エルメス(HERMÈS)が2017年春夏ウィメンズコレクションを、日本時間の2016年10月3日(月)23:30よりフランス・パリで発表。ショーの模様は、ファッションプレスでも生中継する。2016-17年秋冬ウィメンズコレクションでは、構築的なシルエットや軽やかな色使いによって、より追求したフェミニティを披露した。一方で、洗練とラフさなど相違するものが同居したルックも登場し、コレクション全体に変化とアクセントを加えていた。【詳細】エルメス 2017年春夏ウィメンズコレクション日本時間:2016年10月3日(月)23:30 / 現地時間:2016年10月3日(月)16:30
2016年10月04日ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。山本耀司が作るテーラード、この解体と再構築のショーである。気品があり男性性を象徴するジャケット、そこにカッティング、ペインティング、リサイジングを施して、新しいフォルムへと繋げている。ドレスへの転身は、片方を断ち切りワンショルダーにしたり、コルセットのようなリボンディテールを添えたり…と方法は様々。ウエストラインをキュッとしぼり、ラペルをデフォルメして折りたたみ、女性的なシルエットを作り出したものもある。セーラーカラーのような襟元もポイントだ。本来の形を保てているものも、それぞれに個性が宿っている。燕尾服のように前は短く後ろは長く加工したもの、バッグスタイルをラウンド型にカットしたもの、へそ上に断ち切りその下にもう一枚布地を重ねたものなど、美しいテーラードを保持しながら、どれもジャケットともコートともドレスとも言い難い、気品と艶めかしさを纏っている。次いで、キールックとなるのはオーバーオールのスタイルだ。さらしのようなブラトップに、フレアスカート型・クロップドパンツ型のオーバーオールを合わせているのだが、同時に腕や胸元に幾重にも布が巻かれ、どこまでがボトムスを支えるストラップか判別がつかない。それほど身体の上であらゆる線が交差し、複雑な構造が出来上がっているのだ。ショーはほぼほぼヨウジヤマモトの黒で進行する。時折現れる、純真の白と情熱的な赤がタイミングがよく心地よい。それらは前述したテーラードの再解釈を手助けしたり、身体に触れるかギリギリラインの一枚布ドレスとなって、コレクションに刺激と官能性を与えている。
2016年10月04日パコ ラバンヌ(paco rabanne)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。ショーの幕開けは斬新でどこか懐かしさを感じさせるルックから。「FUTURE SEX」のロゴTシャツにロングTシャツをレイヤード。ストリート風のTシャツオンTシャツに、ビーズの華奢なキャミドレスを重ねた。アクセサリーは、水泳帽のような顔全体を覆うヘッドピースで、スポーツ要素を香らせた。ここに登場したすべてのムードが、シーズン全体に投影されている。まず、Tシャツに見られる快活さは、フード付きのロングコートやナイロン風のノースリーブドレス、パーカーのようなハーフジャケットなど、アウトドアシーンでも活躍しそうな日常的なウェアに落とし込まれた。そこに投じた、センシュアルなエレメント。型押しして一枚の中で表情を出したミニドレス、ランジェリー調のブラトップ、レース素材のドレスなどは、女性らしく挑発的な一面を持っている。ワントーンでまとめてコーディネートも、序盤からラストにかけてほぼ継続されているスピリットだ。メッセージ性の強いロゴと奇抜なアクセサリーのコンビネーションは、どこか懐かしく近未来的なレトロ・フューチャリスティックの世界へと繋げた。かつて時の人となったブーツカットがボトムスに採り入れられ、ワッペン付きのレザー融合型ドレスが、非デジタルな懐かしい未来を描いている。ストッキングのようなシースルーカラータイツも古めかしいが、同時に奇抜で新鮮味を与えている。
2016年10月04日ロシャス(ROCHAS)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目の2016年9月28日(水)に発表された。色を楽しむ。とてもシンプルなキーワードであるが、アレッサンドロ・デラクアがこの春夏提案するのは、豊かなカラーコンビネーションだ。グリーンやイエロー、ベビーピンク、ブルー。花々が咲き始める頃だろうか、新緑が広がる頃だろうか、はたまた雲一つない青空が待っているのだろうか。とにかく暖かな季節が待ち遠しくなるほど、鮮やかな色彩がランウェイに転がり、モノトーンやヌードカラーと交わっている。1940~50年代、アメリカンヴォーグの表紙を担当したフォトグラファーから着想を得たというピースは、どれもクラシカルでフェミニン。スカートは、ふわりと広がったプリンセスタイプ、スリット入りのペンシル、軽やかなプリーツの3つがベース。ドレスはワンショルダー、キャミソール、ホルターネックタイプなどが用意された。型数はそれほど多くないが、ドット柄のレース、柔らかなジャージ、とにかく軽いデイジー柄のジャカード、レースとオーガンザを叩きつけたチュールなど、様々な素材で表現され、幾通りの組み合わせでレイヤードされている。色の重なりを楽しむスカートオンドレスのコーディネートが基軸であるが、マニッシュウェアの差し方もポイントに。ボーリングシャツのような胸ポケット付きシャツ、Rマーク入りのハーフスリーブニット、クロップドパンツがドレスと融合され、異なる光を届けている。コートは、肩から落としてレザーベルトでウエストマーク。オフショル風のスタイルもシーズンムードを反映した着こなしだ。
