『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?現役不動産屋が教える仕事とカネの裏事情』(齋藤智明著、宝島社)とはユニークなタイトルです。花沢不動産といえば、アニメ『サザエさん』にも頻繁に登場する磯野家のご近所。娘の花子はカツオの小学校のクラスメートで、「アハハ!」という豪快な笑い声と「磯野くーーん!」と呼ぶダミ声が印象的な女の子。将来はカツオと結婚して花沢不動産を継ぐという夢を持っています。花沢不動産もたびたび登場しますが、たしかにいつも店内にお客はゼロ。それなのに、社長で花子の父・金太郎はカツオにお寿司やうなぎをご馳走するなど、むしろ羽振りがよさそう。こうした“お客がいないのに潰れない”不動産屋、身近でもけっこう目にしますよね。そんな不動産屋あるあるについて、自らも不動産会社で働く著者が著したのが本書。そのなかから、タイトルにもなっている“客のいない花沢不動産の羽振りがいい不思議”の項に注目してみましょう。■花沢不動産のメイン業務は「賃貸管理」著者によれば、不動産会社にはデベロッパーとも呼ばれる「開発型」や不動産の有効活用に関する提案を行う「コンサル型」など、12もの業態があるそう。各社、このうちいくつかの業務を行い利益をあげるわけですが、花沢不動産の場合、「賃貸仲介型」と、大家さんから賃貸物件をあずかり管理する「賃貸管理型」の業務をメインに行っているようだ、と著者。「賃貸仲介型」は、文字通り賃貸物件を探している人々に物件を仲介し、仲介手数料を得る業態。窓にはびっしりと広告が貼られ、わたしたちが部屋を借りようと思ったときに訪ねる場所です。しかし、花沢不動産には、そんなお客さんがいたことはありませんよね。そこで重要になってくるのが「賃貸管理型」業務です。■賃貸管理型は縁の下の力持ち的な存在!「賃貸管理型」は、大家さんから直接物件の管理を任され、庭や建物の共用部分を定期的に掃除したり、家賃を集めたり、事故やクレームの対応をしたりと日々の建物の管理をします。部屋を借りようと思って名前の通った不動産会社の店舗を訪ねると、営業マンが適当な物件をみつくろい、その場で電話をかけて「○○アパートの××号室は案内可能ですか?」と確認しますが、その相手こそ、この賃貸管理型不動産屋。花沢不動産のような賃貸管理型の不動産屋は、そうした内見に備え、普段から空き物件を訪ねて換気をしたり、室内のほこりをきれいに掃除したりとメンテナンスを怠りません。隠れた苦労が多い賃貸管理型の不動産会社は、まさに縁の下の力持ちといえそうです。■花沢不動産のお客さんは地域の大家さん借り手が部屋を気に入れば契約成立。ここからやっと、賃貸管理型不動産会社のもうけが発生します。まず契約時。借り手は物件を仲介した不動産会社に仲介手数料を支払いますが、物件管理型の不動産会社は大家さんから仲介手数料を受け取ります。さらに、物件を管理すると定期的な収入が見込めます。まず、家賃の集金代行手数料。相場は家賃の3~5%で、かりに5%とすると家賃10万円×0.05=5,000円。部屋数100室、家賃平均10万円の物件を管理すれば、これだけで毎月50万円の収入になります。このほか、入居者から鍵交換手数料、保証会社をつければ保証委託契約の手数料、火災保険加入手数料などなど。2年ごとに訪れる賃貸契約の更新時手数料は、貸し手と借り手双方からダブルで受け取っているのだそう。花沢不動産の主なお客さんは、地域の大家さんたちだったのです。店内にお客がいなくても経営が安定しているのは、大家さんたちをしっかりとつなぎ止めているからなんですね。*このほか本書では、なかなか知ることのできない不動産業界の裏事情がたっぷり紹介されています。興味深いのは、良心的な不動産会社を見分ける方法。たとえば、賃貸物件を借りたときに支払う「賃貸仲介手数料」、“仲介手数料1ヶ月分”という表示を見かけますが、じつは規定額は家賃の0.5ヶ月分で、利用者の承諾があれば1ヶ月分まで受け取れるというルールなのだといいます。つまり、知らないうちに必要以上の金額を支払っている可能性があるのです。逆に“仲介手数料0円”の場合も、礼金を2ヶ月分としてその半額を大家さんから受け取るケースがあるとか。いずれにしても、良心的な対応を期待できる会社ではありません。雑学としてだけでなく、実用的な知識も満載。物件を借りたり買ったりする前にも読んでおきたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※齋藤智明(2016)『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?現役不動産屋が教える仕事とカネの裏事情』宝島社
2016年04月03日「自分は本番に強い」と断言できる人もいるにはいるのでしょうが、しかし現実的には「ついつい緊張してしまう」というタイプのほうが圧倒的に多いはず。『緊張しても乗り切る!「あせらない自分」のつくり方』(森川陽太郎著、大和書房)の著者も、それは決して特別なことではないのだといい切ります。どれだけ焦らないように準備をしたとしても、本番になれば少なからず緊張してしまうものなのだと。現在はメンタルトレーナーでありながら、「元サッカー選手」という変わった経歴を持つ人物。26歳での引退後に心理学やメンタルトレーニングを学び、これまでに多くのビジネスマンやトップアスリートのメンタルトレーニングを受け持ってきたのだといいます。興味深いのは、「自分の力を正しく把握する」ことこそが大切なのだという考え方。まずは「焦りがあって当然なのだ」と自覚し、そのうえで「焦らない人」ではなく「焦ってもできる人」を目指す。そうするにあたっては、「自分の力」と向き合うことが大切だと主張するのです。そしてその際、意識しておくべき大切なことがあるといいます。■「0か100か」の完璧主義は危険著者によれば、自分の力を発揮することが苦手な人の多くは、完璧主義の傾向があるのだそうです。そしてこのことを考えるにあたって無視すべきでないのは、完璧主義の人は「0か100か」という尺度で自分を評価してしまいがちだということ。そういうタイプは、すべてが完璧であれば満足できるものの、少しでも間違ったりミスがあったりすると、自分を「0点評価」してしまうというのです。たとえば、会議の時刻までに間に合わせようと思って資料をつくったところ、図表のデータを間違ってしまったとします。そんなとき完璧主義の人は、「やっぱり焦るとダメだな」「焦って失敗してしまった」という具合で落ち込み、自分の能力そのものを否定してしまうということ。しかし、この考え方に問題があることを著者は指摘しています。■間違えても現実的に評価してもよいそもそも、物事はすべて完璧にいくとは限らないもの。データを間違うくらいのことは、誰にでも起こりうることであるわけです。なのに、そういうところでいちいち自分を0点評価していたら、いつまでたっても自分に満足できなくて当然。もちろんミスはないに越したことはありませんし、資料のデータは正しいほうがいいに決まっています。しかし図表のデータをひとつやふたつ間違えたとしても、会議自体は成立するはず。間違った箇所については、「すみません。間違えました」と告げ、正しい数字を口頭で伝えれば支障なく乗り越えられます。つまり、「焦ってちょっとデータを間違ってしまったけれど、それ以外の部分で伝えたいことはひととおり話せたから、70パーセントの出来かな」と現実的に評価してもよいということです。■細かく数値化した自己評価が大切!では、焦った状況において、自分がどれだけのパフォーマンスを発揮できたのかについては、どのように判断すればいいのでしょうか?そのためには、その時々の自分の出来を、具体的な数字で表してみることが大切なのだと著者はいいます。「焦っても60パーセントはできた」「75パーセントはできていたと思う」というように、細かく数値化して自己評価してみることが大切だというのです。著者は「焦った自分」を受け入れるための手段として、一週間に一度、10分程度でもいいので、自分が焦っているときのことを考える時間をつくってみることを勧めています。そして「今週の焦ったことベスト5」をノートに書き出してみると、自分の焦りのパターンや傾向がつかめるようになるというのです。それに加え、同じノートに、「焦っても何パーセントできたのか」も記入しておくのもひとつの方法だといいます。■実際どれだけできたのかを把握する失敗したとき、「ダメだった」のひとことで片づけるのは、もしかしたらいちばん簡単なことなのかもしれません。ただし簡単であったとしても、そこから前向きななにかが生まれる可能性は著しく低いと考えるべきでしょう。つまり大切なのは、たとえ失敗したとしても、「実際にはどれだけできたのか」を把握しておくこと。それこそが次のステップへとつながり、ひいては「あせらない自分」を形成していくということです。*他にも本書では、さまざまな角度から「あせらない自分」をつくるためのメソッドを公開しています。緊張しがちだという方は、ぜひ参考にしてみてください。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※森川陽太郎(2016)『緊張しても乗り切る!「あせらない自分」のつくり方』大和書房
2016年04月03日「なかなか英語が話せない」「リーディングはできるけれど、リスニングがダメ」「ネイティブと話すとき、コミュニケーションが不安」英会話についてこのような思いを抱いている方も多いと思いますが、そこには大きな理由があると説くのは、『60万人が結果を出した「ネイティブ思考」英会話トレーニング』(ダン上野Jr.著、あさ出版)の著者。こうした悩みを持つ人が一向に減らないのは、大半の日本人が「間違った方法で英語を勉強している」からだというのです。いいかたを変えれば、思考回路に違いがあるということ。具体的に考えてみましょう。■日本人が英語で文を作ると「返り読み」が問題に日本人の場合は、(1)まず頭のなかで英語を日本語に訳し、(2)理解し、(3)伝えたいことを英作するという順序を踏むはず。いっぽうネイティブは、(1)英語を理解し、(2)そのまま英語で伝える。このように違うわけで、そこを理解したうえでトレーニングをしないのなら、英語は上達しなくて当然だということです。最大の問題は、日本語の語順になおした読み方である「返り読み」。これがクセとして染みついてしまっているため、いざ英語を話そう、聞こうというときになって、いろいろ無理が生じてくるのです。だとすれば当然ながら、そこには日本語と英語の「語順の問題」が絡んでいることになるでしょう。■センスグループごとに話す「SIM方式」が便利しかし、それなら語順の問題さえクリアすれば、「返り読み」をすることもなくなるはず。そこで重要なのが、英語と日本語の「語順の違い」を認識したうえで「英語の語順」で考えるトレーニングだといいます。次のように「センスグループ」(意味のまとまり)ごとに英語を区切り、そのつど内容を理解していくトレーニングをすればいいということ。(例)We are delighted(我々はとても喜んでいます)to have found(見つけて)a perfect partner(最高のパートナーを)in SK Foods.(SKフーズという)(38ページより)つまりセンスグループごとの情報を、返り読みせずにどんどん脳にインプットしていくのです。これが、著者のおすすめする「SIM方式」。この方法で英語を読むと、「英語の語順」で文頭から文末まで一直線に「返り読み」することなく理解することが可能。最後のセンスグループを読み終えると同時に、文章全体の意味も取れているので、スピーディに、正確に英語が理解できるようになるわけです。日本人がしゃべり出すまでに時間がかかってしまうのは、頭のなかで英作文してから「一気に」話さなければならないと誤解しているから。しかし「センスグループごと」に「英語の語順」で「少しずつ」話せば、会話のレベルはぐっと上がるのです。■「ニュース英語」が英語学習に最適な5つの理由しかし英語学習で大切なのは、やはり継続することです。そこで著者がオススメしているのが「ニュース英語」を活用すること。なぜニュース英語が最適なのかについては、次の5つの理由があげられるといいます。(1)「発音」が正しくクリアニュース英語は高い公共性を目指しているため、発音が正しくクリア。だからこそ、「ニュース英語は英語学習に最適である」といえるのだそうです。(2)癖や訛りのない「標準語」であるこれも(1)に通じますが、「ニュース英語」は当然ながら、癖や訛りのない標準語によってつくられているもの。ですから安心して学習でき、自信を持って話せるようになるわけです。(3)「文法」がしっかりしている。ニュースの公共性という観点から、正しくしっかりした「文法」が使われています。そこで、意味や内容を正確に把握できるようになるということ。(4)現在の社会を反映した「時事英語」が使用されているこれはとても重要かもしれません。ニュース英語を学ぶことにより、時代の先端をいく英語が身につくのですから。また生活に身近な話題が多いので、学習意欲も自然と高まっていくことに。(5)多種多様で広範多岐にわたる内容知識が豊富になり、世界情勢に詳しくなることも可能。だから、実際のビジネスでもすぐに役立つわけです。*英語のニュースを見る習慣をつけるだけで英会話力が高まるなら、それはぜひ試してみたいところ。そうすれば「SIM方式」も、無理なく身につけられそうです。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※ダン上野Jr.(2016)『60万人が結果を出した「ネイティブ思考」英会話トレーニング』あさ出版
2016年04月02日みなさんは不動産投資に興味はありますか?興味がある人のなかには、アパートやマンションの大家さんになって賃料をもらいたい賃料収入派、あるいは購入価格より相場が値上がりしたタイミングで売りたい売却派もいらっしゃるでしょう。または、興味があっても、難しくてなかなか手が出せないという人も……。そこで今回は、キャピタル・アドバイザリー株式会社不動産投資部長で、累計1,000億円以上の投資実績を有する和田一人さんの著書『儲かる不動産投資の教科書 買うべき物件、買ってはいけない物件』(扶桑社)をピックアップ。不動産投資のビギナーにもわかりやすく書かれている本書のなかから、不動産投資で儲けるための8つのルールをご紹介したいと思います。■1:物件を安く買おうと思ってはいけない物件を安く買うことは、不動産投資における成功の必須条件ではないようです。著者は「安く手に入れることに固執している人は、失敗しそうな物件ばかり選んでしまっている気がしてならない」といいます。特に素人の場合は、一度の過ちが致命傷となりかねません。なにより認識しておきたいのは、「利回りが高い=物件が安い」という図式にはなっていないということだとか。特に物件を選ぶ際は、「ローン返済額+運用費用<現況利回りで賃料収入」の条件を満たすものに的を絞ることが基本であるようです。■2:世のなかの不動産は2種類しかない不動産は自宅用・投資用に関わらず、二種類に分類できるそうです。それは(1)「資産の再現性」がある不動産と、(2)「資産の再現性」がない不動産。「資産の再現性」とは「末代まで延々と繰り返し、稼ぎ続けてくれる」ことを意味しています。建物が古くなり、取り壊して新たに立てなおすとき、どうやっても採算が合わなくなる土地が存在するのです。そんな収益性が失われてしまう物件は「資産の再現性」がない不動産であり、トランプのババのような存在。引いて持ち続けてしまったら、ゲームオーバーになってしまうのです。■3:資産の再現性が高い不動産を選ぶ「資産の再現性」がある不動産とは、「購入してそこに新築の建物を建てても採算が合う土地」。「資産の再現性」があるか否かは、建物を新築した場合の利回りを計算して、その利回りで買う人がいるかどうかを検証することでわかるようです。時間が経過すればするほど、限りなく土地のコストがゼロに近づいていくのが「資産の再現性が高い不動産」といえるそうです。■4:賃料単価から資産の再現性を測る地方になればなるほど、賃料単価(賃料(共益費込み)÷貸床面積(坪))が安くなって、賃料収入に対して諸費用が占める割合も高くなるそう。地方の鉄筋コンクリートマンションでは費用が40~50%近くを占めているケースも多いとのこと。著者は、地方の物件の「賃料単価」の低さは見過ごすべきでないといいます。■5:赤字で売却しても損しないこともある「完済まで20~25年くらいのローンを組んで不動産に投資し、それから10年くらいが経過すると“バラ色”の状況が訪れるケースがある」と著者。それは、売却価格は薄価より低いけれど「ローン残高+自己資金」よりも高いというバランスになった場合です。数式だと、「薄価>売却価格>ローン残高+自己資金」となります。買った金額よりも安く売ると損をしているように感じてしまいそうですが、そんなことはないそう。会計上は赤字に陥っていても、実際のお金の出入りの収支は黒字になるというのです。つまり、出て行くお金(ローン残高+自己資金)よりも入ってくるお金(売却価格)のほうが多く、手元にお金が残るのですが、薄価よりも安い転売価格で処分できると会計上は赤字になるので税金も納めなくて済むのです。■6:フルローンはリスクが大きいので避ける「自己資金ゼロからの不動産投資!」などのキャッチコピーで物件の勧誘をする業者は少なくないのですが、それだけリスクも高いということを知っておかないと大変。計算していくと満足できるレベルの黒字を確保するのは難しく、明らかにマイナスが発生する状況となりそうです。空室率によっては、本業の収入から回すか、貯蓄を切り崩すなどの手を打たないと、ローンの返済が難しくなる場合があるでしょう。本来のフルローンは資金的にかなり余裕のある人が活用すべきもの。■7:「苦しくなったら転売すれば……」は甘い!不動産に限らず、あらゆる相対取引に共通することですが、「売却する際にはそれを買う側がどう捉えるか、というポイントから条件面を吟味するべき」と著者。売り手が好条件を思っていても、買い手のほうはそうは思わない場合もあるそうです。「欲を出さず、トントンで売れればよし」と思っても、購入時の諸経費や売却時の仲介手数料などの負担が数百万にも上るのです。プラスマイナスゼロさえ、簡単に叶わないかもしれません。■8:築20年前後の鉄筋コンクリート物件は危ない築20年前後の物件はよく売り物物件として出回っていますが、これは売主が売りたくなる時期だから。この時期には大規模修繕工事が必要になってくるので、その費用を負担するより売ったほうがいいと判断しているもののようです。決して軽視できない出費なので、きちんとした備えがなければ、追加でローンを借りるなどの必要も生じてくる問題だそうです。注意しておきましょう。*その他、不動産投資する場合は買った後にトラブルにならないように、事前に自分の目でチェックしておかなければならないそうです。たとえば隣地との境界線、外観や屋根の様子、道路と間口の幅や、図面と現状の相違、嫌悪施設(墓場など)の有無など。難しい不動産投資ですが、成功すれば「経済、時間、安心」の3つを叶えることができるそう。今後、不動産投資を考えている人には、まさに教科書のような本。ぜひ参考にしてほしいと思います。(文/齊藤カオリ) 【参考】※和田一人(2016)『儲かる不動産投資の教科書 買うべき物件、買ってはいけない物件』扶桑社
