか分かりませんでしたが、とにかくまちゃは軽度の知的障害があるということで、療育手帳を取得し、私は2年後の更新のときまでになんとかまちゃから言葉が出るようにしようと思いました。私は前もって情報があったのでそんなに構えずに療育手帳を取得しました。夫も止めませんでしたが、親戚は驚いて悲しむかもしれないと考えて黙っていました(今は話しています)。私は自分の経験から、療育手帳を取得するのは特に制度の面では良いことが多いですが、結果を受け止めるのは人によっては大変なので、親御さんと場合によってはご本人がいろいろな情報をよく聞いて調べて決めるのが良いと思います。執筆/カタバミ(監修:藤井先生より)療育手帳の取得の際の発達検査だけでなく、病院や療育センターで行われる発達検査の結果を聞いて、ショックを受けたというお声を聞くことがあります。しかし、小児の発達検査は、年齢が幼いお子さんの場合は特に、将来的な発達指数と直結するとは限りません。療育やご家庭での働きかけ、お子さんの特性によって、変わっていくこともあります。療育手帳を取得することでのメリットもありますので、事前に調べて決められることをおすすめしております。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月09日娘の食事中の姿勢の悪さが気になる!自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)の診断を受けている小6の娘。食事中、テーブルに近すぎてよくコップを倒してしまうので食事中の姿勢が気になっているのですが、アドバイスをしてもこだわりからか聞いてくれず…。そんな悩みを児童精神科医の三木崇弘先生に聞いてみました!――SAKURA(以下、――)夫が気になっているということで、食事中の姿勢について質問です。娘は普段特別姿勢が悪いということではないのですが…食事をするときに、ものすごく机に近づいてしまいます。三木先生:具体的に、どういう感じですか?――えーっと…椅子、娘、机のそれぞれの距離が、全くないぐらいですね。Upload By SAKURA――私は、そこまで気になっていないのですが、夫は、明らかに違和感のある姿勢を、どうにかしたいということでした。三木先生:その姿勢でなにか生活に支障はありますか?――机に近すぎるので、手が動かしにくいようで…よく食べ物をこぼしたり、コップを倒してしまったりしてます。あまりに近すぎるので、「机とお腹を拳一個分離して」と具体的に指示してますが、どうにも落ち着かないようで、結局、元の姿勢にすぐ戻ってしまいます。本人のこだわりなのか「これじゃ無理!やりにくい!できない!」と言ってます。でも、その状態だと一つひとつの動きが遅くなります。Upload By SAKURA三木先生:例えば、食器を離してみるなどはどうでしょうか?――やってみましたが、食器を離すと、結局気になるようで、すぐに近づけてしまいます。Upload By SAKURA三木先生:ASDの特性的に、お腹に机がくっついている状態、全部が近い状態が、安心するのかもしれませんね。コップを倒したりするのも、たまになら許容範囲と言うことでよい気がしますが…――あ、結構頻繁です(笑)三木先生:なるほど(笑)マナー的な部分を教えていくと良いかもしれませんね。どんな場所とか、どんな相手とか、「そういうときにはちゃんとしようね」と話していくのもいいかもしれません。相手があーさんの姿勢の悪い状態を見たり、頻繁にものをこぼしたり、倒したりしたら、どう思うかとか、自分の姿勢優先じゃなくて、そのシーンによって臨機応変に対応しないといけないことがあるという部分を教えていくとか。今、小学6年生ということなので、「中学生になったら、大人の仲間入りだから、素敵な姿勢がかっこいいよ」といった声かけで、姿勢も意識させたらいいのかもしれません。Upload By SAKURA――あ、たしかに!今、大人と同じ扱いをしてほしいって気持ちがあるみたいなので、いいかも…!姿勢の悪さは体幹も関係してるかも?三木先生:あと…姿勢が悪いのは、体幹が弱いのかもしれません。――体幹!たぶん弱いです…運動も嫌いで、筋力もないので(笑)Upload By SAKURA三木先生:体幹が弱いと、姿勢を維持できないので。バランスをとることが重要なスポーツにチャレンジしてもいいかもしれませんね。乗馬や、サーフィンなどが姿勢にいいと言われていますが、なかなかチャレンジさせるのは難しいので、バランスボールなども家で手軽にできてオススメです。Upload By SAKURA運動で体幹を鍛えれば少しずつ姿勢なども変わっていくかもしれません。あとは本人の試行錯誤ですね。原因として怪しいものからトライしていくといいです。――なるほど!やってみます!Upload By SAKURA執筆/SAKURAコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月08日学校行事で困る!本人が一番つらそうにしているな…と感じるのは、学校行事で未知の場所に行くことです。家族旅行ではなんの困りごともないのですが、学校行事は不安でいっぱいになってしまうのです。遠足・社会見学・修学旅行など、小学校にはたくさんの行事があり、新しい場所に行くことをワクワクして楽しみにしているお子さんも多いと思いますが、ゆいにとっては大きなストレスになっていて、楽しむどころではなさそうです。当日がせまってくるとどんどん元気がなくなり「怖い、嫌だ」と言うようになっていくのです。つらそうなゆいを見ていて「こんなにつらいなら行事を休ませるのもアリかな」と思ったこともありました。けれど、ゆいには不安はあるけれど、行事に参加して友達と楽しみたいという気持ちもあるのです。なので、なるべく不安を取り除いて参加させる方針にしています。小学3年生の遠足のとき、ゆいが不安がって登校するのを嫌がったことがありました。(そのときの私は、ゆいの障害や特性についてまだ知らなかったため、わがままを言っているのだと思い込み、無理やり登校させてしまいました。今思い返してみると、かわいそうなことをしてしまったな…と思います。)しかし、この出来事があったことで、徐々にゆいの不安な気持ちに向き合うようになりました。今では、少しでも安心して学校行事に参加できるように、ネットを使った「下見」をするようになったのです。Upload By 吉田いらこお役立ちのアプリまずは施設のWebサイトを確認します。施設の画像やフロアガイドで全体像を把握できるようゆいに見せています。そのほかSNSなどにいろんな方が投稿されている施設の画像も、ユーザー目線で分かりやすくとてもありがたいです。とくに詳細画像でなくても、ゆい本人にとっては見るだけで安心材料になっています。また、徒歩圏内の施設だと地図アプリで行き方を確認したり、実際に行ってみたりもします。Upload By 吉田いらこ遊園地の楽しみ方ゆいと小さいころに遊園地に行ったことを思い返すと、屋内のアトラクションを怖がる傾向にありました。当時は「入口が暗いから怖いのかな?まだ幼いし、そりゃ怖いよね」と思っていたのですが、暗いことが怖いのではなく、中で一体何が行われるのか分からないことが怖かったのかもしれません。屋外のアトラクションなどは、これから先の流れが一目瞭然なので安心して乗ることができていました。また、テーマパークによっては、ゆいのように不安が強い人たちをサポートする冊子が準備されている場合があります。この冊子には全てのアトラクションの写真と、大きな音が鳴る・フラッシュがたかれるなど効果の説明が載っています。いわゆるネタバレになってしまうのですが、ゆいのように、何が行われるか分からないことで不安を強く感じてしまう子どもでも、アトラクションが楽しめるよい配慮だなとうれしく思っています。Upload By 吉田いらことにかく予習をたくさんしておく下見は手間も時間もかかりますが、このように工夫すれば初めての場所にだって行けるんだということが分かるのは、本人にとって良いことだと思います。できた!という体験を何度も重ねていき、いつか一人でも気楽に外出できるようになる日が来たらいいなと思っています。執筆/吉田いらこ(監修:初川先生より)遠足や社会科見学等を不安に感じるゆいちゃんが安心して行事に臨めるための工夫のシェアをありがとうございます。何が起きるか分からないところへ出向くのは不安になるのは多かれ少なかれみなさんありますが、「楽しむ」レベルを超えて不安になってしまうと、せっかくの機会がもったいない面がありますし、何より、ゆいちゃんは完全に拒否をしているわけではなく、楽しみたい気持ちもあるわけで(それに気づいているゆいちゃん本人もいらこさんも素敵です)、だとしたら、少しでも安心した気持ちで臨めるように、と工夫するのはとても大事なことですね。今はさまざま情報が出ているので、ネットで調べたり、SNSで調べたり、写真を見たり、地図を見たり、または予習として事前に行ってみたりして、安心して臨めるようにする。ネタバレではあるのですが、大事なのはそこで初めて知って驚くことではなくて、安心して参加して「楽しかった」と思えること。不安要素がいっぱいあるならそれを減らして、ゆいちゃんの場合は、「友達と一緒に楽しく過ごしたい」に注力できるようにする。素敵な手立てだと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月07日高校生までは感じづらかった「見通し不安」、大学生になり感じた「自由」の恐怖高校生までは特に見通し不安を強く感じた記憶はありません。学校や塾にいる間は学校や塾の時間割に従っていればよく、生きている世界も狭くて役割も限られていたため、家では親の管理に受動的に従っていればよかったからです。そんな私も大学に入り、自分でスケジュールを決める必要が出てきて、生きる世界もぐっと広がりました。ここで私は面食らうことになります。最初の壁は履修登録でした。大学の履修登録では、自分が何をどれくらい学ぶのか、何曜日の何時に何コマの授業をとるのかが完全に自由です。その代わり、留年したり成績が悪くなったりしても自己責任。学生課でシラバスを受け取ったときに、辞書ほどもあるようなその分厚さにめまいがしたのを覚えています。私の通っていた大学では、学生課が出している正規のシラバス(私が面食らった分厚いもの)と、学生たちの間で出回っている裏情報的なシラバス(この授業は履修するだけで単位がとれるとか、「代返」が可能とかが載っている)がありました。そのほか、学生課から配られる、履修登録のしかたについてのさまざまな資料。こうした大量の情報の中から自分に必要な情報を取捨選択し、自分だけの時間割に落とし込んでいくのは至難の業でした。普通の学生なら、学生課に質問に行ったり、あちこちに電話をかけたり、すでにうまいこと獲得していた友達・先輩からいろいろ聞いたりして効率のよいやりかたにたどりつくのでしょうが、コミュニケーション障害がある私にはそれがうまくできませんでした。もともとのコミュニケーション障害に加え、社交不安症のような症状も出ていた私。ちょっとした問い合わせの電話1本かけるのにも小一時間緊張して迷って、声と手を震わせ心臓をバクバクさせながらなんとかやるという感じでした。このため、資料を見ているとちょっと分かりにくくて本当は誰かに聞いたほうがいいんだけど… というようなことを、聞くのが怖いものだから誰にも聞かずにそのまま済ますという回避行動に出ることもありました。社会人になってからも感じた、スケジュール管理への不安30代になって結婚を機に実家を出、トラウマ治療を受けるなどするうち、社交不安症のような症状はほとんどなくなりました。調子を崩していたのが、だんだん在宅で働けるようにもなります。しかし、こうして元気になって働けるようになってからも、スケジュール管理には難しさを感じることがありました。在宅のフリーランスのため、働く時間は完全に自由で、仕事が入ってくる時間もランダム。そして、家事担当として、やるべき家事もあります。こんな中で自分なりのリズムを見つけるのには非常に苦労しました。昔から出先で体調を崩したりすることが多いため、夫が休みの日に当日になって急に「どこそこに行こう」などと言うのにも困りました。最低3日前ぐらいには言ってもらえないと、自分なりに体力の配分したり、行き先や行く手段がどんな環境・条件なのかを下調べして備えておいたりすることができないからです。しだいに、自分は「いつどこでどのように何をするのか」の見通しを立てられる程度まで情報を得て整理しておけば、見通しに関する不安が軽減するのだ、と理解していきました。このため、新しい仕事をするときにはまずどの作業にどれくらいの時間と手間とストレスがかかるのかを把握するように努めています。夫との外出に関する連絡については、なるべく早めに言ってもらって、突発的な予定変更がないように頼んでいます。ネット社会がくれた救いいまの社会がネット社会であることには、デメリットもありますが、24時間どんなときでも手軽に多くの情報を集められることには大きなメリットを感じています。以前だったら電話をかけたり図書館や役所に行ったりして調べなければならなかったことが、手元のPCで手軽に調べられる。これは、私が自分の今後について見通しを立てるときに大いに役立っています。数日後に行く美術館についても、いま通っている資格学校のカリキュラムについても、いまとろうとしている資格の数十年後の見通しについても、いくらでも調べられるのですから。ネット社会がくれる大量の情報をうまく取捨選択しながら、自分のスケジュール管理に活かしていこうと思っています。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)最近はスマホで予定の管理をする人が増えています。対面が苦手なASDの人にはネット社会は確かに救いです。しかし、言葉のキャッチボールができないので誤解や間違いが生じる危険性も潜んでいます。仕事の種類にもよりますが、一般の企業だと急に仕事が入ったりして予定が変わることが多々あるので、決められた仕事を確実にこなせば時間通りに帰れる公務員などが比較的向いていることが多いです。あるいは、気兼ねなく自宅でできる自営業などもいいでしょう。自宅から通っている人は親御さんがいろいろとやってくれることが多く、大学や就職などで一人住まいになってから初めて不注意や不安症状が強く表れて困り、外来を受診するケースが増えています。ADHDは3種類のお薬で、社交不安症はSSRIというお薬で調整することが可能です。困ったら早めに神経発達症の診断のできる精神科へ相談することが肝心です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月07日「クレーンではなく言葉で伝えてくれたら…」自閉スペクトラム症のある子どもの保護者発達障害の専門家が出会った子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、ほぼ発語がない自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションの悩みにまつわるエピソードです。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/taeko解説:クレーンも言葉も、コミュニケーション手段の一つーー言語聴覚士今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションに悩む保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。発達障害のある子どもの保護者の方から「クレーンではなく、言葉で伝えられるようになってほしい」というご相談をよくいただきます。マンガでも描いていますが、大切なのは「クレーンも指さしも言葉も、コミュニケーション手段の一つである」という考え方です。ポイント1.今、子どもが手段としているコミュニケーションを受け入れるポイント2.子どものコミュニケーションについて、場面と手段を整理して、伝えたい意図を確認する例えば、場面:お腹が空いている手段:保護者の手を取って冷蔵庫の前に誘導するなど。ポイント3.指さしや発語といったコミュニケーションにつなげるために、同じ物を見て、ことばで伝えることや顔(表情や口形)への注目の機会を増やす同じ物を見て言葉を伝えたり、物を指さしながら名前をはっきり言って口の動きを見せるようにしましょう。ポイント4.絵カード等を活用することで、要求やコミュニケーションにつなげていくマンガのように、物が近くにない場合にも伝える手段として有効です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月06日卒園と同時に引っ越しわが家は主人の仕事の関係で娘の幼稚園卒業と同時に関西から関東地方へ引っ越しました。転勤が決まったのが3月だったので、私たちは卒園式を終えてすぐにバタバタと引っ越しをすることになりました。転居先での支援継続のため、私は娘が療育を受けていた施設に依頼して、娘の発達検査結果や引継ぎの書類をつくってもらいました。また、就学時健康診断を受け入学予定だった小学校に連絡をして転出の手続きをしました。娘は仲良しのお友達と、そして私は娘が未就園のときから付き合いのあったママ友とお別れです。彼らとの別れの際には涙が出ましたが、見知らぬ地に引っ越すことに私たちはそれほど不安は感じていませんでした。今にして思えば無知(小学校とはどんなものか、これからどんな問題が待ち受けているのかを知らなかった)だからこそ不安を感じなかったのかもしれません。妊娠初期の引っ越しこのときはちょうど第二子の妊娠が分かった時期でもありました。決まったのが急だったこと、転勤先が遠方で土地勘がなかったことなどもあり、引っ越し先の物件選びは「主人の会社に通いやすい場所」「それまでと似たような間取り」「同じような家賃」ということだけを指定し、あとはすべて不動産屋に任せていました。引っ越しは、梱包・開封サービスを使い身体に負担が少ないようにしましたが、第一子(娘)のときと同様につわりが重く、引っ越しの準備作業や移動の際も私はよく吐いていました。引っ越しが済むと私はすぐに、近くのスーパーや病院(産婦人科)を探し、学区内の小学校に入学手続きをしに行きました。近隣のお宅に挨拶をしたときに、通学路と登校班のことを教えてもらいました。入学まであまり日数はありませんでしたが、私は何度か娘と学校までの通学路の確認をしました。登校初日、娘が行方不明に娘の学校では、1年生はしばらくの間、集団下校をすることになっていました。登校班の班長さんに「帰りは○○交差点付近まで学校の先生が引率してきてくれるから、お母さんはそこで待っていれば良いと思う」と言われ、私は下校時間にそこで娘を待っていました。1学年が6クラスあるマンモス校だったので、先生は子どもたちを複数のグループに分けて引率していました。いくつかのグループが私の前を通り過ぎましたが、その中に娘はいませんでした。予定の時間を20分以上過ぎても娘が来る気配はなく、私はもしかして気づかないうちに娘が通り過ぎてしまったのかもしれないと思い、一度帰宅しました。でも家にも娘はおらず、私は学校に電話をしました。電話を受けた先生は着任したばかりだったようで、担任の先生の名前を伝えてもすぐには分からないようでした。児童数が多いということは当然職員数も多く、電話口からは新年度開始直後で先生同士の連携がまだうまくいっていない様子が伝わってきました。結局、担任の先生に聞いても引率した先生に話を聞いても、娘がどこでいなくなったのかは分かりませんでした。引っ越してきたばかりで娘は通学路以外の道をほとんど知りません。私は家の周囲を中心に探しましたが娘の行方は分からないままでした。探し始めて1時間が過ぎたころ、学校の先生から「教員が手分けして探します。娘さんと入れ違いになるといけないので、お母さんは自宅にいてください」と連絡がきました。自宅で連絡を待つ間、私は生きた心地がしませんでした。1時間半後私の携帯に電話がかかってきました。それはコンビニの店員さんからでした。「娘さんがずっとお店の前にいたので声をかけました。帰り道が分からなくなってしまったそうなので、ランドセルの中に書いてあった緊急連絡先にお電話しました」そこは自宅から一番近いコンビニでした。私はすぐにお店に向かいました。店員さんにお礼を言うと「娘さんは泣くこともなく、えらかったですよ」と言われました。娘は小さいころから人見知りもなく、迷子になっても泣かない子どもでした(そのせいでいつも親はひやひやしていました)。このときは私の方が安堵で泣きそうになりました。迷子の経緯私は帰宅後、娘にどうして迷ってしまったのかを聞きました。娘の話によると、集団下校のとき、娘は同じ方面のお友達(初対面)と手をつないで歩いていたけれど、その子は途中で別のルートに分かれる子だったらしい。それに気づかず、ずっと手をつないでいて、そのままその子の下校ルートについていってしまった。