ビューティフルピープル(beautiful people)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に渋谷・ヒカリエで発表された。来シーズンから発表の場をパリへ移すことを公表し、今回は東京でのラストショーとなった。そんな今季のテーマは「Do it Ourselves=自分達でやってみよう」。春らしいレース・シフォンのワンピースやスカート、パジャマパンツ、オールインワンなどを展開。ブランドのシグネチャーアイテムとも言えるトレンチコートは、今シーズンノースリーブ仕様に。上着でウエストマークし、まるでドレスのような着こなしを提案した。全体を通してウェアはビッグシルエットで、リラックスした雰囲気が漂う。ポリエチレンや和紙といった素材使いによりシワ感を出し、テーマ通り“着る人が自分で味付け”できるように作り上げた。そんなウェアは小物使いで遊び、ヒネリを効かせた。2017年リゾートコレクションでも展開された、デザイナー・熊切秀典の「熊」をモチーフにしたアクセサリーは今季も豊作だ。ブランドのシグネチャーアイテム:レザージャケットを羽織ったテディベアのポシェットや、つま先のかぎ爪が光る熊のファーサンダルなど。ゴールドやシルバーのかぎ爪は、ブレスレットやスニーカーの装飾にも取り入れられた。さらに、イエローやオレンジといった、鮮やかなカラーサングラスも着こなしのアクセントに。ランウェイショーの最後は、デザイナー自身がテディベアの着ぐるみを纏って登場。テーマに合わせて、自分たちのバンド演奏で締めくくり、会場を沸かせた。
2016年10月23日ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)が2017年春夏コレクションを2016年10月20日(木)、東京・渋谷ヒカリエにて発表。テーマは“daydream believer”。起きてても夢を忘れないデザイナーの、10周年への意気込みが感じられた。ブランコと窓が吊り下げられた幻想的な会場に、スローテンポの曲が流れ始めてショーは始まった。動物のぬいぐるみが付いているマフラーや、袖にフェザーがついたオールインワンが、会場をふわふわとした優しい雰囲気で包む。ぼんやりともやがかかったような象徴的な柄は、トップスやワンピース、スウェットなどにカラーを変えて登場する。シルエットは眠りに落ちる時のようにリラックスしており、ルームウェアのようなセットアップやワンピース1枚で完成されたスタイリングも。ぬいぐるみを抱えて、夢を見る準備は万端といったところだろうか。靴やかぎ針編みのパンツに鎖のモチーフを付けたり、大きなタッセルがついたテニスラケット、ロウソクのヘッドピースなど非現実的で無秩序なモチーフは、私たちの夢の中での風景を思わせる。カラーパレットはアースカラーや、ホワイトやグレーで基本的にナチュラルな風合いだが、単色のレッドワンピースなど主張の強いアイテムも。カーキのブルゾンの胸元に配された動物は歴代のルックで登場したキャラクター達で、10周年の意味合いも込めている。最後は忌野清志郎の「デイ・ドリーム・ビリーバー」の女性ボーカルアレンジが流れ、締めくくられたショー。柔らかな夢を私たちに見せると同時に、10年経っても色褪せないデザイナーの夢を反映していたコレクションだった。
2016年10月23日ディスカバード(DISCOVERED)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に東京・表参道ヒルズで発表された。今季のテーマは“stick out”。1993年にリリースされたザ・ブルーハーツ(THE BLUE HEARTS)のアルバムに影響を受け、パンクロックの冷たい印象を服に落とし込んだ。序盤は、ブラックのベロア、レザー、メッシュなど冷徹な印象を与える素材で黒の多様性を表現。ハードなブラックアイテムにグリーンのソックス、ピンクのアームカバーなどの小物をスタイリングし、レイブパンクの雰囲気を漂わせる。ショーが進むにつれ、グレーのヒョウ柄テーラードジャケット、深みのあるブルーのベロアセットアップなどが登場し、カラーパレットはブラックからだんだん多彩に変化していく。幾何学柄のカラフルなグラフィックはポストモダンを表したもので、シャツやオールインワンに配され存在感を放つ。ピンクとブルーのグラデーションニットやホワイトのパーカーなど淡いカラーのアイテムが並ぶが、パステルイエローのジーンズにダメージ加工を施したり、ショート丈のトラウザーやベルト、サンダルにスタッズを光らせたりすることでヒリヒリとした空気感をキープ。ロックに携わる人達のはみ出る精神性を、服を通して刺激的に私達の目に焼き付けていた。
2016年10月23日アン ソフィー マドセン(Anne Sofie Madsen)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に東京・渋谷ヒカリエで発表された。東京での発表は、昨シーズンに続き2度目となる。ファーストルックは、ブラックのオールインワン。パンツ部分の布が太ももあたりまで分裂し、歩くたびに揺れて舞う。テーマは“failure(失敗)”。まともな形の服に至らない不完全さが危うい雰囲気を醸し出す、フェミニンなワードローブが展開された。この未完成さを象徴するのは、切りっぱなしの素材を組み合わせたルックたちだ。レザー、スエード、オーガンザ…。厚みも質感も異なる異素材のピースを、まるでテープを貼ったように重ねたり、待ち針で留めただけのようにして繋ぎ合わせ、ワンピースやスカートに仕立てていく。切りっぱなしの布からは糸が飛び出し、縫い合わす糸も処理されずに垂れ下がったまま。このディテールは、より思い切ったフリンジという形になって現れた。服から飛び出す細かい付属物が空中で遊ぶ様子は、観る者になんともいえない浮遊感を味わせる。また、柔らかい素材にギャザーを入れて服全体に這わせたルックからも儚さが漂う。終盤になると、ランジェリーを彷彿とさせるアイテムの登場によって、この危ういフェミニンさは決定的となった。光沢のある肌色のスリップのようなワンピース、また、肌が透けたミニ丈のドレス。ライン状にあしらわれたスワロフスキークリスタルの輝きが、“失敗”を超えた先の良き未来を示唆しているようだ。アン ソフィー マドセンは、「人は皆、“失敗”を元に成長していく。失敗の感覚を入れることで、デザインにもユニークさを出したかった。」と語る。未完成の服が導く次なる形状への期待感が、あらゆる可能性を秘めたワードローブの魅力を伝えてくれた。