2016年04月02日集中のコツは、心の強さに頼るのではなく、「集中力を引き出すワザ」を知り、使いこなすこと。そう主張するのは、『机に向かってすぐに集中する技術』(森健次朗著、フォレスト出版)の著者。現在の肩書きは「集中力プロデューサー」ですが、それ以前はミズノ株式会社に勤務していたという人物。10年間のべ15万人の人々に対し、「どうすれば集中力を高められるのか?」を指導してきたのだそうです。その当時には、シドニーオリンピックで12個の世界新記録を生んで注目を浴びた、「サメ肌水着」を開発した実績をお持ちです。本書ではそのような実績をベースとして、集中力を自由自在に引き出すためのメソッドを紹介しているのです。ところで著者は、本書のなかで興味深い主張をしています。リラックスした状態で集中力を持続させるためには、深呼吸が欠かせないというのです。しかも、ひとことで深呼吸といっても、ただ深く気を吸って、履けばいいというものではないのだとか。深呼吸にも、きちんとしたやり方があるということです。リラックスするためにいちばん効果的な深呼吸として、著者は“5、3、8深呼吸”を勧めています。あまり聞きなれない名称ですが、いったいこれはどんな深呼吸なのでしょうか?■息を吐き出す作業を意識するまずは、イスに腰掛けます。そして座った状態で方をギュッとあげ、ストンと脱力。その後、膝の上に両手を置き、手のひらを上に向けます。次に軽く目を閉じ、鼻で5秒間、大きく息を吸い込みます。このとき、キレイな空気を全身の細胞の隅々まで届けるイメージで、息を吸い込むといいのだとか。鼻で5秒間、息を吸い込んだら、次は3秒間、息を止めます。これは、息を吸い込む作業、息を吐き出す作業を、それぞれ明確に意識させるためなのだそうです。「吸って、吐いて」「吸って、吐いて」という作業を単純に繰り返しているだけだと、その境界線が曖昧になってしまいがち。しかし一度息を止めれば、そこに境界線が生まれることになります。だから、息を吸う作業も白作業も、しっかりと意識的に行うことが可能になるというわけです。■気が散ることを解消できる!息を3秒間止めたあとは、イヤな気持ちや体のなかの汚れた空気を吐き出すイメージで、ゆっくり吐き出します。なお、口から息を吐く時間は、8秒間。5秒吸い、3秒止めて、8秒吐く。この作業を、3回ほど繰り返すというのです。これが、著者が奨励する深呼吸の正しいやり方。5+3=8だから、5、3、8深呼吸だというわけです。たったそれだけで、「ああ、リラックスできているな」と実感できると著者。そればかりか、「気が散る」ということを解消できるのだともいいます。■呼吸に集中すると効果を発揮「5秒、3秒、8秒」という深呼吸は、3回やるだけで大丈夫。しかし、目を閉じて、この作業を5~10分間行うと、それは「瞑想」になるのだそうです。シリコンバレーでブームになっていることからもわかるとおり、瞑想にはリラックス効果があるといわれています。目を閉じて深呼吸を繰り返すわけなので、リラックスできるのはむしろ当然だといえます。頭を空っぽにしようとすればするほど余計なことを考えてしまいがちですが、そんなときに効果を発揮するのが、呼吸に集中すること。「5秒、3秒、8秒」という呼吸のタイミングだけに、とにかく集中するということです。呼吸に集中することさえできれば、雑念がわきにくくなり、瞑想のリラックス効果を得やすくなるのだといいます。深呼吸と違って、瞑想には5~10分程度の時間を要するわけですから、忙しい人は実践がなかなか困難かもしれません。だからこそ瞑想は必須ではないものの、もし時間がとれるのでれば試してみてほしいと著者はいいます。*呼吸に集中すると、雑念がわきにくくなり、瞑想によってかなり高いリラックス効果が得られるそうです。ちょっとした空き時間を利用するだけで、気分が変わるかもしれません。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※森健次朗(2016)『机に向かってすぐに集中する技術』フォレスト出版
2016年04月01日「世界中を回って、1000人の髪を切る」そんな無謀とも思える夢を実現させた若き美容師がいます。その旅の記録が、『世界を知るために旅に出たら日本を知る旅だった世界1周1000人ヘアカット』(桑原淳著、宝島社)。本書には、いましかできないことをしたいと25歳からの1年2か月をかけアジアやヨーロッパ、南米と合計28ヶ国をめぐったなかでの出来事や、感じた思いが綴られています。見知らぬ土地で、言葉も通じない人々に「髪を切らせてほしい」と声をかけることでつむいだ1000の出会い。その記録から見えてきたのは、旅をするすべての人に役立つ4つの桑原流・旅を楽しむ方法でした。■1:入念に準備をする長い旅には相応の資金が必要ですし、海外をひとりで歩くには英語が欠かせません。桑原さんは、3年ほどかけてこの「資金」と「英語」を準備。なかでも、英語習得には試行錯誤を繰り返したそう。ありとあらゆる勉強法を試したあと、たどり着いた結論は「とにかく話すこと」。シェアハウスに住んで外国人の友人を積極的につくり、ひたすら英語で会話することで、語学力を磨いたのだといいます。その結果、世界で1000人ものヘアカットを成し遂げた桑原さん。思い立ったらすぐ行動!の熱い気持ちがクローズアップされがちですが、入念な準備も欠かせない要素です。■2:ひたすら歩く!記念すべき1か国目、「韓国ではとにかく歩いた」という桑原さん。桑原さんの旅のスタイルは「移動はなるべく自分の足で歩く」。そうすることで、訪ねた場所の「点」としての思い出だけでなく、どんな人がいたのか、どんな街だったのかを記憶できるといいます。また、街の熱気をじかに感じることができ、地元の人々が集まるお店にも入れます。通り一遍の観光では味わえない体験としての旅がそこにあります。■3:相手を喜ばせる美容師である桑原さんの旅の目的は「出会った人の髪をカットさせてもらうこと」。4か国目に訪れたタイ・プーケットでは、人々から当初「これ買わない?」「タクシー乗らない?」「マッサージしない?」と声をかけられたという桑原さん。それが、1人目の髪をカットした直後、「サンキュー!マイフレンド!」に変わったのです。桑原さんは、相手を喜ばせることができたからこそ「ひとりの観光客から友だちにレベルアップできた」といいます。専門技術がなくても、相手を喜ばせたいという気持ちは万国共通。お金を払ってでかける旅は、どうしても喜ばせてほしいという気持ちが強くなるもので、喜ばせたいという視点は新鮮です。■4:予定を決めすぎない16か国目に訪れたイタリアでは、当初の予定にはなかったベネチアへ。美しい夕陽を目にし、偶然のなりゆきに感謝した桑原さん。桑原さんが旅の始まりに決めることは2つだけ、観光のメインとなる場所と、行き帰りの交通手段。あとはすべてその時々の自分次第です。その自由さが、新しい出会いや次の目的地を運んでくれるといいます。決めすぎない旅で、思いもよらない出会いを体験してみるのもおもしろそう。■5「ありがとう」を現地語でいうアジアやヨーロッパの国々では他の国の旅人たちとビールを飲みながら楽しい時間を過ごした桑原さんですが、25ヶ国目のアルゼンチンでは、そのチャンスがグッと減ったそう。その理由は、スペイン語が話せないから。もちろん訪れる場所の言葉が話せれば最高ですが、なかなかそうはいきません。そんな時、桑原さんが心がけているのが「ありがとう」だけは現地語で言えるようにしておくこと。たったひとことでも、旅人の感謝の気持ちが伝われば、距離を縮めるきっかけになります。*子どものころから「東京の有名な街で美容師をしたい」と夢見ていた桑原さん。念願かなって20歳で青山の美容院に就職しますが、2年後、転勤をきっかけに志半ばで退職し、挫折を経験。悩んだ末、「後悔しないように生きよう」と、世界をまわりハサミでいろんな人に出会っていく、と決めました。「世界を旅して1000人の髪を切るなんて、最初は無理だと思っていた」といいますが、日本出国から1年2か月後、ペルー・クスコで1000人目のヘアカットを達成。ゴールで手にしたものは、たくさんの素晴らしい出会いと感謝の気持ち、新たな夢でした。本書では、28ヶ国の旅の様子が美しい写真とともに紹介されています。生活感あふれる街中で、美しい砂漠や海辺で、ときには世界遺産を背景に髪を切る旅。読み終わったとき、「旅に出てみようかな」と思える1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※桑原淳(2016)『世界を知るために旅に出たら日本を知る旅だった世界1周1000人ヘアカット』宝島社
2016年04月01日みなさんにとって「幸せ」とは、「お金」とはなんですか?そう問われたとき、自分の価値観を示せる人はどれくらいいるでしょう。でも、考えてみると「幸せ」の基準を持たずに幸せを追い求める、「お金」の意味を考えずにお金を使う、なんてちょっとおかしな話です。そんな矛盾に気づかされるのが、『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』(藤田大雪著、日本実業出版社)。本書に書かれているのは、「お金」や「幸せ」について深く考えずに生きてきた若者と、偶然知り合ったひとりの不思議な老人との間で繰り広げられたやりとりです。その中から、「結婚」に関する会話を覗いてみましょう。■結婚はコスパが悪いものなのか物語にまず登場するのは、サトル27歳。独身でごくふつうのサラリーマンの青年です。サトルはある日、SNSを通じてひとりの老人・ソクラテスさんと知り合います。公園の青いテントに住み着いたソクラテスさんと、友だちや恋愛、仕事といった5つのテーマについて語り合い、“善く生きる”ことについての考えを深めていくのです。ある日、サトルはソクラテスさんに「結婚はしたくない。なぜならお金や時間がかかる割に得られるものが少ないから。“コスパ(コスト・パフォーマンス)”が悪いんです。僕は経済的にも精神的にも自由でいたい」と打ち明けます。さて、この言い分にソクラテスさんはどう答えるでしょう?■お金の有無は幸せとは関係ないその前に、ソクラテスさんのお金に対する考え方をまとめておきましょう。ソクラテスさんは、「人間の価値は『なにを持っているか』ではなく『どう生きたか』で決まる」といいます。お金持ちかどうかと、幸せかそうでないかは、直接的には無関係。たとえ貧乏でも魂が高貴なら幸せで、どんなにお金を持っていても、魂が卑しければ不幸せだと考えるのです。「そうはいっても、お金がぜんぜんないと、人間やっぱりみじめで不幸せになりますよね?」と問うサトルに対して、ソクラテスさんの答えはこうです。「貧しい人たちは、貧乏そのもののために不幸せになるわけじゃない。お金がないことからくる生活上の余裕のなさが、他者に対する優しさと思いやりを難しくするから、そうやって傷つけられた魂のために、みじめで不幸せになっていくんだ」そして、お金を大切な人のために使ったり、立派で美しいことのために使ったりできれば、魂が満たされる“よいお金の使い方”になるものだと説くのです。■相手に幸せを与えられるどうか結婚式ひとつとっても300万円かかると嘆き、「コスパが悪いから、結婚はしたくない」と主張するサトルに、ソクラテスさんは淡々と、そしてはっきりといいます。「自分のことを、結婚から利益を受け取る受益者のように考えるのは間違いだ。人はむしろ、結婚を通じて、相手に幸せを与えられる人間にならなきゃいけない。だから考えるべき問題は、自分は結婚を通じて相手を幸せにできるのかということであって、結婚が自分になにをもたらすかということではないんだ。結婚で幸せになりたければ、まずはキミ自身が相手のことを幸せにできる人間になるしかないんだよ」異質なものの価値を共通のものさしで量ろうと「貨幣」が発明されたのも、古代ギリシア時代のこと。貨幣の登場以来、人は「お金」と「幸せ」のバランスを取ることの難しさの中で生きてきました。お金という明確なものさしで幸せを量ろうとすることは、とてもわかりやすいもの。結婚をコスト・パフォーマンスで考えようとするサトルの考え方も、ある種自然な発想です。対してソクラテスさんの考え方の根本にあるのは、いつもたったひとつの問い。「“善く生きる”とはどういうことか」の一点です。人生で生じる悩みはすべて、人間関係も、仕事も、恋愛や結婚も、お金にまつわる悩みでさえ、この問いに収束するのです。ソクラテスさんは、ひとつひとつの前提を固めながら、順を追ってそのことを証明していきます。*著者は古代ギリシャ哲学の研究者。訳書である『ソクラテスの弁明』(kindle版)はAmazon kindleの哲学・思想部門で1位を獲得しています。本書は創作ですが、下敷きになっているのは紛れもなく哲学者ソクラテスの考え方。ここに描かれるソクラテスさんの考え方をどう受け取るかは読む人次第。けれど、紀元前400年代に活躍したソクラテスの主張と姿勢が、21世紀の日本を生きる私たちにも当てはまることに、きっと驚きます。さまざまな価値観があふれる現代だからこそ、人生の道しるべにしたいソクラテスの哲学。会話形式で読みやすく書かれた本書を通じ、そのエッセンスに触れてみてはいかがでしょうか。(文/よりみちこ) 【参考】※藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社
2016年04月01日物事を習慣化するのは、現実的にとても難しいこと。何度もチャレンジするも、そのたびに失敗してしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、習慣化がうまくいかないことには理由があるのだと説くのは、『自分を変える習慣力』(三浦将著、クロスメディア・パブリッシング)の著者。人材開発コンサルタント・エグゼクティブコーチであり、「コミュニケーションの質が企業を変える」という観点から、アドラー心理学やコーチングコミュニケーションに基づいた手法によって企業の人材育成や組織開発をサポートしているのだそうです。そんな著者によれば、習慣化がうまくくいかないのは、自分自身が意識していない心の奥底の深いレベルで、潜在意識の強烈な抵抗を受けているから。気持ちは前に進もうとしているのに、心の奥では気づかないうちにブレーキがかかっている状態だというのです。そこで潜在意識の特性を理解して抵抗を受けない状態にし、潜在意識を味方につける。それこそが、習慣化を進めるために大切だということ。ただ理屈ではわかっていても、ついつい三日坊主になってしまいがち。だとすれば私たちは、どのように三日坊主を回避すればよいのでしょうか?■自分を観察してやり方を見つける取り組むべき習慣が見つかり、その習慣化の具体的な目標が決まったら、次は「自分に合ったやり方を見つける」段階。その際に大切なのは、「自分を知る」ことだと著者。そのためには、自分のクセや行動パターンを観察することが肝心。自分を観察しながら、もっとも快適な状態で習慣化に取り組める環境をつくることが大切だというわけです。たとえばダイエットを例に挙げるなら、「運動で何割、食事コントロールで何割減らすか?」というような詳細を考えてみるべきだということ。■行動と快の感情と毎日結びつける習慣化の行動をすることと、快の感情を結びつけることも大切なポイント。たとえば誰にとっても、よい思い出と結びついた曲があるもの。そんな曲を、習慣化の行動をしているときに聴くことが効果的なのだそうです。朝のジョギング中に聴くなど、「その行動の最中に聴く」ことによって、快の感情が高まっていくことに。そしてそれを毎日繰り返すことで、潜在意識が「習慣化の行動をしていること=快」と認識しはじめるというわけです。すると潜在意識が安心し、深い結びつきができてくる。そして、行動の持続のために潜在意識が力を貸してくれるようになるというのです。また、そのお気に入りの曲を、習慣化の行動をしているときだけ聴くというルールをつくっておくと、さらに効果的だそうです。■行動しやすいパターンを見つけるもうひとつ重要なのは、「行動しやすいパターンを見つける」こと。たとえば、「その日にあった“よかったこと”を、毎晩寝る前に1行以上日記につけておく」ということを習慣化したいとします。しかし寝る前といっても、お風呂から上がったあと、歯磨きをしたあと、床に着く直前などさまざま。そのなかから、どの行動をする前や、どの行動をしたあとが自分にとっていちばん行動しやすい時間なのか、パターンを試してみるべきだということ。■目標が同じパートナーを見つけるそして、習慣化の種類によってはもっとも強力な方法が、「一緒に習慣化に取り組むパートナーを見つける」ことなのだといいます。なぜならダイエットや運動、英語の上達など、同じ目標を持つパートナーと一緒に進めていくことによって、やる気が高まり、中だるみを防ぐこともできるから。さらにもうひとつのメリットは、習慣化のやり方について、お互いの意見や実体験からのアイデアを交換できること。それにパートナーがいると、お互いに刺激し合うことができたり、楽しく進めたりすることが可能になるわけです。なお経営者やグループリーダーの方は、会社ぐるみやグループ全体で習慣化に取り組むのもよいそうです。昼休みの20分程度のジョギングや、有志だけの朝食ミーティングなど、ダイエットや早起きの習慣をみんなで促進していけるアイデアは数多いので、やってみる価値はあるということです。*習慣化にとって大切なのは、「がんばらない」「無理をしない」ということだと著者はいいます。習慣化に関するひとつひとつの活動が負荷のかかりすぎるものだと、長続きしないわけです。だからこそ、最初は成果が出ることを期待せず、定着に重きを置く姿勢が大切。それが、習慣化の成功につながるということです。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※三浦将(2016)『自分を変える習慣力』クロスメディア・パブリッシング