2016年10月04日アンダーカバー(UNDERCOVER)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。アンダーカバーの今季は、ピアニストのビル・エヴァンス、トランペット奏者のマイルス・デイヴィスといったアーティストたちが彩っている。彼らの名前や名盤はプリントとなり、愛する楽器たちはモチーフとなって落とし込まれた。トランペットモチーフのパンツ、ピアノやチェロなどを散りばめたジャケット、サックスプリントのロングTシャツ。それら洋服たちが奏でるサウンドは、リラクシングで心地よい。そして、そのムードは全体を包み込み、カーディガンやボーイフレンドデニムなど日常的で着心地のよいものが揃っている。カジュエルウェアには、リデザインの考えを宿して上品に仕立てる。ミリタリーパンツにはシャーリングを入れて、ワークジャケットには異素材を貼り合わせてロングコートに。また、パールのネックレスやサンバイザー風つば広ハットなどの小物たちも品よくまとめるための一仕事を担う。一方で、クラシックウェアはストリートへと変化。ツイードジャケットは、ミリタリー調のポケットとトリコロールテープを添えて躍動的に、ナポレオンジャケットは、タオルのような素材を用いてカジュアルダウンさせた。チェック柄のツイード生地で仕上げたカーゴパンツ、ドット柄のノーカラージャケット、f字孔にくり抜いたスーツもある。スポーツミックスも今季のスタイル。足元は、ラインソックス×スニーカーがお気に入りのようで、ピアノの鍵盤をモチーフにした可愛らしいソックスも登場している。ピンヒールにも同様に、カラフルソックスとコーディネートする。
2016年10月04日クリスチャン ワイナンツ(christian wijnants)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。インスピレーションとなったのは、航空力学と島に漂流したもので作品を作るアーティストのChristo。鮮やかなオレンジ、目の冴えるようなブルー、健やかなグリーン。エネルギーに溢れた色彩と咲き誇る花々の模様に溢れ、高揚感と喜びに満ちたシーズンだ。このコレクションに個性を与えるのは、ユニークな素材たちの動き。モデルたちの身体を包むパラシュート風の素材は、風を孕むように膨らみ美しいバルーンシルエットに。プリーツ加工をしたニット地は、バウンドしているかのように上下に弾み、洗いの掛けたシルクは風を切り爽快にたなびく。コーディネートは、ワントーンまたは同柄で統一するのがムード。ワンピースは1枚でさらりと着こなし、ワイドなストレートパンツはシャツをタックインして仕上げる。カーゴパンツはポケットの位置をずらして前へ持ってきて、テイラードジャケットやナイロンコートは、うねるように生地をアレンジしてモダンに調理する。アクティブウェアの着想から生まれたフードコートやフライトジャケット風アウターは、今季らしい一着。日本文化もディテールに採り入れられ、着物スリーブが存在。またプラットフォームサンダルの木製ソールも、ジャパニーズカルチャーから影響を受けているという。
2016年10月03日ディオール(Dior)は、メゾン設立以来初の女性アーティスティック・ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリを迎え、初めてのコレクションとなる2017年春夏ウィメンズコレクションをパリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表した。マリアが選んだ、デビューシーズンのキーワードは「フェンシング」。男性と女性が同じユニフォームを着用する「フェンシング」の特性に、男女の性差を縮めたいという想いを重ね、力強い女性を描き出す。身体を守る「フェンシング」の防具は、フェミニンなアレンジを加えてモードへと昇華。レース&チュールを重ねたベスト型、シャツとマッチさせたワンショルダータイプなどが登場している。刺繍の差し方が美しく、メゾンのアイコン蜂やCDのロゴ、真っ赤なハートなどが随所で顔を出している。また、テーラードは控えめになり、これまで見られなかったカジュアルウェアが投じられている。デニムパンツや「WE SHOULD ALL BE FEMINIS」とメッセージ性の強いTシャツ。そして、ブランドロゴをあしらったブラトップ・ショーツなどはシーズンアイコンの一つとなり、シースルードレスやブラトップにレイヤードされて、ランウェイに登場している。マリアがメゾンへ運んできたもの。ポエティックな刺繍ドレスは、そのわかりやすい例であろう。大小様々なビーズで描かれた、星座やガーデン、海の生き物などのエンブロイダリーは、一日眺めていても飽きないほど繊細で美しい仕上がり。アクセサリーラインには、ブッグ形のクラッチ(ストラップも付けることができる)や「フェンシング」風の新スニーカーを仲間に加え、メゾンの新しいワードローブを生み出している。
2016年10月03日オフ-ホワイト ℅ ヴァージル アブロー(OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで2016年9月29日(木)に発表された。今季ブランドが挑むのは、思い切りフェミニンなアイテムの噛み砕きだ。襟元から裾にかけて何段もフリルを重ねたワンピース、肩から流れるようにフリルをあしらったシャツ、レースを差し込んだランジェリー風ドレスといった、女性らしさを象徴するアイテムを日常に採り入れやすく、クールな形で調理していく。序盤に登場したストライプシャツ。バックスタイルにリボンをあしらったり、ギャザーを寄せたり、シャツ特有の知的さを残しながらも可愛らしくアレンジが施されている。これらの長所を飲み込みながらタウン着として落としやすくするため、ボトムスはデニムで固めた。カットオフしたハーフパンツ、裏側にペイントで模様を配したスリムモデル。その表情は様々だが、シャツとの間に豊かなコンビネーションを見せている。また、フレアなドレスやスカート、キャミソールドレスといったより女性的なドレスルックは、スポーツの要素をぶつけて中和させた。「OFF」のロゴ入りノースリーブやストライプ模様のパーカー、「WOMAN」のロゴ入りTシャツといったものたちが甘さを溶かし、モダンなムードへと昇華させる。チェッカーフラッグなど、グラフィカルな模様を交えての落とし込みも上手い。思い切りスポーティなラインパンツ、ジャージ風トップスは、パンツにはレザーを、トップスには光沢あるベルベットを用いて、リュクスへと繋げる。一方、カジュアルの代表デニムからは、ウールと掛け合わせたパンツ、ブラックとインディゴをパッチワークしたジャケット、裾をデフォルメしてラップ型にしたアウターなどが展開。手の込んだ仕掛けにより個性的な仕上がりだ。