引き返す途中で迷ってしまいコンビニ付近にたどり着いた。コンビニは家の近所だったけど、通学路からは外れていて、一人では行ったことがなかったので帰り方が分からなくなってしまった。ーーということでした。学年主任の先生に経緯を話すと「近所なのにどうして道が分からないのですか?通学路の練習はしましたか?」と言われました。いろいろと言いたいことはありましたが私は「まだ引っ越してきて2週間ほどなので。」とだけ伝えました。そのとき私は心身共に疲れ果てていて、娘が無事に帰ってきただけで充分だったのです。翌日病院で翌日は予約していた産科の受診日でした。そのとき、医師から胎児の心音が聞こえないと言われました。Upload By 荒木まち子この時期の流産は『止めることができない流産』なので、行動などが原因にはなりません。それでもショックは大きいものです。私はその後、流産手術(子宮内容除去手術)を受けました。引っ越し、娘の迷子、流産、手術...本当にいろいろなことが重なった時期でした。「仕方がないこと」だってある手術後の安静期間、私はしばらく悶々としていました。「入学前からもっと学校と打ち合わせをしておけば良かった?」「そもそも引っ越し先を不動産屋任せにせずに、わが子に合った環境を第一に考えた地域を自分で探すべきだったのか?」そしてその後、娘は『療育の空白期間』に突入します。私のように、引っ越しや親の体調、きょうだい児の世話、祖父母の介護などで身動きが取れなかったり、周りに助けを求めることができない状況になってしまう人も少なくはないでしょう。でもそれは「仕方がないこと」なんだと私は思うのです。経験値爆上がり私も娘も身をもって経験しなければ分からないタイプです。私が23年間で七転八倒しながら身につけたのは、決して模範的な子育ての方法などではなく、『ベストを目指すんじゃなくてベターを選ぶ』とか、『“受け入れる”と“受け流す”の塩梅』だとか、「あのときは仕方なかったよね」と割り切る図太さだったんじゃないかと思っています。まぁ、身につけたといっても常にうまく対応できているかというとそうでもなく、いまだに子どもがらみの問題や困難に直面しては心が乱れ「どうしたものか」としょっちゅう悩んだりしていますが。ガス抜きや時薬(ときぐすり)を用いながら前へ進むしかない子育て。おかげで私の『経験値』は着実に上がっています(笑)。執筆/荒木まち子(監修:新美先生より)長年のご経験を振り返っての体験談をお聞かせ下さいましてありがとうございます。小学校入学という節目の引っ越しは本当に忙しく大変だったことと思います。準備の期間もほとんどなく、引っ越しでそれまでの関係性がなくなってしまい、どこに相談したらよいのかも分からない、お子さんのこれまでを知っている人がほとんどいない中で、小学校入学という大きな環境変化が重なり本当に大変としかいいようがないです。つらいこと大変なこと、さまざまなことが重なる中で、「『仕方がないこと』もある」と前を向ける荒木さんの強さに敬服してしまいます。なかなかそのように割り切れることばかりではないでしょうが、経験談としてお話しいただいたことで、読者のみなさんがいざというときのイメージをもつきっかけになったらいいなと思います。メインテーマとずれてしまいますが、入学時の登下校については、思いもよらないアクシデントが起きることは本当によくあります。付き添うか付き添わないか、付き添う場合いつまでか、学童や放課後等デイサービスを使うか使わないか、GPSを持たせるかどうかなどよく検討し、いくら検討しても実際には想定外のことが起きてしまうものだと思っておくしかないかもしれません。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月06日ADHDと自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある娘わが家には、ADHDと自閉スペクトラム症(ASD)の傾向がある長女(現在は成人しています)と、重度知的障害がある次女がいます。今回は、長女の小学校での出来事をお話しします。長女は、発達障害の正式な診断は受けていませんが、小さいころからコミュニケーションが苦手で、「空気が読めない」ことがたびたびありました。次女と一緒に発達支援施設に通いながら、先生方に成長をサポートしていただき、地元の公立小学校の通常学級に入りました。行き渋りなどもなく元気に通っていたのですが…。小学5年生に進級したばかりのころ。担任の先生が授業の終わりに、「今日の授業がつまらなかった人は手を挙げてください」と問いかけたそうです。もちろん先生が冗談で言っていることを理解して同級生は誰も手を挙げなかったのですが、長女だけが素直に手を挙げてしまいました。それをきっかけに、担任の先生から無視をされるようになり、クラスの中でもいじめられるようになってしまったのです。Upload By ユーザー体験談中学校進学への不安、発達支援施設の先生に相談をするとなぜ、先生はそんな問いかけをしたのでしょう。小学校生活は残り2年あります。そして、このまま同級生たちと同じ公立中学校に進学したらどうなってしまうのだろうか…。不安で仕方がありませんでした。そこで、次女がお世話になっていた発達支援施設の先生に相談をしました。すると、「私立の中学校のなかには、発達障害などの特性がある子どもを受け入れていて、対応にも慣れている学校があるのではないか」とアドバイスをいただきました。「私立中学校という選択肢があるのか!」私たち夫婦は目からうろこでした。当時住んでいた地域には私立中学校がほとんどなく、中学校受験をすることなど考えたこともありませんでした。Upload By ユーザー体験談ただ夫婦で相談し、「このままではいけない」という思いに突き動かされて、急いで情報を集めました。今はインターネットで発達障害などがある子どもへの支援体制、保護者からの評判なども容易に調べられる時代ですが、当時は頼れるものといえば本のみ。塾も比較したりはできず、家から一番近いところに通うことにしました。あとから知ることになるのですが、中学校受験の準備を小5から始めるのは、かなりギリギリでした。それでも、長女がその気になってくれたのが救いでした。一緒に学校見学にも行って、「楽しそう!ここに通いたい!」と思えたことが、さらなるやる気を引き出してくれたように思います。Upload By ユーザー体験談中高一貫校に進学し、家族で引っ越しもそうして、なんとか中高一貫校の女子校に合格することができました。夫婦で心からホッとしたのを覚えています。それを機に、家族で引っ越しもして、まさに心機一転。つらい思いをした長女の環境を大きく変えることができました。進学した中学校の面談では、先生が「大丈夫ですよ」「同じようなお子さんもいらっしゃいますよ」と言ってくださったので、特性も含めて娘のことを受け止めてもらえているという安心感がありました。好きなことを見つけて大学にも進むことができ、6年間、長女を支えてくれた先生方や友達に感謝しています。Upload By ユーザー体験談もちろん、小学校のときも長女の特性を理解し、対応してくれた先生もいたのだろうと思います。ただ、本当に一つの出来事をきっかけに、学校生活が一変してしまいました。受験準備や引っ越しなど大変なこともありましたが、娘の話を聞いて早めの決断ができて本当に良かったです。その後は高校、大学受験をし、社会人となりました。現在も空気が読めないなどの特性はあるものの、支援を使いながらも家を出て生活をしています。これからも自立した生活ができるように、何かあるときには影ながらサポートなどをしていければと思っています。イラスト/taekoエピソード参考/booskaコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月04日立っても立たなくても不安のもと?コウと『見通し』の関係Upload By 丸山さとこ神経発達症(発達障害)がある子どもの中には、『見通しが立たないことによる不安やストレス』が大きく、困ったり悩んだりするご家庭も多いだろうと思います。ASDとADHDがあるコウも幼いころは見通しが立たず、パニックを起こすことがしばしばありました。コウにとって、見通しが立たない状況はイベントや初めての場所などの『非日常的な状況』だけではありませんでした。今思い返すと、見通しが立たないことによる困りごとは、むしろ日常の中にこそたくさんあったと感じます。コウは運動会や発表会などのイベントでは大きなパニックを起こすことは少なかったと思います。不安になったり怖がったりすることはいくらかありましたし、ストレスはあっただろうと思いますが、どうしていいか分からずに立ち止まったりウロウロしたりする姿の方が強く印象に残っています。Upload By 丸山さとこ「見通しも立たないし右も左も分からない」という雰囲気で集団から外れたり一人違うことをしているコウを見ていると、見通しどうこうの前に『今ここは何をするシーンなのかということを気にも留めていないのではないかな?』と感じました。一方、日常生活の何気ない状況では「こうなるはずだろう」というコウなりの見通しが立つからこそ、それが崩れたときは強いショックがあったようです。その傾向は特に小学1年生ごろまで強く出ており、靴1足やパン1個でパニックを起こして親子でヘトヘトになったこともたくさんありました。例えば、コウが保育園児のころ水遊びをするために一旦靴を脱がせようとしてパニックになったことがありました。『外では靴を履かなければならない』と泣き叫ぶコウをなだめながら取り押さえつつ、「サンダルに履き替える途中だから!水遊び用の靴にしよう!!」と話しかけたところで「あっ……水遊び用の靴に履き替えないとパニックになる、ヤバイ前例をつくってしまったのでは…?」と、ゾ~ッとしたのを覚えています。Upload By 丸山さとこ幸い、その後水遊び用の靴履き替えへのこだわりは発生しなかったので「よかった~…!」と胸をなでおろしました。これは、食べている途中のバナナが折れて『このバナナを折らずに食べたかった』と泣く幼児のようなものと思えば、そう珍しくない反応と言えるのかもしれません。自分の見通しが崩れてショックを受けることは幼児どころか大人にだってよくあることです。とはいえ、コウの「こだわり」と表現されるほどの『自分の立てた見通しへの執着』と、それが崩れたときの絶望やパニックを見ていると、「いや~…分かるけど分からんわ~!ケタが違いますわ~!!」と空を仰ぎたくなったこともありました。コウの見通しとこだわりが穏やか(?)になるまでとはいえ、小学校1年生ごろまでのコウは見通しが立たずパニックになりやすかった反面、アッサリとした切り替えの良さがありました。パニックに関しては、成長に伴い少し見通しが立つようになってからの方が大変だった覚えがあります。全く見通しが立たない状態よりも『こうなるはずだった見通し』にこだわり、それ以外の選択肢が目に入らないケースが増えてきたからです。小学2年生~小学6年生の間は、見通しが立つようになったことで減ったパニックもあれば『見通しが立つことで起きるパニック』は増えたりもしていて、「成長に伴い楽になることもあれば大変になることもある…の繰り返しだなぁ」と感じていました。Upload By 丸山さとこ特に小学3年生と5年生のころは『上手くいく見通し』が持てずにパニックになったり怒ったりすることが多く、予定の変更や小さなトラブルがある度に「もう駄目だ!」「絶対上手くいかない!!」と泣いたり真っ青になったりしていました。見通しが立つようになったことに加えて話せるようにもなってきたコウは次第に怒りを爆発させることも増えてきたため、癇癪の嵐のあとは親子ともどもグッタリすることもしばしばでした。そんな中でも、コウは少しずつ『見通しが立たないこと』や『一度立てた見通しの変更』を受け入れるようになっていきました。Upload By 丸山さとこ小6ASD息子「料理しながら撮影」の宿題でパニック直前!母の助言への対応に感じた小さな成長小学6年生のときの調理実習の宿題では「材料の写真を撮るのを忘れてた!」とミスに気づいてパニックになりかけたものの、『残った材料の写真をレポートに使う』という予定の変更とミスへの対応を受け入れられるようになりました。Upload By 丸山さとこコウは、ここ数年を振り返って「『もう駄目だ!と思っても見通しを立て直して動いてみたら何とかなった』という経験が、少しずつ不安や焦りを和らげていったんだと思う」と言います。そうしていく中で、「具体的な見通しが立てられないときも『多分何とかなるだろう』って思えるようになってきたのかもしれない」と言うコウは、「だから、逆に『具体的な見通し』は全然立ってないのに『何とかなるっしょ!』って油断してヤバくなることも増えた」と続けて笑いました。そんな彼を見て、「これからも少しずつ『できるようになって楽になったな』と『だから今はこれが困るんだよな~』を繰り返しながら、いろいろなことが変化していくのだろうな~!」と改めて感じました。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)今の時期だと卒業式や入学式などの行事に初めて参加される場合にはあらかじめ昨年のビデオを見せて予習させておくことで安心を与えることができます。我々が初めて行く旅行先のビデオを見て予習するのと同じです。どういう場所でどういう人が来て何をやるかが分かれば少しは安心するのではないでしょうか。また、1日のスケジュールを修学旅行の予定のように分単位で細かく書いて絵や写真も添えてあげるとその順番にできるようになるはずです。視覚的に訴えることが大切です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月03日ダウン症児の平均寿命は伸びているダウン症のある人は、合併症として心臓疾患を合併する子どもが多く、かつては乳幼児のうちに亡くなることも多く、10歳以上生きられるかどうか、という時代もありました。しかし、現代では乳児の心臓手術などの医療技術が発展したため、昔に比べるととても長く生きられるようになりました。厚生労働省の簡易生命表によると、令和3年度の日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳となっています。一方、ダウン症児の平均寿命は、60歳前後です。一般の平均寿命に比べると短いですが、ダウン症のある人の死亡時の年齢は72%が40歳以上であることを見ても、昔に比べるとはるかに長生きしていることが分かります。厚生労働省「主な年齢の平均余命」トリソミーのある方のくらしダウン症は、1866年にLangdon H. Downによりはじめて報告された疾患で、染色体異常による疾患の中ではいちばん多い疾患です。正式には「ダウン症候群」といいます。ヒトの染色体は22対44本の常染色体と性染色体の合計46本の染色体によって構成されていますが、この染色体異常により起こる疾患です。ダウン症の場合、約95%は「標準型21トリソミー型」と呼ばれるもので、21番目の常染色体が1本多いことで起こるものです。これは受精時に偶然起こるもので両親の染色体に変異はありません。また、約4~5%は「転座型」21番目の染色体の1本がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番など)にくっついたことによって起こります。、そしてもう一つ、ダウン症全体の1~3%以下の割合の「モザイク型」は、2つの異なる細胞で身体が構成されています。21番トリソミーを持つ細胞と21番トリソミーを持たない細胞が一定の割合で混在しているというような状態です。上で述べたようにダウン症の原因やタイプについては分かってきているものの、ダウン症そのものを治療する方法は現在のところありません。しかし、医学の進歩によりダウン症のある人に合併しやすい疾患の治療はできるようになってきました。特に、先天的心疾患や先天性消化器疾患などの治療が乳幼児期から行われることで、ダウン症のある人の寿命は飛躍的に延びています。胎児期や乳児期などの早期にこれらの合併症を把握できるようになり、外科手術などの高度な医療を受けられるようになったためです。また、早期療育や生活改善が実施されるようになり、合併症の予防・身体の運動能力の向上がうまくいっていることも寿命が長くなることにつながっていると考えられます。「平均余命」という言葉を知っていますか?平均余命とは、「ある年齢の人々が、その後何年生きられるかという期待値」のことです。一般に知られている「平均寿命」とは、「0歳での平均余命」のことなのです。60歳の男性が、「平均寿命」が80歳だからといって、「残りの人生は20年だ」と単純に考えるのは間違いです。令和3年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性が81.47歳 、女性が87.57歳です。65歳男性の「平均余命」は、19.85年になっています。65歳男性の残りの人生は平均約20年になる、ということです。つまり「平均寿命」から計算した16年よりも4年ほど長生きできそうである、ということを表しています。これはダウン症のある人でも同じことが言えます。さらに、ダウン症の場合、生まれてすぐから10歳になるころまでに亡くなるケースも少なくないため、平均寿命はかなり短くなります。例えば0歳のダウン症児の平均余命は48.9歳ですが、1歳のダウン症児の平均余命は51.2歳となっています。1歳でもこんなに違うのですから、10歳を超えたダウン症のある子どもたちは、もっともっと長生きできるでしょう。参考:Causes of death in patients with Down syndrome in 2014-2016: A population study in Japanダウン症がある人の死因は、年代によって異なります。ダウン症がある人は、先天性の疾患を持つことが多いため、乳幼児期はそれが原因で亡くなる人が多いのですが、老年期になるとダウン症のない人と大きな差はありません。2014年から2016年の日本におけるデータによると、乳幼児期から18歳までのダウン症のある人の死因は、先天性心疾患と白血病・リンパ腫などが多くなっています。19歳から39歳の成人期には誤嚥性肺炎や呼吸器感染が多くなり、40歳以降により高まります。ダウン症のある人は老年期が早く、40歳からとされていますが、老年期の死因は、誤嚥性肺炎・呼吸器感染、早期発症アルツハイマー病が多くなっています。ダウン症のある人は悪性固形腫瘍(臓器等の固形のガン)になる人が少ないといわれており、悪性固形腫瘍による死亡は少ないのですが、それ以外ではダウン症のない人と死因は大きく変わりません。厚生労働省 「主な年齢の平均余命」厚生労働省 「主な年齢の平均余命の年次推移」山根希代子 「ダウン症の長期追跡と療育支援」ダウン症の最高齢と日本におけるダウン症のある人の平均寿命長くなってきているダウン症のある人の寿命ですが、最高齢はいくつなのでしょうか。現在記録されているダウン症のある人の最高齢はオーストラリアで73歳、 スウェーデンで87歳、アメリカで70歳です。長寿国といわれる日本では、その年齢をさらに上回り、ダウン症のある人の最高齢は102歳であることが分かっています。1995年から2016年の約20年間の日本のダウン症患者の経年変化における調査によると、20年間で平均寿命は飛躍的に伸び、2010年以降ダウン症のある人の3 人に 1人が60 歳以上であることが分かりました。 trends in longevity among people with Down syndrome in Japan, 1995-2016超高齢社会における障害者施策のあり方に関する研究―日本におけるダウン症者および重症心身障害者に関するエビデンス―|茂木成美現在のダウン症の人の平均寿命は、男女とも60歳前後といわれています。日本人の平均寿命が、男性81.47歳、女性87.57歳ということを踏まえると、ダウン症の人も女性の方がやや平均寿命が長いなどあるかもしれませんが、この場合も「男女とも85歳前後」ということになります。ダウン症がある人の平均寿命は明確な男女差はありませんが、合併症の有無などによる差というものは存在しています。特に、先天性の心疾患で生まれてすぐに心不全など症状を発症してしまうと、寿命が格段に下がると言われています。逆に、10歳までに身体的に重度な二次障害が発症しなければ、寿命はぐっと長くなります。ダウン症の平均寿命が男女とも50歳代を超えているといわれる現代でも、合併症や症状の重度軽度などにより生まれて間もないうちから10歳になるころまでに亡くなってしまうダウン症のある人たちも、まだまだたくさんいるのです。ダウン症では男女の差よりも、症状の重さや合併症の程度などによる差の方がずっと大きいということです。山根希代子 「ダウン症の長期追跡と療育支援」ダウン症のある人の寿命は治療で伸ばすことができるの?