2016年04月01日「憧れのカレといい感じになっても、なぜか結局フラれちゃう……」そんな悩みを持つ女性におすすめしたいのが、『女子の兵法』(佐伯紅緒著、セブン&アイ出版)。脚本家・小説家として活躍する著者が、孫子をはじめ古今東西の兵法を恋愛に読みかえ、自身の失敗談もさらけ出してまとめた女子のための恋愛兵法書。「自分を見つめ直す」「出会いをモノにする」「ターゲットを絞る」「ターゲットをパートナーにする」「パートナーを結婚に持ち込む」「釣られた魚にならない」の6つのシチュエーション別に、合計70の戦略が見開き2ページずつコンパクトに、具体例とともに紹介されています。そのなかから、ハッピーな恋愛を呼び込む5つの鉄則に耳を傾けてみましょう。■鉄則1:安売りしない「算多きは勝ち、算少なきは勝たず、而(しか)るをいわんや算なきに於(お)いてをや」「あこがれのアーティストにヤリ捨てされた女性」というショッキングなケースとともに紹介されているのが、孫子のこの言葉。計画や準備が勝利をもたらすのであり、それらのない戦いは論外。戦場での鉄則は恋愛にも通じると著者はいいます。たとえば彼好みのファッション研究や、恋愛テクニックの習得など。つまり、ここでいう「安売り」とはなんの策も持たずに男性と向き合うこと。「努力する時間なんてない!」という方へ、著者はとっておきのアドバイスを最後にサラッと書いています。「痛い思いをするより、先に地雷を踏んで学習した先輩のあとをついていった方が効率がいい」。まずは、そんな先輩女子を見つけることからはじめてみては?■鉄則2:男を甘やかさないつきあった男がみんなヒモになってしまうという「ダメんず好き女性」のケースでは、孫子の言葉、「よく敵人をして自ら至らしむるは、これを利すればなり。よく敵人をして至るを得ざらしむるは、これを害すればなり」が紹介されています。相手になにかしてほしければ、「そうすれば有利」と相手に思わせること。してほしくないのなら、「そうすれば不利」と思い込ませること。このケースでは、男性に働いてほしければ、男性に「オレが彼女を養うんだ」と思わせればよいということ。男性は、弱い存在を守りたいと思うもの。努力して手に入れた経済力も、時には妨げになるのです。■鉄則3:「ダメ出し女」にならない「あんなにキレイなのに、どうして独りなの?」。周囲からそんな目で見られる女性には共通点がある、と著者。それは、よいご縁をマイナス評価で逃していること。そんな女性たちに著者が贈るのは、極真空手十段でマンガ『空手バカ一代』のモデルにもなった伝説の空手家・大山倍達の言葉「心にゆとりをもって人に対すれば、笑顔ひとつで味方がつき、敵を呑む」。恋愛から結婚に持ち込むためには、相手に対するリスペクトを忘れてはいけない。タブーは、相手を値踏みすること。足りないものを数え上げるのではなく、心に余裕を持ってプラス評価で男性を見る寛容さが大切。そう著者はアドバイスします。■鉄則4:肉食系男子に振り回されない肉食系男子といっても、ここで指すのはいわゆるカラダ目当ての輩。著者は「女の側で危機管理というか、コントロールするしかない」と警鐘を鳴らします。紹介されているのは、『五輪書』に収められた剣豪・宮本武蔵の言葉。「敵浮気にして、事を急ぐ心見ゆる時は、少しもそれに構わざるようにして、いかにもゆるりとなりて見すれば、敵も我が事に受けて、気ざし弛(ゆる)むものなり」。剣術テクニックを解説した言葉ですが、著者にかかれば恋愛アドバイスに。いわく、肉食系男子はあきっぽく、スンナリ攻略できてしまえば簡単に次へ行く。相手がガンガン攻めてきたらスピードダウンし、こちらのぺースに持ち込むべし。つまり、最初のデートは様子見。これが鉄則といえそうです。■鉄則5:相手をリスペクトしすぎない相手に尊敬の気持ちを持つことは、円滑なコミュニケーションの基本。それでも著者は、過度のリスペクトは恋愛を遠ざけるといいます。平たくいえば、憧れオーラを出し過ぎると男性は引いてしまうのです。「憧れをもちすぎて、自分の可能性をつぶしてしまう人はたくさんいます」。これはメジャーリーガー・イチロー選手の言葉。相手がいくらモテモテの男性でも、毅然としていてよい、と著者。ときには自分の本心を隠し、なんでもないフリをすることも立派な戦略なのです。*著者は、「『生まれつきの恋愛長者』などという人は存在しません」と断言します。誰もが最初は初心者。だからこそ、相手を思いやりつつ翻弄する女子の兵法を学べば戦わずして、心を奪う、つまり恋愛優位に立つことができる、と説くのです。2,500年分の知恵を生かしたアドバイスは説得力抜群。恋愛は斬るか斬られるかではなく、自分も相手も幸せになることをめざす1対1の人間関係だと気づかされるのです。恋愛がうまくいかないと悩んでいる女性は必見の1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※佐伯紅緒(2016)『女子の兵法』セブン&アイ出版
2016年03月31日好むと好まざるとにかかわらず、現実的に離婚の話し合いの真っ最中だという方もいらっしゃるでしょう。あるいは、これから頭の痛い展開になることを予感しているところかもしれません。いずれにしても、離婚に際して泥沼にハマるようなことはさけたいものです。そこで、離婚問題に直面している方におすすめしたいのが、『こじらせない離婚―――「この結婚もうムリ」と思ったら読む本』(原口未緒著、ダイヤモンド社)。離婚の問題を専門とし、これまで約400人の離婚相談を受けてきた弁護士である著者が、タイトルどおり離婚を「こじらせない」ための策を説いた書籍。ところで離婚に際し、よく話題に上がるのが「慰謝料」です。しかし現実的に、「慰謝料のリアル」について語られる機会は意外に少ないもの。そこできょうは本書から、慰謝料についての大切なポイントをピックアップしてみたいと思います。■慰謝料をぶん取って復讐したい!「夫に浮気をされた。しかも不倫相手は妊娠している。だから復讐のために、慰謝料をぶん取りたい。離婚についてはどっちでもいいけれど、あの2人がいちばん困ることをしてやりたい」よくあるこんな相談を、著者も受けたことがあるそうです。でも、そのときにはこう答えたのだとか。「率直に申し上げるんですが、相手を懲らしめてやりたいと考えるのは、たぶんやめたほうがいいです。なぜなら、うまくいかないから」たしかにこのようなケースの場合、浮気された妻が慰謝料を請求できるのは明白。しかし、そのまま2人を心から恨んだまま慰謝料請求の手続きをしても、離婚を拒否して調停や裁判をしたとしても、その結果として多額の慰謝料をもらったとしても、きっと浮かばれない。幸せにはなれない。そういうイメージが、はっきりと思い浮かぶというのです。■被害者意識がドロ沼の原因になるご夫婦がどのような結婚生活を送っていたのか、おふたりがどのようなことを考えて毎日を過ごしていたのか、それは不明。ましてや、長い結婚生活の間に一度や二度の浮気があっても仕方がないなどというつもりもない。それを前提としたうえで、著者にはひとつだけ言えることがあるといいます。どちらかに不貞行為があった場合、その原因が100%相手にあると「考えない」ほうが、その後の離婚交渉がうまくいくことが多いということ。苦しさをお金に変えて、その後の生活の糧にするのは間違いではないでしょう。ただし、その場合でも被害者意識を持っていると、なぜかうまくいかないのだそうです。その理由について著者は、「相手が100%悪いと思っているときは、その怨念に引きずられ、客観的な判断ができなくなるからではないか」と考えているそうです。■慰謝料の「相場」はどのくらい?しかしそれでも、慰謝料を請求したいという気持ちを抑えられないことだってあるかもしれません。だとすれば次に考えるべきは、「いくら請求するか」ということになるはず。でも、不貞の慰謝料の相場とはどのくらいなのでしょうか?この問いに対しての前提は、「結婚していた期間、不倫していた期間、頻度、同棲までしていたのかなどの不貞の内容、相手に子どもがいるかどうかなど、さまざまな要素が考慮されるので一概にはいえない」ということ。それを踏まえたうえで、著者は「子どもができたら200万円はくだらない」といわれていると答えています。ただし、それは裁判までいった場合の話。示談する場合は、もっと高い金額が払われることはよくあるといいます。とはいえ慰謝料を「心の隙間を癒すための金額」と考えると、値段をつけにくくもあります。■慰謝料は「支度金」と考えるべしそこで著者はよく、慰謝料はあたらしい生活をはじめるための「支度金」だと考えるのがいちばんいいと伝えているのだとか。離婚するということは、新しい生活をはじめるということ。引越し費用のみならず、家具や家電までも含め、さまざまな資金がかかります。また、専業主婦の場合は新しい仕事を見つけるための時間や、仕事が軌道に乗るまでの生活費もかかることになります。これらを「支度金」と考えると、前向きに考えやすくなることに。数字に根拠ができるので、相手へのプレゼンもしやすくなるというわけです。また払う側も、次の人生を踏み出してもらうためのお金だと思えれば、財布を開きやすくなるもの。著者によれば、離婚を機に、資格を取るために学校へ通ったり、海外に留学したり、転職したりする人も多いのだとか。新しい環境に身を置くことで、離婚によって生じる喪失感も、比較的早く癒されるというわけです。慰謝料に関しては、感情に流されることなく、冷静な視点を持つことが大切なのでしょう。*著者によれば、離婚をこじらせてドロ沼化する人と、そうならない人との差は「心の整理の仕方」にあるのだとか。だからこそ、整理方法を身につけるためにも、ぜひ目を通しておきたい一冊だといえるでしょう。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※原口未緒(2016)『こじらせない離婚―――「この結婚もうムリ」と思ったら読む本』ダイヤモンド社
2016年03月30日『「やさしさ」という技術――賢い利己主義者になるための7講』(ステファン・アインホルン著、池上明子訳、飛鳥新社)の著者は、スウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ医科大学の分子腫瘍学教授、がん専門医。またその一方、スウェーデンにおいては「倫理」についての講義・講演も高い評価を得ているのだとか。著作も多く、特に、倫理的に生きることの意義と効用に焦点をあてた本書はベストセラーとなり、北欧を中心に話題となったのだといいます。きょうは「成功」に焦点を当てた第6講「成功とは何か?」のなかから、興味深い項目をピックアップしてみたいと思います。意外なことに、「高収入」「名声」と求める人ほど幸福度が下がるというのです。■目標達成=幸せではない!なにを成功とみなすかについては、人それぞれ異なる考え方があります。そして「自分が目標とする高みに達するにはどうすればいいのか」について、ひとりひとりが日々考えを巡らせています。とはいえ、自分が設定した成功目標を達成したら、私たちは必ず満足できるものなのでしょうか?この問いに対して著者は、「残念ながらそうではない」と断言しています。にもかかわらず私たちはしばしば、「目標を達成すれば幸せになり、満足する」と信じ込んでしまう。たとえば大金を稼いだり、豪邸に住んだり、責任ある仕事を任されたり、理想の恋人を見つけたりすれば、自分の人生に満足できるだろうと思い込んでしまうわけです。■お金があっても低い満足度アメリカの大学で行われた調査によると、新入生の70%以上が「財力」こそ重要な人生の目標だと考えているのだとか(対して、人生哲学を深めることが重要だと考えている学生は、わずか40%)。では、実際にお金持ちになったらどうなるのかといえば、ある調査によると、高額の宝くじに当選した人の「人生の満足度」は、当選してから1年後には、当選しなかった人とほぼ同じになるというのです。同様に、なんらかの理由で収入が急増した人を対象に調査を行ったところ、彼らは一様に「満足度が高まったとは思えない」と答えたのだといいます。また、平均的なアメリカ人の購買力は、過去45年間で2倍以上になったそうです。でも、これを大成功といえるのでしょうか?1957年には、アメリカ人の35%が「自分はとても成功したと思う」と答えたのに、2002年には、同じ回答をした人は30%にまで減少。他の先進国でも、同じような傾向が見られたそうです。つまり、ここ50年間で経済は著しく発展したにもかかわらず、人々の満足度は上がっていないのです。一方、発展途上国での調査では、アメリカ人と同程度の満足度を感じているという結果が。ある経済レベルを下回ると満足度は下がるという結果も出ているものの、年収が約150万円に達すると、それ以上給料が上がっても満足度は上昇しないのだそうです。■高収入が目標だと不幸に!幸福度の関係を調べたデータによれば、「高い収入」や「仕事上の成功」、「有名になること」を目標にしている人は、「友人に恵まれること」や「いい結婚」を人生の重要な目標にしている人にくらべ、自分を「やや不幸」もしくは「とても不幸」だとみなす傾向が2倍になるというのです。そして41もの国を対象とした調査においても、成功と愛には大きな相関関係があることがわかっているといいます。愛を重視すればするほど、人は幸せになれる。しかしお金に高い価値を置いている人の場合は、正反対の相関関係が成り立つということ。端的にいえば、お金を重視すればするほど不幸になるというわけです。■真の成功目標を考えるべしなにかを達成したとしても、「成功した」と感じられない場合はよくあるものです。そんななかで重要なのは、真の成功目標と偽りの成功目標とを区別することだと著者はいいます。数々の研究が示すように、物質的なものを手に入れても幸せになることはめったにないもの。しかし、いい関係を手に入れると、満足と成功を実感できるようになるということです。*本書の説得力のひとつは、著者が医師であるということ。日常的に死と向き合う立場においての経験が生かされているからこそ、共感を呼ぶことにも納得できるのです。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※ステファン・アインホルン(2016)『「やさしさ」という技術――賢い利己主義者になるための7講』飛鳥新社