2016年10月23日ミントデザインズ(mintdesigns)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)、東京・恵比寿にあるリキッドルームで発表。“SUBWAY”というテーマにふわさしい、暗くひんやりとした空気の中、一体どんなワードローブが披露されるのか、会場が高揚感に包まれる。共通するエッセンスは、靴紐のように洋服を編み上げているレースたち。腰から裾にかけて大きくレースアップされているものから、ポケットに当たる部分の切り込みだけ編み上げているもの、靴をぐるぐる巻きにしているものまで、幅広い表現で洋服に変化を加えていた。テーマを反映しているのだろうか、生地の重さが絶妙に操作されているものが多い。一見すると透け感のあるシースルー素材のように思えるファブリックも、動きを加えた時にあまり肌の色が出てきていない。それとは対照的な軽い生地は、柄の重なりが生まれるようにレイヤードされ、光が通過する分量を、きっちりと計算したバランスが組まれている。特にも興味深い、“重ね着”は、ワンピースのようなロングトップスに、軽やかなパンツを合わせたもの。ある時はパンツにネオンカラーを加え、透けて見える色合いに目が眩み、またある時は、パンツのブラックが下から土台となり、トップスの軽快さを引き立てていた。全体を通してみると、パーカやロングシャツ、ワイドパンツ、スウェットなど、どこかマニッシュで退廃的な気配が漂うアイテムが差し込間れている。この“モノ”自体の力強さをベースに、軽やかな素材使いやレースでのシルエット操作を加えることで、新しいフェミニンのあり方を提案した。
2016年10月22日シナ スイエン(sina suien)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)に東京・青山で発表された。今シーズンは、デザイナー・有本ゆみこが訪れた新潟の西明寺から着想を受け、僧侶の衣服=袈裟、着物、インドのサリーなどをイメージしたウェアを披露。モデルがゆっくりと登場し、手になにやらキューブのようなものを手にしている。よく見るとスピーカーで、独特の音色が辺りに鳴り響いてゆく。そんな中登場する衣服は、インドの民族衣装である「サリー」の要素をあらゆるところに感じさせた。淡いブルーやパープル、ベージュの色彩に映える、美しいゴールドの装飾と刺繍。目を凝らすと、スパンコールやビーズ使いも見られ手の込んだディテールに気づく。ウェアと共に音の欠片が歩き回り、まるで“刺繍のオーケストラ”が出現する。さらに、ロングワンピースはレオパード、チェック、ドットと異なる柄の布を縫い合わせたかのような、パッチワーク風のデザインに。元来「袈裟」は、身に纏う僧侶が世間で不要となった布を自ら縫い合わせ、進行の旗印に昇華していたという。そんなストーリーとのつながりを感じさせた。他にも、左前合わせのドレスやガウンの帯使いは、着物からのインスピレーションを感じさせる。いずれもバックスタイルでの絶妙な肌見せや、肌が透けるレース使いによって、妖艶な雰囲気を醸し出しているのが特徴だ。 着た人が眠るように、心地よく陶酔するさまを込めて名付たというブランド名を感じさせる、優艶な服と演出であった。
2016年10月22日テンボ(tenbo)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)、東京・表参道ヒルズのスペース オーにて発表された。毎シーズン洋服を通じメッセージを投げかけるテンボがテーマに選んだのは、「ハンセン病」だ。完全な治療法が確立される前の時代に発生した、感染者や感染の疑いがある者への差別や隔離運動である「無癩県運動」。その被害者は感染者自身にとどまらず、その子供達にも広がっていたという。ワードローブを彩るテキスタイルには、その子供達や被害者の姿や心の叫びをイラストで表現。ポップな印象に込められたメッセージに観衆の心が奪われる。療養所から故郷を想う人々は、その街に帰ることができないことが多い。その“望郷”の思いは、姿を変え、あらゆる人を美しく彩る洋服になる。展示をデザインに落とし込んだシャツワンピースを身に纏うのは、着る人の個性を引き立てるような役割を果たしていた。ショーの終盤には、四季をイメージした4つのドレスが。ライウェイが季節に埋め尽くされると、ハンセン病回復者の槙ミヨさんが白のドレスで登場した。井上あずみによる『故郷』が響き渡る中、これまでの苦労や苦悩を、ファッションという媒介を通じて投げかけ、重くなりがちなテーマを前向きなイメージで捉えさせてくれるコレクションとなった。
2016年10月22日ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)に東京・渋谷ヒカリエにて発表された。モーレス、モラル、マナー。今シーズンは、集団における規律を意味するその3つの言葉を念頭に置いた。始まりを飾ったのは、シンプルなスーツに透明感ある白いコートを合わせたルック。2ルック目もハーフパンツのスリムなフォーマルスタイルだ。しかし、1人、2人と姿を現すごとに最初にあったテーマとはかけ離れていく。ダブルブレストのデフォルメされたコートや、袖が膝程にまでだらんと伸びたシャツなど、元来正装に用いられるはずのアイテムがアレンジされている。アイテム同士がぶつかることで、その規律はさらに緩和。シャツにはシャツを羽織って、あるいはデニムのルックに“きっちりと”サスペンダーを合わせて、さらにはストッキングを連想させるヌーディーなトップにだらんとベルトののびたトレンチコートを合わせて…。あげればきりがないが、根本は制服であっても最初の念頭に置いた3つの言葉からはかけ離れたものばかりである。終盤には、片袖のないトップスやアウターまで登場する。さらに片側は、袖山部分が外れてしまっていて肌があらわになっている状態。それなのに、今までだらんと前を空けてきていたシャツはピタッと一番上のボタンまで閉めて、トレンチコートはしっかりベルトを結んだ丁寧な着こなしだ。デザイナーの北澤武志と佐藤絵美子曰く、モーレス、モラル、マナーという言葉に繋がるようなフォーマルなものをストリートのユーモアで工夫したという。また、時折見せた官能的な露出は、規律とは真逆にある人間の羞恥な部分をとらえたもの。そして、佐藤が先シーズンから今シーズンに至るまでの中で出産し、子供への想いがさらなる遊び心あるデザインに繋がったようだ。今回が節目の10シーズン目。2人が作り出すファッションの“規律”はこれからも私たちを楽しませてくれそうだ。