2016年10月03日ネヘラ(NEHERA)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク初日の2016年9月27日(火)に発表された。ネヘラの春夏シーズンは、昨シーズン同様にホワイトやベージュをベースカラーにした柔らかな始まり。レースを差し込んだフレアなスカート、履き心地のよいフラットシューズ、絵描きのような小さな帽子。とてもナチュラルで穏やかな空気に包まれている。しかし、よく観察してみるととても実験的な要素が連続している。クラシックなスーツ、トレンチコートは解体され、ホルターネック仕様に変形されている。コートに至っては、ラベル部分に首を通し、その中にきたトップスのフードが外側に現れ頭を覆い、アウターとインナーの役割が逆転。ウエストには紐が結び付けられ、どちらもエプロンのようだ。シャツは活躍の場を上半身から下半身へと移した。本来腕を通す袖の部分に足が通っていて、スリムなパンツが完成している。またスタンドカラーのシャツは、襟の部分だけ宙に浮いたようにカッティングし、不自然な切れ端が首元に残した。ジャケットはアーム部分が削除され、ポンチョ型のコンパクトなものへ。花模様やレッド、ブルーなどでアクセントを効かせた中盤・終盤。やはり、変わらずクリエーションの原点はアバンギャルドさが支えている。ビニールのようなツヤ素材のパンツは、足首でぎゅっと縛って、美しいシルエットを封印。テーラードジャケットは、おへその辺りでカットして、ぐるっと90度以上回転させ貼り付けちぐはぐなビジュアルへと進化した。ひねって、カットして、結んで。出来上がったユーモラスなピースには、片耳ピアスを飾ってアンバランスなスタイルを完成させる。ハーモニカ笛のようなビックサイズのネックレスもアシンメトリーなルックの中で大きな存在感だ。
2016年10月03日ジャックムス(JACQUEMUS)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク初日の2016年9月27日(火)に発表された。今季は、フィンセント・ファン・ゴッホの名作≪アルルの女≫の題名に用いられた、南仏プロヴァンス・アルル地区に住む人々がモデルとなっている。コックや牧師、ラベンダー畑で働く女性など、彼女たちが着ているユニフォームをモダンにアレンジ。ジャックスらしい奇想天外な発想で、伝統的な装いをコレクションピースへと昇華させる。ホワイトやブラックなど落ち着いた色彩のリネン、コットン、ウールで仕上げたアイテムは、どこかボヘミアンなムード。差し込まれた、鮮やかな赤やドット柄の唐突さが、自由を愛するボヘミアンのスピリットと合致する。太さやレングスに差異はあるが、ボトムスはシンプルですっきりとしている。反して、トップスは枠に縛られることなく変幻自在。特にアーム部分での遊びは面白く、男性的なシャツの袖をお団子のような形にしたり、ラウンド型にしてフリルをあしらったり、左右不均衡に翼のように広げたりして楽しんでいる。一方、ボディラインは窮屈そうなまでにタイトに絞ったものや不規則にボタンを配置したものなど、ユーモラスな刺激で観客の心をくすぐる。ジャケットはレースを用いて、女性らしく仕上げた。素材選びはフェミニンであるのに、身体から浮いているような独特のサイジングのため、やはり柔らかさよりもファニーな表情が際立っている。シューズもウェア同様に、幾何学的なヒールを組み合わせて個性的な印象だ。
2016年10月03日サンローラン(Saint Laurent)は、新クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロを迎えて初めてのコレクション、2017年春夏ウィメンズをパリ・ファッション・ウィーク初日の2016年9月27日(火)に発表した。前任のエディ・スリマンが去った後、多くのメディアがメゾンの行方を報じてきたが、アンソニーのデビューはサンローランの伝統を重んじたものであり、ひたむきな姿勢を感じさせるものだった。インスピレーションを与えたのは、1972年のスキャンダラス・コレクション。角ばった肩のライン、刺激的なミニドレス。当時パリの街に衝撃を与えたピースたちが、モダンなアレンジを加えて蘇っている。アンソニーのお気に入りだというレザーが多用され、光沢のあるパテントから柔らかなスエードまで、様々なテクスチャーが用意された。また、レオパード模様も彼の心に火をつけた。カットジャカードやプリント、ビジューなどあらゆる形で表現され、ドレスやトップスとなり華を添えている。シルエットは、鋭利なショルダーを筆頭に構築的な作りが基本。片腕だけ出したセンシュアルなフォルム、そして上半身はタイトであればボトムスはボーイフレンドデニムで外すといった、ボリュームコントロールした形もムードだ。テーラリングは、母の洋服を現代の子供たちが着ている姿をイメージ。袖をカットオフしてジレに変形させたり、パンツをスカートへリメイクしたり、ジャケットに見立てたオールインワンを設計したり…と手の込んだ仕掛けで、クチュールのエレガンスをストリートへと落とし込んでいる。また、切りっぱなしのディテールやくたびれたようなブロークン仕様は、コレクションを通じて提案。マラケシュを想起させるタペストリー柄のジャケットは、あえてほつれた感じに見立ててヴィンテージライクに仕上げ、ワンショルダーのレーストップスは穴を空けて、ハードな要素を加えた。「YSL」のブランドロゴは、イヤリングやブレスレットに落とし込まれている。こちらもブロークンディテールが反映され、折り目や繋ぎ目でそれぞれの文字が離れるようにデザインされている。なお、1ピースで差し込まれたメンズピースは来年(2017年)に発表されるメンズコレクションの序章であるそうだ。