2016年03月29日あふれんばかりの人でごった返す新宿駅ですが、実は364万人というギネス世界一の乗降客数を誇っています。駅の構造も複雑なので、迷子になったことがある人も多いのではないでしょうか?そこで、一級建築士の田村圭介さんとゲームクリエイターでゲームアプリ「新宿ダンジョン」を制作した上原大介さんの共著『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』(SBクリエイティブ)をご紹介したいと思います。この本では、新宿駅がどれだけ複雑な迷宮(ダンジョン)なのか、ゲームアプリ「新宿ダンジョン」の開発過程を振り返りながら解説されています。今回はそのなかから、著者の田村さんが「新宿駅を東西に自由に行き来できれば、新宿ツウになれる」と太鼓判を押す、“知っておきたい抜け道7つ”をご紹介していきたいと思います。■1:ゆっくり渡りたい、大ガード(靖国通り)地上の新宿通りの北にある、靖国通りが線路をくぐる場所が大ガード。歌舞伎町からはとても使いやすい道です。大ガードをくぐるときに轟く電車の音は、都会ならではの体験だともいえます。夏に花火大会が開催される隅田川の両国橋から、靖国神社の横を通り新宿まで続く靖国通りは、この大ガードをくぐった先から青梅街道となるそうです。■2:いにしえのトンネル、角筈(つのはず)ガード地上で東西を抜けるなら、いちばん便利なのが角筈ガード。新宿通りとルミネエストの間の広場に立ち、ルミネエストに向かって右側を見たとき、かつては大きな映画のポスターが並んでいたそう。その下の、手を上げれば天井に届くくらいの高さで横幅も狭いトンネルが角筈ガードです。角筈ガードは1927年から東西に人々を渡していて、大都会・新宿らしからぬ、コンパクトで懐かしい雰囲気の地下道。東側から西側へ抜けると、そこには戦後の闇市の雰囲気を現在も残す、小さな店が並んでいます。奥の「思い出横町」と「飲んべい横町」は、戦後から現在まで奇跡のように残ってきました。■3:ダンジョン発祥の地、メトロプロムナード新宿駅地下一階にあるメトロプロムナードは、地下2階に位置する丸ノ内線と地上の新宿通りの間の空いたスペースを利用した、大規模な公共地下歩道空間。地下鉄丸ノ内線の「新宿~池袋」区間開通とともに完成したのは1959年のこと。戦後、車の往来が増したことで、安全な歩行者のためにスペースを設けるため、車と歩道を分けることが都市では主流となりました。ここもそのひとつで、地下道に商店がドッキングした地下街となり、新宿駅の多くの人をさばいているといいます。■4:貫禄たっぷり、北連絡通路北連絡通路(別名・青梅連絡通路)は地下で東口改札と西口改札を結ぶ、新宿駅の中心的な大動脈。「中央連絡通路と合わせて、これがあっての新宿駅」と著者。地下通路の天井に、手前から奥に向かってプラットフォームの数だけ白く光る案内板が並んでいる様子は美しく見えます。また、北連絡通路がつなぐ東口と西口は、改札機がずらり。こんなに多い改札機を一斉に通る人の様子は、世界でもなかなか見られないとのことです。もし、東口改札を出ようと思っていたのに、間違えて西口改札を出てしまったなら……新宿駅の地下を知らない人は即、新宿の迷宮入り。新宿ダンジョンの泥沼から抜け出せなくなってしまうかもしれません。もしもここで迷ったなら、あきらめて切符代金をもう一度払い、間違った改札を戻って正しい改札へ行くのが賢明なようです。■5:改札の中にまた改札、中央連絡通路中央連絡通路は、中央東口と中央西口を繋ぐ地下連絡通路。北連絡通路にくらべれば迷いやすいとのこと。東口と中央東口は改札内でも南北につながる「アルプス広場」でつながっていますが、西口と中央西口は改札内ではつながっていないのです。また、わかりにくいのが、出口専用の「中央西口改札」。西口改札と中央西口改札は改札のなかのみならず、外でも直接的にはつながっていません。待ち合わせなどで間違ってしまうと、出合えずに迷ってしまうかも。また、ここは改札のなかに改札がある構造なので、小田急線などに乗るなら、同じ切符で二度改札を通らなければ目的の路線まで行くことができないので要注意です。■6:丘の上の南陸橋、南口跨線橋JR南口改札を出てすぐ目の前の甲州街道の車道は、線路群をまたぐ陸橋です。この跨線橋の上の甲州街道をはさんで、JR南口とサザンテラス口が向かい合っています。「甲州街道は新宿区と渋谷区の区境で、同じ駅が行政的に分断されているのは新宿駅の増殖の凄まじさを物語っている」と著者。実は山手線でいちばん標高が高い駅は新宿駅で、標高は約38メートル。その盛り上がった丘のような地形の上に陸橋がかかっているので、当然陸橋上の南口は高くなってしまうようです。■7:最高の眺めを堪能、新南口・サザンテラス口ウッドデッキ1998年にオープンしたサザンテラスは、東西をもっとも気持ちよく横断できる場所。JR各線の線路群の上を横断するウッドデッキの張られた床塗装は、歩いているだけで心地よく感じられるそうです。また、広い空の高い空間を「イーストデッキ」でまたぐとき、抜け道というにはもったいないくらいの爽快感が。ぜひ使ってみたい抜け道です。*新宿駅をダンジョンと捉えた場合、この7つの抜け道をマスターできていれば、かなり把握ができていることになるようです。毎日通勤などで新宿駅を使っている人は攻略できている道かもしれませんが、それ以外の人はこれらをチェックしておくと便利でしょう。新宿駅の複雑な構造に興味があり、新宿駅の謎を解きたい人はぜひ手にとってほしい本だと思います。(文/齊藤カオリ) 【参考】※田村圭介、上原大介(2016)『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』SBクリエイティブ
2016年03月29日「お金持ちになりたい」――。ぼんやりとしたレベルも含めれば、一度もそう願ったことのない人はほとんどいないのではないでしょうか。お金持ちと聞いてまずイメージするのは、一流企業やベンチャービジネスでバリバリ働き、一代で財を築いた「ビジネスエリート」といわれる人々。そんなビジネスエリートたちが共通して実践している、お金の使い方のルールがあるというのです。そのルールを明かしているのが、『シリコンバレーのビジネスエリートたちが実践する使っても減らない5つのお金のルール』(黒木陽斗著、扶桑社)。お金持ちが共通して実行するルールとは、どんなものなのでしょうか?■1:「時間」を買うビジネスエリートは「生き金」の使い方に長けている、と著者。お金で時間を買うという発想は、その最たるもの。短縮して得られた時間で新たな価値を生み出すことができれば、使ったお金を上回るリターンが得られる、という考え方です。ホームヘルパーを雇って家事をお願いしてしまうのがその一例です。特徴的なのが、飛行機での座席ランクの選び方。ビジネスクラスを選びそうですが、実際は逆のケースが多いよう。どんな席でも、目的地までの所要時間は同じ。ならばエコノミークラスで3回渡航し、商談の機会を増やしたほうがビジネスチャンスにつながると考えるのです。■2:「ノウハウ(知識と経験)」を買う著者の知るビジネスエリートは、テレビをあまり見ないのだそう。なぜなら、同じ時間で得られる情報量が本よりも少ないから。情報の深さや専門性を高めたければ本を、情報の早さの点ではインターネットを利用すればよいのです。なかでも、知識や経験を学びたいなら本に勝るものはない、と著者。その好例が、昨年話題になったトマ・ピケティ著『21世紀の資本』です。長い時間をかけて行われた研究と、さらに時間をかけて練り上げられた著者の思索が数千円で手に入る。これほど費用対効果の高い情報ソースは、本をおいてほかにないといいます。■3:「人脈」を買う仕事で成功を収めたければ、人脈は無視することのできない資源。特にビジネスエリートは、部下とのつながりを大切にするそうです。大きな仕事が一段落した後の、打ち上げの場を想像してみましょう。高級店を指定して5万円をポケットマネーで部下に渡し「残りは割り勘にしてくれ」という上司と、大衆的な居酒屋に連れていき「きょうは全部俺のおごりだ」という上司。尊敬できるのはどちらでしょうか?著者は、後者こそ尊敬を勝ち取れるビジネスエリートのやり方だといいます。部下に慕われれば、仕事もうまくすすみ、社内での評判も高まります。ビジネスエリートは、人と人とのつながりの価値をよく理解しているのです。■4:「希少性」を買うビジネスエリートのお金に対する考え方がはっきり現れるのが、時計や車、不動産など高価な買い物をするとき。彼らは「新品」よりも「中古」を選択するそう。新品には業者利益が乗っていて割高になるケースが高いこと、中古にくらべて値崩れしやすいことがその理由。著者にいわせれば、「モノを買うときは必ず『いま、最悪いくらだったら売れるか』を考えながら買う」のがビジネスエリートのやり方。不動産も車や時計も、必要がなくなったり当面の資金が必要になったりしたときには売るという選択肢を頭に入れて買い物をするのです。■5:「お金を産む資産」を買う不動産を買う場合も、それが「お金を産む資産」であることが大前提。マイホームよりは、賃料収入が見込める収益不動産を選択し、自分は会社近くに高級マンションを借りる、というスタイルが多いといいます。“生き金”として不動産にお金を使うなら、買ったときと同等か、それ以上の価値が期待できる物件を最初から選択するのがビジネスエリート。ちなみに株式もお金を産む資産ですが、ビジネスエリートには不人気のよう。その理由は2点。瞬時に価値が上下するので管理が難しいから、そして、プロの情報量や分析力に太刀打ちするのは難しいからです。*「そのお金を使う前にちょっと立ち止まって調べる、または考える――たったこれだけのことが、誰にでもできるお金の価値を減らさない方法です」と著者。本書では、お金持ちと呼ばれる人のお金の使い方を知ることができます。リターンをしっかりと見極めてお金を使う姿勢には「使った分は取り戻す」というはっきりした意思が感じられます。そこで「さすが、お金持ちは違うなぁ」と思うか、「自分の生活に取り入れられることはないか」と考えるか。お金持ちになれるかどうかの違いは、案外そんなちょっとしたところに潜んでいるのかもしれません。(文/よりみちこ) 【参考】※黒木陽斗(2016)『シリコンバレーのビジネスエリートたちが実践する使っても減らない5つのお金のルール』扶桑社
2016年03月28日マインドフルネスに関連した書籍は、過去にも取り上げたことがあります。簡単にいえばそれは、自分の意識や気持ちと向き合うことにより、ストレスを解消していく方法。『不安、ストレスが消える心の鍛え方 マインドフルネス入門』(大田健次郎著、清流出版)は、そんなマインドフルネスについて詳しく、そしてわかりやすく解説した書籍です。そのなかから、「7つの生きがい領域」と「4種の人生価値」を見てみましょう。■「7つの生きがい領域」とはまず著者が読者に対して問いかけるのは、次の7つの領域の、どれを生きがい、価値とするかということ。たいていの方は、優先順位の違うもので2つ以上あるといいます。(1)【家族・子育て】「現在の家族の平和を維持したい」「家族と平和に暮らせるようになりたい」「家族を破壊したくない」「家族の不和を解決したい」「子どもをうまく育てたい」「虐待しそうであるがしたくない」(2)【結婚・恋愛】「現在の結婚生活を維持したい」「結婚したい」「離婚したい」(3)【対人関係】「いまの友人関係を続けたい」「友人が欲しい」(4)【仕事・家事】「いまの仕事を続けたい」「職場に復帰したい」「仕事に復帰できなくても、家事ができ、買いものにいけるようになりたい」(5)【教育】「不登校を解消したい」「進学したい」「勉強を続けたい」(6)【趣味・社会活動】「引きこもりを解消したい」「社会に出られるようになりたい」「他者の苦悩解決を支援する活動に従事したい」「ボランティア活動、社会貢献活動をしたい」(7)【精神面の成長】「自分をよく知りたい」「自己評価を高めたい」「苦悩解決のために自身をつけたい」「生死観を確立したい」「病気(がんなど)がありながらも強く生きていきたい」「自己存在の意味について知りたい」■「4種の人生価値」はどれか7つの領域を確認したら、次にすべきは、それらが次の4種の価値のうちのどれに該当するかを知ること。(1)創造価値:社会のためになにかを提供することで生きがい、喜びを感じること。(2)体験価値:社会からなにかを提供されることで生きがい、喜びを感じること。(3)態度価値:創造価値や会見価値を遂行する時々刻々の対人関係や日常生活の行為において、ある態度を取ることに喜びを得る。それ以外に、深刻な出来事、たとえば自己の死や不治の病、障害、愛する人の死など避けることのできない運命に対して、それを受け入れる際に、苦難にあっても、どんな態度をとるかという人間の尊厳の価値。これに生きる意味を見出す。(4)存在価値:かけがえのない人格として自己、家族のために生きることに生きがいを見出す。この生を享けたことの喜び、7つの生きがい領域の(1)、(2)、(7)に関係する。■優先順位をつけることが大切これらの価値をリストアップし、優先順位をつけることが大切なのだそうです。なお、ほとんどの人に価値は複数あるのだとか。そして仕事の場合も、契約・勤務先が2つ以上あるなら、それは別の価値になるのだといいます。状況によって捨ててもいいのならば、優先順位が低いということ。ただし価値や優先順位は固定したものではなく、年月の経過や家庭環境の変化によって変化していくものなのだそうです。家族に関連した領域は、たいていの人にとって存在価値の優先順位が高いはずなのだそうです。そして家族との関係で体験・創造価値のギャップが小さくなり、課題として優先順位が低くなった場合には、態度価値の優先順位が高くなるといいます。■価値を考えれば不幸は防げるたとえば成功していたかに見えていた人がうつ病になってしまったり、自殺したり、犯罪を犯したり、家族を心の病気に追い込んだり、家庭を崩壊させたりなど、不幸な状況になってしまうことはあるものです。それは、優先順位の高い価値をおろそかにしたり、優先順位の低い価値なのにそれに執着してしまい、態度価値を考慮せず、適切な行動をしなかったためであるといえるのだそうです。優先順位の低いもので不本意な状況になっても、執着せずに、「失っても構わない」と覚悟すること。それが不幸になることを防ぐと著者はいいます。もっとも大切なのは存在価値。家族や自分の存在価値を守ることを大切にして生きていくということ。だからこそ、ここで確認した価値はときどき見なおしてみることが大切だといいます。*仏教を起源とするマインドフルネスは、すべての人に対してとまではいえないにしても、ある種の人にとってはよい影響を与えてくれる可能性があるでしょう。だからこそ、読んでみれば気持ちが楽になるかもしれません。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※大田健次郎(2016)『不安、ストレスが消える心の鍛え方 マインドフルネス入門』清流出版
2016年03月28日みなさんは、自分の集中できる時間がどのくらいかをご存知ですか?医学的な見地からみると、人間がひとつのことに集中できる時間はせいぜい40分程度だそうです。つまり1時間悩んでいるとしても、そのうち20分は集中できていないようなのです。そう考えると、時間がもったいないですよね。40分で考えをまとめ、仕事をサクサク進められればいちばんです。しかし、なにを考えるのかがまとまっていないと、その40分間でさえ途中から余計な思考に走ってしまうことも……。そこで今回は、MBAを取得し、会社員とイラストレーターの二足のわらじを経験した、かんべみのりさんの著書『マンガでわかる!入社1年目からのロジカルシンキングの基本』(SBクリエイティブ)をピックアップ。本書から抜粋した「時間を無駄にしない仕事の秘訣」は、社会人のみなさんが仕事をしていく上で大切なスキルだと思います。早速ご紹介していきましょう。■大切なのはイシュー(問題の本質)を押さえること大切なのは、イシューを押さえることだと著者は主張しています。イシューとは「考えるべき問い」「問題の本質」という意味。イシューを漠然と捉えていると、根本的な部分があやふやであるため、的外れな労力を使ってしまったり、時間の無駄遣いにつながったりしてしまうようです。イシューの押さえ方は次のとおり。まず、あるべき姿(To be)と現状(As is)を把握し、ギャップを明確にすることで、「なにを考えるのか」を明らかにします。難しい場合はいまなにを考えるべきかを具体的な言葉(動詞が良い)に置き換えてみるといいそうです。また、イシューは「押さえたあと」も重要で、以後も押さえ続けなければなりません。新しい仕事では、往々にして新しい刺激があるもの。そのため、脱線した思考や議論が展開されてしまうことが多々あるようです。常にイシューを押さえた話し合いができるように、確認することが大切です。■人間は失敗したくないから「前例」を真似したがるもし、イシューを押さえないで仕事を進めた場合はどうでしょうか。たとえば、違う会社が運営していたイベントを自分が引き継ぐことになったとします。その場合、前任者からいままでの資料一式をもらい、前回のイベントと同じような仕事をすることになります。そのとき、「昨年これでうまくいったようだから、この資料通りにやれば無難に終わるだろう」と考えて、動く人が多いそう。新しいアイデアが出たときも、「失敗したときの責任を取りたくないし、突っ込んで追求されたくない……」と思ってしまい、多くの人が前例のとおりに動いてしてしまうそうなのです。しかし、その前例は本当に正しいのでしょうか。うまくいかなかったことの詳細なんて、報告書にわざわざ掲載していないかもしれません。終わってしまったイベントの失敗を追記するなんて、日々の仕事に忙殺されている担当者ならなかなかしないことでしょう。惰性で仕事をし、イシューを押さえられていないと、平気で同じ失敗を繰り返してしまうことになりかねません。仕事は、自分で考えて結果を出すことで成長につながります。著者は「ただ指示に従っているだけでは機械と同じ!正しく考えて、自分で道を見つけて、結果を出していくことが仕事の基本」と主張しています。いわずもがなですが、仕事は惰性でしないことも重要。よい結果も悪い結果も含めることが、自分で自分の人生を引き受けることにつながっていくようです。*イシューを意識しないと、論点がずれたり、的外れな労力を使ったりしてしまいます。あとから毎回、軌道修正や変更などをしていたら、いくら時間があっても足りなくなってしまうでしょう。イシューを意識した上で、集中できる時間を有意義に使っていく、これが時間を無駄にしない秘訣だと思います。本書は、日々時間に追われ、忙しい会社員の皆さんが参考にできる内容がてんこ盛り。解説の一部がマンガになっていて読みやすいので、ご興味のある方はぜひ一読してみてはいかがでしょうか。(文/齊藤カオリ) 【参考】※かんべみのり(2016)『マンガでわかる!入社1年目からのロジカルシンキングの基本』SBクリエイティブ