ダウン症の寿命が短いのは、合併症を引き起こしやすいからといわれています。特に、一番多いのが先天性の心臓疾患です。以前は、この心臓疾患によって半分近いダウン症児が10歳以下で亡くなっていました。10歳以上生きられるかどうかというのが大きなターニングポイントとなるわけです。現在は乳児を含む小さな子どもの心臓手術の成功率が、かなり上がっているので、生存率は以前と比べて上がっています。また、ダウン症児の多くが併発するといわれている、食道閉鎖症、十二指腸閉鎖症、巨大結腸症、鎖肛、ヒルシュスブルング病などの命に係わる消化器疾患系の合併症もまた、医療の進歩により根治治療さえ可能となってきているのです。そのため、多くの人がこの10歳以上生きられるかどうかというターニングポイントを超えることができるようになり、平均寿命も延びたというわけです。また、大きな合併症ばかりでなく、筋緊張が低下し、筋肉がつくられにくいというも寿命の短縮に関わりがあるかもしれません。これはダウン症の二次障害の中ではあまり重要視されませんが、治療を受けなくても、生活習慣を見直したり運動不足を解消することが、ダウン症のある人の寿命を延ばすことにつながります。ダウン症の平均寿命が延びるということは大変良いことなのですが、それに伴い新たな問題も生まれました。長生きに伴い、乳幼児期や学童期だけでなく、青年期以降にも合併症などの治療が必要となり、その受け皿が少ないことが課題となっています。子どものころは合併症の治療のためにかかりつけ医を持ち、継続して通院していた人も、成長して治療が必要でなくなると、かかりつけ医を受診することがなくなることがあります。しかし、成長後に発症する疾患もあるため、かかりつけ医を持ち、定期的に検査をしたり、症状が見られたときには早めに治療を開始するのが理想的です。ところがダウン症のある人を成人期や老年期まで長期的にフォローする専門の体制がまだ確立されていないため、どの診療科を受診したらよいか分からないといった事態に陥るケースも少なくありません。また、成人のダウン症のある人に、アルツハイマー型認知症を発症する人がいるという事実が明らかになりました。全員に発症するわけではありませんが、40代ごろからその症状が現れる人もいるといいます。原因はまだ明らかにはされていませんが、ダウン症のある人は、異常たんぱく質が産生されやすく、かつ組織や臓器に蓄積しさまざまな障害を引き起こしやすいのです。この異常なたんぱく質が脳に蓄積することで、アルツハイマー型認知症を発症するのではと推測されています。参考:成人期を見据えたダウン症候群のある児への関わり「ダウン症候群のある患者の移行医療支援ガイド」医療の発展と共に著しく伸びているダウン症のある人の平均寿命。より良い成人期を過ごすために大切にしたい医療とのつながり医学の進歩により、ダウン症のある人が少しでも長く生きられる社会になっているというのはとてもすばらしいことです。成長してからも合併症が起きることがあることやアルツハイマー型認知症を発症する可能性が高いあるという報告もありましたが、医療とのつながりを保つことでいざというときに早めに治療を受けることができます。子どものころに治療が終わり病院と遠ざかってしまうこともあるかもしれませんが、成人期以降も定期的に検診を受けたり、気になる症状があるときには早めに受診したりするようにして、医療とのつながりをもっておくとよいでしょう。ダウン症のある人は、体の不調を言葉ではっきりと伝えることが難しいことがあります。大事な症状を見逃さないためにも、定期的に健康診断を受けていると安心です。
2023年03月01日発達ナビ大賞へのご応募ありがとうございました!発達が気になるお子さんを日々育てている中、「子どもの癇癪に困ってしまった…」そんな経験はないでしょうか?発達ナビ会員のみなさんをはじめ、多くの方からお寄せいただいたエピソードの中から、印象的だった5つのエピソードを発達ナビ編集部が選びました。また、あわせてお読みいただきたいコラムもご紹介します!※LITALICO発達ナビ「みんなのアンケート」にてご応募をいただいたエピソードについては上記より遷移し、ご覧いただけます息子の癇癪、理不尽に思えることにも理由があるから癇癪と暴言・問題行動と長年向き合っています。困った事だらけで…。大変だったエピソードが多すぎ…(笑)雪が降ったからイライラする。雨が降ったからイライラする。TVを付けたからイライラする。ご飯のタイミングが遅いからイライラする。こどもの声が嫌だからイライラする等々…。こちらからしたら理不尽に思える事も息子からしたらちゃんと理由があるんですよね…。言葉で上手く伝えられないもどかしさ。ストレスが溜まってもうまくガス抜きができない。感情のコントロールを上手くできない。折り合いの付け方が難しい。上手くクールダウンできない。本人が一番きつい。でも、対応する周りもきつい。癇癪が出る前に上手くコントロールできるようになれば理想的です。でもそれが難しい。そしてそれが息子の特性。(HARUKAさん)息子さんの癇癪やイライラなどに長年向き合っているというHARUKAさん。一見理不尽に思えることでも、本人には本人なりの理由がある…。理解できても、日々対応しなければならないのは大変ですね。一人で悩まずに、医療機関、療育機関など、第3者へ相談することも選択肢の一つかもしれません。発達ナビには、癇癪にまつわる疑問を小児科医の藤井先生にお答えいただいたコラムもありますので、ぜひご覧になってみてください。スーパーでの買い物中に癇癪!レジで後ろに並んでいた人の言葉が胸に刺さり…3歳の自閉スペクトラム娘は、視覚的な記憶が強く、いつもと違う状況にひどく戸惑います。例えば、スーパーでの買い物。一度行くとスーパーの売場の地図のようなものが頭に入り、棚に並んでいるものの位置も覚えてしまうようです。そのため、次に行ったときに陳列が変化しているとたちまちパニックに。元のとおりに戻そうと勝手に品物を動かし始めます。本人は正しいことをしていると言わんばかりのドヤ顔で…先日もスーパーのレジ前のお菓子が引き金に。いつもと違っていたようで、せっせと動かし始め、ほかのお客さんにもお店にも迷惑だからやめさせようとするも、おさまらない。そしてレジの順番がきて強制終了となり、床に転がりバタバタしながら泣き騒ぎ始めました。後ろのおばさんの「お菓子買ってあげたらいいのに」という一言が私に刺さる刺さる…「買っておさまるならいくらでも買うよ」とぼやきたいのを我慢しながらレジ通過。棚の並べ方が気に入らずパニックになっているのであって、何か1つ買ったところでおさまらない。そしてそもそも娘は偏食でお菓子は一切食べない…。なかなか一般の方々には伝わらないよなぁ。欲しいお菓子買ってもらえてないって映るんだなぁ。そして会計を終えても癇癪は続き、袋詰めのところでカゴの中身を投げ始め、床にヨーグルトをぶちまけ、ポテトサラダは容器から飛び出し…ほかのお客さんに当たらなかったのが不幸中の幸い。本人も生きづらくつらいんだろうと思うけれど、日常の買い物も癇癪の種にあふれ、いつも緊張状態でいなきゃいけないのは正直つらい!(プラムさん)「いつもと違うといや」で並べ替えたい――お子さん本人がつらいのはもちろんですが、日々の買い物にも神経を使う状況のプラムさん、おつらいですね…。買い物など外出中での癇癪・パニックは、たまたま居合わせた事情を知らない方には、一見「ただのわがまま」に思われてしまうということも、保護者のみなさんが困ってしまう原因の一つだと思います。発達ナビライターのSAKURAさんも、お子さんが小さいころ、外出時の癇癪に悩んでいたそうです。しかし、子どもが癇癪を起こしたときの自分の中の「ルール」を作ったことで、少し気持ちが楽になったとのこと!ぜひ参考にしてみてください。癇癪中に虐待だと思われて児童相談所に通報今は中学1年の息子。癇癪がとにかくひどい子で未だにあります。自分の思い通りにならないときなど酷く、テレビを破壊されたり壁に穴を開けられたりドアが凹んだり、コンセント部分も凹んだり時計を投げつけて壊されたり(涙)ギャーという声がまた全力…。最悪なのは、窓が開いてるのに気づかず癇癪中にこちらも怒鳴っていたら、虐待だと思われて児童相談所に通報されました。ちゃんと話をして納得して同情されましたが、通報までされたことがあまりにも悲しくて相談員の方の前で泣いてしまいました。癇癪中はその場から離れるというアドバイスをドクターからしてもらい実行しましたが、その場を離れている間も暴れて壁に大きな穴を開けられました(泣)息子からしてみると見捨てられたと感じたようです。ドクターからのアドバイスでもその子によって効かない事もあるんだと身をもって感じた瞬間でした。少しづつ良くはなってきましたが、ゼロになる日がくるのかはわかりません。段々と成長してもうすぐ私の身長を抜かします。そうなったときにまだ続いていたらもう止められないので、そのときは警察や児童相談所のお世話になることを覚悟していますし、本人にもいざとなったら警察に通報するから、とは伝えています。そうならない事を祈るばかりです…。(空色さん)虐待を疑われて児童相談所に通報されてしまい、悲しみのあまり涙してしまったという空色さん。さらに「癇癪中はその場を離れる」というお医者さんからのアドバイスに従ったら、壁に大きな穴が開いてしまったとのこと…。保護者としてどのように接したら良いのか、悩まれている方も多いのではないでしょうか。また、ご近所さんとの関わり方も、気になるところだと思います。空色さんと同じように、癇癪中のお子さんとの向き合い方や、ご近所との関わり方に悩んだというユーザー体験談をご紹介します。お友達を嚙んでしまった!頭を下げ続ける日々1人目が軽度発達障害と言われ落ち込んでいたころ(20年以上前です)、2人目(3歳ぐらい?)を近所にできたショッピングモールに連れて行きました。よくテレビとかで見る、これ買ってくれないと嫌だ~!と地面に寝っ転がって地団駄踏むことを30分近くしてくれました…。1人目とは違う特性だったので、この子どもたちは一体何なんだろう?と本当に悩み疲れ果てていました。そのショッピングセンターには半年行きませんでした。(行けませんでした?)遠いところまで買い物に行ったことを思い出します。2人目を連れて行ったのは3年後のことです。あと、幼稚園でのべ6人のお友達をかみました!(一度にじゃないですよ)自分は人様に迷惑をかけたこともないし、謝ったこともなく、子どものためにどれだけ頭を下げまくったか…(遠い目…)。そんな子どもたちも、まだまだ特性がありますが、もう自立できる歳になりました。まだ、3人目が中学生、3人ともそれぞれ違う特性で、いろいろ私にたくさんの経験をさせてくれました。いい思い出とは言えませんが、20年以上たつと親もあきらめることができるようになります(笑)(ゆうママさん)3人のお子さんそれぞれの特性に違いがあり、癇癪だけではなく他害にも悩まれたというゆうママさん。乗り越えられてきた数々の苦労も、いまは思い出となり、お子さんたちも自立できる年齢まで成長されたとのこと。現在進行形で悩んでいらっしゃる方々の励みにもなるエピソードをありがとうございました!発達ナビライターのかなしろにゃんこ。さんの息子・リュウ太くんも、中学生のころまで癇癪が激しかったそうです。そんな「怒りモード」を鎮めるために、リュウ太くん本人が考え出したイライラとの向き合い方とは…?「自分のお金で」ゲームができず癇癪!息子が小3のとき、アーケードゲームをやりたくて自分のお財布を持って行ったはずが、お財布を家に忘れてきてしまいました。「お金貸してあげるから」と、私がお金を出してゲームをやり、一件落着…のはずだったのですが、食料品売り場で買い物をしようとしたら、どうも息子の様子が怪しい。仕方なく買い物を諦めて帰ろうとしたら、暴れながら私の服を掴んで何度も連れ戻すので、大急ぎで買い物をして車に乗り込みました。そこから家までの10分余り、息子は車の中で全力で泣き叫び、私はうるさくて耳が痛い中、とにかく事故を起こさないように必死でした。家に帰ったら、今度は走って家から逃げるし。自分のお金でゲームをしたかったのに、それができなかったこと、買い物をするはずなのに、買い物をせずに帰ろうとしたことが、自分の予定と違っちゃったんでしょうね。その後もゲームセンターへ行くのに忘れ物をして、何度かパニックになったりしましたが、徐々に自分で折り合いをつけられるようになりました。(なまちゃんさん)自分の予定や見通しがかなわなかったことでパニック、癇癪に繋がってしまった、なまちゃんさんの息子さん。少しずつ折り合いをつけられるようになってきたとのこと、良かったですね。発達ナビライターのウチノコさんの息子、ADHDと自閉スペクトラム症のあるむっくんも、小さなころから今から何をするのか分からない状況や急な予定変更が苦手でした。しかし、「見通し」を伝えることを学んでからはずいぶんと過ごしやすくなったそうです。おわりにわが子の癇癪に「困った!」となってしまう場面にも、子どもなりの理由を理解しながら対処されている保護者のみなさまに、頭が下がるエピソードばかりでした!ご紹介したエピソードの中に、みなさんも、共感したり気づいたりしたことがあったのではないでしょうか。大賞に選ばれた5人の方々には、人気エッセイ本をプレゼントいたします。どうぞお楽しみに!発達ナビでは、これからもみなさんに楽しんでいただけるような企画をしていきたいと思っています。次回の発達ナビ大賞もどうぞご期待ください!コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月01日ダウン症とは?特徴や種類についてダウン症は正式名称を「ダウン症候群」といい、染色体異常による疾患の一つです。21番目の染色体が1本多く、3本あるために起こるので「21トリソミー」(トリ=3の意味)とも呼ばれます。染色体異常による疾患のなかで最も多く、約700人に1人の割合でダウン症のある赤ちゃんが生まれています。ダウン症があると、個人差はありますが、一般的には身体、精神(知的)の発達の遅れがみられます。ダウン症のある人は、両目の間が広く見え、少しつり目で鼻が低め、という顔立ちが特徴です。これは顔の中心部の骨が周囲の骨よりゆっくりしたスピードで発達するからだといわれています。また、筋緊張低下のため、力が弱いことが多いです。ダウン症がある新生児の約50%に先天性心疾患、約60%に先天性白内障、斜視などの眼の障害がみられます。ほかにも消化管や耳の疾患にかかる頻度も高めです。ダウン症は大きく分けると3つのタイプがあります。全体の約95%を占めるのが「標準型」です。受精前の卵子や精子が減数分裂するとき、均等に分かれなかったことが原因で起こる偶発的な事象です。両親の染色体には異常がないことがほとんどで、誰にでも可能性があるといえます。約4~5%を占めるのが、染色体の一部が他の染色体に結合することで起こる「転座型」。(保因者である)両親どちらか一方の21番染色体が、ほかの染色体に結合していることが原因です。もっとも少ないタイプが「モザイク型」で全体の約1~3%以下といわれています。受精後の細胞分裂で染色体が分かれなかったことが原因で発症します。正常な細胞と1本多い細胞が混在しているのが特徴で、正常な細胞が多いときは、ダウン症としての症状が軽くなります。参考:21トリソミーのある方のくらし|厚生労働省ダウン症がある人の児童期の成長と青年期以降・ダウン症のある子どもの新生児、乳幼児期ダウン症がある赤ちゃんは、母乳やミルクを吸って飲むのが難しいことがあります。これは筋緊張低下や舌が大きく口が小さいことが理由です。力が弱いためにおとなしく、泣くこともあまりないので、空腹に気づきにくい場合があります。こまめに体調をチェックしてあげましょう。また、ダウン症があると、以下のような合併症が起こりやすいといわれています。先天性心疾患(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など)消化管疾患(鎖肛、十二指腸閉鎖など)眼疾患(白内障、斜視など)耳鼻疾患(難聴、滲出性中耳炎など)血液の疾患(一過性骨髄増殖症など)内分泌・代謝疾患(甲状腺機能異常、肥満、糖尿病など)整形外科疾患(環軸椎亜脱臼、外反扁平足など)神経疾患(点頭てんかんなど)精神発達遅延自閉スペクトラム症・ダウン症のある子どもの未就学時期ダウン症のある子どもは身体・精神(知的)発達が遅いので、周囲に比べてのんびりしています。言葉が出るのもゆっくりです。赤ちゃんのころにはあまり気にならなかった周囲との発達の差は、成長にしたがって大きくなります。個人差はありますが、知的障害は軽度から重度までさまざまあり、平均的なIQは50といわれています。発達は遅めですが、幼児になると自我が目覚め、こだわりや意思の強さが見られることがあります。発達や合併症とは異なる大変さがありますが、なるべく子どもの気持ちを尊重してあげましょう。また、合併症には引き続き注意が必要です。早期発見・早期治療のためにも定期的に診察を受けましょう。・ダウン症のある子どもの学童期小学校は通常学級に通う子どもも、特別支援学級や特別支援学校を選択する子どももいます。通常学級の場合、ダウン症がある子どもは知的障害や難聴などのため、授業についていくのが難しくなることがあります。そのため、中学、高校では、特別支援学級や特別支援学校に進むケースが多いです。また、小児期には多動や自閉的行動を示す場合がしばしばみられます。学童期においても、合併症の定期的な診察は大切です。特に入学など環境の変化により、大きなストレスを感じていることもあります。学校を卒業して作業所などに通うようになると、これまでの生活がガラッと変わります。すると「これまでできていたことができなくなる」「動作が緩慢になる」「笑顔がなくなる」「言葉が少なくなる」「眠れなくなる」など、運動・生活能力が急激に低下することがあります。これは、大きく変わった環境に不安と緊張があるためと考えられます。そんなときは、家族や作業所の支援員など周囲の人のフォローが大切です。できなくなったことを責めたり、どうしてできないの?などと聞いたりするのはやめましょう。まずは、今できていることや分かることを尊重しましょう。できなくなったことを一気に取り戻すのではなく、徐々にゆっくり取り組んでいくことで、少しずつ回復できるといわれています。不安や緊張が大きい場合は、抗うつ剤や睡眠導入剤などを服用する治療が有効なことがあるので、主治医と相談してください。できなくなったことが再びできるようになるまで、数年かかることもあります。焦らず気長に取り組みましょう。ダウン症がある人は、一般的に30歳代後半から運動能力が低下し始め、40歳代からは筋力や持久力も低下するといわれています。また、知的能力のピークは20〜30歳で、以降は徐々に低下するといわれています。40歳をすぎると急激に低下することが多く、「言葉を発しない」「コミュニケーションがとれない」「体を動かすことを嫌がる」「自制が効かない」など、アルツハイマー型認知症に似た症状が出ることがあります。なかには、てんかん発作や妄想などが出てくることもあります。ただし、初期症状の段階で「認知症だ」と決めつけることはできません。白内障などで目が見えにくくなっていたり、耳が聞こえにくくなっていたり、甲状腺機能低下で体を動かすのがつらかったりする場合があります。病状を正しく見極めるために、成人してからも定期的に健診を受けることが大切です。ダウン症は老化が早い?認知症や早老症との関連性ダウン症は早老症の代表的な疾患の一つです。早老症は「早期老化症」とも呼ばれ、実際の年齢よりも早く、全身の老化が急激に進みます。代表的な見た目の老化には、次のようなものがあります。・白髪、脱毛・尖った鼻(鳥のような顔つき)・小顔(上顎より下顎が小さくなる)・音声の異常(高音域がかすれる)・両手、両足の皮膚の萎縮、硬化・アキレス腱などの石灰化ダウン症のある人が早老症を発症するのは、21番染色体トリソミーが原因と考えられていますが、発症するメカニズムなどは、まだ解明されていません。ダウン症がある人は、40歳をすぎると認知症を発症しやすいといわれています。また、その中でもダウン症がある人は、アルツハイマー型認知症の発症率が高いことも分かっています。これは、ダウン症がある人は、アルツハイマー型認知症の原因物質のひとつと考えられているアミロイドβを産生する遺伝子が過剰にあるため、よく似た症状が出現するためです。ダウン症がある人が認知症を発症したときは、次のような症状があらわれます。・時間や季節、場所、人間関係が分からなくなる(見当識障害)・運動能力が低下し、転びやすくなる・細かい手作業(ボタンを留める、箸を使うなど)ができなくなるまた、これまでできていたことが急にできなくなった、言葉が出ない、なども初期症状と考えられます。変化に気づいたら、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。ダウン症に伴う早老症は、完全に治す方法や予防法はまだ見つかっていません。症状に合わせた対症療法が主に行われます。