2016年10月03日アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。アン ドゥムメステールのモノクロームの世界。この静かな空間で今季生み出されたのは、前後左右不均衡なルックだ。ベースとなるのは、軽やかな素材、素朴なコットン・シャツ地で作られた、ジャケット、ロングコート、ゆとりのあるフルレングスパンツ、そしてクロップドパンツといったクラシックなアイテム。そこに豊かな発想を咲かせて、アブノーマルな物語を綴る。部品となるアイテムは、バッグスタイルで真っ二つに裂いたジャケット、帯状にカッティングを入れたコート。前・後ろ身頃で素材を変えたものもある。そして、片腕が出るように解体されたシャツには、袖口に切れ端のようなパーツを添えた。こうして出来上がったパーツは、コーディネートという名の組み立てを施した。インナーの上にアウターを羽織るという概念は飛び越え、思うがままに重ね合わせていく。シャツは前身頃をサイドに寄せて着こなし、コートは体にぐるっと巻き付け、本来の前後左右といったポジションは全て入れ替えた。シャツ地のコルセット、ゼッケン風のエプロン、、ワンショルダーのアームカバーは、良いデコレーションでより複雑で不可思議な世界へ。しかし、この破壊と崩壊の連続の中にもフェミニニティは存在する。流れるようなリボンがどこからか飛び出し、パールのネックレスが首元を飾る。レースやチュールによる透け感やジャカードの光沢感もセンシュアルで、肌をちらりと覗かせるスリットもさりげなく色気を香らせる。
2016年10月02日カルヴェン(CARVEN)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。メンズを担当していた、ベルナベ・アルディが退任したため、2017年春夏シーズンはウィメンズのみの展開となったブランド。カルヴェンの夏を彩る新作ピースは、新鮮さと新しさを秘めたものだった。コレクションの中心となるのは、シースルー素材で、カルヴェンのCマークを散りばめたトップス、ビニール地で出来たジャケット・ハーフパンツ・スカートなど揃っている。その透明感を利用したレイヤード法は斬新なもので、カラータイツを差したり、ブラトップを忍ばせたりしてインナーウェアとのミックスを楽しんでいる。アイコンともいえる台形ミニやタイトドレスは存在するが、今季はシルエットに遊びが見られる。とろみのある素材や風にたなびく軽いテキスタイルを使用して、スカートやアーム部分などにフレアなラインを描かせた。また、卵のように丸く膨らんだトップスも登場し、軽やかさや女性らしさを加えている。装いのアクセントとなるのは、ベルトディテールだ。シルバーメタルのパーツが胸元や腰元に2個も3個も並んでいる。また同デザインはアクセサリーにも採り入れられ、チョーカーとして存在感を放つ。一方本物のベルト(の役割をしているもの)は、ビジューを飾って煌びやかな印象。ジュエリーのようにリュクスなムードを着こなしに添えるのだった。
2016年10月02日アニエスベー(agnès b.)の2017年ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク8日目の2016年10月4日(火)に発表された。今シーズンのアニエスベーは、リラクシングで穏やか。特に、パジャマ風のシャツ&パンツのセットアップが多用され、そのムードとは対照的な赤や緑、ブルーなど強い色彩を用いて提案されている。胸元が程よく開き、フォルムはゆったり。光沢感のある素材は、風をきるように揺れ動き、優雅なひとときを感じさせてくれる。トップ&ボトムスで統一した着こなしは、スーツへも繋げた。ショーの序盤にはテーラードを半袖にしたり、ストライプ柄を差したり…とあらゆる形で披露。また、ドレスルックも同じ柄のジャケットやコートとマッチさせている。洋服の活動シーンを想像させてくれるウェアも多い。ブラトップとシースルードレスのレイヤードやビーチサンダルなどは海辺のひとときを、ショートパンツにハーフ丈のレギンスを合わせたものはアクティブな場へのイメージと繋げる。中には、ジャンプスーツを纏い自転車に乗る、カップルでランウェイを歩くという演出もあった。得意のプリントは、自然をモチーフに。花の浮いた水面や青々とした草花が写実的に捉えられ、ロングコートやシャツ、フルレングスのパンツとなって展開。葉の形をしたピアスもラインナップしている。
2016年10月02日ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目2016年9月28日(水)に発表された。会場へ足を踏み入れると、氷に閉じ込められた花々が暗闇の中で輝いていた。空調がきいていない生暖かい空間、じわじわと溶け出す氷柱、それに合わせたように流れる溶ける氷の音色。様々な要素が融合されたその環境は、幻想的であり生命感を感じられた。ショーの始まりは突然で穏やかだった。開場時から続く、溶ける氷の音色以外に音は加えられず、真っ暗な中にファーストルックが浮かび上がった。真っ白なTシャツとハーフパンツ、潔いほどにシンプルだ。そして対象的にデコラティブなアクセサリーで飾られている。足元は下駄のようなサンダルで、突然現れた和の文化は不自然であるのに、面白いほどに調和している。その後はしばらく白の世界が続くのだが、洗いざらしのホワイトワンピースに唐突に投じられた、オレンジやイエローの花々が印象的であった。和、花模様、ワントーンに浮かぶ鮮やかな色彩、そしてカジュアルと対照的なアクセサリー。これらは、今季のドリス ヴァン ノッテンの折衷主義を支えるキーワードであるだろう。美しいジャカードや繊細なシースルー素材には、日本の着物から着想を得た花々がのっている。咲き誇るように優雅な姿をみせるもの、流れるタッチで描か曖昧な表情を浮かべるもの。繊細な感性によって描かれたモチーフは、国境を越え、時代を越えて、モダンウェアの中で再び命を宿し、花を咲かせている。光沢とマット、透け感などニュアンスに違いがあるものの、パレットはほぼ黒または白で構成されていて、そこに差し込まれた、明るいイエローや鮮やかなブルーは、驚くほど強い色彩のパワーを発揮している。コレクションピースはエレガンスが基本だ。Iラインドレスやジャカードのコート、フレアなスカートなど、高貴でフェミニンである。そこに差し込まれたTシャツやワークウェアには、ドレスルック同様に、オーナメントのように精巧なビーズ刺繍を添えた。ヴィクトリア時代を思わせる服の断片。その手の込んだディテールがリュクスとストリートの間を埋め、カジュアルをドレスラインまで昇華させている。