2016年03月27日『いい子に育てると犯罪者になります』(岡本茂樹著、新潮社)とは、なんとも刺激的なタイトル。著者は、元立命館大学産業社会学部教授であり、臨床教育学博士。大学での研究・教育活動と並行して、刑務所での受刑者の更生支援にも携わってきたという人物です(2015年6月にお亡くなりになったそうで、本書は遺稿を書籍化したもの)。発行の目的は、幼少期に子どもが育つなかで、私たち大人が見過ごしている問題行動の原点を明らかにすることなのだとか。だからこそ、子どもの問題に頭を悩ませている人、子育てに格闘中の人、結構的にいきたいと願うすべての人に読んでほしいのだそうです。しかし子どもに対してだけでなく、自分自身(とその周囲にあるストレスや悩み、あるいはコンプレックス)の本質を見極めるという意味でも、きわめて重要な意味を持つ内容だといえます。そこできょうは、さまざまな角度から私たちを苦しめる「ストレス」についての記述に焦点を当ててみたいと思います。ストレスには、それを生み出す「価値観」が存在するもの。だから、それを認めること、そして、なぜ自分がそれを取り込んで行ったのかを知ることこそが重要だというのです。■ストレスを生み出す「20の価値観」私たちはそれぞれ、さまざまな価値観を持って日々の生活を送っているもの。当たり前のことではありますが、そんな価値観が自分たちの日常生活にストレスを与える原因になっている場合があるのだそうです。そこで紹介されているのが、以下の「ストレスを生み出す20の価値観」。当てはまる項目が多いほど、ストレスをためやすくなるのだといいます。1.「しっかりしなければいけない」という気持ちが強い。2.(親や周りの人に)迷惑をかけてはいけないと思う気持ちが強い。3.「(親や周りの人の)期待に応えないといけない」と思う気持ちが強い。4.「我慢することが大切である」と思っている。5.自分の素直な気持ち(「うれしい」とか「悲しい」とか「つらい」とか)をなかなか出さないほうである。6.嫌なことがあったりつらいことがあったりしても、そのことを人にはなかなか見せないほうである。7.人前では「暗い面を見せてはいけない」と思い、明るく振舞ってしまうことが多い。8.「弱いことは情けない」とか「弱いことはいけない」と思っている。9.泣くことは恥ずかしいことだと思っている。10.人にはなかなか甘えないほうである。11.「わがままやジコチュウであることはいけない」と思っている。12.子どもっぽい面は出してはいけないと思っている。13.「男(女)は男(女)らしくしなければいけない」という気持ちが強い。14.お金の面で裕福になることが人生で成功することだと思っている。15.完璧さを求めてしまうところがある。16.ミスや失敗をしてはいけないという気持ちが強い。17.「白」か「黒」かをはっきりさせないと気がすまない。18.「勝つこと」に対してのこだわりや執着心が強い。19.他の人から自分に対してなにかされたときに「自分のことを拒否された」とか「自分を悪く思われた」と受け止めてしまいやすい面がある。20.「悪いことは許さない」という気持ちが強い。■刷り込まれている価値観を自覚しようこれらは私たちが生まれながらに持っている価値観ではなく、誰か(特に親)から「もらったもの」か、周囲の環境に影響されるなかで形成されたものだそう。そして原点が幼少期にあるからこそ、幼少期まで振り返らないと、このような価値観を持った理由はわからないもの。そして問題行動を起こしたり生き辛さを抱えていたりする人は、刷り込まれている価値観を自覚することが大切。そうでないと、根本的な解決にはならないというわけです。また子育てをする人なら、いつかは自分自身と向き合わなければならないといいます。一方、子育てをしない人も、自分自身を本当に理解しようと思うのであれば、「いま」を大切にすべきだと著者。*上記の20項目をチェックすることにより、いまの自分についての問題点や、その根底にあるファクターをある程度は見極めることができるはず。そして本書では以後も、さらに深く自分自身の幼少期に目を向けられるよう、「ストレスをためやすくなる価値観をどうして取り込んでいったのか」がわかる質問が、さらに20項目用意されています。それらを確認してみれば、さらに奥深く、自分自身の本質的な部分にまで入り込むことができるかもしれません。興味のある方は、本書を手に取りチェックしてみてはいかがでしょうか?(文/書評家・印南敦史) 【参考】※岡本茂樹(2016)『いい子に育てると犯罪者になります』新潮社
2016年03月27日女性最高齢の79歳で宅建を取得し、80歳で不動産屋開業。とてつもないスーパーウーマンの話かと、誰もが思ってしまうことでしょう。しかしそれが、80歳まで専業主婦で生きてきた普通の女性の話だというのですから驚きです。今回紹介する『85歳、おばあちゃんでも年商5億円』(WAVE出版)の著者・和田京子さんは、和田京子不動産代表取締役社長で、本のタイトルどおり85歳。ずっと専業主婦で子ども二人を育て上げ、孫も成人。77歳のときに夫を看取ったあとは毎日寝てばかりだったといいます。しかしある日、孫から「おばあちゃん、勉強しようよ」と提案されたのをきっかけに“80の手習い”として、宅建を受けることに。もともと家に興味があったこと、そして過去に購入した7軒の家のほとんどが欠陥住宅だったという悔しい思いが、学びたい意思につながったようです。そんな和田さんが年商5億円の不動産屋さんになるまでには、どんな転機と考え方があったのでしょうか?年齢を追って紹介していきたいと思います。■「若い人が3回なら私は12回復習」79歳で宅建を取得宅建を取ると決めて学校に通うようになって以降は、目覚めてから朝練代わりに問題を解き、朝食をとったら専門学校へ。授業が終わったら学校内にあるテーブルを借りてその日に習ったことを復習し、家に戻ったらもう一度テキストを音読する、という徹底ぶり。「教科書の習った部分を、次の授業までの3回は繰り返し勉強するように」といわれていたので、クラスメートの4倍の年齢やらなければと思ったそう。若い人が3回やるなら、自分は12回というわけです。しかもどんどん学ぶ内容が増えるので、自分の時間のすべてを費やさなければ間に合わないと考えたといいます。次第に楽しくなって勉強にのめりこんだそうですが、そこまで自分を追い込んで努力できたことはすごいとしかいえません。■「働く場所がないから起業」80歳で不動産屋開業晴れて宅建に合格した著者でしたが、それまでは専業主婦しかしたことがなかったのだとか。80歳で社会人一年生、実務経験ゼロ。もちろん雇ってくれるような会社はありません。でも、「せっかく猛勉強して資格を取得したのだから、なんとか社会のなかで生かしてみたい」と起業を決意。不動産を取り扱う者として必要な火災保険と損害保険の募集人資格もすべて取得し、「起業に向けて精いっぱいやってみよう!」と気持ちを固めたといいます。このようにどんどん行動する著者には、読んでいて本当に勇気づけられます。「いい年になって、バカなことはおやめなさい」など、周囲の多くの反対を受けたという著者。しかし、子育てを終え、夫を看取ったおばあちゃんだからこそ、残りの時間をこの仕事に費やしたい。これまで家族のために生きてきた自分を、今度は社会のために役立てたいと本気で考えたというのです。それでも、いざ営業をはじめてみると、わからないことだらけでオロオロ。知識としては頭に入っているものの、実践では教科書通りにはいきません。家族の貯金を投げ出してはじめた会社なので、余裕があるわけでもなく、経費ばかりかさみ、家族からは何度も「もうやめよう」といわれたそうです。それでも、やめるにはあまりにも悔いが残る。戦争のなかを生き抜いた経験もあり、おかゆをすすってもやめたくないと思ったようです。■「同業者からの嫌がらせに屈しない」82歳ではじめての購入申込書結局、開業して丸2年が経っても会社は一度の利益を生むこともできず、資金も底をつきそうに。ようやく一軒の契約が取れたときは、大喜びだったそうです。しかし、今度はチンピラのようなたかり、つぶしの不動産屋に脅されることに。得られるはずの仲介手数料を踏み倒されそうになり、利益を横取りされそうになりました。著者ははじめての契約だったので、謙虚に誠実に頭を下げてばかりいましたが「それでは負け犬になって子分として使われるだけ」。不動産の世界ではまったく通じなかったのです。それでも、どんな時も正直に、礼儀正しくありたい。でも間違ったことを放ってもおけない……。断固戦うことを決め、顧問弁護士にお願いすることに。すると相手は手の平を返したように支払いに応じてきたのです。著者の諦めない強い意志が、よい結果につながったのでしょう。■「見栄を張らない」85歳で年商5億円の不動産屋さんにいろんな苦難やトラブル、難案件があったものの、いまはお客様が絶えない店となった和田京子不動産。最近では商売に成功する秘訣を聞かれるようになりましたが、秘訣はないとのこと。結局、考え方は主婦のときとちっとも変わらず、自分の生き方がそのまま商売に出ているそうです。ただ、もしこだわっていることをあげるなら、次の5項目とのこと。(1)見栄を張らない(2)お客様を選ばない(3)お客様の不利益になる取引はしない(4)どんなときも正直(5)自分の判断基準をもつこれは小さな不動産屋だからできること。手間もありますが、その分自信をもってお客様に提案できるようです。また、和田京子不動産は年中無休、24時間営業。忙しい世間様がゆっくりできるのはお正月くらいだろうと、訪れたい人のために開けているのです。休みたいと思うときもあるそうですが、それもほんの一瞬。自立できているいまは、すごく気持ちがいいようです。*著者は戦時中、何度も人に助けられて生きてきた方です。世代的に「お国のために死んでこそ立派」という教育をされてきたため、今日まで「戦争で亡くなった人に申し訳ない」と世の中に借りがあるような気持ちで生きてきたとのこと。そこで最後の人生は、少しでも世の中のためになることをして「借りを返したい」と本気で思っているそうです。この本は、85歳の一人の女性の生き様を描き、読む人に生きる希望と勇気を与えてくれます。生きるパワーが欲しい老若男女には、ぜひ一読をおすすめしたいと思います。(文/齊藤カオリ) 【参考】※和田京子(2016)『85歳、おばあちゃんでも年商5億円』WAVE出版
2016年03月26日みなさんは、寝ても疲れがとれないことってありませんか?仕事のことを考えて眠れない、夜中に何回も起きてしまうなど睡眠に関して悩みを持つ人は多いですよね。睡眠の質が下がるのは、実は体の緊張が原因かもしれないのです。そこで今回は『心と体の不調を解消する アレクサンダー・テクニーク入門』(日本実業出版社)の著者で、日本アレクサンダー・テクニーク協会 会員の青木紀和さんからお話を伺いました。■100年以上続く「身体の使い方」の技術そもそも私たちは、自分の体を無意識に緊張させているそうです。その余計な緊張により、姿勢や動作に不適切なクセがつき、首や肩のこり、腰痛、不眠、便秘などの悪影響が生じるというのです。これらの不調を解消するボディワークとして100年以上前に開発されたのが、「アレクサンダー・テクニーク」。これはオーストラリア人俳優のフレデリック・アレクサンダー氏が創始した「身体の使い方の技術」のこと。ある日アレクサンダー氏は、舞台の上で声が出なくなるという不調に襲われたそうです。そしてその原因が、声を出そうと思った瞬間に首の後ろを緊張させ、声帯を圧迫していたことに気づいたといいます。これがきっかけとなり、筋を緊張させるなど余計な力を入れなければ、体への負担や機能の制約を減らし、本来の力を発揮できることを唱えたのです。アレクサンダー・テクニークのメリットは、学びさえすれば、自分でいつでも実践できること。そしてこの技術は、睡眠の質の向上にも有効なのです。■なぜ寝ても疲れがとれないときがあるのか人間は寝ている以外の時間、体の部位を筋の活動で支えています。しかし多くの人はその最、筋を強く緊張させているのだそうです。すると寝ている間も自然とその状態を続けてしまうのだとか。つまり眠っても疲れが取れないのも、体に余計な力が入っているから。自律神経の交感神経亢進が促され、寝つけなかったり、夜中に何度も起きたりしてしまうことになるのです。寝ても疲れがとれないときにオススメなのが、体を置くようにする「プレイシング就寝」というメソッドです。■1分以内で簡単にできるプレイシング就寝プレイシング就寝のポイントは、体の重さを手放すこと。頭や腕、脚にも重さがあると考え、その重さを手放してベッドに置くことを意識する方法です。各部位のやり方をご紹介しましょう。(1)頭を置くベッドの上に仰向けに横になり、頭を横に倒します。電車で寝ている人のように、頭をガクンと倒すようなイメージです。この状態を15秒ほどキープし、左右1回ずつ行います。(2)腕を置く寝ている状態で片腕を上げて、ひじからベッドに落下させます。前腕もベッドに落下させ、そのまま腕を放置すると考えましょう。左右1回ずつ行います。(3)脚を置く両脚を股関節で内旋と外旋させる動きを2~3回して、脚の重さを手放します。足先やスネあたりを動かすようなつもりで行いましょう。このプレイシング就寝は、子どもの寝方をイメージすると良いそうです。子どもは寝ているとき、ぐでーんと横たわり、自由に動き回って様々な姿勢で寝ていますよね。これが大人にとっても、理想の形となるのです。■難しいことを受け入れて緊張を取り除こうまた、仕事に追われていると、眠る直前まで仕事のことを考えてしまう人が多いはず。それにより、なかなか寝つけないこともありますよね。そのようなときには、ベッドに頭や体のすべての重さを預けると考えたうえで、軽く息を吐くことに注意を向けることを青木さんは勧めています。大人になると「なにかを考えないようにする」のは難しいもの。そこで体のことや呼吸のこと、幼児期のことなど、仕事以外のことに意識的に考えるようにするのです。これで仕事について思考が向ってしまうことを少しは避けられるといいます。それでも、仕事のことが頭から離れない場合はどうすればいいのでしょうか?「仕事のことを忘れなきゃ」と考えてしまうと、その難しさから緊張は抜きにくくなるそうです。そこで「仕事のことを考えてしまうのは仕方ないな。でも他のことを考えるようにしてみよう」くらいの気持ちでいるようにしましょう。「難しいことを受け入れていくほうが、緊張は抜きやすくなる」と青木さんはいいます。無自覚に思考を続けてしまう状態を「マインド・ワンダリング」といいます。体の支え方や呼吸のことに意識的に注意を向けていくことで、このマインド・ワンダリングから抜け出しやすくなるのです。*心身の緊張をほぐせば、不眠の改善にもつながっていきます。青木さんの著書『心と体の不調を解消する アレクサンダー・テクニーク入門』には、自分の体や心を楽にするメソッドが満載。専門的なものではなく、一般の人向けにわかりやすく解説されています。ぜひ手に取って、実践してみてください。(文/椎名恵麻) 【取材協力】※青木紀和・・・身技パーソナルコーチ。日本アレクサンダー・テクニーク協会(JATS)会員。東京都出身。1973年生まれ。カリフォルニア州立大学サンタバーバラ校卒。ATを洗練させた独自の指導理論である「プレイシング・メソッド」を基に、プロの音楽家や俳優、ダンサー、講師のパフォーマンス向上に貢献し、様々な人の体の痛みや故障の改善に貢献している。雑誌への掲載多数。昭和女子大学オープンカレッジ講師、(株)LUSHジャパンのスパ施術者研修トレーナー、富川ギター教室特別講師などを務める。 【参考】※青木紀和(2014)『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』日本実業出版社【イラスト】※初見弘一
2016年03月26日『人見知りだった千秋が付き合い上手になった 魔法の法則16』(千秋著、中央公論新社)は、タレント、声優、歌手として、そして子ども服ブランド『Ribbon Casket』、『Love Stone』のデザイナーとしても活躍する著者による著作。シングルマザーとしての立場から、目の前にある「ママ友」の世界、そして職場、ご近所など、さまざまな人間関係についての思いを記しています。考え方の根底にあるのは、自身の子ども時代の記憶。意外なことに幼少時から、とても人見知りだったというのです。ただしクラスのなかでも弱く、背が低く、体も小さく、運動神経もゼロだったため、自分の身を守る必要に迫られたということ。その結果、「どんなグループに所属して、どんな人間関係をつくっておけば安全か」と考えるようになり、結果的にはそんな体験が人づきあいの基礎を固めることになったというわけです。そしてそれが過酷な芸能界を生き抜くためにも、またママ友たちとのつきあいにおいても、大きく役立っているのだとか。そのような経験に基づく本書の第2章「千秋が答えます!ママ友お悩みQ&A」のなかから、「ママ友とお金」についての話を抜き出してみたいと思います。■1:ママ友がお金を返してくれませんQ.「あるママと一緒にランチに行きました。お会計は2人で2,400円。相手のママは“1万円札しかない。あとで崩したら払うから”ということで、とりあえずその場は私が2人分の支払いをしました。ですが、それから何日たってもお金を返してくれません。(中略)上手な催促の仕方を教えてください」細かいお金の貸し借りに関するトラブルは、ママ友づきあいにはつきもの。そして著者は基本的に、誰ともお金の貸し借りをすべきではないと考えているそうです。そしてジュース代やアイス代程度だったら「返さなくていいよ」とおごってしまうのだとか。そのほうが気分的にも楽だし、あとあとトラブルにもならないから。しかしこの質問のような場合は、可能な限り別会計にしてもらうべき。どうしても相手にお金を貸さなければならない場合は、その場で自分のスマホに「◯月◯日、××さんに1,200円貸した」とメモしておくことが大切。そしてそのとき相手にも、「メモしておくね」ときちんと伝えておくことがポイントだといいます。そうすれば相手にも「借りた」という自覚が生まれ、次にあったときにはスマホを見ながら「この前の◯◯円、返してもらっていい?」といいやすいわけです。■2:お金の話を聞きたがるママ友が迷惑Q.「下の子が通っていた幼稚園で仲よくなったママ友がいます。よくお互いの家に遊びに行くんですが、我が家の経済状況について頻繁にたずねられるのが苦痛です。(中略)私はお金に関することはあまり詳しくいいたくないんですが、聞かれたら正直に話すべきですか?」著者も、お金のことは他人にしゃべらなくていいと思っているそうです。ちなみにお金の話をするのは下品なので、芸能界でもタブーなのだとか。そもそも家族でも親友でもないママ友がお金のことを聞いてくること自体がおかしいのですから、正直に返事をする必要は一切ないわけです。そこで、今度相手がたずねてきたら、「お金のことは他人にあからさまに話すことじゃないって、子どものころから親にいわれてる」と返事をしてみてはどうかと著者。常識ある相手なら、それで気づくはずだということ。それに、自分がいわれて嫌なこと、聞かれていやなことは、きちんと相手に伝えることが大切だといいます。ひとくちにママ友といっても、年齢も育った環境も価値観もまったく違う人たちの集まり。黙っていたら自分の意思は伝わらないわけです。■3:ママ友とのつきあいにお金がかかるQ.「息子が通っている幼稚園のママたちと仲よくなり、6人のママ友グループができました。私以外の5人は経済的に裕福な家庭のようで、子どもを園に送っていったあと、毎日のようにそれなりの値段のランチやお茶に誘われます。(中略)ひとりでランチに行かないと仲間外れになりそうで断れません。みんなと親しくするための必要経費と割り切って、毎回ランチにつきあうべきでしょうか?」これは難しい問題。しかし自分がその立場だったら、もしその人たちとランチするのが楽しいなら、やりくりしてでも参加すると著者はいいます。でも、お金がもったいないと思うのであれば、それ以上のおつきあいはやめるだろうといいます。しかしその一方、著者はこうも指摘します。「そもそも、自分の家とは経済的に差のあるこのママ友グループを選んだ時点で、ちょっと失敗だったかも」と。仲よしづきあいをする前に、服装や持ち物を見ればだいたいその人の経済力は想像がつくもの。いつも流行りの服を着ているおしゃれなママだったら、当然、それなりのレストランにもよく行くことでしょう。あるいはランチだけで終わらず、やがてエステや旅行にも誘われるかもしれません。そうなったとき、このグループの人たちと一緒にいてつらくないかということです。つまりママ友とつきあうときは、あまり背伸びせず自分の身の丈にあった人を選ぶべきだということ。そうすれば、無理せずに息の長いつきあいができるといいます。*母親としての自身の体験がベースになっているため、全体的に見ても共感できる部分が多いと思います。ママ友とのつきあいに悩んでいる人は、手にとってみるといいかもしれません。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※千秋(2016)『人見知りだった千秋が付き合い上手になった 魔法の法則16』中央公論新社