2016年10月22日ヨハン クー(Johan Ku)の2017年春夏コレクションが、東京・渋谷ヒカリエで2016年10月19日(水)に発表された。今季のインスピレーションとなったのは、イギリスの映画『JUBILEE(邦題:聖なる年)』。1578年、エリザベス一世は大魔術師ジョン・ディーに呼び出された天使エアリエルに、来世の英国を案内される。そこは墜落しきった無法地帯の世界だった、、。パンク調の音楽が鳴り響く中、映画の舞台=英国を感じさせるチェック柄のウェアが登場。レッドやピンクなど鮮やかなカラー使いをし、上にスタッズを散りばめたり、異なるサイズ感の柄を組み合わせたり、またはパンツに空いた穴からパターンが顔を出したりと様々だ。さらに、シルバースタッズが肩や手首から飛び出すガウンや無数の穴が空いたトップス、切り裂かれたスカートが英国の“パンクスタイル”を彷彿させる。そんなスタイルを助長するのが、ヘッドギアのようなアクセサリー。チェーンやトゲが無数に生え、無骨なパンクを完成させる。さらに後半展開される、トップスからシャツ、アウターまであるゆるウェアを染めあげるプリント使い。ロンドン出身のフォトグラファー・Andrew Penkethと共に手掛けたデザインは、映画に登場するエリザベス一世を彷彿させる巨大な王冠や、空き缶・安全ピン・アクセサリー・スタッズなど様々なものが、無秩序にばらまかれた混沌としたもの。まるで映画で登場した来世の英国=「無法地帯」を感じさせた。
2016年10月22日まとふ(matohu)が2017年春夏コレクションを2016年10月18日(火)、東京・表参道で発表した。今シーズンのテーマは「うつくし」。「美しい」という意味ではなく、古語での解釈に則った「かわいい」「愛らしい」という意味合い。平安時代の『枕草子』にも「なにもなにも、小さきものは、皆うつくし」という一節が登場するほど、日本では昔からこういった美意識があったようだ。着た人・見た人が「かわいい」と感じることで、心が和らぎ、優しい気持ちになるような服作りをしたとデザイナー・堀畑裕之と関口真希子は語る。まとふのフィルターを通した「かわいい」は、少しファニーなモチーフへ落とし込まれた。無数に並ぶピーナッツや飛び回るツバメ、さらに「小さき人」とデザイナー達が名付けた、小人が踊り回るようなモチーフがジャケットやパンツ、トップスなど、あらゆるウェアに刺繍されている。また、Aラインのワンピースやスカートは、ふんわりとしたドレープやギャザーを採用することで、柔らかく甘い空気感を出した。肌が透けるレース使いのトップスも、そんな雰囲気を助長する。先シーズンも登場した「オートモード平田」の石田欧子デザイナーとのコラボレーションハット。今回は、まるで陶芸品が歪んだような、独特なフォルムが特徴で、着こなしのアクセントに取り入れられた。ここ何シーズンか、“日本の美意識”をテーマに服作りをしてきた「まとふ」。完結した暁には、大きな展覧会を開催し、これまでのウェアをまとめて見られる機会を作るそうだ。
2016年10月21日ティート トウキョウ(tiit tokyo)は、東京ファッション・ウィーク2日目の2016年10月18日(火)、2017年春夏ウィメンズコレクションを発表した。テーマは「leave」。シンプルで飽きのこないデザインに、ノスタルジックなムードや危うい少女性などを溶け込ませ、独自の世界観を構築しているデザイナーの岩田と滝澤。今季彼らは、自分らしく生きられずにもがきながらも前進する一人の女性をミューズに据えた。誰にもぶつけられない孤独感、心の奥底に秘めた焦燥感。そんな複雑な感情は、多種多様なオリジナルテキスタイルで表現する。シルク糸を用いたツイード、ファンシーカラーの糸を織り込んだカットジャカード。豊かな光沢を纏ったシースルー地は、タフなデニム地やハードなレザーと交差し、力強さと可憐さを同じ舞台で共存させる。言葉にするのが難しい不安定な感情は、自由なスタイリングで体現した。バックラインと袖口をレースアップしたシャツは、リボンを緩めて襟を落として着崩したり、床にはうほど長いリボンを袖から垂れ流したり。フェミニンなドレスも左右で異素材を繋ぎ合わせもので、その個性を潰すかのようにさらに異素材パッチワークのドレスをレイヤード。コートだって前身頃をサイドにずらして着こなし、ノーマルからは距離を取った。涙が流れる目元は(メイクでツヤ感を与えた)、衝動的な彼女の姿へとリンクさせる。装いもメイク同様、感情的な要素を持ち合わせていて、服地の上で男性性と女性性が融合されている。ビックサイズのレザージャケットには花刺繍とリボンを、ミリタリージャケットにはフリルを。ツイードのセットアップも、ライダースディテールをぶつけてマニッシュに仕上げた。ただ、その洋服デザインもコーディネートも躍動感という点では長けていて、苦しい中でも歩みを進めるブランドミューズの姿に重なっていく。
2016年10月21日トクコ・プルミエヴォル(TOKUKO 1er Vol)が2017年春夏コレクションを2016年10月18日(火)に渋谷ヒカリエにて発表した。デザイナー・前田徳子(Tokuko Maeda)本人が世界各地を旅して得たインスピレーションを落とし込んでいくトクコ・プルミエヴォル。今季のテーマはコートダジュールで、現地の文化・色・雰囲気のエッセンスが詰め込まれていた。コレクション前半はレモンのプリントを施したブラックのワンピースや、イエローのシースルーアイテムで爽やかな印象。これはイタリアとフランスの国境の街、マントンで開催されたレモン祭がヒントになっており、大ぶりな首飾りからピアスまでレモンがふんだんに使われている。音楽が変わると同時にプリントのイメージは、葡萄、さくらんぼ、苺など、ヨーロッパの温暖な気候で育つヨーロッパの果物へと変化。ブラックのレースにアップリケ刺繍で大胆にアクセントを加えていた。さざなみが聞こえ会場が青い光に包まれると思うと、今度はエビやタコ、海藻など海の生き物がアーティスティックなモチーフが現れる。まるで洋服の中に海の世界が広がっているような全面プリントのセットアップなど、ターコイズやペルシャンブルーなど様々な青を組み合わせて幻想的に海を表現していた。シルエットは全体を通してリラックスしたものであり、麦わら帽やサンダルでまるで本当にリゾートに旅しているような気分に。デザイナーが自分の軸をしっかり持ち、流行に左右されず旅の中で見たものを落とし込んだ洋服を見ることで、私たちも同時に旅を追体験できるようなコレクションに仕上がっていた。