聴力低下や白内障など一般の高齢者と同じ対応をします。ダウン症の成人期以降の課題甲状腺機能異常や糖尿病などのダウン症の合併症は、成人期以降にも発症することがあります。新生児から学童期までの医療体制は以前から確立されている一方、20歳代以降、成人期の医療体制は十分だとはいえないのが現状です。合併症や認知症の早期発見、早期治療、対応のためにも、住んでいる地域で十分な医療体制を整えることが急務です。ダウン症のある人が障害や合併症と上手につきあっていくためにかつては20歳を超えないといわれていたダウン症の平均寿命は、現在約60歳といわれています。代表的な合併症である先天性の心疾患や消化器疾患の治療が確立し、この20~30年で平均寿命は飛躍的に伸びました。また、現在、日本には約8万人のダウン症のある人がいると推測されていて、過半数以上は成人していると考えられます。ダウン症のある人が、障害や合併症と上手につきあっていくためには、定期的な健診が欠かせません。また、平均寿命が伸びたことで「親なきあと」も、安心・安全に暮らせるバックアップ体制も重要です。学校を卒業してからも切れ目のない医療体制、支援体制の充実を啓発していくことが必要とされています。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月28日好きなことを楽しめるように次女は幼少期から、工作したり絵を描いたりすることが大好きでした。Upload By まりまりただ、家で親の手伝いのもと実施するのはどうしても限界が…。2年生のときに、本人に、工作したり絵を描いたりできるようなアートスクールに行ってみてはどうかと聞いてみたところ、「行ってみたい!」とポジティブな返答がありました。そこで、次女に合っていそうな、少人数で、かつ自分のペースでできるようなところを探しました。見学・体験して長女と一緒に通うことにこのとき4年生だった長女も興味を示してくれたので、2年生の次女と一緒に見学・体験してみることに。子どもたちが10人弱で先生が2人という少ない人数だったうえ、ほとんど話さなくても何とかなる状況で、次女にとって負担が少なく楽しめた様子。Upload By まりまり長女も楽しめたようで、2人一緒に同じところに通うこととなりました。長女が辞めてしまって、次女も辞めたがった1年少し通ったころ、長女が「辞めたい」と言い始めました。最初のころのように楽しめなくなったとのことで本人の決心は固く、長女はそこで辞めることに。ただ、次女は、長女が休むときは一緒に休んで一人で行くことは全く無く、一緒だったから通えていたという部分が大きかったので、次女も辞めると言い出しそうで心配していたら、案の定「私も辞める」と言い始めました…。Upload By まりまり好きなことは続けて欲しい次女に詳しく話を聞いてみました。すると、次女は「作ったり描いたりするのは好き」「アートスクールは楽しい」けど、「先生と話ができない」「一人で行くのは不安」との話でした。Upload By まりまりせっかく好きで楽しく通えているので、長女が辞めてしまったとか話せないという環境のせいで辞めてほしくないというのが私の気持ちでした。今の次女なら一人でも行けそうきっと、通い始めのころだったら次女の不安もかなり強かったと思います。ただ、すでに通い始めてから1年以上経過しており、アートスクールの担当の先生もずっと変わらない。さらに、このときは3年生の3学期で、次女自身も成長し、学校での生活も順調に過ごせていて安定している…。今なら少し頑張ったら一人で行けそうだと思いました。次女は漠然とした不安感のことが多いので、具体的に、「今のあなたなら一人で行けそう」という上記の理由を話して、何かあったときは電話してもらえればすぐに駆けつけることを保証して少し無理やり送り出したのでした。Upload By まりまりそれから…迎えに行ったら、いつも通りに過ごせたようで、変わらない様子で帰ってきました…!行ってみて「一人でも大丈夫そう」と感じたようで、その後も一人で通っています。アートスクールに通い始めてから、今年で3年過ぎました。この習い事に関しては、「できるようになる」とか「役に立つ」と考えて始めたのではなく、「楽しめる」のを一番の目的にしたので、次女には負担が無くて継続できたのではないかと思いました。これからも、次女が楽しめる限り、続けていってくれたらいいなと思っています。執筆/まりまり(監修:新美先生より)場面緘黙のある方は、不安を抱きやすいことが多く、環境に慣れるのに時間がかかる場合もあります。話すことができないために、突発的なことが起きたときに困るかもしれないという不安もありますね。今回聞かせていただいたエピソードでは、1年間お姉ちゃんと一緒に通って場に慣れて、ご本人も安定した状態だったのでスムーズに一人で通うことができるようになったというお話でした。一人で通えることで自信もついたことでしょうね。特性によって楽しいことを楽しめる場が制限されるのは残念なので、今回伺ったエピソードでは「お姉ちゃんと一緒に1年間」ということでしたが、例えばお母さんが付き添いをして半年通って、慣れたら付き添いをやめるなどと応用できそうなエピソードかと思いました。ありがとうございました。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月28日神奈川県児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報既存の教材だけでなくTEACCHメソッドなども用いて子どもの特性に応じた支援を行っています。また、ABAメソッドに沿って、ちょっと難しいことでも一緒にトライすることで目標達成できる経験を積めるようにしています。施設のスタッフは、それぞれの専門的な知識や経験を共有し合うよう努めており、さまざまな意見や経験を統合してより良い支援環境を作っています。そして子ども自身の力で思っていることを表現でき、豊かな心をはぐくんで笑顔を増やせるよう、スタッフ一丸となって子どもの支援に携わっています。神奈川県の児童発達支援をもっとみる千葉県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報言葉のにわ-宝-では、集団をメインとし、個別・小集団のプログラムを状況に応じて提供しています。そのほかにもロボットプログラミング、国家資格キャリアコンサルタントによるソーシャルスキルトレーニング、理科実験室、心理職による造形指導・DTPデザイン作成、パソコン教室、学習支援を提供しています。言語聴覚士をはじめ、保育所等に出張可能な言葉支援のプロの資格取得を義務づけています。自ら学ぶ力、提案する力を遊びや支援を通して育み、さまざまな専門性のスタッフが、一人ひとりのお子さんに寄り添い支援を行います。千葉県の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報2023年4月にオープンのグッドフレンズグループが運営する新しい施設です。今回オープンするLe Periでは、大阪市でも数少ない言語聴覚士、作業療法士、理学療法士による専門的な支援が可能です。子どもの日常生活における「苦手」を「できた!」に変えるサポートを行います。もちろん専門支援だけではなく、日々の支援にも力を入れており、集団での関わりを通し、基本的生活習慣や社会性を育てています。制作・運動・プログラミング・クッキング・外出支援と楽しみながらさまざまな体験の積み重ねができます。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報Le Peri(ルペリ)は”LePetitPriece”と”peri”を合わせた造語です。「いちばんたいせつなことは、目に見えない」子どもたちとかけがえのない時間を共に過ごし、絆を結んでいきます。集団支援では、さまざまな体験を通して興味関心の幅を広げ、子どもの新たな発見のきっかけづくりを行います。園とは違った環境だからこそできる様々な体験を提供し、一人ひとりに沿ったサポートをしています。PT・OT・STによる個別支援で日常生活スキルのサポートも行い、専門的な角度から子どものサポートを行います。大阪府の児童発達支援をもっとみる福岡県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報『就労準備型』のコンセプトで令和4年9月1日にオープンしました。プログラミングの基本概念が支援に効果的なため、カリキュラムの中に取り入れています。まず、パソコンやタブレットを使ったスクラッチをベースにプログラミング。もう一つは、ブロックを利用して組み立てることと、それを使って重さを測ったり重さ比べなどしたりして作ったものの活用まで行います。個別指導を実現するために1人1台のパソコンを準備し、集中しやすい個別ブースを設けています。集団でも行えるカリキュラムの場合は集団で授業を行っています。福岡県の放課後等デイサービスをもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2023年02月27日「ひきこもり」の相談先、支援、脱出方法やニートとの違いなどよくある質問を整理しましたひきこもりとは「社会との交流をほとんどしないで家庭に6ヶ月以上の長期間ひきこもっている状態のこと」と定義されています。今回は・ひきこもりの相談先・当事者や家族への支援・ひきこもりの脱出ステップや家族がひきこもりの場合の対処法・ひきこもりとニートの違いなど、ひきこもりについてよくある質問をまとめてみました。Q.わが子のひきこもりに悩んでいます。どこに相談をすればいいですか?A.ひきこもりの相談先は主に「公的な相談機関」「医療機関」に分かれます。家庭内暴力などに困っている場合には家族内での解決が困難な場合もありますので、まずはこれらの機関に相談することをおすすめします。ひきこもりが長期化すると、「ひきこもりは家族の問題」「できるだけ他人に知られたくない」「一度相談に行ったが十分な対応が得られなかった」「相談にいっても解決しない」など家族で問題を抱え込んでしまうことが多くなります。日本社会に根強い「世間の目を気にする」「家のことは家族で解決する」という文化が、背景にあると考えられますが、そういった家族の気持ちが一層本人を追い詰めてしまうこともあります。また、ひきこもりはときに家庭内暴力や家族内での対立を生む場合もあります。誰にも言えずに家族だけで解決しようとすると、長期化することで周りの家族にとっても大きな精神的なストレスになります。特に暴力については、早期の相談が大切です。ひきこもりの支援は長期になることもあります。その場合もあきらめず相談機関につながり続けていただくことで、複数の支援機関がネットワーク的に連携しながら見守り、タイミングを待つこともできます。ご家族や本人が相談機関につながり続けることが解決に向けて重要なポイントになります。地域の相談支援を行っている機関をご紹介します。電話での相談を行っている場合もありますので、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。ひきこもり地域支援センター…ひきこもりに特化した専門的な第一次相談窓口としての機能を有するのが「ひきこもり地域支援センター」です。センターには社会福祉士、精神保健福祉士、心理士(公認心理師・臨床心理士)などがひきこもり支援コーディネーターとして配置されます。相談支援や訪問支援を早期に行うことで、適切な支援につながることを目的にした施設です。参考:ひきこもり対策推進事業|厚生労働省参考:全国ひきこもり地域支援センター設置状況|厚生労働省精神保健福祉センター…精神保健福祉全般にわたる相談を行っています。こころの健康についての相談、精神科医療についての相談などとともに、ひきこもりなど思春期・青年期問題の相談も可能です。電話や面接で相談できますが、事前の予約が必要なこともあるのでホームページなどで確認しましょう。参考:全国の精神保健福祉センター一覧保健所…地域の保健所でひきこもりの相談支援を行っている場合があります。電話相談、面談による相談があり、保健師、医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれます。また、相談者の要望によっては、保健師に家を訪問して相談してくれる場合もあります。参考:保健所管轄区域案内|厚生労働省そのほか、児童相談所、福祉事務所、発達障害者支援センターなどの福祉機関などに相談してもよいでしょう。こころの問題や身体症状が強く出ている場合など、精神科、心療内科、小児科などの医療機関に相談しましょう。心理カウンセリングを行っているところもあります。本人が受診を拒む場合や外出できないときには、まずは家族の相談を受け入れてくれる医療機関を探すとよいでしょう。ひきこもり状態の1~2割に家庭内暴力が伴うことがあると言われています。本人への遠慮や周りへの相談のしにくさからから容認してしまったり、第三者の介入を避けたくなることもあるかもしれませんが、密室化してしまうことが最も解決を困難にします。家庭内暴力への対処は「開示・通報・避難」を基本とします。家族だからこそ対処が難しい場合がありますので、ひきこもり地域支援センターなどの専門機関に相談することもおすすめします。就学年齢にある子どもの場合、ひきこもりになるきっかけとして、不登校との関連があると考えられています。不登校で、自宅以外の場所での活動がないまま6ヶ月以上家から出ない状況が続くと、ひきこもりへと移行する場合があります。もしひきこもり状態が生じた場合は、一人ひとりに合った対応をすることが重要になってきます。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンQ.ひきこもり当事者や家族へは、どんな支援がありますか?A.ひきこもりの段階で支援は変わります。その状況により「家族支援」「個人療法」「集団療法」「社会復帰に向けた就労支援」などさまざまな支援の形があります。ひきこもり支援のゴールとは、ひきこもり状態を抜け出し社会参加ができるようになることです。目標とする社会参加とは、働くことであったり、家の外に親密な対人関係を持つことだったり、居場所をつくることだったり、さまざまです。ひきこもりの段階で支援は変わります。その過程は人によって異なりますが、「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」で紹介されているような支援ステップを踏むことが多いようです。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンひきこもりの支援は多くの場合、家族の相談からスタートします。ひきこもりの支援が始まるこの時期、まずは相談に来た家族への支援や、本人がどのような状況にあり、どのような支援が必要かのアセスメントが行われます。家族の面談や、訪問支援などを通して、必要な支援を探り、関係機関との連携などが行われます。まずは家族が相談機関に定期的に相談を続けることが第一歩となります。当事者本人が支援を受けられる状態になると、個人的な心の支援が始まります。本人が相談に行ったり、本人への訪問支援を受け入れたり、精神科などでの治療やカウンセリングを受けたりといった段階です。具体的な個人療法についてはケースや技法によってさまざまですが、当事者の抱える罪悪感や孤立感によりそい、支援を受けようと動き出した本人の気持ちを支えることを基本とします。次のステップはグループでの活動です。精神保健機関や医療機関での集団精神療法やデイ・ケアなどの利用、フリースクールやフリ―スペースなどで家族以外の人と接します。ひきこもりの当事者の中には同世代の人とのコミュニケーションが苦手な人もいます。まずは同じ悩みを持つひきこもりの人と接することがよいトレーニングになることもあります。また、これらの場が居場所として機能します。グループでの活動をするうち、就労したい・外出して活動したいという気持ちが芽生える場合があります。そのような場合には就労支援などの社会参加にむけた支援が始まります。就労支援としてはハローワークをはじめ、地域若者サポートステーション、ジョブカフェ、ヤングワークプラザ、学生職業総合支援センター、職業訓練校などが挙げられます。具体的に就労を検討するのであれば、一般のアルバイトのほか、就労継続支援(A型・B型)(※)などの福祉サービスも利用できます。就労継続支援は、一般企業で働くことは難しいものの、一定の支援があれば継続して働くことができる方に働く場を提供するサービスです。体調や特性に理解のある職場スタッフのサポートの下で働くことができ、賃金をもらいながら人間関係も構築することができます。ネットを利用した在宅就業なども最近では増えてきています。また、いずれ一般企業への就労を目指したい場合には就労移行支援という福祉サービスも用意されています。ビジネスマナーやコミュニケーショントレーニングといった働くための基礎知識や能力を身につける職業訓練、職場探しや就職活動の支援など、就労移行支援事業所に通うことで、就職まで一貫してサポートしてくれるサービスです。※就労継続支援(A型・B型)や就労移行支援は障害者総合支援法に基づくサービスですが、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。まずは市区町村の障害福祉窓口に相談に行ってみてください。参考:LITALICO仕事ナビ全国の就労移行支援事業所Upload By マンガで分かる発達障害のキホンQ.ひきこもりから脱出するステップは?家族がひきこもりになったときの対処法A.家族がひきこもりになった場合には、まずは本人の気持ちを理解する、その次に安心して過ごせる環境を作る、など段階を踏んでサポートすることがよいと言われています。また、家族もストレスをため込まないように息抜きなどをすることも重要です。親や家族は誤解しやすいのですが、本人は「怠けたいから」「働きたくないから」ひきこもっているのではありません。むしろ「ひきこもりをやめたいのにできない」と悩み、家族に対しても申し訳なさや引け目を感じています。そうした気持ちを理解することが大切です。ゲームをずっとしている、散らかった部屋で昼夜逆転の生活をしているといった状況は、家族にとっては不安を感じ、注意してやめさせたくなるかもしれません。ですが「家から出す」ために無理やり学校や職場に連れ出したりすることは、逆効果になることがあります。本人にとって、家の中での家族とのつながりさえなくなると、社会とのつながりが完全に断絶されることになるのです。家族との対立や口論などが続くと、家族とさえ話せない孤立した状況を生み出します。昼夜逆転の生活も、家族と顔を合わせたくないという理由から引き起こされる場合もあります。まずは家を居心地の良い、安全に過ごすことができる環境にすることが、初期の段階での重要なサポートとなります。自分の身の回りのこと以外に家族のためのなんらかの役割を担ってもらう、例えばペットの世話、プランターの水やり、玄関の掃除など家庭内で決められた仕事をこなし、それを家族が認めていくことで本人の自己肯定感や家族のコミュニケーションの改善に役立ちます。ひきこもりの原因は親や家族のせいではありません。ですが、「世間の目」が気になる家族の方も少なくないでしょう。家族の方の中には自分を責め、子どもがひきこもり状態の場合は「子どもがひきこもっているのに…」と自分の楽しみや外出を控える方もいるようです。また、親子が家に閉じこもり、子どもが保護者に頼り切ることで「共依存」という依存関係に陥ることもあります。そのような事態を避けるためにも相談機関に相談したり、家族自身がストレスをため込まないように息抜きをしたりしましょう。本人に社会との接点を持つモデルを見せるためにも、家族で閉じこもらないことが重要です。成人している方の場合、相談機関の受診・診断を経て、精神疾患や発達障害などがあれば、障害年金を受給できる可能性があります。年金の受給によって家族の負担が減るだけではなく、本人が家族に小遣いをねだる場合の葛藤やトラブルも減らすことができると考えられます。お小遣いを渡すと際限なく要求するのではないか、特に大人の場合、ギャンブルなどにつぎ込むのではないかと心配する家族の方もいるかもしれません。お小遣いを渡す場合、事前にルールを決めることも重要です。お小遣いは、十分に与えるということに関して、家庭の状況や本人が何に使うかによって額は変わります。またルールを決めたあとは、お小遣いの使途については本人に任せ、家族は口出ししないことも大切です。お小遣いをねだられる場合、家族としてはなかなか受け入れがたい状況かもしれません。ですが、お店に行って買い物をすることも社会参加の一つです。お金を使う機会を持つことは、外とのつながりを保つためにも重要です。お金のことで暴力などが起こってしまう場合は、抱え込まずに早めに相談機関に連絡、相談をしていくことが大切です。