2016年03月26日『普通の人が、ケチケチしなくても毎年100万円貯まる59のこと』(佐藤治彦著、扶桑社)は、節約をすすめる本ではありません。洋服をバーゲンになるまで待って買うのも、冷夏を待ってエアコンを買い替えるのもNO。むしろ「洋服はブランド品の気に入ったものを定価で」「家電は型落ちを待たずに性能のいいものを」買うことをすすめています。一見、まったく正反対の「ケチケチしないこと」と「お金を貯めること」。この2つをイコールで結んでいるのが、「ものが高かったか安かったかは、どれほど役に立ち、使ったかによって決まる」という発想です。なかでも著者の考え方を端的に表しているのが、ここでご紹介する2つの数式。ケチケチせずにお金が貯まる逆転の発想を数字の側面から読み解いてみましょう。■1:家電=本体価格+消費電力+処分費用生活用品のなかでとくに価格が大きくなるのが家電。定期的に買い替える必要もあり、きちんと予算を組んでおかないと家計を圧迫します。著者は、本体価格だけに左右される商品の選び方、「平日昼間は価格交渉しやすいので得」「冷夏の夏の冷蔵庫、エアコン買いはお得」といった裏ワザには一切無関心。少しでも安い商品に出会うために平日昼間に無理をして量販店に足しげく通ったり、冷夏になるまで買い替えを我慢したりすることに意味はないと考えています。それは、家電の価格=本体価格ではないと知っているから。家電は、購入したあとも費用がかかり続けます。大きなものが電気代。そのため、本体価格がほかのものよりも高めでも、省エネ商品は選ぶ価値があるといいます。電気代の目安で年4,000円の差が出るとしたら、7年使った場合で2万8,000円の差になるからです。年4,000円はけっこうな金額ですが、12か月で割ると月およそ333円。性能によって充分に考えられる差です。もうひとつの費用が、古くなった家電の処分価格。家電を処分する場合、数千円の処分費用を支払うことになります。著者は、家電は使用年限いっぱいに使うのではなく、もう2~3年使えるかなという段階で、ほしいという知人に家電を譲っているそう。そうすれば自分自身も「+処分費用」の部分を0にすることができます。処分するタイミングは、引き取り手が見つかったとき。そのため、型落ちや決算を待つこともありません。■2:洋服=買った価格-売った価格著者は、洋服を買う場合にもこだわりを持っています。バーゲン品には絶対に手を出しません。ノーブランドのものも選ばずに、少々値が張るブランド品でも、長く使えるいいものを厳選して購入します。そして、2シーズン着ていないものはネットオークションやフリーマーケットで売却。ここまできて初めて、その服の本当の価格が決まるというのです。礼服やフォーマルなものを除いて、2シーズン着ていないということは、その服がなくても生活できている証拠。それを見極めたら、著者はポロシャツやTシャツ、カフスボタンやメガネケースに至るまでを「適度に適正な価格で手放して」しまいます。ここで威力を発揮するのが、購入時のポイントだった「バーゲン品ではないもの」や「ブランド品」という条件。流行の洋服をバーゲンになるまで我慢して購入すれば3割引き、5割引きで買えますが、それは著者にいわせれば「流行が廃れる寸前」ということ。しっかり着て、さらに適正価格で処分するなら、買うタイミングを遅くすることは逆効果です。また、「ネットなどで売却する場合、よく知られているブランド品は売りやすい」と著者。著者自身、米の人気ブランド・アバクロのシミありのTシャツが1,500円、10年使ったボロボロのルイ・ヴィトンのバッグが8,000円、20年以上使った吉田カバンのタンカーも5,000円で引き取り手が見つかったそう。何年使い倒しても、シミあり、などの説明文と写真をきちんと載せても、それでもほしいという人がいるのがブランド品の強みだといいます。まずは自分自身がいいと思えるものをケチケチせずに購入し、満足するまでしっかり使う。使った後は、少しでも「本当の価格」を下げるために手放す方法を工夫する。それが著者流の「所有する」ことから「利用する」ことにシフトした消費生活なのです。*ここで挙げたのは、本書で紹介されている59のアイデアのうちのたった2つ。まず自分自身がいいモノを使い、その上でお財布が痛まない工夫をしていく。そんな、お財布だけでなく心も満足できる家計やりくりのアイデアが、本書にはぎっしり詰まっています。一つひとつのアイデアが具体的、かつ2~4ページに集約されているので、パラパラ読みで目に留まったもの、「自分にもできそう」「なるほど、やってみたい」と思えるものから実践してみることが可能。本書をきっかけに、我慢ありきの節約ではなく、まず心を満足させる消費生活を始めてみませんか?(文/よりみちこ) 【参考】※佐藤治彦著(2016)『普通の人が、ケチケチしなくても毎年100万円貯まる59のこと』扶桑社
2016年03月25日『週1断食で万病が治る』(三浦直樹著、マキノ出版)の著者は、薬に頼らずに自然治癒力を引き出す「統合医療」を実践しているという医師。2007年には臨済宗の僧・野口法蔵氏のもとで「坐禅断食」を学び、断食指導も行っているのだそうです。本書ではそのような経験に基づいて、「週1断食」の方法を紹介しているわけです。「断食には興味があるけど経験がない」という断食初心者は少なくないと思いますが、著者によれば「週1断食」はそんな人に最適なのだとか。事実、著者自身が断食の効能を実感しているのだそうです。最初に試してみたのは、動物性食品をやめ、一口につき50回噛むこと。すると、それだけでも食事の量はかなり減ったというのです。そして半年で15Kg、10ヶ月後にはさらに5Kgも体重が落ちることに。動物性食品をとらないせいか性格はどんどん穏やかになり、肌もきれいに。さらに思考がクリアになるなど、血行状態が断然よくなったというのです。そんな話を聞くと、試してみたくもなるもの。そこで、ビギナー向けの「週1断食」がオススメだということでます。しかし、週1日、2食抜くだけの「週1断食」、いったいどのように行えばいいのでしょうか?■24時間なにも食べない週1断食とは、週に1回、24時間、体に食べものを入れないということ。たとえば断食前日の夜7時に夕食をとったら、断食当日は朝食と昼食を抜き、夜7時までなにも食べないようにするわけです。朝食をとって、昼食と夕食を抜くのでもOKで、つまりは食事と食事の間を24時間空ければよいということ。ここでは、朝食と昼食を抜くやり方が説明されています。■朝食と昼食を抜くやり方(1)準備食はあっさりしたものを3日以上断食をする本断食では、断食に入る前に数日間の減食期間を設け、徐々に食事の量を減らしてから断食を開始するのだそうです。とはいえ断食前の食事(朝食と昼食を抜く場合は前日の夕食)は、なるべく体にやさしい内容を心がけたいといいます。朝食と昼食を抜く場合、前日の夕食は寝る2時間前までにとること。できれば和食中心のメニューにし、動物性のものや脂っこいものは控えたほうがいいそうです。たとえば、ご飯と味噌汁に野菜中心のおかずなど。おかずは野菜炒めなど油を使って調理したものより、おひたしや煮物などあっさりしたものがいいとか。もしくは、そばやうどんなどで軽くすませるのもOK。量は腹八分目にして、アルコールはNG。こうして、翌朝からの断食に備えるわけです。(2)断食中は水分だけとるように前日の夜7時に夕食をとったら、断食当日は朝食と昼食を抜き、夜7時までなにも食べないようにします。とってよいのは、ゼロカロリーでカフェインを含まない水分だけ。水であれば軟水でも硬水でもかまわないそうですが、水道水の場合は家庭用の浄水器を通したほうがいいようです。水以外のものが飲みたければ、おすすめは三年番茶か柿の葉茶だとか。断食中、水分はいつとっても大丈夫。ただし、注意すべきは量。断食中は口寂しさからたくさん飲みすぎてしまいがちですが、水分をとりすぎると体が冷えてしまうわけです。また、一気飲みも胃腸を冷やすのでよくないそうです。水分をとるときはよく噛んで飲むようにすると、体が冷えるのを防ぐことができ、空腹感を抑えるのにも役立つといいます。なお、断食中に吐き気などが出た場合は、塩をなめても大丈夫。また、健康維持機が目的なのであれば、酵素ジュースを飲みながら断食したり、おなかがすいて困るときは野菜ジュースや甘酒、くず湯などを飲んだりするのもひとつの方法。(3)回復食にはおもゆやお粥を断食でもっとも大きなポイントになるのは、断食後の食事だといわれているそうです。事実、本断食でも断食を終えたあとの食事を「回復食」と呼び、おもゆやお粥などからはじめ、準備食と同じように数日かけて徐々に通常の食事に戻していくのだといいます。ただし週1断食の場合は、回復食も基本的には準備食と同じと考えればいいというので、さほど難しくはないと思います。ポイントは、アルコール、動物性のものや脂っこいものは避け、野菜を中心とした和食の献立にすること。断食後1~2日はそのような食事を心がけ、それ以降は通常の食事に戻してかまわないそうです。なお、ときどき、断食を終えても食欲がない、体がだるい、和食中心のメニューでも胃が荒れるという人がいるとか。そのような人は、甘酒やお粥など胃にやさしいものからはじめ、徐々に通常の食事に戻すようにしましょう。もちろんドカ食いは言語道断ですが、断食明けの1~2日間を少食にセーブすることができれば、それ以降もうまく少食の習慣がついていくのだといいます。もちろん準備食と同様に、回復食も腹八分目にしておくべき。*こうして確認してみると、「週1断食」は意外に簡単そうです。本書ではさらに詳しく解説されていますので、気になる人は参考にしてみるといいかもしれません。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※三浦直樹(2016)『週1断食で万病が治る』マキノ出版
2016年03月25日たとえば、「親のコネで入学した」とか、「コネ入社だった」とか。「コネ」という言葉は「縁故」という意味合いが強く、そして、どこか「アンフェアな反則行為」なイメージがあることも否定できません。しかし、アメリカをはじめとする諸外国では「コネも実力のうち」と考えられており、むしろコネづくりが奨励されるのだとか。しかも「コネ」という言葉は本来、英語の「コネクション(connection)」の略語。「縁故」よりも広く、「関係、つながり」という意味があるもの。だから決して否定的にとらえる必要はないと唱えるのは、『コネ持ち父さん コネなし父さん 仕事で成果を出す人間関係の築き方』(川下和彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者です。本書では、「コネ持ち父さん」と「コネなし父さん」を比較しながら、コネを持つことの重要性を解説しています。■コネは先天的と後天的の2種類著者は、コネは2種類あるのだと主張します。まずひとつは、生まれ持った「先天的なコネ」。そしてもうひとつは、「後天的なコネ」。そう聞くと先天的なコネを持っている人が有利であるように思えますが、そうではなく、「後天的なコネ」を開拓すればよいだけの話。つまり、コネのある人を嫉妬するのではなく、「コネはつくれる」のだということに気づいて、それを手に入れることこそが大切だというわけです。ところでコネ持ち父さんとコネなし父さんは、それぞれ「利益」についてどう考えるものなのでしょうか?■目先の利益に惑わされてはダメたとえばダイエットをしているとき、将来のスリムな自分よりも、つい目先の甘いものを選んでしまうことがあります。同じように「将来の利益よりも目先の利益を選ぶこと」を、行動経済学では「現在バイアス」と呼ぶのだそうです。では、将来的にお金持ちになる人は、「将来10万円になるかもしれない1万円」と「目先の1万円」のどちらを選ぶのでしょうか?当然のことながら、将来お金持ちになる人が選ぶのは「将来10万円になるかもしれない1万円」。目先のことに惑わされないわけです。そして考え方は、「コネ」も「カネ」も同じ。つまり、コネなし父さんは現在バイアスに支配されるため「目先の浅いコネクション」を得ようとする。しかしコネ持ち父さんは、現在バイアスに支配されることなく、「将来の深いコネクション」を得ようとするものだということです。■一人ひとりの関係を大切にする「功」と「徳」を合わせた「功徳」という言葉があります。いうまでもなく、世のため人のためになる「よい行い」のことですが、コネ持ち父さんは目先の利益に目を奪われないように、いつも次の言葉を心に刻んでいるのだそうです。「功は今を照らし、徳は晩節を照らす。功に溺れて、徳を見失うことなかれ」目先のコネクションを使って「功」を成せば、一時的には一筋のスポットライトが当たるかもしれません。ただし忘れてはならないのは、長い人生においてそれは一瞬にすぎないのだということ。一方、一人ひとりの関係を大切にすることによって「徳」を成せば、応援してくれている仲間たちが、それぞれのライトで人生の道を照らしてくれるようになるということ。■コネなし父さんは「数」を重視ちなみにコネなし父さんは、コネクションの「数」を重視するのだそうです。たくさんの人とつながること自体を目的にし、積極的に異業種交流会などに出ては四方八方に名刺を配り歩くわけです。そしてソーシャルメディアでも、お互いによくわかっていない段階からどんどん繋がろうとする。ただし数を増やすことばかりに集中するあまり、せっかくできたつながりを生かすこともできずじまい。そんな調子なので、つながっている人に協力をお願いしても、思うように動いてもらえないのだといいます。■コネ持ち父さんは「質」を重視対してコネ持ち父さんは、コネクションの「質」を重視するもの。つながる目的を明確にし、ターゲットをしぼってコネクションをつくるということ。だから、名刺の枚数やツイッターのフォロワー数、フェイスブックの友だちの数なども特に気にしません。しかし、波長が合った人とは親睦を深める機会をつくるので、ひとりの先に多くの人がつながっている「奥行きのあるネットワーク」を構築できるのです。そして強固なコネクションができたら、人のために役立てる。すると、やがて思わぬところでその相手からコネクションのリターンをもらうようになるということ。こうして「コネコネ交換」を繰り返すうちに、コネ持ち父さんはどんどん「おコネ持ちスパイラル」を起こすというわけです。*コネに対する著者の考え方は、このようにとてもユニーク。しかもユルいスタンスで書かれているので、肩の力を抜いてコネに対する本質を理解することができることでしょう。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※川下和彦(2016)『コネ持ち父さん コネなし父さん 仕事で成果を出す人間関係の築き方』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年03月24日みなさんは自身の健康に自信がありますか?『究極の体調管理 人生を変えるハイパフォーマンス計画』(鈴木登士彦著・日本実業出版社)によれば、病気ではないけれど健康でもないという“半健康人”は、日本国民全体の7割以上を占めるというデータがあるのだそうです。つまり、「病気がない=健康」ではないということ。さらに病気を治すより、健康になるほうが断然難しいといいます。著者は健康研究家であり、自然手技療法という代替医療を創始し、25年間で10万人の健康を担ってきた人物。簡単にできる、健康であるかの判断基準を「休みの日は平日より早く目覚めて『今日はなにをしよう』というワクワク感がいっぱいで朝を迎えているかどうか」としているそうです。本書では、“超健康体”を手に入れる究極の体調管理法を「運動」「食事」「呼吸」「休息」の4つの項目から解説。特別な道具も不要で、すぐにできるメソッドが書かれています。今回は、第2章「ビジネスパーソンのための攻める食事法」から、いくつかをご紹介したいと思います。