2016年10月21日ウジョー(Ujoh)の2017年春夏コレクションが、2016年10月17日(月)に渋谷・ヒカリエで発表された。ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)による若手デザイナーサポートプログラムの支援を受け、先シーズンはイタリア・ミラノでコレクションを発表したブランドだ。今季は春らしいフラワーモチーフが至る所に。まるでヴィンテージウェアを彷彿させる、スモーキーなレッド・ブルー・ホワイト・パープルの花々がスカートやトップス、パンツの上で可憐に咲く。軽やかな素材感も春の風を運ぶ。歩く度にはらむシフォンや艶やかなシルクを多用し、ウェアはすべてビッグシルエットながら、女性らしい雰囲気を醸し出している。また、パタンナー出身の西崎が作り出す、鮮やかなカッティングは今シーズンも健在だ。春の代名詞とも言えるトレンチコートは、うしろと横の部分に大胆な切り込みが入り、歩く度にリズミカルなフォルムが生まれる。スカートにも大胆なスリットを、シャツはまるで再構築されたように、横から伸びた布がビスチェのように前面で結ばれて、独特の着こなしに。異なる布を貼り合わせたようなウェアも目を引く。そんな中、顔を覗かせるマスキュリンさがスパイスに。ドロップショルダーのセットアップスーツのほか、足元に合わせたメンズライクなウィングチップシューズ、レザーサンダルが全体を締めている。
2016年10月20日ウエムロ ムネノリ(uemulo munenoli)が2017年春夏コレクションを2016年10月17日(月)に東京・表参道にて披露。今シーズンはブランド初のインスタレーションによる発表である。ワードローブの基となったのはアメリカの彫刻家、アレクサンダー・カルダーのモビール。紐につながれた物体達が見せる独特の色使い、時の流れを遅らせるようなゆったりとした動きが少しずつ落とし込まれている。モビールは、風に吹かれ1秒ごとに違うカタチになっていく。美術館をイメージしたという会場に、モデルたちが静かに足を踏み入れ、前、横、後ろと360度のシルエットを私達に堪能させる。モビールと同様時を経て変わる動きに、目を凝らしてその一瞬の時を待つ。透明感や流動感を出すために、スリットやレイヤードを多用している。前は長く後ろは短く。はたまた、片方だけ肩を落として、アシンメトリーな形状を作りだした。流れるような絡み織のシースルーは、レイヤードした色を透かしながら、空気を纏うひとつの作品を構築していく。ワードローブの中に紛れた細い紐は、布と布の狭間に存在して繋ぎ合わせる役割を果たしている。オーバーボリュームのブルゾンにギャザーを寄せたり、あるいはウエストまである長いベンツの切れ目を繋ぎ合わせたり。風に呼応する動きをより流動的にする下支えとなっている。カラーパレットは、活動的に見えるオレンジや赤、スッと心が落ち着くロイヤルブルー、そしてスタンダードなネイビー。寒色と暖色のコントラストは、様々なものを組み合わせてバランスをとるモビールの真骨頂を表しているようだ。
2016年10月20日アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)の2017年春夏コレクションが、2016年10月17日(月)東京・渋谷ヒカリエで発表された。東京コレクションの開幕とともに、ブランドのランウェイデビューとなる今回、一体どんなワードローブが披露されるのか、期待が高まる。序盤、ランウェイに登場したのは、シーズンのアイテムを身に纏ったダンサー5人。ブランドらしいストリートの色を反映した力強いダンスで、観衆の心をつかむ。インスピレーションの源になったのは、“シャツ”。古くからその原型が完成し、長く愛されているそのフォルムをベースに、アウターやドレスなどのディテールを落とし込んだ。メインとして採用されているのは、ファスナーを使ったデザイン。肩口に取り付けられ、その開閉でボリューム感を操作できるアイテムや、襟のジッパーからアクセサリーが出てきているもの、レイヤードのような立体感を演出するものなど、幅広い場面でポイントを担っている。また、モデル全員が纏っている口のような形の大きなジッパーマスクも大きな意味が。ユニセックスで楽しめるアイテムであることを強調するために、性別を“隠す”という意味合いを込めて、顔の大部分を覆ったのだという。ラストを飾ったのは、全身がシャツの襟で覆われたドレス。今季を象徴するようなアイテムだ。デザイナーの李燦雨(チャヌ)にとって、幼い頃からの夢であった東京コレクションでのデビューと、自分の武器であるシャツでのデザイン。その熱意と技術が結集したファーストコレクションとなった。
2016年10月20日リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)の2017年春夏コレクションが発表された。今シーズンの製作にあたって、デザイナーの山縣は「どんな時代にも屈することなくまっすぐに生きる女性。特に、戦前~戦後の時代に生きる女性像を思い描きました。そして、どんなファッションも楽しむ女性というのも今シーズンのテーマです。」と語っている。それを表現するために用いたのは花。ひと目みただけでそうだと分かる洋服には、心躍るデザインが散りばめられている。オーガンザに色とりどりのブーケやリースを乗せて表現したのは、混沌とした時代を生き抜く女性たちの結婚式。トップスともワンピースとも言い難いほどまん丸な服には、色とりどりの刺繍で大胆に花を描いた。幾枚も重なったオーガンザは、肌に重なるほどその存在感を増し、おしゃれを楽しむ女性たちの高鳴る気持ちとともに膨らんでいく。細かいところに目を向ければ、ブラウスにはブランケットステッチで柔らかなアクセントが置かれていて、ほとんどのオーガンザを用いた洋服の裏側には“謎の袋”が備えつけられている。山縣曰く「その時代の女性たちが持っていた荷袋をイメージした」らしいが、一握りもないほどの小さな袋の中には、花が詰め込まれていて、幸せな気持ちが呼び起こされる。もうひとつ象徴的なアイテムを挙げるなら、和紙素材を用いたニット。赤い花をランダムかつ立体的に配したカーディガンとスカートは、山縣が日常でふと目にしたほんの数秒のシーンがインスピレーション源だという。ひとつひとつ表情の違う花たちに、ギュッと心を掴まれそうになる。女性に必要なのは、甘さや華やかさだけではない。コットンジャカードで表現した真っ黒と真っ白のルックは、明らかにオーガンザや和紙素材とは違う辛口なムードを放っている。肌と重ねれば、花が浮かび上がる独特のテキスタイルを用いて、ブラウスやワイドパンツ、そしてガウンなどを創り上げた。