2016年10月02日ランバン(LANVIN)は、新アーティスティック・ディレクターのブシュラ・ジャラールを迎えて初めてのウィメンズコレクション2017年春夏をパリ・ファッション・ウィーク2日目の2016年9月28日(水)に発表した。ベースとなったのは、創設者ジャンヌ・ランバンのアーカイブピース。ここに女性ディレクターならではのエモーショナルなアレンジを加えて、男性・女性といった性差を越えたスタイルを創り出していく。ランウェイにはこれまでに比べ、パンツが多く揃った。ファーストルックを飾ったパンツスーツは、シルクサテンを使用したもの。真珠のような淡さと光沢が、マスキュリニティに色気を与える。ロングストライプシャツにはパールとビジューのボタンをあしらい、ジャンプスーツはシースルー素材で仕立てて、男性性と女性性を融合させた。テキスタイルは、ランバンらしい贅沢なもので、ライダースにはツイードを用いて温かみを出した。また、胸元だけこのツイードを裂きほぐし間にチュールを挟んでボリュームデコレーションへと転換。Vネックのミニドレスには、アストラカンを配してラグジュアリーに仕上げた。ヴィンテージシックなゴールドチェーンも、豊かさと煌めきを象徴する。ブラック&ホワイトのシックな色合いがムードだが、イングランドローズのモチーフがランウェイに華を添える。ロングドレスやジャケットには上からシフォンを重ねて優しく包みこみ、さらにジャケットの裾にはボーダーラインを添えてスポーツ要素を加えた。ブシュラが生み出すコーディネートは、セクシーなキャミドレスと快活なジャケット、スーツとロングシャツのマッチなど斬新なものである。そこに、クリスタルのボリュームアクセサリーや、メタルレースのバングル、花のコサージュなどを胸元やラペル、足首などに投下させて、より複雑な着こなしを楽しんでいる。
2016年10月01日アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(Andreas Kronthaler for Vivienne Westwood)の2017年春夏コレクションが、パリ・ファッション・ウィーク5日目の2016年10月1日(土)に発表された。今季ブランドは、鮮明な形で夏を迎えた。地中海が一つのインスピレーションとなり、ビキニやワンショルダーのサマードレスがランウェイを走る。パリジャンのYasmineとのコラボレーションによって生まれたスイムウェアは、花模様やフリルをあしらってフェミニンな仕立てだ。ビーチでのくつろいだ時間は、リラクシングで着心地よい時間をもたらした。ロングTシャツを1枚でさらりと纏った着こなし、またスイムウェアがギリギリ隠れる長さのミニスカート、ハートポケットのハーフパンツ、ゴムウエストのパンツなどが躍動的なシーズンテーマを体現している。一方、ビーチに相応しくないテーラリングは、リデザインして軽やかさを差した。パンツスーツは、ボトムスの内側にカッティングを入れ、スカートともパンツとも判別し難いシルエットへと変形、ジャケットにはバックスタイルにカッティングを入れリボンディテールを添えた。少年的なショートパンツのセットアップも登場している。訪れた人が思わずシャッターを切ってしまう、アイデアピース。今季は、流れ落ちるようなリボンが複雑性を持たらしたハット、ドレスを支えるクリノリンを逆さまにしたようなトップスなどが、個性的なシルエットを創り出している。
2016年10月01日パリ・ファッション・ウィークが開幕。日本ブランド・アンリアレイジ(ANREALAGE)は、初日の2016年9月28日(水)に2017年春夏ウィメンズコレクションを発表した。テーマは「サイレンス」。そしてこの後には、「沈黙の中に声を探す、声なき服に耳をすませば」というメッセージが添えられていた。毎度実験的な取り組みを行っているアンリアレイジだが、今回はコレクション発表前に専用アプリを開設。アプリをダウンロードし、スマートフォンをかざすことで、AR(拡張現実)とサウンド演出が行われ、違った形でショーが楽しめるという。会場では、観客席の前にiPadが設置され、その画面を通じて最新ルックを確認することができた。昨シーズンに引き続き、サカナクションの山口一郎が手掛けたサウンドは、「サイレンス」という言葉からは想像できないほど大きな音が用いられていた。初まりは、ピーっという高音と地響きのような振動音が耳が痛くなるほど大音量で流され、ピタっと止まると同時にモデルがランウェイに登場した。白と黒のボーダーとストライプ模様で彩られたルック。線の太さやラメ加工の有無などの違いはあるが、ほとんど同じような色柄の羅列だ。シルエットは全体的にフレアで、マントやロングスカート、スリット入りのワイドパンツが並んだ。だた、iPadの前を通り過ぎても何も変化はなく、観客席からは少し不思議な表情が浮かぶ。せっかくのせたロゴやエンブレム、花模様にも打消し線のような黒い線が重ねられていて、洋服の顔がつかめない。その「?」を待ち望んでいたかのように、デザイナーの森永邦彦は仕掛けを投じる。森や海、花畑をモノクロで描き、不可思議な黒い帯状のものを合わせたワンピースをランウェイに送り込んだ。観客席前のiPadの前に立つと、静かにしてと言わんばかりに「しーっ」という声が流れる。数秒経つと、キラキラとした音とともに黒い帯状のものが画面上で変化し、洋服の模様を拡大して見せてくれた。続くのは、メッシュの白いワンピースを着たモデル集団。そして黒い帯状のものはパワーアップし、2~3本巻かれている。それぞれに何か文字が記されているが、序盤同様に打消し線が引かれていて判別はできない。先ほどと同様に、iPadの前に立つと今度は、帯状のものが消え去りロゴが浮かび上がる。と同時、ロゴの声が聴こえてくる。「NOISE」「SILENCE」「SOUND」「VOICE」といった具合に。森永のチャレンジは、ユニークで新しい可能性を秘めている。本来は視覚、そして着心地や手触りといった触覚で楽しむファッションを「聴覚」という観点でも喜ばせているからだ。将来自分のクローゼットから、こういった形で洋服の声が届く日が来るかもしれない。そんな淡い期待を抱かせてくれるものだった。