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンQ.ひきこもりとニートの違いとは?A.ひきこもりは、社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、6ヶ月以上にわたって家庭内にとどまっている状態を指しますが、ニートは社会的参加はあるものの、働いていない(働く意思がない、働けない事情がある)状態を指します。厚生労働省は、ニートの定義を以下としています。ニートとは15~34歳の非労働力(仕事をしていない、また失業者として求職活動をしていない者)のうち、主に通学でも、主に家事でもない独身者引用:ニートの状態にある若年者の実態及び 支援策に関する調査研究 報告書|厚生労働省高校進学率が非常に高い日本では、高校在学年齢でのニートの状態にある若者は少ないですが、高校卒業以降では、若いほどニート状態になりやすい傾向があると言われています。「ご家族が相談にいくこと」がひきこもりの解決への第一歩になります「ひきこもりは家族の問題」「できるだけ他人に知られたくない」「一度相談に行ったが十分な対応が得られなかった」「相談に行っても解決しない」など家庭で抱え込むことで、長期化したり、状況の悪化につながる場合もあります。家庭内だけで解決しようとせず、早期に専門機関などへ相談しましょう。周りの支援を受けながら、ひきこもりを抜け出す方法を一緒に考えていきましょう。イラスト/taekoコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月26日ひきこもりとは?ひきこもりとは、長い期間社会活動に参加せず、自宅などに閉じこもり続ける状態像を示す言葉です。厚生労働省より公表されている「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、原則的には6ヶ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている場合としてひきこもりの定義がなされています。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンひきこもりに至った理由や要因は人によってさまざまですが、上記のガイドラインによる定義では、統合失調症などの精神疾患によって家にこもっている状態とは区別されています。ただし実際には確定診断がなされる前の統合失調症などの精神疾患や発達障害がある人が含まれている可能性もあると考えられています。ひきこもりによって社会参加の回避が長期化すると、社会生活への復帰のハードルも高くなってしまいます。ご両親だけでなくご本人も大きな不安を抱えている場合もあります。しかし、社会の偏見や無理解、近所の目や、家族内の意見相違があることも少なくないといわれています。そのため支援を受けられずに家庭内で解決しようとするあまり、状況がさらに長期化し解決が難しくなる場合があるのです。平成25(2013)年の15~34歳(若年層)を対象にした調査によると、日本には推計でほとんど家からでないひきこもり状態にある人が約23.6万人、自分の用事のときだけ外出する準ひきこもり状態の人が約46.0万人、合わせて約69.6万人もの人が広義のひきこもり状態にあるそうです。平成30(2018)年には満40歳から満64歳(中高年層)を対象にした調査が行われ、ひきこもりの推計数は61.3万人であることが分かりました。若年層と中高年層を合わせると約115万人がひきこもりの状況であると推測されます。この事態を受け、厚生労働省をはじめ、行政もひきこもりへの支援を推進しています。Upload By マンガで分かる発達障害のキホン参考:『ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン』|厚生労働省参考:平成26年版子ども・若者白書(全体版)|内閣府Upload By マンガで分かる発達障害のキホンひきこもりの原因単純に本人の性格や甘え、子育てのせいと結びつけられがちですが、ひきこもりのきっかけや要因はさまざまです。『平成26年版子ども・若者白書(全体版)』による調査では、病気や仕事・学業でのつまずきがきっかけとして多いことが分かります。Upload By マンガで分かる発達障害のキホン子どもは成長するに従い、自立とスキルを求められるようになります。他者と折り合いをつけ、円滑にコミュニケーションをとることや、勉強や将来に向けての進学・就職に成功することなど。それらのさまざまなプレッシャーのなかで、外=社会での居場所を失い外に出られなくなった場合、家の中にひきこもらざるを得なくなってしまうことがあるのです。つまり、誰でもひきこもりになる可能性はあるということです。きっかけとして多いのは、いじめや人間関係がうまくいかないこと、成績の低下や受験・就職活動の失敗などの経験が挙げられますが、きっかけがよく分からない場合も少なくありません。一つの原因だけでなく、複数の要因が複雑に関係しているケースもみられます。不登校が長期化してひきこもりになることもあります。最近は、背景に発達障害が関係していることもあるという報告もあります。参考:令和元年版子供・若者白書(概要版) > 特集2長期化するひきこもりの実態|内閣府ASD(自閉スペクトラム症)を背景とする場合、他者の意図や会話を理解したり、状況をくみ取ることが苦手なために、違和感や被害感など抱きやすく、社会参加や他者と関わることに対する不安や恐怖を感じてしまうことがあります。また生活習慣を変えることや、予期せぬ事態に直面することへの抵抗感が強いことも関連して、ひきこもりが長期化する場合があることが分かっています。家族としては、どうしても「なぜひきこもりになったのか」が気になり、突き止めたくなるでしょう。ですが、「どうしてひきこもりになったのか」「何のせいでひきこもっているのか」と原因探しをすることは、ひきこもり状態の解決にはあまり意味がないかもしれません。ひきこもりの解決のためには「なった要因」よりも「ひきこもり状態からどうたら抜け出せるのか」を考え、支援する必要があるといわれています。ひきこもりと精神疾患の関係は?定義上ではひきこもりは精神疾患が原因ではありません。ですが、ひきこもり状態の中には、精神疾患と何らかの関連がある場合も考えられます。この場合、いくらひきこもりを脱しようと頑張っても、根本にある精神疾患の治療や支援をしないと、解決できないことがあります。そこで、ひきこもり状態の裏になんらかの精神疾患や障害が隠れていないかどうか注意することが非常に重要です。精神疾患とひきこもり状態の関係にはいくつかのパターンが考えられます。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンひきこもりの人の中には、精神疾患の症状のために家から出られないのに、そのことに気づかず、見過ごされている状態の人も少なからずいるのではないかと考えられています。つまり、『精神疾患からひきこもり状態をひき起こしているが未診断』という状態です。不安障害や統合失調症、双極性障害、うつ病などの症状とひきこもりとの関連が指摘されています。精神疾患の診断がある場合、それ自体の治療が必要な場合もあります。これらの症状がある場合は早めに精神科の受診を検討しましょう。なかでも統合失調症は鑑別が難しい精神疾患です。統合失調症の陰性症状は、エネルギーが下がった状態で起こる症状です。主な症状としては、うつ状態になることと、感情の起伏が少なくなることの2つがあります。陰性症状が進むにつれてほかの人とのコミュニケーションが難しくなり、ひきこもり状態になることがあります。この状態を単なるひきこもりと誤解されてしまうことがあります。統合失調症の主な症状としては、幻覚や妄想、幻聴なども挙げられます。これらの様子が見られる際には、精神科の受診をおすすめします。ただし、引きこもり状態でも妄想などがあらわれる場合もありますので、統合失調症かどうかは医師による慎重な判断が必要です。参考:知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス|厚生労働強迫性障害とは、強い「不安」や「こだわり」によって日常に支障が出る病気です。自分でもささいなことだと分かっていても何度も確認を繰り返し、日常生活に支障が出てきてしまいます。例えば「戸締まりを何度も確認してしまう」「不潔に思い、手を何回も過剰に洗ってしまう」などです。世界保健機関(World Health Organization:WHO)の報告では、生活上の機能障害をひきおこす10大疾患の一つにあげられています。もともとの強迫性障害が原因で外出などが困難になり、ひきこもりにつながる場合もあります。例えば「自分は酷いことを周りの人にしてしまうかもしれない」などの強い思い込み(強迫観念)により外出が困難になる場合などです。また、ひきこもり状態から強迫性障害が生じる場合があります。強迫性障害には薬物療法と認知行動療法などの併用が回復には有効だといわれています。参考:強迫性障害|みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)参考:「ひきこもり」対応ガイドライン(最終版)の作成・通知について|厚生労働省精神疾患の症状から、人間関係のトラブルや強いストレスをひき起こし、二次的な障害としてひきこもり状態になる場合もあります。近年、発達障害とひきこもりの因果関係が指摘されることが多くあります。発達障害のある人が特性を理解されないまま不適切な環境にいることで、環境との不適応を起こし、二次障害としてひきこもり状態になる場合が少なくないのです。ASD(自閉スペクトラム症)のある人はコミュニケーションの困難のため思春期以降、複雑化する学校生活や人間関係などがうまくいかず、ひきこもり状態になる場合があります。また感覚過敏がある場合も多いため、学校生活でのさまざまな音やにおい、刺激などへの対応に困難を感じ、次第に登校しにくくなることがひきこもり状態につながることもあります。ADHD(注意欠如・多動症)のある人も、不注意や衝動性といった特性が社会適応を困難にしたり、叱責を受けてしまうことで自己肯定感が低くなってしまうことが、引きこもりにつながることがあるといわれています。また、LD(学習障害/限局性学習症)のある人は、学習でのつまずきによって学校に行きたくないと感じてしまったり、自己肯定感の低下を引き起こすことでひきこもりにつながる場合があります。発達障害の根本的な治療法は現代の医学では確立していませんが、周りの理解や環境調整、スキルトレーニングなどによって困りごとが軽減するといわれています。それらの適切な対応をすることで、二次障害としてのひきこもり状態になることを予防したり、ひきこもり状態から早期に抜け出せるようにすることができるかもしれません。また、ひきこもりの状態にある人の中にも、その背景に発達障害が隠れていることに気がついていない人も一定数いると考えられます。発達障害がある場合、さまざまな社会的支援が受けられる場合もあります。幼少期の生育歴などに発達障害に該当する様子がなかったかなど、一度専門機関に相談してみるとよいでしょう。参考:ひきこもりと発達障害|星野仁彦長期間にわたるひきこもり状態や孤立から、しばしば二次障害的に精神疾患の症状が出現することもあります。ひきこもり状態にある人のなかには、引きこもりをやめたいのにやめられなかったり、家族とぶつかったり、近所の人の目を気にしたりなど、「ひきこもっていること」そのものに対して強いストレスを感じている場合があります。これらが心身に影響を及ぼし、対人恐怖症状や強迫症状、被害念慮(妄想)、うつ状態などがあらわることがあり、しばしばそれらがひきこもりから抜け出すことをより困難にすることがあります。しかし、家庭の中だけで解決することは難しいことが多いため、早期に専門機関に相談することが重要です。参考:第1章ひきこもりの心理状態への理解と対応 斎藤環(爽風会佐々木病院診療部長)|内閣府イラスト/taekoコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月25日3歳で気づいた周りの子どもたちとの差わが家の小6の息子は、6歳のときにADHD(注意欠如・多動症)の診断がおりました。息子は1歳から保育園に通っていました。自分の興味がないことはやりたがらず、特にダンスや体育などみんなでやることが嫌いで参加しようとしませんでした。また、切り替えの苦手さもあり、好きなことを始めたらやめることができない、片づけなどをダラダラしてやらない、保育園に迎えに行っても遊びに夢中でまったく帰ろうとしない…といったこともありました。私が同年代の子どもたちとの差に驚いたのは、年少の遠足のときです。出発前にクラスのみんなはきちんと並んで先生の話を聞いているのに、息子だけ脱走して遊具で遊び始めてしまい、じっと話を聞くことができませんでした。それまでは、「男の子だし、3歳だし、こんなものなのかな」と思っていたのですが…。Upload By ユーザー体験談「自閉症の可能性」から「ADHD」と診断されて3歳児健診では特に指摘は受けませんでしたが、保育園でのクラスメートとの違いにショックを受けた私は「早いうちに発達支援を受けさせたほうがいい」と思うようになり、保健センターに相談しました。そして、心理士さんに心理検査をしてもらいました。数値的には気になる点はないとのことでしたが、飽きて逃げ出したりなど集中できていない様子が見られたので、「もし気になるのであれば」と療育センターの紹介を受け、通うことに。そして、児童精神科の先生に「自閉スペクトラム症(ASD)の疑いがある」と言われました。私は少し意外な感じがしました。そのころ、目立っていたのは衝動的な行動の多さだったからです。ですから、ASD(自閉スペクトラム症)ではなく、ADHD(注意欠如・多動症)だろうと考えていたからです。息子は、じっとしていられず道路に飛び出す、お友達に手を出す、押す、かみつく…。公園で遊んでいると必ずトラブルを起こすので、自転車に乗って誰もいない公園を探し、人が来たらまた移動し…の日々。スイミングスクールにも通っていたのですが、隣のコースに入ってしまったり、順番を守れず飛び込んだり、プールから脱走してしまうこともあり、クビのような状態で辞めました。Upload By ユーザー体験談そんな息子の様子から、ADHD(注意欠如・多動症)の特性に当てはまることばかりだなと思っていたのです。ただ、服薬していたわけでもなく、医師も「診断名にこだわらず様子をみていきましょう」という感じだったので、そのときは特に確認をしませんでした。その後、就学に伴い療育センターから大学病院に転院になり、大学病院の小児精神科医に「ADHD」と診断されました。ADHDについては、未就学児は分かりづらいために就学後に診断されることも多いし、ASDと併発することもあるのだと、のちに知りました。「クラスに居場所がない」通常学級からの脱走小学校に入学し、通常学級に通い始めました。ところが、席に座っていられず教室から脱走したり、クラスの友達に手を出したり、言い争いになって上級生のメガネを壊したりということが続きました。しまいには「クラスに居場所がない」と感じるようになったようで、特別支援学級の教室に逃げ込むように。通常学級在籍なので、本来であれば特別支援学級で過ごしたり、授業を受けたりすることはできないのですが、先生方のご厚意で息子の一時避難場所として過ごせるようにしてくれました。特別支援学級は少人数で先生が寄り添ってくれて、好きなときにおもちゃで遊べるのもうれしかったようです。好きなときに好きなことができない、好きな教科以外の勉強をしなければいけない、というのが息子には苦痛のようでした。そしてストレスが重なったのか、風邪をこじらせて喘息の発作を起こし、小1の6月の終わりから2週間ほど入院することになってしまいました。その様子を見て、「この子はみんなと違うんだ。母である私がそのことを受け止めて、私がしっかりと向き合わなければ、息子を追い詰めてしまう」と目が覚めた気がします。Upload By ユーザー体験談「通常学級に戻りたい」という息子の思い入院中、うれしい出来事もありました。通常学級の友達が寄せ書きをくれたのです。息子はそれを見て、「またクラス(通常学級)に戻りたい。そのためには迷惑をかけたくない」と思ったようでした。7月初めに退院しましたが、夏休みも近かったので登校は最低限にして早めの夏休みに入ることにしました。私はフルタイム勤務だったので、息子が赤ちゃんのころから夏休みの平日など遊びに行くことはほとんどありませんでしたが、ちょうど下の子の育児休業中だったので、一緒に思いっきり遊びました。また、「みんなと同じことができるようになりたい」という息子の意思が強かったので、投薬を開始しました。はじめはADHDの治療薬であるインチュニブからスタートしたのですが、眠気がひどく昼休みに校庭で寝てしまい帰ってこないということが起きてストップ。医師に相談してコンサータに切り替えました。食欲は落ちるようですが、多動性が抑えられるので現在も学校に行く日のみ服薬しています。息子のことを誰も知らない環境で再チャレンジ11月からは、通級指導教室を開始しました。週1回、朝1~2時間目に他校で授業を受けてから、自校に戻るというスタイルで、小6の今まで通い続けることができています。あれだけ衝動的で多動だった息子ですが、今では大人しいくらいです。また、以前は絶対にやらなかった学校行事にも積極的になり、任意の陸上大会や球技大会にも参加するようになりました。ただ特定の友達はおらず、放課後に遊ぶようなことはありません。今までは自分のことしか見えていませんでしたが、年齢とともに周りにも目を配れるようになりました。その分、周りとの差も感じ始めているようです。息子にはADHDの告知もしていて、「できないことはできない。できることを伸ばそう」と伝えています。それでも、できないことが気になって自己肯定感が低く、同級生に助けてもらうことが当たり前になってしまっています。「このままでは本人の自主性・自立性が育たない」と思い、環境を変えようと決意。勉強は得意なので中学受験をし、息子のことを誰も知らない環境で一から頑張ることにしました。入学が決まった中学校は、通級指導教室の先輩も通っている学校で、息子の特性のことも伝えてあります。息子は、4月から新しい環境で、素晴らしい友人に会えることを楽しみに、最後の小学校生活を頑張っています。これからも自分の特性と付き合いながら、それをも強みにして得意分野をたくさんつくってほしいです。Upload By ユーザー体験談イラスト/吉田いらこエピソード参考/カプゴジラ(コメント:鈴木先生より)ADHDの診断・治療は6歳になってからです。ASDとADHDはカードの表裏のように繋がっている場合が多く、就学前であっても親御さんやご本人が困っていれば療育や薬物療法で調整は可能です。早めに小児科の神経外来の受診をお勧めしています。医師でないと正確な病名を告知できないからです。しかし、今回のように、医師によっても知識や経験の差があるのは否めないので、ネットで調べて神経発達症の診断・治療に経験の多い専門医を選ぶといいでしょう。ただ、そういう先生の外来は混んでいてなかなか予約が入らないのが現状です。きちんと診断して適切なADHD治療を行えば自尊心は上がっていきます。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月25日外出は苦難。だけどご近所さんにバーベキューに誘われて…ほぺろうは現在、特別支援学校に通う小学1年生。今でこそ経験を重ねて少しずつ改善してきたものの、もっと小さなころは場所見知りが壮絶で外出するのも苦難でした。一般的に子どもが喜びそうな場所やイベントに遊びに行くなんてとても無理。泣いて暴れて収拾がつかなくなり、逃げるように帰るのが常。ほぺろうが3歳のとき、良かれと思ってチャレンジした動物園も、遠路はるばるやって来て入園できたと思ったら大号泣!…結局、入園料だけ支払って即また遠路はるばる帰宅したという記憶があります。Upload By ぼさ子そんなほぺろうが就園し年中になったある日、私たち家族はご近所さんからバーベキューのお誘いを受けました。しかし、お誘いを受けてもほぺろうの事情で参加することは難しい。「子どもはみんな泣くもの。大丈夫!ほぺろう君 連れておいで~」と優しく言ってくださるが、ご近所さんが想像する「泣く」とほぺろうのものは絶対違う。みなさんを困惑させ迷惑をかけてしまうことが目に見えていたのでバーベキューをお断りしました。が、しかし…。ご近所さんを見送ったあと、私たち夫婦は自分たちの対応を思い出して落ち込みました。言葉で説明するのが難しいほぺろうの状態。親切で誘ってくれる相手から見たら、頑なに断るわが家の態度はワケが分からなかっただろうと。そんなつもりはないのに輪に入ることを拒絶しているように見えたのではないかと…。