2016年10月19日年齢を問わずおしゃれ女子から絶大な人気を集めるブランドTHEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)が2017年春夏の最新LOOKをインスタレーション形式で公開。宝の山を意味するGOLDMINEがテーマとなったコレクションでは中東やアフリカを彷彿とさせるモチーフやアイテムが多く見られました。そこはまるで異国のマルシェのよう。例え使われなくなったものやガタクタでも、それがどこからやってきたのか何なのかわからない人にとっては、全く違う宝物に映るかもしれない。くるりと視点を変えて世界を見つめ直してみれば、そこには宝の山=GOLDMINEが現れる。想像力を働かせて、過去の価値を問うのではなく自分の目で新しい価値を見出そう、というメッセージが込められています。要らなくなった紙箱を解体したようなパーツ、猫ちゃんテレホンカードのピアス、ハンガーのサイズ表記に使われるパーツを模したブレスレットなど、THEATRE PRODUCTSらしいウィットに富んだアクセサリーたちも必見。ブランド初となるEC先行予約会今回ブランド初となる試みとして、2017年春夏コレクションが予約できるオンライン予約会がオフィシャルオンラインショップにて開催。10月17日(月)〜24日(月)の期間中に予約するとオンライン予約特典として「TP」ロゴ入りショッパー(紙袋)がプレゼントされます。予約はオフィシャルオンラインショップより→ PRODUCTS 2017SS "GOLDMINE"LOOK photo : THEATRE PRODUCTS official
2016年10月15日ファセッタズム(FACETASM)の2017年春夏ウィメンズコレクションが発表された。今シーズンは、ブランド名の由来であるフランス語でダイヤモンドなどの切り子面を意味する単語「facet」をもとに「様々な顔」「様々な見え方」という意味を込めている。カラーパレットで存在感を放つのは原色のグリーンやイエロー。それらの色は熱を持っているが、トップスに散りばめられたシースルーでクールダウン。また、鮮やかなブルーのドレスもバックコンシャスなデザインで涼しげに。保守的な印象を受けるはずのトレーナーやテーラードジャケット、ステンカラーコートの背中も大胆に空いており、見る角度を変えることによって洋服の違った見え方を表現する。太もも部分はタイトだが、ふくらはぎからフリルの丸みで大きく広がったボリュームのあるパンツや、足元が隠れるほどのフリルが重なるスカートなど、ボトムスは下に下がるほど重みのあるシルエットで登場する。セクシーとスクールテイスト、異なる要素を1つのスタイリングに詰め込むことで新しいシルエットを提案。ブラックのセットアップにはスカートに深いスリットが入り、足元にはラインハイソックスとローファーを合わせて。要素と要素を合わせることで洋服の異なる表情を作り出していた。初心に返り、ブランド名に忠実な洋服作りを続けたデザイナー・落合宏理の自己紹介のようなコレクションだった。
2016年10月13日アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)が2017年春夏コレクションをフランス・パリで発表した。スコットランド・シェトランド諸島の手つかずの野生と、海岸の風景が今シーズンのソース。息をのむほどの自然の美しさは、これまで幾度となく地元の職人達にインスピレーションを与えてきたという。それは、今シーズンの象徴でもあるシェットランドレースが物語っている。職人たちの精巧な技によるクモの糸のように細やかな模様は、肌に沿えばラグジュアリーに映る。そこに描かれたのは、自然で出会った生命の木、広大な海、そして咲き誇る花々。柔らかな白を基調とした古典的なドレスは、シュミーズのようなものもあればパネル張りの構築的なものもある。一方、真逆のカラーも登場している。官能的な黒だ。肌との重なりによって、レースの柄がより強く感じられ、さらにフリンジを加えることでその表現はまるで自然を生きる動物たちのように自由なものへ。レースの儚さをかき消すようなスタッズ装飾、力強いレザーは相反する強烈な印象を与える。一方で大胆なフリルやラッフル、そして咲き乱れる色とりどりの花々は壮大な大地の誇張表現として役割を担っているように思う。トラッドなフェアアイル柄のニットは、構築的に繋がれて今までとは異なる、ズレから生じる美しさをコレクションに注ぐ。前に述べたレースとは正反対のテクスチャーを織り交ぜて、新感覚のコラージュを生み出している。
2016年10月12日ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで発表された。始まりは、円形のオーガンザを幾重にも重ねたドレスから。パーツ中央にはスパンコール、多方向に伸びた裏地のラインが透けている。パーツは花びらのように重なり合い、その集合体は万華鏡のような華やかさがあった。その後も、ライダースジャケットやトレンチコート、デニムアウターなどスタンダードなウェアを、ときに規則正しく、ときに不規則に小さなパーツを組み合わせて再構成していく。帯状のレザーを丸いパールビーズで結合させたボディ、テープ状の素材を格子状に貼り合わせたアーム、正方形のものをパネルのように並べたバッグスタイル。パーツを少しずつずらし地層のように合わせ、ボリュームを孕んだ部位もある。たくさんのピースが複雑にマッチされているが、その重量感を感じさせないほどどれも美しいラインを保てている。素材はシースルーやレース、メッシュ地など軽やかなものをメインに。装飾はパールや花模様、パンツのサイドにはプリーツをあしらって可憐に仕上げた。ブラックアンドホワイト、ベースはスタンダードウェアと制限のある中で、尽きない探求心が新感覚の美しさへと導いている。