2016年10月01日サルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、ミラノ・ファッション・ウィーク5日目の2016年9月25日(日)に発表された。今シーズンのキーワードは、伝統と進化の結びつけだ。サルヴァトーレ フェラガモらしい気品は保ちながら、最先端の技法や素材を付け加え、モダンな女性像を構築していく。伝統的なテーラーリング技術を使ったジャケットは、センシュアルなアイテムへと変化を遂げた。袖を大胆にカットし、ウエストラインは曲線を描くように仕上げた。新鮮さが全体を包み込むが、クロコダイルのポケットにより高級感は残し続けて。トップスに対してボトムスはボリュームを持たせ、マスキュリニティを残したのもポイントだ。また、上品さを象徴するマーメイドスカートには、アクティブなエッセンスを投下する。ハイウエストに設計し腰回りを強調させ、サイドにジップを添えた。膝から下は大胆にフレアなラインを描かせ躍動的に。特に、フルジップアウターとの相性はよく、エレガント×スポーツのミックススタイルが心地良い。ランウェイで度々登場したプリントドレス。手書きのフラワーモチーフや直線ラインを重ねて3D効果を持たせたものも展開された。一見シンプルなこれらのドレスにも機能素材が起用されていて、スポーツウェアからのインスピレーションが、女性らしいライン作りに貢献している。
2016年09月29日ディースクエアード(DSQUARED2)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、2016年9月25日(日)イタリア・ミラノで発表された。今季のディースクエアードは、過剰なまでにデコラティブだ。デフォルメされたパフスリーブとミニスカートが基本スタイルで、そこにレオパード柄のスイムウェアや金刺繍の貴族風ジャケットといった‟ド派手”なウェアを差し込んでいる。シルエットはコンサバティブな要素も含んでいて、巻き髪&ピンヒールとコーディネートした姿は、80年代・バブル時代の日本を想起させるような懐かしい印象を与える。特筆すべきは、チェックシャツやプレーンなTシャツが、カジュアルの垣根を越えドレスラインへ到達していること。大きなリボンやビジューによる装飾が、ウェア本来の素朴さを打ち消し、強い個性へと繋げている。また、リップや目のモチーフを散りばめたシューズ、大振りなピアスによるコーディネートもゴージャスな姿へつなげるアシスト役だ。アイコンのデニムも同様に、ブリーチ加工&グリッター加工を加えて華麗に。ユニークなことに、ウエストラインから落として履く‟腰履き”がムードのよう。数年前、デニムからアンダーウェアを見せた履き方が日本で流行となったが、それ同様にカラフルな腹巻風インナーウェアをウエストラインから覗かせている。なお、コレクション終了後、ディースクエアードは2017年よりメンズ・ウィメンズ合同でショーを行うことを発表した。同じインスピレーション源を基に、よりメンズとウィメンズのウェアがつながった形で展開していくという。新体制のデビューは、2017年1月メンズのファッション・ウィークを予定している。
2016年09月29日プラダ(PRADA)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、2016年9月22日(木)イタリア・ミラノで発表された。新しいエレガンスとは何か。この問いに、ミウッチャ・プラダが見つけ出した答えは、新しいコンビネーションとスタイリングで、身体を包みこむシルエットを創り出すことだった。象徴的なのは、ベルクロのディテールだ。トレンチコートやフレアスカートは、脇に寄せるようにベルクロ付きラバーバンドで留められている。花やストライプ模様があしらわれたラバーはどこかチープで懐かしく、高級な服地との間にアンバランスさが生まれている。また、身体のラインが見えるシースルー素材は大活躍だ。繊細で立体的なビジュー刺繍を飾り、チャイナ服やドレスになって登場する。プラスオンのアイテムとして、洋服の上にレイヤードされているものもある。毛足の長いファーで縁取られた袖や裾が、ここでもまた不均衡な印象を拡張させる。度々現れる花柄や幾何学模様は、ブラウンやエメラルドグリーンといった色使いでレトロ調だ。こういったアイテムもクラシカルにまとめるのではなく、スイムウェア着想のショートパンツや柄オン柄の組み合わせなどによって、独特のコンビネーションへと繋げている。ビーチサンダルでの着崩しは見事だ。会場では新作ピースと並んで、11月のロサンゼルス発表前に最新フィルムが公開された。これまでウェス・アンダーソン監督など、多彩なアーティストとコラボレーションを行ってきたプラダが、今回選んだのはデヴィッド・O・ラッセル監督だ。フィルムはモノクロでプラダルックに身を包む女性を捉え、知的でモダンな空気を作り出している。
2016年09月29日ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、2016年9月25日(日)イタリア・ミラノで発表された。テーマは「Tropico Italiano」。愉快な始まりだった。バナナの木が生い茂るステージから真っすぐに伸びるランウェイ。ショーのスタートともに現れたのは、モデルではなく若者の男女の集団だ。客席から大きくクラップを鳴らしてランウェイへ。到着するやいなや、輪を描いて踊っている。国籍はバラバラ。服装もチェックシャツやタンクトップ、デニムなど、ドルチェ&ガッパーナのショーからは想像できないほどにカジュアルだ。踊りながらショー会場を後にする彼らに重なるように、モデルたちが登場した。見れば、シーズンルックも軽快だ。ブランドロゴの大きく入ったTシャツやノースリーブトップス、デニムなど。スポーツウェア風のナンバリングシャツやパジャマ風セットアップも揃え、足元はプラットフォームサンダルでまとめた。得意のプリントドレスは、イタリアンフードがモチーフになっている。パスタやジェラート、カクテル、魚などが、上質な生地の上に鮮やかに描かれている。また、それらを食するときに使うグラスやスプーンなどの食器類、ピザ屋の看板もファッションに落とし込んだ。もちろんドルチェ&ガッパーナらしい煌びやかなデコレーションは健在。デニムにもジャケットにも、こぼれそうなほどにビジューがあしらわれている。フラワープリントは夏を意識して大振りに。サマーシーズンを象徴するひまわりも、ドレスの上で大きな花を咲かせている。