■夕食は就寝の5時間前に済ませるべしグッスリと眠れた日は、身体の疲れがとれて気持ちよく目覚められますよね。そのような朝を迎えるには、夕食がポイントになるそうです。朝起きたときにだるさが残っていたり、背中が張っていたり、胃の不快感などがあるときは、前日の夕食がまだよく消化されていない「未消化」の状態。それを防ぐため、夕食を就寝の5時間前、遅くとも3時間前には食べ終わることを著者は勧めています。どうしても無理な場合は、朝食と昼食にボリュームを持たせ、夕食はあっさり済ませること。夕食を抜く場合には、深部体温を高める白湯や、ホットミルクなどを飲むとよいそうです。また外食や過食の日が続いたときは、意識して2~3日夕食を抜いて白湯やホットミルクだけで過ごしてみましょう。すると眠りが深くなり、内臓疲労も抜けて体調がよくなり、快適な朝の目覚めが戻ってくるのだと著者。深酒や寝る前のカフェインの摂取は、安眠を妨げるのでもちろんNG。満腹で寝るよりも、少し空腹でも食事を抜いて眠りについた方が、目覚めが格段によくなるそうです。■毎日2リットル以上の水を飲むべし!誰にでもやる気が起きない、なんとなく疲れがとれないときはあるものです。そんなとき、著者は水分を補給することを勧めています。毎日2リットルの水を飲むことが推奨されていますが、お酒を飲む人はアルコールが分解される過程で脱水状態になりやすく、意識的に最低2リットル以上の水分補給をするとよいそうです。また、朝食は必ず食べるようにすること。なぜなら、脳はエネルギーの留保が効かないから。そして朝食をとると体温が上昇するため、スタートアップが楽に切れるようになるというのです。■おやつにはナッツかゆで卵を選ぶべし仕事の合間におやつを食べる人は多いもの。コンビニに行けば、一口サイズで食べやすいチョコレートなどがたくさん並んでいますよね。しかし砂糖たっぷりのお菓子は、血糖値の乱高下を起こしてホルモンバランスの乱れや肥満、精神面の不安定などを引き起こすそうです。とはいえ間食習慣をやめるのは、なかなか難しいと思います。そこで著者が勧める間食食材が、ナッツ類かゆで卵。どちらもコンビニで購入可能ですよね。ナッツは高い栄養効果と優れたダイエット効果を持っている、サプリメント級のスーパー食材。食物繊維も豊富で、便秘解消や美肌効果が期待できるそう。そしてゆで卵です。卵には悪玉コレステロールをおさえ、善玉コレステロールを増やす栄養素が含まれています。また卵白には、リゾチームという酵素が含まれ、風邪の原因となる細胞をやっつける働きがあるといいます。*体調の好調、不調はすべて日常生活のなかに潜んでいるもの。そしてビジネスの場で成功するための前提となるのは、やはり自身の体調管理です。本書を読んで、“超健康体”で生きるヒントを得てみてはいかがでしょうか。(文/椎名恵麻) 【参考】※鈴木登士彦 (2016)『究極の体調管理 人生を変えるハイパフォーマンス計画』日本実業出版社
2016年03月24日日本は世界一の長寿国ですが、75歳以上の要介護率は約4割といわれているそうです。つまり、健康なまま長生きするのは簡単なことではないのです。誰もが将来寝たきりになることなく、元気でいたいと願うもの。それを叶えるために読んでほしいのが、『50代から始める ドクター白澤流「寝たきり」にならない5つの習慣』(日本実業出版社)です。著者の白澤卓二氏は、医学博士であり、30年間長寿を研究する人物。「死ぬまで元気な人には共通点がある」と主張する著者は、それを5つの習慣「油」「運動」「睡眠」「生きがい」「糖質」に分類。その考え方を軸に、本書では寝たきりにならない生活習慣をわかりやすく解説しています。決して難しいことではなく、気軽に実践できることばかりです。■将来の健康度が簡単にわかる15の質問みなさんは健康でいられる自信がありますか?まずは、ご自身の将来の健康度をチェックしてみましょう。以下の15個の質問のなかに当てはまるものがあるか、たしかめてみてください。(1)今日一日の計画がうまく立てられないときがある(2)すでにストックしてあるものをまた買ってしまう(3)自分のミスなのに、相手を怒鳴りつけてしまう(4)同じことを何度も質問していると指摘されたことがある(5)わからないことがあると自分で解決しようとせず、人を頼ってしまう(6)次になにをするつもりだったか忘れることがある(7)果物を毎日食べない(8)白いごはんを食べないと食事をした気がしない(9)パンを食べるときはマーガリンを塗る(10)歯の状態がよくなく、硬いものなどは食べにくい(11)手を胸の前で組み、片足で椅子から立ち上がれない(12)片足立ちで靴下をはけない(13)片足だけで一分間立っていられない(14)段差がない場所でもつまずく(15)主に車を使い、家や会社のなかしか歩かない1~6が認知症のチェック項目、7~10が生活習慣病のチェック項目、11~15が筋肉量の減少を示す「サルコペニア」のチェック項目だそうです。当てはまる数の多いグループは要注意とのこと。また5つ以上チェックがつけば、寝たきりの予備軍になるといいます。とはいえ1つでも当てはまる項目があれば、生活習慣を改めた方がいいかもしれません。ところで本書には、寝たきりにならないために、積極的に摂りたいものも紹介されています。■ココナッツオイル・コーヒーで老化防止たとえばココナッツオイル。少し前からブームになっていますが、買ったものの少し使って放置したまま……なんていう人も少なくないのでは?第一章『20歳若く見える人の「油」の習慣』のなかで、著者は老化防止の万能ドリンクとして「ココナッツオイル・コーヒー」を勧めています。ココナッツオイルには中鎖脂肪酸が多く含まれ、認知症状の改善に効果的なのだとか。また糖質に対する欲求や食欲を抑える性質もあり、ダイエット効果もあるというのです。そんなココナッツオイルを入れたコーヒーのつくり方は簡単。カップ1杯のホットコーヒーに大さじ1杯程度のココナッツオイルを入れて、よく溶かすだけ。ミキサーなどで撹拌すれば、カフェオレのようなクリーミーなコーヒーになるといいます。面倒だという人は、スプーンで混ぜて飲んでもよいそうです。ただし油が表面に浮くため、若干飲みにくいと感じる人もいるかもしれません。また、飲むタイミングも大切。食事のときよりも、食前にとったほうがココナッツオイルの効果は高まるそうです。ベストなのが、食事の3時間前のタイミング!そしてコーヒーが苦手な人なら、ホットの紅茶やココアに替えてもOK。■りんごを皮ごと食べて肥満&がん予防!ほかにも第五章の『長寿回路のスイッチを入れる「糖質」の習慣』で、著者は優秀な食材としてりんごを勧めています。厚生労働省が推進するプロジェクト「健康21」では、1日200gの果物を食べることを目標としています。しかし、日本人の平均摂取量は115gほどだとか。果物は高いし、皮をむいたりする作業が面倒という人も少なくないでしょう。でもりんごなら皮ごとかじりついて食べられますよね。しかも、りんごの皮にはポリフェノールがたくさん含まれています。りんごに含まれるポリフェノールの一種であるプロシアニジン類は脂肪の蓄積を制限し、がん細胞を自死させる働きを持っているというのです。つまり毎日りんごを食べることで、太りすぎを防止でき、がんになりにくい可能性があるということ。これは積極的に摂りたいですね。*本書には、寝たきりにならないための日常生活のコツと工夫がたくさん紹介されています。ずっと元気で過ごしたいなら、ぜひ手にとって参考にしてみてください。ご自身の生活習慣を見直すきっかけになるかもしれませんよ。(文/椎名恵麻) 【参考】※白澤卓二(2016)『50代から始める ドクター白澤流「寝たきり」にならない5つの習慣』日本実業出版社
2016年03月23日『一流の人はなぜ姿勢が美しいのか』(小笠原清忠著、プレジデント社)の著者は、小笠原流三十一世宗家。室町時代から800年以上にわたり、一子相伝で受け継がれてきた「実用・省略・美」を旨とする小笠原流礼法の継承者です。つまり本書ではそのようなバックグラウンドを軸に、日本人としてぜひとも知っておきたい、そして世界に通用する「礼法の真髄」を紹介しているのです。きょうはそのなかから、一流店を訪れた際に役立ちそうな、和食の作法に関する記述に焦点を当ててみたいと思います。そしてそのなかから、数字に絡んだいくつかのポイントを引き出してみましょう。■着席したらまず「一礼」が正解!食事の席についたら、最初に「いただきます」の気持ちを表す一礼をするのが正しいのだそうです。この時点ですでに、ほとんど知られていないことだといえるのではないでしょうか?ちなみに食膳の前で手を合わせる仕草をよく見ますが、これは宗教に由来するものなのだとか。つまり、本来の作法にはないのだそうです。次に、「箸構え」を。これは、感謝を表す本来の所作。正座の姿勢から、右手を伏せ、膳に置かれた箸のなかほどをとり、腿の上に引き寄せます。左手を受けるかたちで箸に添え、姿勢を正したら箸構えの完了。続いて右手を箸に沿って下に回し、箸を持ちなおして膳に運びます。箸は、中ほどを持つのが正しいそうです。上のほうを持つと粗相をしやすくなるので、深く握らず、鉛筆を持つように軽く持つのだということ。ところで和食は、右手に持った箸でいただくように配膳されているものなのだといいます。たとえ左利きだったとしても、左手に箸を持っていただくことはしないのだというのです。つまり左利きの人は、右手で箸が使えるように練習しなければならないということで、これは大変そうです。■食事の「腹八分目」も作法のうち昔から、「腹八分目」といわれているのはご存知のとおり。もう少し食べたいと思うくらいが適度な食事量だということで、これも作法のひとつだと思うほうがよいと著者は説明しています。食べすぎが体によくないということは、誰もが知っていること。とはいっても、これほど食料が潤沢で多彩な料理を楽しめる現代においては、人は自制を失ってしまいがち。毎日三食、満腹になるまで食べていれば、食事のたびにお腹が満たされないと満足できなくなってしまうわけです。しかし、姿勢を正すことも、正しく歩くことも、食べる作法も、多少なりとも自制心を働かせなければできないこと。常に自分の体を意識するとは、そういうことなのだと著者はいいます。■礼節とは「ほどよき自制」のこと食べすぎとは逆に、食べないこともまた問題。たとえばそのいい例が、女性のダイエットです。無理なダイエットは、やせすぎや体の変調を招くもの。また、朝食を食べない人が増えているのも困りものだと著者。なぜなら朝食を抜くと、そのぶん昼食や夕食を食べ過ぎることになってしまい、それもまた体の変調につながるから。「腹八分目」は、「ほどよき」をよしとする教え。また礼節とは、いいかえれば「ほどよき自制を知る」ことでもあるといいます。食べることは人の生存に関わることですから、自制することなく欲望に従ってしまえば際限がなくなってしまいます。いわば、江戸時代の本草学者、儒学者である貝原益軒のいう「禽獣の行いに近し」(けだものの行いのようなものだという意)。しかし、礼は飲食にはじまるものだと著者はいいます。正しい作法で食事をすれば、ほどよく自制の利いた生活を送ることができるという考え方です。*当然のことながら、ここでご紹介したのは和食の作法のほんの一部。しかも和食の作法のみならず、本書内においては、驚くほど緻密にさまざまな作法が紹介されています。それを「面倒だ。細かいことは気にしないほうが楽だよ」と切り捨ててしまうのはいちばん簡単なこと。しかし、否定することなく受け入れてみれば、そこから見えてくるものがあるはずです。忘れていた、あるいは知らなかった作法を学び直すことはやはり大切。そういう意味において、ぜひとも読んでおきたい書籍だといえます。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※小笠原清忠(2016)『一流の人はなぜ姿勢が美しいのか』プレジデント社
2016年03月23日ご存知のとおり『論語』とは、2,500年前に活躍した中国の思想家・孔子の言行録。高校生のとき、誰しも授業で習ったことがあるはずです。とはいえ、その成り立ちや内容について詳しく知っている方は、意外に少ないかもしれません。魯(ろ)という国に生まれた孔子は、故郷で政治の仕事をしたのちに、弟子たちと放浪の旅に出ました。ところが、自分を雇ってくれる人はいないかと諸国を巡るも、なかなか職が得られず、13年もの歳月を経て魯の国に戻ることになるのです。しかし、孔子がなくなったあと、その言葉は弟子や孫弟子によって一冊の書物にまとめられることになりました。つまり、それが『論語』。■『論語』は中国古典『四書』のひとつ!『論語』をはじめ『大学(だいがく)』『中庸(ちゅうよう)』『孟子(もうし)』の4冊は「四書」と呼ばれ、儒教の基本経典として重用されてきたもの。一般的には「論理」や「道徳」を学ぶために古典として紹介されることが多いと思います。しかしそれだけでなく、学び方や考え方、コミュニケーション、人間関係などさまざまなことがらに対し、広く深い知恵が得られるという側面も。だからこそ、ここに書かれていることは、現代にも活かせるのだといいます。前置きが少し長くなりましたが、そこでご紹介したいのが、『まんがでわかる論語』(齋藤孝著、備前やすのり・まんが、あさ出版)。表紙からもわかるとおり、どこから見てもまんがです。しかし、これはれっきとした『論語』本。音楽コンクールを目指す高校生を主人公にしたまんがを通じ、『論語』の言葉をわかりやすく解説したユニークな書籍なのです。『論語』には難しそうなイメージがあるかもしれませんが、なにしろメインはまんがなのですから、肩肘を張ることなく柔軟に受け入れることができるはず。とはいえ、まんがの内容をここで紹介することはできません。そこで『論語』に詳しい著者による解説部分から、年齢に関連した有名なフレーズを引き出してみたいと思います。■孔子は15歳で学問を究めることを決意「吾れ十有五にして学に志す。(為政第二—四)」いまさらいうまでもないことかもしれませんが、これは「私は15歳で学に志した」という意味。ちなみに「学に志す」とは、「これをしっかり勉強して、世の中に貢献しよう」と思って志を立てるということ。15歳で学問を究めることを決めたとは、ずいぶん早い決心のようにも思えます。が、それはともかく、「志す」、すなわち、なにかをやろうと思い立つということは非常に大事だと著者もいいます。なお、この言葉にはさらに有名な続きがあります。「三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(みみしたが)う。七十にして心の欲する所に従って、矩(のり)を踰(こ)えず」これは、「30歳になり自分の考えをしっかりとさせ、世に訴えることができるようになった。40歳になり迷うことがなくなった。50歳になり天命を知った。60歳になり他の人のいうことにも耳を傾けて、素直でいられるようになった。70歳にして心の欲するままに行動するようになったけれども、ルールを踏み外すようなことはしない」ということ。■「学問を志して迷わない」という気持ち15歳から70歳まで一気に、しかも、これほどシンプルな言葉で自分の人生を要約してしまう。その要約力自体が素晴らしいと評する著者の意見には、大きく共感できます。しかし、それ以上に重要なのは、「学問を志して迷わない」という強い気持ちがその中心にあること。いまの日本においても40歳を「不惑」といいますが、それも『論語』からきているもの。たとえば「不惑の歳になったのに、まだ迷っている」などと使ったりします。昔は『論語』が常識だったので、「不惑」といえば『論語』に基づいていると誰もが知っていたわけです。そこで、その言葉を日常生活に活かし、適切な場面で引用していたのです。*そう考えれば、いま『論語』を確認する場は学校の漢文の授業くらいしかないかもしれません。しかし、そこにある言葉に時代を超えた普遍性があることが事実。だからこそ本書を通じて、いまふたたび『論語』のメッセージを再確認してみるのもいいかもしれません。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※齋藤孝(2016)『まんがでわかる論語』あさ出版