2016年10月12日ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME des GARÇONS)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク5日目の2016年10月1日(土)に発表された。昨シーズン数学的なアプローチによって生まれた、多角的なウェア。これが、軽やかなシースルー素材となりバージョンアップされている。エプロンのように前だけのもの、クロスするように布地を重ねたもの、アシメトリースカート状のもの、ポンチョ型のもの。フォルムは様々だが、しかし今季これは主役ではないようだ。シーズンヒロインは、その内側に包み込まれた洋服たち。それらがいくつもの文化を持ち込み、対比し溶け合い、予想外のストーリを綴っている。編タイツにカラーTシャツ、シルバーパンツやロゴ入りパッチワークパンツ、スタッズ付きカーゴパンツ。パンク・ミリタリー・バイカー…と色々なテイストが交差する。そこに小花柄ワンピースに見られるフェミニニティ、テーラードジャケットを主役にしたフォーマルまでが投じられ、無秩序な世界が築き上げられている。全体的にまとまりのあるものではないが、‟透け透けトゲトゲ”の鎧を外せば、ストリートに馴染むのは事実。ショー半ばでアウターを脱ぎ捨てる演出が設けられていたが、事実浮かび上がったのは、スウェットトップスを腰回りをタイトにしたドレスや、ギャザーを寄せたTシャツなど、女性らしいアレンジが加えられたデイリーウェアであった。とにかく駆け抜けるような爽快感のあるランウェイショー。多文化が交わる様は街の縮図を見ているかのようで、いろんなバックボーンの人々に一気に出会ったような充実感で心が満ちた。
2016年10月12日コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィー5日目の2016年10月1日(土)に発表された。キーワードは「Invisible clothes」だという。ここ数シーズン、ファッションシーンではビックサイズが一つの鍵を担っている。大きすぎる肩、長すぎる袖。通常では考えられない位置に凹凸を持たせた、変形型ビッグフォルムを最新ルックとして打ち出すブランドもある。川久保玲が作る、ビッグフォルムはこれらとは大きくかけ離れている、巨大だ。身幅はモデルの3倍ほど(それ以上のものも)あるし、肩周りは羽のように左右に広がっているものもある。腰・肩といった曲線的な要素はほぼほぼ視野には入っておらず、あるときは直線的に、またあるときは頭上部分でカーブラインを描いていることも…。これらの言葉を並べるととても奇想天外、オブジェのように映るが、コレクションピースはクラシックとフェミニティを含んだ、やはり洋服である。ブラックのドレス風ルック。よく観察してみると、シャツの上にジャケット、さらにコートを羽織って…といった具合に、解体されたドレスが幾重にもレイヤードされている。間には白いフリルも挟んでいて可愛らしいし、裾はベルベット地に切替が施され洒落ている。また、船長のようなハットを被ったブラックルックは、ドレスを3段に重ねたような構造。腕は出せてはいないものの、パフスリーブ型の袖は存在しているし、こちらも同様にフリルでデコレーションだ。円形型のルックは、腕周りが大きなだけで身体を通す中央部分はウエストシェイプ。デフォルメされているもののラウンド型の襟もあしらわれ、少女性も香らせている。ビニールのようなシースルー素材のアタッチ、液状のペイントがされたコルセット風ディテール。透け感やランジェリーライクなど、細部にはシーズンの流れを汲んだ要素が溢れている。ナイキとのスニーカーでスポーツテイストを差すのは予想外だが、日常に寄り添ったテクニックでとても好印象だ。
2016年10月12日バレンシアガ(BALENCIAGA)の2017年春夏ウィメンズコレクション。デムナ・ヴァザリアを迎えて2シーズン目となるランウェイショーをパリ・ファッション・ウィーク6日目の2016年10月2日(日)に行った。デムナのデビューは、多くの人々に衝撃とチャレンジスピリットを与えるものだった。原型から離れたフォルムの作り方、ストリートからモードへの転身。自身の長所を活かした、メゾンの内側からの改革は斬新な形の造形へと繋げた。2度目となる今季も、デムナのスピリットは変わっていない。「クチュールとフェティシズム」これがシーズンキーワードである。フェティシズム、これが何を指しているかは定かではないが、少なくとも‟スパンデックス”という素材に着目していることは確かである。伸縮性に富んだ素材の特性を生かして、シューズと一体になったパンツを提案している。また‟肩を抜く”オリジナルの着こなしを提案していた昨シーズン同様、今季もコーディネートにはこだわりがあるようだ。ランウェイでは一方向のアプローチしか見せていないが、実際ウェアは様々な着こなしを楽しめるようになっている。例えば、ストライプ柄のコートはそのまま纏えば綺麗なライン。ただ内側にもう一枚かませていて、スカートとセットになっている。そのため、ボタンを留めればコートに、ボタンを空ければアシンメトリーに、はたまたスカート部分もオープンにして着ることも可能だ。また、終盤にかけて差し込まれたダウン風ベスト。実はこれは空気で膨らむ構造で、空気量に応じて変形させることもできるギミックなウェアだ。また、買った人にしかわからない仕掛けが施されているのもポイント。真っ赤なフード付きトップスの袖元にあしらわれたURLにアクセスすると、メッセージが受信できる。これはコマーシャルピースにも応用され、それぞれに違うナンバーが配され、アクセスすると異なるメッセージが流れるという。昨シーズンは‟バザールバッグ”で話題をさらったメゾン。今季は街中で布団が売られているときに着想を得たのだろうが、毛布のような懐かしい刺繍が施された‟ブランケット バッグ”がデビュー。さらに、クッション着想の円形型‟クッション”もバッグラインに仲間入りしている。