ご近所さんにほぺろうのことを口頭では説明していたけど、実際に様子を見てみないと障害の程度や事情は伝わりにくいのだと悟ったのと同時に、伝わらないままだと「ワケの分からない家族」として孤立してしまう気がして、それはほぺろうのために良くないと反省しました。Upload By ぼさ子ほぺろうを見てもらおうと決意した夫婦会議当時は、今よりさらにほぺろうの困りごとが激しかったので、人を避けたいという気持ちがなかったと言えばウソになります。でも、中途半端にほぺろうを人から遠ざけたままでは周囲から心配や誤解を招く可能性があると考え直しました。今後どうしていこうか夫婦で会議したときの夫の言葉が印象的でした。「ご近所さんにはちゃんとほぺろうを見てもらった方がいい。『自閉スペクトラム症があります』だけでは普通は伝わらない。どんな子どもか知ってもらった上で受け入れてくれる人がいればありがたいし、逆に抵抗のある人がいれば距離を置くように配慮しよう」「迷惑をかけるのは生きている限り避けられないだろう。でも、ご近所さんには知ってもらおう…」Upload By ぼさ子人への挨拶を大切にしてきた私たち夫婦ですが、ほぺろうの癇癪が酷くなってからというもの「迷惑かけないために」と ほぺろうを遠ざけるように即撤退することが多くなっていました。でも、ほかの場所ではそれで良くても、長期的に考えると『生活圏』でこのままの状態は良くない。なぜなら、人を避けてばかりだと不可解さで周りに不安を与えてしまい、その結果ほぺろうの印象が悪くなる可能性もある。保育園や学校は数年で卒業するけど家はずっと暮らす場所。ここで暮らしていくほぺろうのことを考えると、口で説明するだけではなく私も勇気を出してもっとほぺろうの様子をご近所さんに見てもらおうと思いました。これだけは!親子で頑張って参加する行事それからは、相変わらずお出掛け的なイベントには行かないわが家ですが、ゴミ拾いや花火大会など町内行事だけは積極的に家族で参加するようになりました。ほぺろうが場所見知り人見知りしてパニックになるのでご迷惑をお詫びしつつ途中リタイアがほとんどですが、5分だけでも顔を出すところから始めて、少しずつ滞在時間を延ばしていっています。Upload By ぼさ子自宅=生きていく場所ほぺろうを知ってもらうことで優遇してほしいとか可愛がってほしいとか、ましてや発達障害について勉強してほしいとかでは決してありません。ただ「こういう子どもなんだな~」とフンワリとでも思ってもらえたらありがたいのです。ほぺろうが生きていくための居場所とは…と考えたとき、「自宅」のウエイトは非常に重い。ほぺろうもご近所さんもお互いが気持ち良く暮らせるには?と思うと「少しでもほぺろうをオープンにすること」「親である私たち夫婦が周りに不安を与えない、話しかけやすい雰囲気をつくる」ことを心がけています。特別な行為ではありませんが、小さな積み重ねでほぺろうが社会の一員に加えてもらえたらと願って。ほぺろうが小学生になった現在、いまだに「ご近所さんに障害が十分伝わった」というワケではないし、理解を押しつけようとも思いません(逆の立場で考えてみても、難しさを感じます)。でも年月が経ち、最初は顔を出すだけでも大変だったほぺろうがご近所さんの顔を覚えてきて、相変わらずコミュニケーション取れないまでもリラックスしてその場にいられるようになってきました。夏に開催された花火大会では、小学1年生にしてやっと!最後まで泣かずにその場に居続けることができました。わが家に一番近いお宅の方は 泣き暴れの激しい時代からほぺろうのことを見てくれていました。ずいぶん騒音で迷惑をかけてしまったり心配させてしまったりしたはずなのに、「今日のほぺろう君、最後までいられてスゴイ!成長したね」「これからも一緒に楽しめたらうれしい」と言ってくださって、私は目頭が熱くなりました。ずっと見守っていてくださったんだなぁ…と感謝せずにいられません。Upload By ぼさ子執筆/ぼさ子(監修:新美先生より)場所見知り・人見知りが強かったり、多動・癇癪などが強いお子さんの場合、お子さんにつらい思いをさせたくない気持ち、目立ちたくない、とがめられたくない、そもそも大変すぎて疲れるという親の気持ち両面から、人が集まる場を避けるようになることはありますよね。そういう中で、ご夫婦で話し合い、地域の中で生きていくためにも、少しずつ慣れていこうと決めて出ていかれたというエピソードは大変に勉強になりました。ありがとうございます。おそらくご夫婦で話し合って決めて、協力して連れていかれたというところが鍵なのかなと思います。エピソードにあったような5分だけでも連れて行って、あとのお仕事はご主人に任せて子どもは奥さんが連れてささっと帰るというように、外担当と子ども担当をわけて協力されるのはいいなと思いました。そういったことを積み重ねて、お子さんもだんだん慣れて、ご近所さんにも知ってもらえるというのは理想ですね。余裕がないときはそこまでできないと思うこともあるかもしれませんが、ご家族で協力してできることであれば、地域に出ていくことも大事ですね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月24日抜群の音感を持って生まれたASDっ子いっちゃんは小さなころから音楽が大好き!公園に行けば棒でリズムを取りながら遊具を叩きまわり、1歳になるころには3分程度の曲を覚え、ほぼ完ぺきな音程で歌うことができました。私の実家にあったピアノにも早くから興味を持ち、3歳ごろには、簡単な曲なら耳コピして両手で曲を弾くことができるようになっていました。Upload By 寺島ヒロCMを見て「ピアノ教室に行きたい!」と主張ピアノを習い始めたのは、3歳3ヶ月の5月です。テレビCMで受講生の募集を目にして「わたしこれ行く!」と、珍しく口に出して主張しました。言葉がほとんど出ず、また尿意が鈍いところもあったので、自分でトイレに行くことはおろか、「おしっこ」と教えることもできなかったいっちゃん。当時はまだ日常的におむつをしていたと思います。それが「ピアノ教室に行きたい」と言いだしたので、とても驚きました。実を言うと、私はピアノ教室に通うのはまだ無理だろうと思っていました。私自身の送り迎えと付き添いの時間も必要ですが、兄のタケルの障害が分かったばかりで、あまり余裕もなかったですし。それで「ピアノ行く!明日行く!」といっちゃんが言うたびに「予約した日がまだ来ない」とはぐらかし続けていました。しかし結局、孫に甘いおばあちゃんが「体験入学だけだよ」と、連れて行ってしまい、実際にピアノのレッスンを受けてみたことで、いっちゃんの中では「ここに通うことに決定!」してしまいました。またしてもわたしがぼーっとしているうちに、子どもの習い事が決まってしまったのでした。ピアノのためなら頑張れる?課せられた試練そのピアノ教室では、原則満3歳児は4月からレッスンがスタートするのですが、4月の本レッスン開始前に、2月からプレ教室に通うことになっているのだそうです。つまり、5月から習いはじめたいっちゃんにとっては、同じクラスの子どもたちと比べ3ヶ月分の遅れが生じるということになります。ふーん、3ヶ月遅れかー...。と、思っているだけでは終わらなかったのです。担当の講師の先生が決まったとたん、呼び出され「5月の入校までに追いついてください!できなければ私の教室には入れられません」と、言い渡されてしまいました。3歳からこのピアノ教室に通う子どもは基本的にプロ志向であることを、私はそのとき初めて知りました。冷や汗をかく私を尻目に、いっちゃんは「やるます!」と鼻息荒く言い放ち、課題の楽譜を持ち帰りました。そしてその言葉通り、それから1週間、毎日8時間の練習に耐え、見事その先生の教室に席を勝ち取ったのでした。ピアノ教室で母が見た、娘の思わぬ一面通い始めてみると、急に大人びた様子になり、また驚かされました。レッスンを立ち歩かずに大人しく受けられるばかりでなく、(レッスン以外の時間はうろちょろしていますが...)あっという間に言葉が出るようになり、自分から教室に入る前にトイレにも行くようになったのです。ピアノ教室の先生や、グループレッスンを受けるほかの子どもたちと言葉でやり取りをしなければならないということと、自分が(トイレで部屋を出て)いない間にも曲の練習が進んでしまうことから、みんなと一緒に行動して情報交換していないと「損をする!」と思ったようです。家では甘えてばかりのいっちゃんですが、具体的な目標があれば人一倍頑張れる子だったんだ!と気がつきました。それはピアノなのか?というASDらしい疑問推薦を受け6歳からピアノ専門コースに進んだいっちゃんでしたが、小学校の高学年になってちょっとした問題が起こりました。この教室では全国規模のコンテストがあり、いっちゃんのいる専門コースでは基本的に10歳までに全員エントリーすることになっていました。つまり10歳までにキャリアをスタートさせようということです。が、いっちゃんはこれを拒否。3年生、4年生を出場しないままスルーしてしまいました。そしてついに5年生になるころ、専任講師の先生から母子揃って呼び出しを受けることになったのです。「いっちゃんがコンテストに出ないというのです。ピアノを楽しく弾けない、出る意味が分からないと。どういうことでしょうか?」ああ...先生...めまいがしました。それはおそらく文字通りの意味です。いっちゃんはコンテストに出るということの「意味」が分からないのです。しかし今のいっちゃんに、コンテストに教室から出させてもらうということがどういうことなのか、コンテストに出てキャリアを積めば将来音楽家として生きていくときに良いことがあるかもしれない、ということを説明しても理解はできないでしょう...。そして「意味」が分からないことは絶対にしたくないのがいっちゃんなのです...。ピアニストの道からドロップアウト、そして...結局、いっちゃんは教室の「目に見えないプレッシャー」を理解することができないまま、その後開催されたコンテストにも一度たりとも出ることなく、教室をやめてしまいました。やめる直接のきっかけは、中学入学のころに引っ越しをしたことでしたが、引っ越し先の近くにある系列のピアノ教室を紹介されたにもかかわらず、「もう習うのはいいや」と、一度も行ってみることはなかったのです。Upload By 寺島ヒロ今いっちゃんにピアノ教室のことを聞くと、「とにかくコンテストが分からなかった!コンテスト用の曲は絶対間違えないように弾かなきゃいけないし、テンポも楽譜通りにしないといけないしで楽しくなかった」「先生に言ったら、ピアニストになりたいならできるようにならなきゃ!って言うから、別になりたくないなあ~...って思って。じゃあ、私じゃない人が出たらいい、譲ろうと思った」「今なら『そういうところが評価されるゲーム』だったんだと分かるよ」と言います。ASDらしい、いえ、いっちゃんらしいエピソードだと思います。知識をシェアしてくれるということの価値それから4年、ほとんど野生の勘で音楽をやってきたいっちゃんですが、自分で作曲した曲を動画投稿サイトなどに投稿して、ほかのクリエイターの方と交流などするようになると、言葉で音楽を説明しなければならない場面も増えてきました。すると、「ピアノ教室で習ったことを周りも知っているので驚く!ピアノ教室で教えてくれたことって、世界中で通用することだったんだ!」と言いだしました。また、曲をつくっている間に唐突に「このコード進行、見たことあると思ったらピアノ教室で習った!」と言ってくることもあります。いっちゃんが、習い事の価値に気がつくのはこれからなのかもしれないですね。執筆/寺島ヒロ(監修:鈴木先生より)絶対音感を持っている自閉スペクトラム症のお子さんは決して珍しくありません。生活音全てが音符になってしまうので「ちゅらい」のです。クーラー、自動車、キーボード、プリンター、時計などさまざまなものから発する音が音符となって聞こえてくるのです。気が散ってしまい、集中して人の話も聞くことができません。しかも音に敏感なため、クラスがうるさいとなおさら教室にいることだけでも苦痛になってしまい、不登校の原因の一つとなってしまうこともあります。コンテストの意味が分かりづらい場合は「発表会」でいいかもしれません。クリニックでもIQテストとは言わず「クイズ大会」と子どもたちには言うこともあります。できればいいのです。また、視覚的に上手に教えてあげることも必要です。どういうことをやってどんな感じなのか、あらかじめビデオなど見せて丁寧に説明することも大切です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月24日特別障害者手当をもらうには?申請方法や必要書類を解説特別障害者手当の対象は、20歳以上で身体または精神に重度の障害があり、常に特別な介護が必要な在宅で生活をしている人です。身体障害者手帳1、2級程度、または療育手帳1、2度程度の障害が重複している状態、もしくはこれらと同等の疾病・精神障害がある状態が目安といえます。手帳を持っていなくても申請できます。医師の診断書など申請書類にもとづき、自治体が認定します。基準は厚生労働省の「障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準」に準じます。以下の方は申請できません。・20歳未満・医療機関に3ヶ月以上継続して入院している・施設等(グループホームは除く)に入所している成人年齢は18歳になりましたが、特別障害者手当の申請は20歳以上で変わりません。月額は27,980円で、障害の重さによる金額の差はなく、一律です(令和5年4月より。手当の額は、物価変動等により毎年見直される)。申請月の翌月分から支給されます。原則として毎年2月、5月、8月、11月にそれぞれの前月分までの3ヶ月分がまとめて振り込まれます。例:5月の支給額=2・3・4月の3ヶ月分83,940円住んでいる市区町村の福祉担当窓口で申請します。医師の診断書などは所定の用紙が必要なことがあるので、事前に窓口に問い合わせておくとよいでしょう。Upload By 発達障害のキホン受給中は施設への入所状況や入院状況などを伝える「現況届」を毎年8月に提出します。この手続きは8月以降も受給するために必要です。また障害の程度が変わることがある場合は通常1~5年の範囲の「有期認定」となります。その場合、再認定期月の約1カ月前に診断書などを再度提出します。提出期限前に市区町村から案内があります。特別障害者手当の注意点はありますか?所得制限や、障害年金をもらっている場合はどうなる?特別障害者手当には所得制限があり、本人の前年の所得が一定額を超える場合、または配偶者や扶養義務者の前年の所得が一定額以上の場合、特別障害者手当は支給されません。Upload By 発達障害のキホン障害年金は所得に算入されるので、所得が一定額を超えていなければ、両方をもらうことは可能です。障害がある子どもが対象の手当って何があるの?特別障害者手当は子どもは対象ではありません。障害がある20歳未満の子どもを育てる家庭が対象の手当には、「特別児童扶養手当」、本人が対象の「障害児福祉手当」があります。特別児童扶養手当特別児童扶養手当の対象となるのは、おおよそ身体障害者手帳1~3級(一部4級程度)、療育手帳A・B、愛の手帳1~3度程度の場合です。手帳を持っていなくても、障害や疾病により日常生活が困難で、常に介護が必要な場合は対象になります。特別児童扶養手当は、障害の程度によって支給額が変わります。1級は月53,700円、2級は月35,760円です(令和5年4月より)。支給されるのは4月、8月、11月の年3回で、それぞれ前月までの4ヶ月分が受給者(家族)の口座に振り込まれます。所得制限があり、受給者もしくはその配偶者、または扶養義務者の前年の所得により、支給されないことがあります。受給中は「現況届」を毎年8月に提出します。前年の所得とその年の6月1日時点の児童の養育状況(施設に入所しているか等)を報告します。この手続きは8月以降も受給するために必要です。障害児福祉手当障害児福祉手当の対象となるのは、身体障害者手帳1~2級、療育手帳A・B、愛の手帳1~2度程度です。手帳がなくても、同じぐらいの程度の障害があると認定されると対象となります。支給額は月15,220円です(令和5年4月より)。5月、8月、11月、2月にそれぞれ3ヶ月分ずつ障害児本人の口座に振り込まれます。支給制限があり、児童施設に祐書しているときや、本人や扶養義務者の所得が一定以上の場合は支給されません。このほかにも親に障害があったり、ひとり親の場合などに支給対象となる「児童扶養手当」や、各自治体独自の支援制度があります。まとめ特別障害者手当は、20歳以上の重度の障害がある方の日常生活における経済的負担を軽減するための制度です。該当するかどうか、住んでいる市区町村の福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。申請には医師による診断書など、多数の書類が必要になるので、窓口で確認しましょう。
2023年02月23日「頭が大きい?」1歳半健診で指摘されて…Upload By べっこうあめアマミ妊娠中から出産時まで、何の異常もなくこの世に生まれた息子は、1歳までは何の発達の遅れも不安もなく、すくすく成長していきました。「あれ?」と思ったのは1歳を過ぎたころ。1歳半健診のチェック項目のほとんどに〇がつかないという事態に陥りました。そしてこのころから息子の発達の遅れが目立つようになっていき、私は大きな不安にかられるようになっていきました。そして迎えた1歳半健診。身体面に異常はなく、分かりやすい困りごともないけれど、明らかな発達の遅れがある息子。そして、頭位(頭の大きさ)が大きいことが気になるという指摘を受けたのです。そこで初めて聞いたのが、「水頭症の可能性」でした。水頭症は、脳脊髄液が頭の内側に過剰に溜まってしまう病気です。まだ頭蓋骨がやわらかく組み合わさっている状態の幼児期に水頭症があるお子さんは、内側からの圧力で頭蓋骨が押し広げられ、頭が大きくなるそうです。ただ、あくまで可能性というだけで、検査しなければ分からないとのことだったので、1歳児の脳のMRI検査ができる大きな病院に紹介状を書いてもらうことになりました。発達の遅れの理由は、発達障害や知的障害だけではないUpload By べっこうあめアマミ大人ならすぐに済ませられるMRI検査ですが、ずっと動きを止めていられない1歳児が受けるとなるとそうはいきません。親子で日帰り入院し、息子が自然に眠っているときか、眠らなければ薬で眠らせて検査する、少し大がかりな検査になります。当日うまく寝てくれるように睡眠時間を少なめにして連れて行ったため、息子は不機嫌で何度も大泣きしました。しかし幸い疲れて寝てしまい、無事に検査を受けることができました。そして検査の結果は異常なし。ここで、息子の発達の遅れの理由から、「水頭症」の可能性が消えました。しかし、発達の遅れの理由として考えられるものは、それだけではありません。耳が聞こえていなくてコミュニケーションがとれない可能性もありますし、主治医はほかの病気の可能性も考えてくれていたようです。脳のMRIのほかに、聞こえの検査と、全身の代謝の検査などをしました。しかしどの検査でも、息子に異常は見つかりませんでした。それでも目の前にいる息子には明らかな発達の遅れがある。そのため、息子の通院は、ここから「様子見」というような形で始まりました。ショックだけれど納得もできた、障害の診断Upload By べっこうあめアマミそれから2年と少し経った4歳のとき、息子に知的障害を伴う自閉スペクトラム症の診断が出ました。そのころには私もさすがに、「何もないということはないだろう」とは思っていましたが、いざ診断を告げられると大きなショックを受けました。何度も泣きましたし、すぐに障害を受容できたわけでもありません。しかし、2年間という長い期間息子を診続けてくれた主治医による診断であること。そして、発達障害や知的障害以外のあらゆる可能性を潰した上での診断ということで、障害名に対しての納得感はありました。もちろん、診断の直接的な材料となったのは発達検査です。しかし、最初から発達障害、知的障害という方向だけで発達の遅れを見る前に、それ以外の病気や聞こえの問題などがないか検査するのは大切なことだと思ったのです。万が一、治療可能な病気などがあったとしたら、早期に手を打たなかったことを後悔したでしょう。ところが息子の場合、身体のどこにも異常はないから治療はできない。それが息子の障害、「知的障害を伴う自閉症」だということに、大きなショックの中でも納得はできました。病院だけでなく、息子は2歳から療育にも通っていましたし、「診断までにやれることはやった感」が、後の私の心の整理には大事だったと思います。通い続けて6年、長く診てもらっている病院がある安心感Upload By べっこうあめアマミ息子のように、服薬がなく身体障害や病気などもないお子さんは、病院にかかるべき明確な理由がないかもしれません。もちろん、必要性がなければ特に通院しなくても全く問題ありません。