2016年09月29日マルニ(MARNI)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、ミラノ・ファッション・ウィーク5日目の2016年9月26日(日)に発表された。今季マルニが打ち出したのは、ハンズフリーのスタイル。アクセサリーに定評のあるブランドのニューアイコンは、手に持つ・肩にかけるといった本来の持ち方から一線を引いたウエスト巻きバッグだ。従来のウエストバッグと異なるのは、洋服と同化している点である。装いと共布で仕立てられた大きいバッグは、ベルクロのようなテープ、またはロープに結わえられている。シルエットは、膨らんだアーム、不自然に絞られたウエストで構成される不可思議なもの。そこにデフォルメされた襟、ボタン、ポケットといったディテールを乗せている。動きのあるソフト素材のドレスは、シャーリングで変形させてアシンメトリーな仕上がりに。また、ロングレングスは引き続ぎムードのようで、ドレスとパンツの合わせなど、レイヤードによってより縦のラインが延長されている。無機質に出た白いロープも、長さを増すウェアを支える役割だ。今季らしさと言えば、シンプルな下地の起用も触れざるおえない。花模様は変わらず存在しているが、小花柄で控えめ。打って代わったように、レッドやグリーンといた強い色彩が登場している。ミリタリーの影響も受けているようで、アースカラーやホワイトで構成されたワークウェアテイストには、大振りピアスとチャンキーヒールのパンプスでエレガントを差して、マルニ・ウーマンを完成させている。
2016年09月29日エムエスジーエム(MSGM)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、ミラノ・ファッション・ウィーク5日目の2016年9月25日(日)に発表された。不気味に変わる大小さまざまなドット柄。昨シーズンのキーアイコンに代わり登場したのは、フリルだ。右から左へ流れるようにトップスの上を走り、足回りを包み込むようにミニスカートで踊る。フリルトップス&スカートを合わせて、アイスクリームのように段々重ねにしたり、Tシャツの上にフリルキャミソールがレイヤードされたり…。本来、フェミニンなディテールであるはずなのだが、その大きすぎるサイジングのせいか、はたまた、意表を突く着こなしのせいか、不気味な生き物のように映る。アバンギャルドさでいえば、シャツの着崩し方も同様だ。サンドウィッチからパンより一回り以上大きな具材がはみ出しちゃったみたいに、仕立てのいいシャツが上から重ねたアイテムからはみ出ている。育ちのいい子が着る、アーガイルセーター×シャツの組み合わせも、上のニットが小さすぎてシャツが主張。模様も蛍光色で描かれいて、普通じゃない。また、同じアイテムの掛け合わせもムードだ。ドレスオンドレス、スカートオンスカートは当たり前。Iラインワンピースのスリットからシースルースカートをのぞかせているものもある。スピード感は、変わらず大切なポイント。鮮やかなレッドやブルー、さらに蛍光色も仲間に入れて躍動感を加速させた。足元はフラットサンダルまたはスニーカー。ブラックラインが映えるボーダー柄や、ショート丈レギンスの採用もスポーツからの着想だろう。
2016年09月29日トッズ(TOD’S)が2017年春夏ウィメンズコレクションをイタリア・ミラノで発表した。バイカーやピーコート、ジャケット、 Tシャツ、ミニドレス……それぞれのルックに組み込まれたラグジュアリーなレザー。それはブランドの美学を語る上で欠かせないもの。全てが手仕事による仕上げであり、隠された職人技がアイテムを洗練されたものへと昇華する。ステッチはスカートのスエードに活力をもたらし、フリンジはジャケットやミニドレスに躍動感を与えて軽やかさを演出。レーザーカットでメッシュ のように仕上げたドレスや、カラーパイソンのストライプで作るドレスにはエレガンスが溢れ出している。時折、レーザーパターンのリボンをストライプのファブリックとして採用し、愛らしさも秘めているのが、トッズらしい美学の表れだ。また、コンパクトなホルターネックとフレアミニ、緩いプルオーバーにショートパンツといった、レザーであることを忘れさせるような軽快なスタイリングもトッズならでは。爽やかなシャツやデニムパンツなどをプラスして、ひとつの素材を見違えるほどに表情豊かなものへと導く。新アイコンであるアクセサリー「ダブル T」は、手元と足元に光を与えた。バッグは、レザーだけでなく豊富な形とカラーで登場。そして、足元の定番“モカシン”は、シルバーに輝くメタリック加工のバージョンがプラスされた多様なシューズとなり、サンダルは、クロスしたストラップに、精緻なステッチが随所に施された優雅な一足となっている。
2016年09月28日スポーツマックス(SPORTMAX)は、2017年春夏ウィメンズコレクションをイタリア・ミラノで発表した。今季は、日本が着想源として選ばれた。写真家・浦口楠一が捉えた海の女たち。広大に広がる海洋の下で、あふれんばかりの笑顔を振りまく海女たちがミューズとなり、シーズンルックに陽気な雰囲気をもたらしている。ファブリックは、夏らしく軽量なものが中心だ。洗いにかけたコットン、うねりのあるシルク、しわを寄せたリネンが、サマードレスやロングジレ、カットソーを形作る。そうしてエアリーなファブリックの上で、魚たちや波がプリントになって登場し、泳ぎ回り揺れ動いている。ビーチに来たなら肌見せは必須だ。スポーツマックスはよりエレガントな露出を提案している。ドレスのバックスタイルには大きく穴を明け、日焼けした肌をセンシュアルに覗かせる。また、ドローストリングも巧みに使用し、袖や裾をたくしあげて、無造作に色気を香らせている。腰下にある2つの可愛いホールも、このドローストリングによるデザインアクセントだ。アクセサリーラインも、装い同様にマリンムード一色。モデルたちは、片耳に魚片耳にはパールといった感じで、アシンメトリーなピアスコーディネートを楽しんでいる。海女のバスケットから派生したニューバッグ「SM207」は、ラバー加工したレザ―をカッティング。楕円形のホールからインナーバッグが顔を出し、豊かなコントラストを描いている。