2016年10月09日ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで2016年10月3日(月)に発表された。サマーシーズンのステラ マッカートニーは、毎度リゾートへ行きたくなるような軽やかなものであるが、今季はよりハッピーなムード。愛の精神をキーワードに、鮮やかな色彩、キャッチなメッセージ、そして前日深夜に何度も練習したというモデルたちのダンシングパフォーマンスで、夏の到来を喜ぶパーティーガールを演出する。「NO LEATHER AND NO FUR」「ALL IS LOVE」日頃からステラがアナウンスしていた合言葉は、今季洋服へと落とし込まれた。サーフィン着想のスイムウェア、パラシュート素材のセットアップ、プリントTシャツに、プリントやフロッキー加工になって登場する。メッセージそのものはスラッシャーされたり、パッチワークされたりして、ダイレクトではなく抽象的なモチーフへとシフト。カジュアルウェアをベースとしているため、ダーツを程よく配して、女性らしさが浮き立つシルエットへと変形している。終盤とは異なり、リラクシングな序盤。カーキやベージュといったアースカラーを主役にコレクションを進めた。オーバーサイズのショルダー、生地は贅沢に使い身幅・腕周りが大きいものもある。ギャザーを寄せたり、たくし上げたり、折り畳めるように設計して、生地そのものの流動性を重んじた。ルーズなウェアに反して、腰回りはタイトに。新作ウエストボーチベルトでウエストマークすれば、今回のシーズンルックが完成する。日常に添うデニム素材には内側に異素材を貼り付けて、サルエルシルエットに。フォーマルな要素の強いストライプシャツは、カジュアルウェア同様に、ダースを差してドレス・プルオーバーへと変形させた。人気バッグ・ファラベラには、ボックス型の新作が仲間入り。大きめなボタンディテールを添えた新作も登場している。モデルの耳元、首元で輝くアクセサリーは大理石のような輝きで、どちらもプレキシガラスを使った美品だ。
2016年10月09日ポール & ジョー(PAUL & JOE)は、フランス・パリのセーヌ川沿いで2017年春夏ウィメンズコレクションを発表した。パリ・ファッション・ウィーク8日目の2016年10月4日(火)のことである。定刻は夕方6時半。まだ陽の落ちていないセーヌ川沿いには涼しい風が流れていた。寄り添うように並んだ家々、赤いルーフが目印のカフェ。川向こうにはパリ特有の町並みが広がっている。川沿いをランニングする人、橋の上から会場を覗く人々。そこにはフランスの生活感が溢れていて、まるで街全体でランウェイを行っているような特別な空間であった。しかし、ショーピースはフレンチシックとは異なるワーク・ストリートを題材にしている。ミリタリーシャツやカーゴパンツ、デニム、オールインワンといったものが主役で、それらの男性性を打ち消すように、デコラティブな装飾が施されている。ミリタリーシャツはポケット部分に立体的な花刺繍をデコレート。合わせたワイドパンツも、ロールアップした裾に同様の刺繍をあしらっている。デニムパンツには、宝石のようなドーム型ビジューを散りばめ、白Tシャツにはチュールを配した。一方、フェミニンウェアには刺激を投じる。フリルブラウスは胸下でカットオフし、ストライプのキャミソールブラウスには蛍光色を差した。花柄のワンピースにも、赤×白の縞模様パンツをマッチさせて躍動的に。可愛いものには相反するものをミックスさせてアレンジを繰り返している。足元はフラットサンダルまたはスニーカーが気分だ。シルバーのチェーンネックレスやバケットハットなど、ロックorストリートのぶつけ方も面白い。
2016年10月08日カラー(kolor)は、パリ・ファッション・ウィーク中にインスタレーション形式で2017年春夏ウィメンズコレクションを発表した。阿部潤一の優しい気持ちが投影されているシーズンである。リラックス&スポーティー、変わらぬDNAを保持しながらも、エスニックな要素、フェミニニティを象徴的に採り入れ、可愛らしく心に残るコレクションピースを完成させている。阿部が目指したのは、とてもシンプルだが平和主義に重きを置いたものだ。様々な世界情勢がある中、日本人デザイナーがフランス・パリでコレクションを展開し続ける義務。強い形ではないが、そんな彼のスピリットが豊かなクラフツマンシップで表現されている。これまでとのイメージチェンジを支えるのは、小花の模様。機械で施したとは思えないほどに繊細な花々が刺繍になってシースルー素材を彩っている。また、花びらを広げる瞬間は写実的に捉え、プリントとで繊細に表現。シースルー地のスカートやトップスに落とし込まれ、テキスタイルが重なり合うと3Dのような効果を発揮して、より活き活きと快活に花の生命を映し出している。民族的な要素は、大胆かつわかりやすい形で表現されている。ミリタリーシャツにドッキングしたチャイナボタン、花柄を襟元だけに差したフレンチシック、紙のように薄いメタリック素材に乗ったアジア風の模様。ぱっと見、どこかで出会ったことのあるトラディショナルな佇まいであるが、色使いやコンビネーションが新鮮さを与えている。カラーならではのバリエーション豊かなディテール・デザイン特性は今季も健在。特に今季はレイヤード風のアイテムを多く提案している。スカートとパンツのドッキング、スカートオンスカートの打ちだし方。どれも異なるアイテムが交際しているのだが着心地がよく、穏やかで特別感に満ちた仕上がりである。
