先月、NHK総合テレビで 「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」 をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では 「自閉症アバターの世界1・2」 、NHK「あさイチ」では 「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」 など、続々と発達障害特集が放送された。どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。■わが子を嫌いになる、自分が辛いそして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」(番組に寄せられたファックスのコメント)「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」(番組に参加した現役ママのコメント) NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。■本当に、子どものこと受け入れてる?ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より 様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。■障害は敵ではないまた、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません「うちの子が自閉症でなければよかった」「この子の自閉症がよくなりますように」その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。「自閉症ではない別の子がよかった」両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと… 『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)より引用 ■何を持って「息子」なのだろう?障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。でも、1年経った今は、こう思うのだ。例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。まちとこ出版社N NHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年10月12日川崎市では発達障害児の生活支援ツールのひとつとして「サポートカード」を発行しています。川崎市健康福祉局から発行されているこのカードは、発達障害により日常生活のさまざまなシーン(学校、医療機関、美容院など)でうまくコミュニケーションがとれずに困っているお子さんが、特性に応じた配慮を受けられるよう提示するものです。このカードを作ったのは、川崎市通級親の会・前会長の今村優子さん。普通の主婦であり母である今村さんがどのように行政を動かしたのか、話しを聞きました。発達障害児への無理解や偏見が誕生のきっかけに今村さんは、サポートカード誕生のきっかけとなった辛い体験を次のように話してくれました。当時小3だった息子さん(DAMP症候群=外的刺激に対して健常児よりも過敏または鈍感。感情のコントロールが困難。口頭でのルール説明などの理解が困難)が、学校の耳鼻科健診の結果を持参して受診したときの体験です。診察室に入り、今村さんは、息子さんが発達障害児で、耳の中の刺激に過敏で耳かきをさせてくれないこと、ピンセットで耳垢をはがす処置にも過剰反応を示すこと、そのため点耳薬でふやかして洗浄する処置を望むことを医師に伝えました。しかし、医師は聴覚過敏と早合点したのか、途中で話をさえぎり「聴覚過敏と耳垢は話が別だ!甘やかすな!」と一喝。看護師を呼び、4人ががりで息子さんの両手・両足・頭を押さえるように指示し、ピンセットを用意。突然のことに息子さんが驚き頭を動かそうとすると「ばかたれ!」と言って息子さんの頭をげんこつで殴りつけました。耳垢をはがすだけだったため、息子さんが恐怖で固まっている数秒で処置は終わり。医師に「終わり。大騒ぎするな」と言われて診察室をあとにしたそうです。待合室に戻っても息子さんは興奮状態。「あんなに大きい子が大騒ぎして…」と言いたげな周囲の視線も辛かったといいます。「私は息子に『あなたは何も悪いことはしていないけれど、これからもきっと同じ思いをする。だから世の中の無理解にもっと慣れていく必要がある』と話しました。ですが、私自身も納得がいかず、悔しくて涙が止まりませんでした」と今村さん。親の会で知り合った友人に相談したところ、同じような経験をしているお母さんたちがたくさんいることに驚いたそうです。「友人と話しているうちに『発達障害は目に見えにくい障害だけど、医療の現場ですらその特徴が受け入れられずにいるのはおかしい』と思うようになりました」。ある出会いで活動が大きく前進今村さんは、在籍校の校長、区役所福祉課、通級指導教室、川崎市発達相談支援センター、総合教育センターにアポを取って経緯を説明。「学校健診後のしばらくの間だけでも、特別なニーズのある児童も受診の機会が増えることを医師会に通達してほしい」と相談しましたが、いずれも「医師会には直接的な繋がりがないから難しい」という回答。医師会とのコンタクトを試みて相談窓口を探し始めてから1年が経過。話を聞いてもらえる場所すら見つからない状況が続いていました。そこで“窓口探し”や“医師会とコンタクトを取る方法探し”を中断。別の方向から改善に向けて声を上げてみようと考えました。「発達障害を社会に広く認知してもらうきっかけになり、無理解者が支援者に変わるような、または、支援者と要支援者をつなぐようなツールを発信できないか。