2016年03月22日手に取ると、まずそのボリュームに驚かされます。『酒井若菜と8人の男たち』(キノブックス)は、昨年芸能生活20年を迎えた女優・酒井若菜さんが、友人である8人の男性芸能人との対談とエッセイをまとめた1冊。2段にびっしり埋め尽くされた文字と、厚さ3cm、400ページを超える重量感にたじろいでしまいます。でもそれは、本書を開くまでのこと。俳優・脚本家のマギー氏、俳優のユースケ・サンタマリア氏、芸人で俳優の板尾創路氏、ロックバンド「サンボマスター」の山口隆氏、俳優の佐藤隆太氏、お笑いコンビ「バナナマン」の日村勇紀氏、「ナインティナイン」の岡村隆史氏、「浅草キッド」の水道橋博士氏を招いて繰り広げられる8つの対談はどれも率直で驚きに満ちていて、ページをめくる手を止めるのが難しいほど。そんな8つの対談を支えるのが、対談相手の話を引き出す酒井さんの「聞く力」。その源はどこにあるのでしょうか。ノンストップで2時間に及ぶこともあったという各対談を牽引したのは、人間関係づくりになによりも大切な「3つのK」の存在でした。■1つめのK:「好意」対談相手は、酒井さんが仕事の現場で知り合い、その後も縁が続いている人たち。誰もが酒井さんとの対談の時間をとても楽しんでいる様子が文面から伝わってきます。そんな空気をつくり出しているのが「好意」の感情。酒井さんは、相手への尊敬・敬意よりもと強い、「恋心」といってもいいくらいの感情を素直に言葉で伝えていて、ドキッとすることもしばしばです。佐藤氏との対談では「私、りゅうちゃん(佐藤さん)と結婚するかもと思ってたけどな~」と、サラッと衝撃発言。でもそこにいやらしさはまったくありません。対談相手にも、読者にも、酒井さんが抱く相手への敬意がしっかりと伝わるのです。酒井さん流の好意の最上級表現といったところ。普段、好意を言葉で伝えるのはなかなか難しいこと。恥ずかしさが先に立ち、受け入れられなかったときの不安も大きくなりがちです。でも、案外いわれたほうは素直にうれしいと感じてくれるもの。酒井さんと対談相手とのやりとりを追っていくと、そのことに気づかされます。■2つめのK:「共感」会話のなかで、共通の趣味などお互いがよく知っているテーマを話題にすることってよくありますよね。でも、話題が広がれば広がるほど、会話の着地点を見失う恐れも。サンボマスター・山口さんとの対談でのこと。さまざまなカルチャーに造詣が深い山口さんの話題は、落語や歌舞伎からジャズ、尊敬するミュージシャン・忌野清志郎さんへの思いなど、どんどん変化していきます。熱中して話す山口さん、ときどき「こんな話ばっかで大丈夫?」と不安顔に。すると酒井さんは「大丈夫。さいっこうです」「とりとめのない話、聞きたいです」と、とことん相手の思いに共感し、がっちりと受け止めます。それは、向き合う相手をまるごと受け止めたい、という酒井さんの思いの現れ。「もっと聞きたい」という思いを伝えることが、相手を丸ごと受け入れる意思表示になるのです。■3つめのK:「感謝」本書全体から感じられるのは、対談相手に対する酒井さんの感謝の気持ち。なかなか口にできない言葉を、酒井さんは率直に伝えます。マギーさんとの対談では、悩みを抱えて女優を休業した酒井さんと、その日々を支えていたマギーさんの関係が明かされています。苦しみのなか、救いを求めてマギーさんに頻繁にメールを送っていた酒井さん。あるとき、不安に負けそうな酒井さんが「いつ死ぬかわからないから」と送ると、年上のマギーさんから返ってきたのは「順番抜かし禁止」というメッセージだったそう。対談中、酒井さんはメッセージを受け取った当時の思いを振り返り「それだけで泣きそうになっちゃって」「あ、生きようとか思っちゃいましたね」と率直に話しています。悩んでいるときに、家族や友人のちょっとした一言に救われることは誰にでもあること。そんなとき、「救われた」という思いをこんなふうに率直に相手に伝えることができたら。いまよりもう一歩、強いきずなを結ぶことができるのではないでしょうか。*読み進めるうちに感じるのは、本書全体を取り巻く「もう一つのK」の気配。その正体が、あとがきで明かされます。「完治のない病ばかり患うけれど、わたしが新たに患った「幸福」という病に関してのみ言えば、これだけは不治の病であればいいのに、と思っている。私は今、幸福を患っている」「聞く力」といっても、そこにあるのは特別なテクニックではなく、相手を思う素直な気持ち、この時間が幸せだ、という思い。それが対談相手にも、読む人にも伝わって、幸福感を生んでいるのでしょう。対談中「第二弾、第三弾とかで、女性バージョンとか、いろんなバージョンで(対談集を)創れるかなっていうもくろみがあったりもして」と展望を語る酒井さん。第二弾も期待大です。(文/よりみちこ) 【参考】※酒井若菜(2016)『酒井若菜と8人の男たち』キノブックス
2016年03月22日『OLが考えたお金を増やすたった一つの方法』(松川佑依子著、扶桑社)は、株式投資について解説した本。一見、数ある投資ノウハウ本のように感じますが、そのアプローチはとてもユニーク。女性の視点から株式投資をすることの利点に気づかせてくれるのです。著者の松川佑依子さん自身、資産運用会社で働くOLでありながらタレントとしても活躍するというユニークな経歴の持ち主。業務で資産運用を行い、「入社から約3年、会社に損はさせていません」という株式投資のプロであると同時に、25歳のイマドキ女子の感覚もしっかりと持ち合わせています。その著者が約3年の投資経験のなかで気づいた「株(株式投資)って女性の強みが生かせるんじゃないかな?」というひらめきが、本書のベース。ここでは本書から、投資する企業を選ぶときに役立つ女子目線について見ていきます。■女性向けの製品を知っている強み著者は、「株選びはやっぱり女性のほうが有利」といいます。女性向けの製品やサービスを売っている企業もたくさんあるのに、株式投資をするのは圧倒的に男性が多いから、というのがその理由。女性にとって身近な製品の使い勝手や人気を把握できるのは、女性の強みです。たとえば、カメラのフイルムなどを作る富士フイルムが株式上場していることを知っている男性は多いと思います。しかし、アスタリフトという化粧品がいまファンを増やしていて、そのアスタリフトをつくっている会社が富士フイルムであることは、男性にはなかなか気づけないもの。それが、女性であれば「アスタリフトの人気が高まっている→アスタリフトをつくっているのは富士フイルム→富士フイルムの業績や経営状況を確認してみよう」と連想ができるというのです。■実は街歩きを楽しむことも大切!街歩きのなかにも、株式投資のヒントが詰まっていると著者はいいます。都市部でいえば、たとえば新しい商業施設がオープンしたとき。繁華街に新しい施設をオープンすれば、さぞ株価は上がっていくだろうと予想できますが、著者はここで「自分で感じた体験も大切」とくぎをさしています。実際に自分の足で訪ねてみて「なんか想像と違うな」「惹かれないな」と思ったら、いくら短期的に株価が上昇していても安心して持ち続けることはできません。さらに、ショッピングをしながら歩いていると、行列のできるオシャレなお店を目にすることがあります。普段から女友だちとお茶をしたりウインドーショッピングしたりと街歩きを楽しんでいる女性は、こうしたトレンドにも気づきやすいのです。著者のおススメは、流行っているお店や、サービスがほかとはちょっと違っていて人気の出そうなお店を見かけたら「連想」をしてみること。しかも、連想にはいくつかのパターンが考えられるそう。たとえば行列のできる人気パンケーキ屋を見つけた場合。(1)人気のパンケーキ店→その経営母体が上場企業かどうか。(2)パンケーキの原料は小麦粉→製粉会社や製菓会社の業績に影響があるかもしれない。(3)パンケーキが流行った→次はどんなスイーツが流行るだろうか。といった連想ができるというわけです。たしかに、(1)はごく一般的なアプローチですが、(2)や(3)には女性の視点が生かせます。女性は口コミやSNS、雑誌、テレビの情報番組などで流行の移り変わりをキャッチしやすいといえますし、普段から料理をしていれば食材にまで連想を働かせることも可能だからです。■お気に入りカフェで四季報めくり本書では、こうした女性目線を生かした銘柄選びだけでなく、とっつきにくい専門用語、実際に株を買うまでの流れもわかりやすく解説されています。なかでも、「会社四季報」をめくるシチュエーションがイマドキ女子っぽくて印象的。会社四季報とは、日本の株式市場に上場している約4,000企業すべての情報が詰まった本。3か月に1度発行されており、企業の所在地や事業内容、財務情報や過去5年分の業績、記者による業績予想などが収録されています。株式投資をする上で必要な数字を確認することができる必携書ですが、かなり分厚くて見た目もややハード。とても若い女性がめくるようなイメージはないのですが、著者はこの2,000ページもある会社四季報を、お気に入りカフェでリラックスして目を通しているというのです。*株式投資への入り口は人それぞれ。お気に入りブランドでも、好きなレストランやコンビニ菓子でもいいのです。とくに女性にとって、入り口が自分の生活圏内にあるということはとても重要です。身近な商品をきっかけに、株式投資の広くて深い世界に進んでいく、本書がその水先案内人の役割を果たしてくれるでしょう。(文/よりみちこ) 【参考】※松川佑依子(2016)『OLが考えたお金を増やすたった一つの方法』扶桑社
2016年03月21日職場のエースといわれていた人が、課長になったら部下をマネジメントしきれなくなり、結果を出せずモチベーションを落としていくというようなことはよくある話。『部下が絶対、目標達成する「任せ方」』(中尾ゆうすけ著、PHP研究所)の著者も、できるはずの人が力を生かし切れずに終わってしまう現実をいくつも目にしてきたのだそうです。でも、本来はできる人であるはずなのに、なぜそのようなことが起きるのでしょうか?この問いについて著者は、課長職に2つのタイプがあることの影響を指摘しています。まずは、部下をマネジメントし、組織の成果を最大化することで会社に貢献していく「マネージャー」タイプ。そしてもう一方は、管理職の権限を持ち、高い専門能力を発揮しながら実務を中心に活躍し、個人の成果を最大化していく「プレーヤー」タイプ。個人として活動していくのなら、プレーヤーで十分。しかし上に立って人を動かしていくのであれば、課長ひとりでがんばってもあまり意味がありません。部下に適切な業務を与え、目標を持たせ、「絶対部下に目標達成してもらう」ためのマネジメントを行うことが必要になるということ。それができるかできないかで、課長としての資質が問われるわけです。ただ、理屈でわかっていたとしても、現実的に人を使うこと、もっと具体的にいえば、部下になにかを頼むことはなかなか難しくもあります。仕事を任せるためには、部下に快く引き受けてもらえるようにうまく頼むことが重要。そのコツはたったひとつで、「部下の立場になって頼む」ということだと著者はいいます。なぜなら自分の都合で頼むのは、マネージャーではなくプレーヤーのやり方だから。具体的には、以下の9つのステップをしっかり押さえておくことが大切だとか。■1:部下の状況を確認する部下に仕事を受ける時間的・能力的余裕があるか?その状況を見極めることが大切だ。なぜなら無理にやらせると、かえって反発を生むことになってしまうから。しかし仕事に納期はつきものなので、優先順位をつけることで調整すべき。■2:仕事を任せたい意思を伝えるなにかを頼むとき、前置きが長いと部下をイライラさせてしまうもの。そこで単刀直入に、頼みたい旨を伝えるのがいいそうです。場合によっては「ノー」といわれる可能性もありますが、そんなときは納得いくまで話し合うことが大切。■3:あらかじめ覚悟を決めてもらう難易度が高いことや、手間がかかることなどは先にいうのが鉄則。あとから「こんなはずじゃなかった!」といわれないためにも、正直に伝えることが大切なのです。難易度が高すぎて不満が出ることもあるでしょうが、そんなときはOJTのチャンスだと思って指導するのがベスト。■4:なぜ任せたいかを伝える人は理由のないことにモチベーションを持てないものなので、「なぜ頼むのか?」「なぜ君なのか?」、部下が納得するように伝えるべき。それでも反発されるなら育成計画を示し、部下の成長のためだと理解させ、将来的なメリットを伝えるといいそうです。■5:具体的な内容を伝えるアウトプットイメージ、納期、注意事項などを、5W1Hを意識して伝えること。人はゴールと道筋が見えると、自ら歩みはじめることができるものだから。しかし細かく指示しすぎて、「指示待ち人間」を育てないように気をつける必要も。■6:仕事を進めるための問題点がないか確認する仕事の進め方からアウトプットまでをイメージさせ、支障がないか確認するということ。人はやれる見込みが立つと、自信を持って取り組むことができるからです。でも、問題点が想像できないことも考えられるので、そんなときは上司として中止すべきポイントを指導することが必要になるとか。■7:了解を得るやるか、やらないか、部下自身のやる気を確認するということ。人は、自分で決めたことには責任を持つようになるからだといいます。「ノー」といわれる可能性もありますが、そんなときは理由を十分に確認して問題を解決していくべきだそうです。■8:必要な支援を約束する困ったときや迷ったときは、いつでも相談に乗るという約束をする。困ったときの支援があると、安心して仕事に取り組めるからです。ただ、それがあまえにならないよう、注意をする必要はあるでしょう。■9:感謝を伝える仕事の成果が出たときだけではなく、頼むときにも「引き受けてくれてありがとう」と感謝の意を伝えることも大切。もちろん、成果が出たときにも感謝の気持ちを伝えることをお忘れなく。*こうして見てみると、上司は部下に対してずいぶん気を使う必要がありそうです。しかし、「絶対部下に目標を達成してもらう」ことが上司のミッションである以上、それもまた必要なのでしょう。このような考え方も含め、上に立つ人に役立つ情報満載。部下とのコミュニケーションで悩んでいる方には、ぜひ読んでみていただきたい内容だといえます。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※中尾ゆうすけ(2016)『部下が絶対、目標達成する「任せ方」』PHP研究所
2016年03月21日『ハーバード×MBA×医師 目標を次々に達成する人の最強の勉強法』(猪俣武範著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、異例のキャリアの持ち主です。まず、医師として働きつつ、「語学力ゼロ」の状態からハーバード大学に留学したというのですから驚き。しかもそればかりか、ビジネススクールでエグゼクティブMBAを取得したというのです。制限の多い環境のなか、限られた時間内でこれほどの実績を打ち立てることは、そうそう簡単ではないでしょう。しかしそれでも、必ずしも特別なことをしたわけではないと著者はいうのです。効率よい目標達成のポイントは、「勉強に対する考え方や姿勢」「勉強のスキルやプロセス」「勉強以外のネットワーキング」などを良循環させること。そしてそのなかで著者は、「人生で達成したいことを見据えて目標を立てる」ことと、「なにをやらないかをはっきりと決める」ことにもっとも気をつけているのだそうです。つまり最大限のパフォーマンスを発揮するためには、その2つが重要な意味を持つということです。そんな基本をもとに、限られた時間内で最大の成果をあげる術を紹介した本書から、時間を有効に使うための「スキマ時間」の活用法をご紹介したいと思います。■時間管理を適切に行う1日24時間のなかで、人より多くのことを達成できる人がいるものです。でも、そんなことがなぜ可能なのでしょうか?著者は、その答えは時間管理の意識と方法にあると断言しています。時間管理とは、忙しく予定を詰め込めばいいというものではなく、目標に対する時間をどれだけ捻出できるかを指すものだといいます。たとえば通勤時間中にスマホでだらだらネットを眺めたり、好きな音楽ばかりを聴いたりしていたのなら、有効な時間管理をしているとはいえません。しかし目標に対して時間を管理することができていて、通勤時間中に英語やオーディオブックなどを聴いたり、勉強のための読書をしたりするようになれば、それは自身の成長につながるということ。時間管理をマスターすることは、決して難しいことではないと著者。もっとも大切なのは、時間管理が自分自身にとってどのくらい大切な規則であり、テクニックであるかを、自分の心に理解させることだといいます。時間管理を適切に行うことは、目標達成や成長に必要不可欠。だからこそ、時間管理の基礎を学ぶべきだと著者はいいます。■スキマ時間を有効活用効率的に勉強するためには、当然のことながら多くの時間を確保する必要があります。ポイントは、「長い」時間ではなく、「多く」の時間だということ。集中力は長く続くものではないので、勉強は必ずしも長くやればいいということではないという考え方です。一方、多く勉強するということは、細切れでもいいのでたくさんの時間を捻出し、それを勉強やタスクに振り分けること。忙しいビジネスマンも、子育てに忙しい人も、細切れの時間なら確保できるはず。つまり、そうした「スキマ時間」を有効に使うことが、いくつもの目標を同時に達成するためにもっとも有効な時間術だということです。会議を待つ10分間だったり、顧客との面談の待ち時間だったり、スキマ時間は日常のなかでたくさん見つかるもの。もし仕事が驚異的に忙しかったとしても、スキマ時間は必ず生じるものだと著者は断言しています。なぜなら社会で働いている限り、業務の継ぎ目をなくすことは不可能だから。■すぐツールを取り出すそして私たちは、このスキマ時間を有効に使うことが可能。たとえその時間が、わずか3分間であっても。たとえば著者は、いつも本や簡単な書類を持ち歩くようにしているそうです。電車やエレベーターの待ち時間も、読書やメールの返信作業などのために利用しているわけです。また、スマートフォンはスキマ時間を有効利用するのに必要不可欠。メールの返信や簡単な仕事は、スマホでスキマ時間に終わらせてしまえばいいのです。なお、iTunesなどのクラウドサービスに英語のポッドキャストを入れておけば、リスニングの練習も可能になります。これらのアイデアからも推測できるとおり、重要なのは、スキマ時間ができたら「すぐに」ツールを取り出せるようにしておくこと。1日のTO DOリストの確認をしたり、机の上の整理や書類のサイン、メールの返信をしたりするなど、オフィスで仕事中のときも、スキマ時間が5分あればさまざまなことができるはず。もし20分以上あれば、レポート、発表に使うパワーポイントの骨組みの作成なども可能。少しでも手をつけておくことで、その後の仕事の効率が大きく変わるわけです。そしてスキマ時間は、仕事場だけでなく家でも応用可能。たとえば5分あれば、今日やることを書き出したり、買いものリストをつくったりすることができます。10分あれば洗濯物をたためますし、20分あれば掃除機をかけられるでしょう。そうすれば、余った時間を仕事や勉強にあてることができるということです。*このように、1日のスキマ時間を合計すれば、相当の時間を捻出できるということがわかります。大切なのは、この時間を重要なことに投資し、自己投資と目標達成の良循環を生み出すことだというわけです。(文/書評家・印南敦史) 【参考】※猪俣武範(2016)『ハーバード×MBA×医師 目標を次々に達成する人の最強の勉強法』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年03月20日