2016年10月07日オランピア ル タン(Olympia Le-Tan)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク7日目の2016年10月3日(月)に発表された。テーマは「Turn on,turn in,drop out」。このワードでヒットするのは心理学者のティモシー・フランシス・リアリーの言葉である。この関連は定かではないが、彼が考える個人の自由や意識を重んじた姿勢は、今シーズンの自由主義のスピリットに通じるところがある。サイケデリックでどこか60’s、それでいてポップ。色使いや洋服のコンビネーションなどは、トウキョウ・カワイイにシンクロしている部分もあるように感じられた。パリ市内のクラブハウスで行われたショーには、とにかく柄が多数登場した。真っ赤なリップスティックを塗った口元、たばこのようなものが噴き出るレインボーの煙、それからマッシュルームのモチーフ、宇宙のような星と彗星が混じり合う空間。それらの妖しくってキュートなモチーフが隙間を埋め合うように服地を飾っている。コーディネートは、スーパーミニ丈パンツ・スイムウェアのような刺激的なウェアが現れたと思えば、ラップスカートやフレアドレスなどクラシックなものが共存している。アイキャッチで少しコミカルな色柄に囚われがちであるが、ロールアップデニム、スウェットパーカー、デニムシャツ、スタジャンなど、とても日常的なウェアが展開されている。タックインまたはウエストマークして、腰のラインを強調させるのが今季のムードであるが、そんな女性らしいアプローチに対して小物遊びは相変わらずユーモラス。アイコンのブック型クラッチには、洋服と同じサイケなデザインをあしらった。スウェットパーカーのフード部分だけをネックレスにしたり、袖部分だけをアームカバーにしたものもある。バッグの2個持ち、クロスボディも旬なようで、パステル&ラメ加工の「Olympia」ロゴが象徴的でとてもキュートだ。
2016年10月07日ヴェロニク ブランキーノ(Veronique Branquinho)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク7日目の2016年10月3日(月)に発表された。黒でまとめたゴシックな雰囲気からは解放され、春の訪れを告げるほど開放感に満ちたシーズンである。ランウェイにはフェミンな要素が溢れ、ロマンチックなムードに統一されている。温かな季節を迎え、蕾を開いた花々は様々な手法で表現されている。アンティーク調のプリント、鮮やかな糸で仕上げた立体的な刺繍、青々とした草木と共存したレース。それらは、フリル・レース・リボンと可愛らしいディテールを存分にのせたドレスの中で、生き生きと大きな花を咲かせている。シルエットはロング&フレア。ほとんどのドレスは前後でアシンメトリーに整えられていて、バッグスタイルでゆるやかな動線を描く。ノースリーブトップスに至っては、後ろ身頃に別布の一枚かませ、床をはうかのような余韻を残したバッグスタイルを完成させた。ランウェイには、ドレスに加えて、マニッシュ・カジュアルといったカテゴリーも登場。テーラードのロングジレは、サイドやポケットラインに刺繍を施して、スウェットパーカーは胸元・ショルダーラインにフリルをのせて、少女性溢れる世界に浸透する。足元はソックス&パンプスに見えるが、すべてトロンプ・ルイユのブーツ。ここにもカッティングやパンチングで、細やかな刺繍デザインが施されている。
2016年10月06日ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク5日目の2016年10月1日(土)に発表された。サイレンス - 今季のハイダー アッカーマンは引き続き、闘志を持った強い女性を描いている。ただ、昨シーズンとは異なり静寂の中で戦う、より強いメンタリティを持った人物をミューズに据えた。ロングラインのコート、タイトフィットなパンツ、ウエストラインを強調するショートジャケット。ブランドらしいストロングな要素はもちろん散りばめられているが、イエローやピンク、オレンジといったアシッドカラーが柔らかく中和する。今季は、オリジナル素材の開発に力を入れた。ランウェイでたなびくドレスは、約14メートルもの生地にシワを加え、さらに2度に渡ってプリーツを施した力作だ。贅沢な生地使いが優しい動線を生み、あえて不均衡に配されたプリーツラインが親しみを感じさせる。イエロー&ブラック、レッド&ブラックなど、意表を突くカラーコンビネーションのウェアはすべて手染めで仕上げたもの。ドレスやジャケットの所々に、プリーツ&スモック技法という刺繍を施したモチーフをパッチワークして、フェミニニティを加えている。アイコンのレザーレギンスとのコンビネーションもよく、綺麗な縦長のシルエットを描いている。ジャケットやドレスに混じって、スウェットパーカーが登場しているのが面白い。「science soldier」、今季の精神をストレートに表現したロゴが中央で輝る。
2016年10月06日エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)が、本国イタリアを飛び越え、フランス・パリへやって来た。ブランド初となるランウェイショー、2017年春夏ウィメンズコレクションを2016年10月3日(月)に開催した。これまで社屋のシアターでコレクション発表を行ってきた、ブランド。今回は、パリの旗艦店とエンポリオ・アルマーニ カフェの改装に伴い、開催場所を見直したという。しかし、会場は完全にジョルジオ・アルマーニ仕様。鏡面張りのブラックランウェイ、一つひとつのシートについたナンバー、その節々にジョルジオのDNAが宿っている。新たな取り組みとして、アリーナ状の空間を駆使したビジュアル演出を実施。ランウェイを歩くモデルを全身・バストアップ・ディテールなど3方向から捉え、巨大スクリーンに映し出した。始りは、ブランドらしいクラシックなスタート。ジャケットオンパンツのスタイルが続いている。上半身はおへそが見えるくらいのショート丈、またボトムスもクロップド丈に整えて快活な印象だ。インナーにはボウタイブラウスやシースルートップスなど、フェミニンで軽さのあるものをマッチ。ブラトップやバブーシュ、ウエストバッグなどの差し込みもモダンで若々しい印象だ。シーズンアイコンは象。可愛らしくてポップ…とはちょっと異なるがエキゾチックな印象を持つもの。それらがドレスやハーフスリーブトップスの模様やストラップディテールとなり、はたまたバッグやシューズのデコレーションとなり、スター性と愛嬌をシーズンにもたらしている。アニマルアイコンの起用は、とても斬新で革新的ではあるが、コレクションを支えるのはやはりジョルジオのこだわりとクリエイティビティにある。歩みを進めるほどに豊なドレープを描くシースルー素材、観る角度によって表情を変えるサテン地。また、ほうせレッド・パープル・ブルー、そして深みのあるグリーンといった、官能的でソリッドなカラーリングも、気品を保つ要素である。定番のテーラードスーツでラストを飾ったのも、ブランドガンにとっては嬉しい仕掛けだった。
2016年10月06日