しかし、息子のように発語がなくて、本人との意思疎通が難しい子どもの場合、定期的に通う病院があると、体調の変化なども相談できて親としては安心です。今後何か病気が見つかったり、服薬の必要性が出てきたときにも病院探しに困らずにすみます。そして、障害がある子どもを育てていると、何かと診断書が必要になる機会がありますが、かかりつけ医があると、診断書のお願いもスムーズです。息子の通院の期間は長いですが、頻度は3、4ヶ月に1回程度です。そんなに低頻度の通院に意味はあるのかと思われるかもしれませんが、長く通い続けている病院は、親にとって頼りになる存在です。きっかけがないとなかなか難しいかもしれませんが、子育てをする上でかかりつけ医があるメリットは大きいと感じています。病院も、できれば自分の子どもと同じような障害がある子どもが多く通っていて、さまざまな検査が可能な設備が整った病院が安心かもしれません。きっかけが脳の検査だったこともあり、息子が通っているのは精神科ではありませんが、発達障害による困りごとをより具体的に相談したい場合、児童精神科を受診するのも良いと思います。地域ごとに評判の良い病院などもあると思いますので、気になる方は、情報を集めて受診してみるのもいいかもしれません。執筆/べっこうあめアマミ(監修:藤井先生より)べっこうあめアマミさんの息子さんが、3−4ヶ月に1回定期的に通院しているのはとても良いと思います。私の勤めているクリニックにも、服薬などは必要ないけれど定期的に通院しているお子さんがたくさんいます。状態が安定している小学生や中学生は、長期休みに受診してくれています。そのたびに、お子さんの成長を一緒に楽しみ喜んでいます。当初はクリニックの診察室に入るのも嫌がっていたお子さんが、診察室に入れるようになり、一人で椅子に座れるように、聴診器も嫌がらずに当てられるようになり、と低頻度の受診でも徐々に慣れてきます。年度変わりで、学校の先生が変わっても、いつもと同じ病院やクリニックに同じ先生やスタッフがいるということで、安心して通えるというお声を聞くこともあります。お子さんの年齢が上がってくると、主治医が見つからないという声を聞くこともあります。べっこうあめアマミさんのように小児神経科に相談するのも良いですが、発達外来のある小児科、児童精神科、精神科などに相談してみましょう。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月23日民生委員・児童委員とは?どんなことをする人ですか。民生委員は、厚生労働大臣から委嘱され、各地域の障害のある人、高齢者、生活保護を受けている人、子育て世代、妊産婦、母子家庭、父子家庭などの世帯に対して住民の立場に立って相談に応じ、援助を行う人です。また、民生委員は児童委員の役割も兼ねており、民生委員法に基づいた非常勤の地方公務員という立場です。児童委員の役割は、その地域の子どもたちが健やかな生活を送れるよう、子どもたちを見守ったり、子育て中や妊娠中の保護者や母親の相談を受けたり、支援することです。児童に関することを専門的に担当する主任児童委員の指名を受けている児童委員もいます。民生委員制度の歴史は古く、1917年(大正6年)に岡山県で誕生した「済世顧問制度」が始まりといわれています。その後、1928年(昭和3年)に「方面委員制度」が全国に普及。そして、1946年(昭和21年)に民生委員令が交付されその名称が現在の民生委員に変更されたのです。民生委員、児童委員、そして主任児童委員は具体的にどのような活動をしているのかを解説します。参考:民生委員・児童委員について|厚生労働省民生委員の主な活動は以下の3点です。1. 地域住民の生活状態を必要に応じて把握する社会調査や、高齢者世帯への訪問や見守り活動を行う2. 援助を必要とする人が、その能力に応じた自立した生活を送れるよう、生活に関する相談を受け、それに基づいた助言や援助を行う3. 援助を必要とする人が、最も適切な支援を受けることができるよう、関係機関や施設などとも連携し調整を行う児童委員の主な活動は以下の3点です。1.地域の子どもたちや妊産婦に関わる福祉の増進を図るため、生活や環境把握をすると共に、そのような情報の提供や援助、指導などを行う2.見守りが必要な児童・家庭への援助を行う3.子どもの非行防止など、子どもの健やかな成長を促す生活環境の改善に努める主任児童委員の主な活動は以下の3点です。1.児童福祉関係機関、施設などと連絡を行う2.区域担当の児童委員への援助活動を行う3.支援を必要とする子どもや子育て家庭に対し、相談や支援を行う民生委員、そして児童委員は以下の3つの基本姿勢を守って活動しています。1.社会奉仕の精神をもって、社会福祉の増進に努めます2.民生委員・児童委員は、その活動を行うにあたって、個人の人格を尊重し、その身上に関する秘密を守ります。人種、信条、性別、社会的身分などで差別はしません3.職務上の地位を政党や政治目的に利用しません民生委員・児童委員になるには現在全国で約23万人の民生委員と児童委員が活動しています。それぞれが厚生労働大臣から委嘱された地域福祉を担うボランティアです。民生委員法第10条で「民生委員には給与を支給しないもの」と規定されており、民生委員や児童委員は無報酬で活動しています。よって、自分の仕事や子育てをしながら活動されている方も少なくないのです。その任期は3年と定められていますが、再任は可能となっています。また、民生委員や児童委員は地域の「相談役」や「つなぎ役」であり、専門職ではありません。よって、特別な資格や専門知識は不要です。ただし、プライバシーにも関わる相談を受けるため、守秘義務が課されています。民生委員や児童委員に資格は不要ですが、活動するにあたっては厚生労働大臣からの委嘱が必要です。その仕組みは、都道府県知事が市町村の民生委員推薦会から社会福祉に対する理解と熱意があり、地域の状況に精通していると推薦された者について、さらに地方社会福祉審議会の意見を聞いた厚生労働大臣が委嘱するという流れになります。児童福祉法第16条により、民生委員は、児童委員を兼任。また、主任児童委員は、児童委員のなかから厚生労働大臣が指名します。障害のある人、高齢者、生活保護、子育て世代、母子、父子家庭など、民生委員・児童委員と関わりのある人たち少子化や核家族化などの影響もあり、地域とのつながりが気薄になっている昨今。何か問題を抱えていても誰にも相談できずに、その問題をさらに根深いものにしてしまったり、その人自身が孤立してしまったりするケースが増えています。民生委員や児童委員は地域のなかで、誰にとっても身近な相談役。支援の網からこぼれずに生きていくために、何か問題を抱えたときには、民生委員との関わりを持っておくことも大切です。特に民生委員や児童委員と関わりが深いといわれるケースを紹介します。・障害がある人のいる世帯・高齢者世帯・生活保護を受けているなど生活に困窮している世帯・子どものいる世帯・妊産婦のいる世帯・母子、父子家庭・その他福祉に関わる問題を抱える世帯こう見ると、どれにも当てはまらないという世帯の方が少ないのではないでしょうか。誰にとっても福祉の面で困ったことが起きたときに頼れるのが民生委員・児童委員なのです。民生委員・児童委員への相談するには高齢者や障害者などへの支援が必要なとき、また子育てや介護の不安などの困りごとがあるときは、地域の民生委員や児童委員に相談することが可能です。相談があるときは、お住まいの市区町村へ問い合わせをすると民生委員や児童委員につないでもらえます。また、民生委員や児童委員についてもっと詳しく知りたいという場合も市区町村にお問合せください。漠然と“相談”と言われても、どんなことを相談したら良いのか、また相談した先にはどんなことが待っているのかなど想像できないという方がほとんどでしょう。その疑問を解決するためにも、どんなふうに地域で民生委員や児童委員の存在が活用されているのかを紹介します。障害や病気、介護の悩み、妊娠や子育て、また経済的な悩みなど生活上のさまざまな相談を受けつけるのが民生委員・児童委員の役割です。でも、ただ単に相談を聞くだけではなく、必要に応じて行政を始めとする専門機関につないだり、適切な福祉サービスを受けられるまでをしっかりとサポートしています。一人暮らし高齢者や高齢者夫婦世帯などを定期的に訪問し、相談にのったり、健康状態の確認をするほか、詐欺などの犯罪被害防止の啓発なども行っています。市町村によっては、赤ちゃんが生まれた家庭を訪問して、子育て支援サービスなどを周知することも。また、災害が起きたときに要配慮者がいる世帯を把握することにもつとめています。地域のなかで、誰もが孤立することがないよう、居場所づくりなどを目的としたサロン事業にも民生委員や児童委員が取り組んでいるのです。高齢者や子育て中の親、障害児を育てる親、また誰でも参加できるものなど、さまざまなターゲットに向けたサロンがあり、それぞれに特徴があります。※地域ごとに開催されているサロンは異なりますので、参加希望の方は市区町村への問い合わせが必要です。子どもたちを交通事故や犯罪から守るために、登下校時に通学路での見守りなどを行っている民生委員や児童委員もいます。夏休みなどの長期休暇の前には、小学校や中学校の先生と意見交換を行い、休み中の安全な過ごし方について周知することも。また、行政や警察、消防などとも協力して、災害が起きたときの要配慮者の避難支援態勢の整備などを行うこともあります。学校や子育て支援センター、保健所、児童館などとも協力しながら、子どもたちはもちろん、子どもを育てる保護者をサポートするほか、地域が行う子供向けのイベントや事業に協力することもあります。民生委員とトラブルになった場合は?誰にとっても身近な相談役であり、味方である民生委員や児童委員ですが、なかにはトラブルになるというケースもあるようです。トラブルの大きな部分を占めるのが、相談の内容が民生委員や児童委員が対応できないことであったというものです。・お金を貸すこと・子どもの一時預かり・保証人になること・近隣トラブルの仲裁・鍵や通帳、遺言状の預かり・医療行為に関する同意・身体介助、家事補助・各種証明証の発行上記に関しては、民生委員や児童委員の活動外となっていますが、近年こういった本来取り扱えない事例の相談が増えています。それが「解決してもらえると期待したのに、だめだった」とトラブルにつながることがあるのです。ただし、適切な相談をした場合でも、支援につなげてもらえなかったケースなどは、各市区町村の福祉課など、民生委員や児童委員を管轄する部署への問い合わせが必要です。誰一人、支援の網から取りこぼさないようにするために民生委員・児童委員は、地域全体を見守り、誰一人支援の網から取りこぼさないようにするために活動しています。子育てや介護、また経済面などで心配ごとを抱えたときには民生委員や児童委員に相談すると良いでしょう。民生委員・児童委員には守秘義務があるので、他人に知られたくないことでも、安心して相談することができます。「こんなこと相談してもいいのだろうか」と尻込みしてしまうこともあるかもしれませんが、そんな相談を受け止めてくれるのが民生委員・児童委員です。福祉面で困りごとを抱えているという方はまずは市区町村に連絡をして、民生委員・児童委員を頼ってみていはいかがでしょうか。解決の糸口を見つける一歩になるかもしれません。
2023年02月22日自閉症娘、1歳の誕生日を境にいきなり偏食に娘のまゆみには自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついています。離乳食が始まった生後5ヶ月ごろはなんでもよく食べてくれたので特に気にすることもなく離乳食をあげていましたが、生後8ヶ月ごろになると突然ベビーフードを一切受けつけなくなりました。それでも手づくりすれば肉も野菜も食べてくれていたのですが、1歳の誕生日を迎えた直後から特定のものしか食べてくれなくなり、「なんで急に?」「栄養が偏ってしまうのでは?」と不安に駆られました。Upload By にれまゆみの食べてくれるものを探る日々「もしかすると味の好みが出てきて、今までの食事には満足しなくなったのかもしれない」と思った私は、とにかくまゆみの食べられるものを探してさまざまなメニューを試してみることにしました。レトルトやベビーフードは完全拒否なのでイチからつくるのですが、元々あまり料理が得意ではない私はかなり頑張らないといけませんでした。いろいろ試行錯誤する中、手づくりのチキンナゲットなら食べてくれることが分かり、一番心配だった「タンパク質不足」の問題は少し和らぎました。しかし、四苦八苦してつくった料理は一口も食べられずに残されることがほとんどで、段々と精神的につらくなってしまい…頑張ってつくっていた料理も品数が減っていき、そのうち白米とチキンナゲットに果物を添えただけの「まゆみ定食」がわが家の定番になりました。市の栄養士さんにも相談しましたが、「今は食事の楽しさを教えたい時期なので、無理に食べさせる必要はない」という回答。少しホッとはしたものの、栄養の偏りを心配する私の不安は解消されず、「どうしたらお肉や魚を食べてくれるの?」と悶々とした日々が続きました。2歳、食べられるものに変化が。きっかけはファーストフードのフライドポテト2歳過ぎになり、出掛けた先で食べたファーストフード店のフライドポテトを何気なくまゆみに渡してみたときのことです。なんと、まゆみが「もっともっと」と手振りでおねだりをしてきたのです。それを機に、家で揚げたポテトも食べてくれるようになりました。「どこまでがまゆみの許容範囲なのか?」を見極めたくなった私は、皮つきのままのくし型ポテトや、小判状にしたハッシュドポテトや、青のりで「のり塩味」にしたポテトをまゆみに出してみましたが、どれも気にせずパクパク食べている様子を見て「ジャガイモを使えばいろいろ食べられるかも!」と希望が膨れ上がりました。マッシュポテトにいろいろ混ぜ込んでみては「まゆみが妥協して食べてくれるライン」を探っていった結果、チーズ・ホウレン草・シラス・栄養補助粉末を練りこんで揚げ焼きにした『特製ポテトお焼き』が誕生しました。「これさえ食べてくれれば少し気がラク」というメニューができて、うれしいというよりもホッとした気持ちになったのを覚えています。Upload By にれ2歳10ヶ月、食事に関する勉強を始めてまゆみに自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついたことをきっかけに、食育についてちゃんと学びたいと思った私は乳幼児食指導士の資格を取りました。食事環境や栄養バランスの大切さを学び、発達障害児の偏食に対してもアプローチ方法を学ぼうといくつかの本で知識を得た中、まゆみに有効な方法が3つありました。1.熱々のまま出すこと、2.素材別に分けて出すこと、3.調理に参加させてみることです。Upload By にれ1については、思えばまゆみは冷めたものは食べようとしない子どもでした。これまではうどんを食べている途中でも麺が熱くなくなったら席を立っていましたが、冷めた時点でもう一度温めると食事を再開してくれるようになりました。2、3は根本が同じところから来ているようで、まゆみは料理の成り立ちについて自分の中で納得がいくと食べやすくなるようでした。それまで「手の込んだ料理ほど食べないのはなぜ?」と不思議に思っていたのですが、一品の中に多く素材が使われている料理は元の素材がイメージしづらいために、まゆみの目には「得体のしれないもの」と映っていたのかもしれません。今でも食べられないものの方が多いですが、素材別に分けて盛ったり、一緒に料理をすることで「元の素材が何か」が分かって食べてくれやすくなりました。3歳、お弁当を持って療育へ行くようになってさらに変化がまゆみが3歳になるころ、単独通所の療育に通い始めました。お弁当を持っていき、先生がマンツーマンでついてくださって一緒にお昼を食べるのですが、療育先からお弁当づくりで出された条件が2つありました。1.食べきれる量であること、2.本人の苦手なものを何か一品入れることです。1は完食して褒められることが達成感につながり食事に前向きになるため、2は自宅外で母親以外の人と食事することで食べられるようになる食材があるかもしれないため、との理由です。また、苦手なものを選ぶポイントは、「絶対にこれは嫌いだろう」というものではなく、「食べず嫌いで敬遠しているけれど味は気に入るかもしれない」というラインのおかずを選ぶことです。先生方の頑張りと、まゆみ自身の頑張りによって、通い始めた当初よりも食べられるおかずが増え、4歳になった今ではお弁当に持たせるとハンバーグ、焼き魚、お好み焼き、煮物、ピーマン、ミニトマト、枝豆なども食べてくれるようになりました。中にはかなり苦戦するものもあるようですが、先生に励まされるとまゆみも頑張って口に入れてくれるそうです。偏食について思うことUpload By にれ一時はまゆみの健康を思ってノイローゼ気味になるほど悩んだ偏食問題ですが、発達障害のある子どもは何かしらの理由があって食べられないものがあるということを知り、今は「野菜を食べないなら果物からビタミンを取ればいい」「肉を食べないなら唯一食べられる焼き鮭でタンパク質を補えばいい」とゆるく考えるようになりました。不思議なことに、そう考え始めてからの方がブロッコリーやキュウリ、焼き鯖やマグロカツ、エビフライなど食べられるものの幅が広がりました。食べないだろうと決めつけず、また無理に食べさせようともせず、「食卓に出ているものを期待せずすすめる」というスタンスにして私も肩の力が抜けたのが良かったのかもしれません。親が手を加えることで食べられない理由が解消されて食べられるようになるものならラッキーで、まゆみは基本的に食べないものは食べないのです。食べられる食材が増えてきた今だからこそそう思えるのかもしれませんが、偏食についてはまゆみの「食べたい」「食べたくない」に寄り添いつつ、「これもどう?」とゆるくすすめ続けていきたいと思います。執筆/にれ(監修:初川先生より)偏食をめぐるにれさんの奮闘の歴史をありがとうございます。お子さんの偏食に悩む保護者の方は多くいらっしゃることと思います。研究の歴史を読んでいるのかと思うほどに整理され、なんと素敵な試行錯誤なのだろうかと思いました。にれさんほどには実験的に突き詰めて考えることはなかなかできずとも、トライアンドエラーをするにあたっての着眼点や親としての心構えなど、参考になったと思われる方も多いのではないでしょうか(私もなるほどと思いながら読みました)。ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さんですと、口の中の食感が混ざっているとそれを気持ち悪いと感じる場合がある(だから混ぜご飯やサンドイッチは、一緒に一口で口に入れるより、それぞれ食べたほうが食べやすい)など、さまざまな経験則や知見も蓄積されてきていますね。調理した挙句に、知らない姿で出てくるよりも、その過程を見せてあげると安心して口に運べるというのも、見通しがないと行動しづらいという特性的な面との整合性もあり、いかにしてお子さんが安心して食べるかが大事であるんだなと感じます。頑張ってつくった食事を食べてくれないのは、そこに他意はないと分かっていても、保護者としてはつらくなりますね。「食べられないものがある」、ただそれだけで、それ以上に過剰な意味づけをせず(例 「お母さんのことが好きじゃないから食べたくない」のではない)、お子さんの食行動の育ちを見守っていただければと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月22日子どもの寝つきが悪い…これって睡眠障害?睡眠にまつわるギモン自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害がある場合、睡眠障害を併存していることがあります。睡眠の問題の背景には、何かしらの障害が関係していることがありますが、睡眠の相談を医療機関ですることを知らず、長年悩みを抱えてしまう方もいるという現状があります。発達ナビQ&Aコーナーでも、子どもの睡眠に関する心配や、睡眠障害へのギモンが数多く寄せられています。「赤ちゃんのときから寝つきが悪く、朝起きられません。来年には中学生になりますが、どのようにサポートしたらいいでしょうか」「5歳すぎてもまとまって寝ないのは、発達障害が関係しているのでしょうか」「みなさんは眠れていますか?眠れないときはどうしたらいいのでしょうか」「日中に寝てばかりの息子がいます。服薬をしていますが効果がありません」これらは、発達ナビのQ&Aコーナーに実際に書き込まれた、睡眠にまつわる悩みです。このコラムでは、睡眠のなぜ?から、発達障害と睡眠障害の関わり、服薬についてなど、体験談や、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態のことをいいます。子どもの睡眠障害にはいくつか種類があります。