2016年09月28日ヒスイ(HISUI)の2017年春夏コレクションが発表された。今シーズンのヒスイが呈したのは、映画に用いられる“モンタージュ”という言葉。それは、いくつもの場面を組み合わせてひとつの作品を作り上げること。また、そうして完成させたものを指す。ひとつの映画、ではなく洋服をつくるために、あらゆるアイテムのあるべき姿を崩してコレクションを完成させていく。デニムジャケットはワンピースの破片となり、ストライプシャツはランダムに重なりあう。そして、レースのランジェリーはセクシュアルにトップスに入り混じる。見慣れない形のはずなのに、あたかもそこがあるべき場所かのように存在するものたち。MA-1はミリタリーという概念を喪失してコンパクトなジレに、バブアーコートは形をまるきり変えてマーメイドスカート、あるいはティアードと組み合わせて裾拡がりのコートに変貌を遂げている。本来あった姿を完全に失ったとしても、それぞれの良さは変わらない。むしろ、再構築されることで昇華されている。少しずつ特長を組み合わせたワードローブは、より特別なものとなり、ひとつの作品として日常を彩ってくれる。
2016年09月28日フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY di Lorenzo Serafini) の2017年春夏コレクションが、2016年9月24日(土)に発表された。ロマンティックなクリエーションを得意としているブランドだが、今季も「パンク ロマンティック」をテーマにした昨シーズン同様、ただ甘いだけなのは好みではないようだ。あくまでもだが、ショーの軸はレース&シースルー素材のドレスだ。華奢なキャミソールストラップ、胸元で仲良く羅列したパールボタン、腰下で揺れるフリル、少女性を象徴するような小花模様。ディテールや装飾を覗いても、フェミニンで可憐であることが十分わかる。そこに個性を差すのは、一つにデニムの起用だ。カジュアルの代表・デニムが、本来の姿を忘れたように女性らしい姿で登場。切りっぱなしで出た‟味”をフリルに見立て、軽やかな素材に代わって、ブラウス風のトップスやコルセットとなっている。一方で、不自然なまでに大きなレザ―ベルトも刺激的だ。シフォン素材のドレスやレースブラウスに当たり前のように溶け込んでいるが、やはり異質要素である。時に小さなスタッズを並べ強さを増してウエストをぐっと包み、フェミニンウェアの儚さを強調させている。また、タイガー柄の採用やレザージャケット(アイスクリームのようにメルヘンカラー)も同様に、意外性を持っている。
2016年09月28日エルマンノ シェルヴィーノ(ERMANNO SCERVINO)の2017年春夏コレクションが、2016年9月24日(土)イタリア・ミラノで発表された。テーマは「ビューティー ファースト」。今シーズンは面白い。テーマの通り、美しさやフェミニティといったものが大きな基盤であるのだが、表現の仕方が実にウィットに富んでいて新鮮だ。男性性や強さの象徴と位置付けられてきた、ミリタリー・マリンといったユニフォームが完全に女性仕様に進化を遂げている。ミリタリージャケットは、ラグジュアリーにトランスフォームする。勲章はすべてスワロフスキー製となり、ボタンはパールボタンにチェンジ。シルエットにもアレンジを加え、ノーカラーコートやショート丈ジャケットとなって登場する。また、ナポレオンジャケットは、ドレスへそしてブラウスへと変化。特有のリボンやボタンのディテールは引き続いているが、胸元のVラインを彩ったりして、より可憐にみせる動きを担う。一方、オフィスワーカーの象徴であるシャツ。これらは、袖にボリュームをもたせたり、ショルダーラインにカッティングを加えたり、リボンディティールをアクセントにしたりして、ドレスルックにも引けを取らない上質なものへと昇華した。ランウェイには、これらの進化型ユニフォームに加えて、2種類のアニマル模様をミックスさせたスーツ、シルエットを浮彫りにするほどソフトなエコレザ―のボディスーツも展開。どちらも上質な素材で仕立てているが、チャレンジングな要素も孕んでいて、近未来的な存在感を放っていた。
2016年09月28日アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)は、2度目となるミラノ・ファッション・ウィークに参加。2017年春夏コレクションを2016年9月23日(金)に発表した。昨シーズンは、東レとともに開発した素材や3Dプリンターによる球体型のアクセサリー・シューズなどを展開し、‟技術”によって日本を打ち出していた。今季はよりユーモラスな形でジャパニーズカルチャーを提案している。KinKi Kidsの堂本剛が手掛けたサウンドにあわせ、日本国旗「日の丸」が、2人並んで歩くことで完成するコートになって登場。ティーンの間で流行っている‟双子コーデ”にも通じるところがあり、現代日本を捉えているように感じた。(裏を返せばイタリア国旗になるという、仕掛けも施されている)また、日本人なら気付いたであろう、プロ野球球団「東京ヤクルトスワローズ」とのコラボレーションロゴTシャツもランウェイを彩っている。ドットやチェック柄のドレスは、ウエストマークによって、どことなく帯のディテールを採り入れているように感じた。全体を通して伝えられているのは、異なるもののドッキングだ。ファーストルックは、異素材をパズルのように組み合わせた、ノースリーブのトレンチコート。上品なラペルに並んで、スポーティーなジップパーツで遊びを加えているのも面白い。その後も、胸下までテーラードジャケットでその下はトレンチ風コートであるものや、デニムジャケットとスウェットパーカー、ライダースとノースリーブパーカーといったものがミックスされ、新しい形が作られていた。一方で、ビックサイズも今季らしい点。モデルの体形を無視したジャケットは、袖がひざの辺りまでのびた大きすぎるサイジングだ。また、スタジアムジャンパーを十二単のように重ねた、奇想天外なものも存在した。
2016年09月27日