・不眠症…寝つきが悪い、眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまう、朝早く起きてしまう、眠りの質が悪いなど、睡眠が十分でない状態・過眠症…夜ちゃんと寝ているはずなのに、日中あらがえないほど眠い状態・概日リズム睡眠障害…昼夜のリズムと体内時計がうまく合わず、調節できなくなって睡眠リズムがくずれてしまい、社会生活に支障をきたす状態・いびき・睡眠時無呼吸症候群(SAS)…子どもの場合、いびき、無呼吸の主な原因は、鼻づまりやアデノイド・口蓋扁桃(こうがいへんとう)といったのどや鼻の奥のリンパ組織の肥大で、物理的に気道が狭まること。また、肥満で気道が狭くなることも・むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)…脚などの下肢がむずむずするなど動かしたい強い衝動がある状態・睡眠関連律動性運動異常症…乳幼児期から4歳くらいまでの時期で発症する睡眠障害。頭を左右に振ったり、前後に強く動かすなどする。9ヶ月の子どもでは59%に見られるほど、乳児期には非常に多い症状だが、5歳前後には5%以下に・睡眠時随伴症…睡眠中に生じるねぼけ、夜尿、歯ぎしり、悪夢などの身体的現象の総称子どもは、新生児期には昼夜を問わず短い睡眠・覚醒を繰り返しますが、乳児期から夜間睡眠が中心になり、3歳から6歳になるころには昼寝をとらなくなるなど睡眠リズムが徐々に確立していきます。赤ちゃんの眠りはまだ眠りが浅く、夜泣きをすることも多くあります。幼児期(3歳から6 歳ごろ)までに浅い眠りと深い眠りのサイクルが大人と同様のリズムに移行していきます。そのため、幼児期になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。発達障害と睡眠障害の関連は?睡眠障害は、発達障害の併存症として認められることが多いといわれています。睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではありませんが、発達障害の特性により、睡眠になんらかの問題が出てしまうことが主な原因です。乳幼児期の睡眠は脳の発育にも関わるため、睡眠障害が長引くこと自体が睡眠不足や生活リズムが乱れて悪循環を生み、子どもの心身の発育に影響している可能性も否定できません。自閉スペクトラム症がある子どもは音や光などに対する感覚が過敏なため、覚醒しやすいといわれています。また、睡眠に関係するメラトニン生成や、セロトニンからメラトニンにいたる代謝経路の障害が関係しているのではないかと考えられています。そのため、自閉スペクトラム症のある子どもの睡眠の問題には、なかなか寝つけない、入眠することができない、 夜中に起きて騒いでしまう、ちょっとしたことで起きてしまうなどが多くあります。ADHDの特徴には不注意・多動性・衝動性があります。ある調査ではADHDのある子どもの入床への抵抗、入眠の困難、中途覚醒、起床の困難、日中の過剰な眠気がある子どもが多い傾向があるという結果があります。また、ADHDのある人の脳には脳内の神経伝達物質であるセロトニンに偏りが生じているともいわれています。そのため、セロトニンを原料としてつくられるメラトニンという体内時計をコントロールするホルモンにも偏りがでてしまうため、不眠や概日リズム睡眠障害に陥りやすいのではないかと考えられています。参考:子どもの睡眠亀井雄一、岩垂喜貴 |保健医療科学2012 Vol.61 No.1 p.11-17Q:来月から6年生になる男の子の母です。ADHDの子は寝ない子・寝付きが悪い子が多いと言われていますが例にもれずうちも小さい頃から寝付きが非常に悪く、そして寝ると朝本当に起きられません少し前までおやすみをした後隠れてタブレットで動画見てたりしていたので没収しました・・・携帯は夜間ロックをかけています。普段は自分の携帯のアラームをかけさせていますが、全く起きず叩いても起きず、ベッドから引きずり降ろしてようやく起きます体も大きくなってきたので正直この起こし方が最近本当に大変です・・・。(中略)同じようなお子さんお持ちの親御さん、どのような対策とられてますか?病院にかかってみた方がいいのかな?と思ったこともありますこちらの質問には以下のような回答が寄せられました。A:息子もADHDとASDです。赤ちゃん時代は、眠りが浅い子でした。幼少期も夜驚や寝言が多かったです。それほど深刻には考えていなかったのですが、高学年になっても寝相がかなり悪く、主治医に相談し、メラトベルと言う睡眠ホルモンの薬を試してみました。(中略)朝起きられない問題は、コロナ禍で生活リズムが不規則になった頃からです。やはり、就寝前の電子機器の使用で就寝時間は徐々に遅くなり、22時半頃になることもあります。朝は休日でも8時起床にしていますが、息子もなかなか起きられません。自分の力で起床することが、自立の一歩だと思っているので、スマホのアラームやAlexaなど工夫して平日は一人で起きるようにしています。寝坊した場合は、就寝時間を早めるように促しています。熟睡できている事が前提だと思うので、1度主治医に相談してみては?違う切り口からの回答なんですが、職場で専門機関監修の睡眠改善セミナーを受けた中で使えそうなテクニックをいくつか。・睡眠環境を整える→寝室に光源を極力置かない。ダウンライトなどを活用。就寝中は家電のランプも塞ぐ(専用シールとかあります)→窓の隙間も塞ぐ。暗幕の活用→温度湿度の管理、寝具、パジャマの見直し(大人もついでにやってみては)・寝る前のスマホテレビ、照明→理想は1時間前にやめる。→リビングが調光できるならば、夕食前あたりから外に合わせて光量も落とす。・朝起きた時の楽しみを作る→朝飲む飲み物を少しリッチにする、朝ごはんへの投資、早起きして好きな映画を見るなど。(弟はゲーム時間確保のために早起きしてました)環境改善は一緒に寝てるのであれば親御さんの睡眠にも作用するのでおすすめです。年齢的にもう別々でしょうか?個人的には「朝起きる目的」があるパターンが学童期は一番効いたなと思います。私自身も見たいアニメがある、夏のラジオ体操でコンプリートして記念品もらいたい、という俗物的な目標があった方が起きてました。参考になれば幸いです。このように発達ナビQ&Aコーナーでは、疑問を投稿すると、ほかのユーザーの方が実体験をもとに回答してくれます。聞いてみたい質問があれば、ぜひ投稿してみてください!【小児科医に聞く】睡眠の大切さ、子どもの睡眠問題、何科を受診すればいい?、発達障害と睡眠障害の関わり、服薬のギモン、睡眠障害がある子どもへの対応などここまで発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたギモンを中心にご紹介しました。ここからは、小児科医の藤井明子先生に子どもの睡眠の重要性、受診のタイミング、睡眠障害がある子どもへの対応、服薬のギモンについてお答えいただきます。A:睡眠には「脳を休める」ノンレム睡眠と、「体を休める」レム睡眠があります。ノンレム睡眠時には、大脳を休めるだけでなく、成長ホルモンが分泌され、脳内の神経ネットワーク形成や細胞の修復、骨・筋肉形成が行われます。また、免疫機能・代謝機能が増強され、疲労の回復に役立っています。レム睡眠時には、脳は活発に活動し夢を見ることが多いですが、全身の筋肉は緩んで、体は休んでいます。睡眠の時間が短い、質が悪いなどで、睡眠の役割が十分に果たされないと、子どもの心身の成長や発達に影響が及ぶとされています。Upload By 発達障害のキホンA:かかりつけの小児科でまずは相談してみましょう。小児科医は、病気のことだけでなく、お子さんの生活全般、生活習慣についてのお困りごとにも対応することが可能です。すでに寝る前の工夫をとられていることもあるかと思いますが、お子さんが寝ないと、保護者も眠れず、親子共に疲弊していることもあります。少しでも工夫できることがないか、一緒に小児科医と考えていけると良いと思います。Upload By 発達障害のキホンA:いろいろ対策をしても寝つきが悪いようなら、受診して相談してみても良いでしょう。1〜2歳のお子さんの寝つきの悪さなら時間と共に改善する可能性もありますが、5歳であると睡眠覚醒リズムが確立される年齢なので、睡眠障害があるのかもしれません。ASDの特性もあるような気がするとのことなので、併せて相談されると良いでしょう。Upload By 発達障害のキホンA:受診すると、必ず薬が処方されるというわけではありません。まずは、睡眠リズムを作るための生活習慣の見直しをおこなっていきます。例えば、布団に入る1時間前のテレビ・インターネットなどは控える。休日・平日関わらず一定の時間に起きる、入眠までにすることの手順を同じ手順で同じ時刻に行うなどです。生活習慣の見直しをおこなっても改善しない場合に、薬の内服も検討します。発達障害に伴う入眠困難なお子さんへは、メラトニン受容体作動性入眠改善薬(一般名:メラトベル)を使用することがあります。メラトニンは、体内時計に働きかけ、睡眠と覚醒を切り替えて、眠りを促す作用があります。Upload By 発達障害のキホンA:易刺激性の薬とは、ASDに対するかんしゃくや、それに伴う暴言・暴力に対する薬のことだと思います。睡眠障害があるお子さんで、易刺激性に対する薬を使用することはあります。薬を使うことで、気持ちが安定し、入眠しやすくなることがあります。副作用として、眠気・だるさ、食欲増進を認めることがあります。主治医の先生と相談しながら、適切な効果のある量を調整していく必要があります。薬は、副作用と効果のバランスを見て、効果がある場合には続けていくと良いでしょう。長期に飲み続けて、依存性のでる薬ではないので、効果がある場合には続けて、適切な睡眠習慣をつくることができると良いと思います。Upload By 発達障害のキホンA:生活リズムの乱れは、抑うつやイライラといった気分の悪さと関連していることが指摘されています。睡眠リズムを取り戻すためには、朝に起きて光を浴びることから始めましょう。ベットを日当たり良い場所に移動し、毎日同じ朝の同じ時間にカーテンを開けて日光が入るようにして、刺激を多くしましょう。朝ごはんを食べることも、リズムをつくる上で大切です。食事が食べられなくても、少量のお湯などを経口摂取することから始めても良いです。午前中の生活を正してから、入眠前の工夫をしていきましょう。テレビや携帯電話、パソコンの使用は、入眠前1〜2時間は控えていきましょう。Upload By 発達障害のキホンA:ナルコレプシーは過眠症の一つで、オレキシン神経系の機能障害が原因です。日中の居眠りだけでナルコレプシーと診断できず、睡眠日誌をつけ、終夜睡眠ポリグラフィ、反復入眠潜時検査を受ける必要があると思います。ナルコレプシーを積極的に疑う場合には、睡眠外来を受診することをお勧めします。しかし、睡眠外来に受診すべきがどうか迷われる場合には、かかりつけの小児科に相談してみましょう。Upload By 発達障害のキホンA:起立性調節障害は、自律神経機能不全により、立ちくらみ、朝起き不良、だるさ、動悸、頭痛を認める病気です。朝起き不良だけでなく、だるさのために午前中の活動がしにくい状態になることもあり、そのため入眠困難になり、睡眠リズムの乱れにつながることもあります。起立性調節障害の治療と加えて、入眠をサポートする薬を使うこともあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害のある子どもの睡眠にまつわるエピソード発達ナビライターの方々の睡眠にまつわるエピソードをご紹介します。子どもの成長に欠かせない「睡眠」。睡眠に関する悩みが解消しないときは抱え込まず、医療機関へ子どもの心身の成長や発達に大切だといわれる「睡眠」。しかし、いろいろと工夫してもなかなか子どもが思うように寝てくれず悩みを抱えている方も多いかもしれません。発達障害がある場合、睡眠障害を併存していることも多く、睡眠の問題は、単純に生活習慣の乱れではなく、何かしらの原因が背景にある可能性もあります。また、わが子が寝ないと、保護者も眠れず、親子共に疲弊してしまうこともあります。小児科医では、病気のことだけでなく、子どもの生活全般、生活習慣について相談することも可能ですので、心配なことがあれば、かかりつけ医に相談してみましょう。発達ナビ「Q&Aコーナー」にあなたのギモンをぜひ投稿してください今回は発達ナビQ&Aコーナーに寄せられた睡眠にまつわるギモンと小児科医の藤井先生からのアドバイスをご紹介しました。発達ナビのQ&Aコーナーに気になることを質問するとユーザーの方が経験をもとに答えてくれます。話題の質問に専門家からアドバイスともらえることも!ぜひチェックしてみてください。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月21日数字好き息子、そろばんに興味をもって…自閉スペクトラム症のあるけんとは、自分の興味のあることにはとことんのめりこむ子どもです。中でも数字は特別大好き。社会面、運動面などに苦手さを抱えていますが、数字に関することは、親もビックリするほどの理解力をもっています。Upload By ゆきみ年中の夏ころ、買い物へ行くと、そろばん教室が新規オープンキャンペーンを行っていました。大きなそろばんが置いてあり、興味を示したけんと。数字が好きだし、そろばんを習うのもいいかもな、と以前から親心で思ってはいましたが、構音障害があり、表出言語が苦手でほぼ単語。座って授業が受けられるのかも心配だったので母としてはあきらめていました。でも本人が「やりたい」とのことだったので話を伺ってみることに。そこは超少人数制の教室。もしかしたらできるかも…と思い、自閉スペクトラム症があることを伝え、教室の了解を得て、試しに入会することにしました。5歳という年齢もあったのか、最初はそろばんを使わず、数字を書いたり、楽しく数字と遊ぶという内容でした。数ヶ月ほとがたつと、けんとが「もっと難しいのがやりたいんだ!」と先生にアピールをするように。先生が試しに…と、そろばんを教えてくださると、スラスラできるようになり、年長で、ほぼ満点で4級を取得。本人もうれしそうでした。急にやる気が低下!負のスパイラルに…Upload By ゆきみところが、3級のお勉強が始まると、間違えることが急に増え、本人のやる気が落ちてきました。間違えることが増えた理由を考えてみると…1.級が進むにつれ、桁数が増えた。視覚的に目で追うのが難しくなり、どこの計算をしているのか分からなくなっている様子だった2.そろばんに慣れ、ものすごいスピードで珠を弾くようになったけれど、手先がとても不器用なので、弾き間違えることが増えた3.書字が苦手。桁が増えるにつれ枠の中に数字を書けずはみ出し、さらに字もグチャっと書いてしまうことにより、読めずに×になってしまうこともあった4.すごいスピードで問題を解くので時間が余るが、こだわりから見直しをしない。ゆっくりやることもしない…などです。けんとの特性と、そろばんが合っていないかも…と思うように。正解率が下がった結果、集中力が続かなくなり、モチベーションも下がり、負のループにはまってしまった気がしました。すると、授業中の立ち歩きが多くなったり、「疲れたから休む」と全然やらなくなったりと、先生が困っている様子になってきたので、私がサポートで同席させていただくことにしました。好きを大切にしたいと決意、現在はアプリで…母が同席し、授業で今からやることの見通しをたて、視覚支援を取り入れました。立ち歩きが減り、座って授業を受けられるようになりましたが、相変わらず正解率は上がらず、モチベーションは低いまま。Upload By ゆきみけんとが昇級試験に受かりたいというのでやっていましたが、あまりのやる気のない態度にイラついてしまい、私もキツク当たってしまうことが続きました。このままでは、けんとが「そろばんを嫌いになってしまう」と思い、小学校1年生の夏、本人と相談をしてやめることにしました。調べてみると、暗算のそろばんアプリ(有料)があることを知りました。けんとに教えたところ「やりたい!」とキラキラ目を輝かせ、毎日のように「やりたい!」と言ってくるようになったので、試しにやってみることに。アプリなので教室に通う必要もなく、私が見ていなくても自分のペースでできるので、私のイライラがゼロ。現在も楽しそうにやっています。もしも、また本人が「そろばん3級取りたい」と言ってきたら、そのときはそろばんを始めようと思っています。小学1年生、現在はプログラミングに…年長の終りころ、タイピングに興味をもったけんと。試しにやってみると、はまって遊ぶようになりました。不器用なので、なかなか上手く指を動かせませんでしたが、楽しかったようで自ら練習を重ねる日々。5ヶ月くらいがたったころ、指を上手に動かせるようになってきました。すると、小学1年生の夏ころ、今度はとあるプログラミングアプリを自分で発見し、「このプログラミングがやりたい!」と言うようになりました。最初は「まだ早いのかな?」と思っていましたが、あまりにも本人のやる気がすごかったので、そのプログラミングアプリを使うプログラミング教室へ習うことにしました。Upload By ゆきみこちらはオンラインで先生に教えてもらっています。プログラミングでステージごとのミッションをクリアするという内容のアプリなので、ゲーム性があり、けんとにとってはとても楽しい様子。やる気があるので上達も早く…私はすでについていけていません。練習を重ねたタイピングもプログラミングに活かせているようです。やる気があふれると、誰にも止められないほどの情熱を爆発させる子なので、その想いを大切にしながら、興味関心を示したものをこれからもサポートしていきたいと思っています。執筆/ゆきみ(監修:鈴木先生より)何でも興味があるものから「まず始めること」が大切です。一方で、最後までやり続けるのは難しく、ピアノやスイミングを途中でやめたりした経験がある人も多いと思います。数字に興味のあるお子さんは2~3歳でもマンションのエレベーターのボタンで覚えてしまうこともあります。プログラミングは私のクリニックへ来ている患者さんにも人気で、習い事で通っておられるお子さんも多いです。そういうお子さんは将来、情報工学系を希望する傾向があります。最終的に自分の興味があった仕事ができればいいのではないでしょうか。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月21日発達障害の専門家が出会った子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、特別支援学校高等部に通う自閉スペクトラム症のある子どもの保護者が抱く、将来への不安にまつわるエピソードです。「卒業後が心配…」特別支援学校に通う自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもの保護者Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/カタバミ解説:特別支援学校卒業後の進路を検討する上で、「障害者手帳」「障害基礎年金」「家族会」がポイントに今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもの特別支援学校高等部卒業後の就労や親なきあとを心配する保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。このケースのように、特別支援学校卒業後の進路として就職を考えている場合は、一般就労(一般雇用または障害者雇用)や福祉的就労(就労継続支援A型または就労継続支援B型)について、事前に確認しておくことが大切です。そのほか、手帳の取得や障害基礎年金の受給についても調べておくと良いでしょう。ポイント1.知的障害がなく療育手帳を取得していない場合精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。一般雇用だけでなく、障害者雇用枠に応募ができるなど可能性が広がりますので、一度かかりつけ医に相談してみることをおすすめします。ポイント2.障害基礎年金の受給について障害の状態などの受給要件が定められているため、「初診日や障害の状態を証明できる診断書」「障害者手帳」などを持って、年金事務所や市区町村の担当窓口で相談できます。なお、障害基礎年金における障害要件(障害等級)とは、障害の状態を分けたもので重いものから1級・2級・3級となり、1級・2級に該当すると障害基礎年金の受給が認められます。なお、この場合の障害等級とは、労災保険の障害年金のものとは違うものです。ポイント3.「家族会」に参加し情報交換をする「家族会」では、同じような悩みを持つ保護者のみなさんと交流し、情報交換をすることができます。一度探してみてはいかがでしょうか。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月20日