イメージは妊婦さんのマタニティバッジでした」。ここで誕生したのが「サポートカード」というアイデア。今村さんが自身の高校時代の恩師にこの話をしたところ、市議会議員の田村伸一郎議員を紹介されました。田村議員は自身も難病を抱える子どもを持ち、障害者支援に力を入れていました。今村さんの辛い経験から2年。この出会いが活動を大きく前進させます。田村議員の力添えで、市民・こども局こども福祉課長と今村さんの面談が叶いました。田村議員同席のもと、今村さんは発達障害児の医療機関受診時の現状を訴え、カードの必要性・実現化・医師会へのアプローチを切望。田村議員も行政に働きかけてくれました。今村さんはさらに、自身が会長を務める川崎市通級親の会本部に協力と応援を要請。さらに2年後、ついに現在のサポートカードが完成し、川崎区役所保険福祉センター、発達相談支援センター、療育センターなどでだれもが無料でこのカードを受け取れるようになりました。サポートカードの認知と普及はまだまだこれから!発達障害児を抱える家庭の悩みのひとつが“病院探し”。今村さんは、無理解から来る不適切な対応により、子どもたちの病院嫌いが強化される悪循環を断ち切り、発達障害についての社会認知が広まってほしいという一心で、4年に渡ってこのカードの必要性を訴え続けました。川崎市通級指導教室親の会本部では今後もカードの普及・浸透に向けた活動を展開していく予定とのこと。「現在はまだ、サポートカードの存在を知らない人がほとんど。カードが認知され、実用性・有効性が本当の意味で決まってくるのは、ユーザーである私たちがどのように利用するか、その姿勢に関わってくると考えています。カード発行の際は、川崎市の医師会・歯科医師会・理容協議会・美容連絡協議会にも健康福祉局を通じて連絡をしました。相手側にすべてを期待するのではなく、無理解者を理解者に変えるきっかけとして、積極的に活用していきたいと思っています」取材協力:川崎市通級指導教室親の会前会長・今村優子さん<文・写真:フリーランス記者森藤理絵>
2017年10月07日個性豊かな作品たち!夏休み作品展出典 : 一か月以上におよぶ夏休みももう終わり。夏休み中に子どもたちがつくった作品のシェアを募集したところ、たくさんの投稿がありました!この記事で紹介する作品はほんの一部ですが、リンク先ではすべての作品を見ることができます。発達ナビに関わる3人の審査員の講評も併せてお楽しみください!編集長賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)まず初めに、発達ナビ編集長である鈴木悠平からの表彰です!出典 : 編集長賞に輝いたのは、wajimakiさんのお子さんが作った「埴輪」です!「埋蔵文化センター見学に行ったあとに作った自前の…笑」とのことです。さん埴輪とは渋いチョイスですねぇ。見た目のインパクトもさることながら、お母さんのwajimakiさんが書かれているように、埋蔵文化センター見学に行ったあとに自分で作ったというエピソードが素敵です。よっぽど印象に残ったんでしょうね。「何かを作って表現したい!」という気持ちが高まるのは、やっぱりこういう、本人にとって強い印象に残った経験をしたときが一番だと思います。きっと文化センターにはお土産に出来合いのミニ埴輪とか、キーホルダーやクリアファイルとかも売っていたんじゃないかと想像します。でもやっぱり、自分で作りたかったんですよねぇ。埴輪って、土から作るものですもん。これからもそのDIY精神を大切に、自分が作りたいものをどんどん作ってほしいですね!岸田CTO賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)続いては、岸田CTO賞の発表です。LITALICOの執行役員CTOとして、お子さん向けのアプリやサービス開発を手がける岸田崇志のお気に入り作品は…出典 : プルメリアさんのお子さんが作った「ダイオウイカ」です!プルメリアさんは、作品制作の詳しいエピソードと共に投稿してくださいました。「深海生物が好きな小1の息子と取り組んだ工作、ダイオウイカです。それぞれの足には、空気を入れて膨らませたり、ゴムや針金やペーパー芯が入っていたりと、動く仕掛けあり。うちの子は不器用なので、作品を巨大にして作業しやすくする作戦でいきました。これまでの私の人生で、ダイオウイカや深海生物なんて、全くの無縁だったけど、息子が目をキラキラさせて色々教えてくれるので、私自身の世界も広がります。夏の楽しい思い出をありがとう。」プルメリアさんまるで本物かと見間違うかのようなダイオウイカでとても驚きました。素材の選定と場所によって素材を変える工夫が表現力として素晴らしく、まさに深海生物だ!という雰囲気が出ています。中が青いペットボトルのフタを使うセンスもなかなかです。きっとクリエイティブな視点で日常生活でアンテナを張っているのでしょうね。ダイオウイカの特徴の2本の触腕も先まで特徴を捉えていて素晴らしいなと思います。海で泳いでいる姿を想像して水族館にいった気分になれました。素晴らしい作品をありがとうございます!井上先生賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)最後に、発達ナビの監修も務める、鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生からの表彰です!出典 : 井上先生賞は、おかみさんのお子さんが作った「ダンボールフェラーリ」が受賞!段ボールでつくったとは思えないリアリティで、ひときわ存在感を放っていました。おかみさんルマン仕様でしょうか?曲線的なボディラインやライトのバランス、ホイールや車内のディテールの細やかさ、色合いもあえてフェラーリレッドでなく白を選択するなど、随所にお子さんの「入れ込み」が感じられます。好きなものを作る時は、きっと時間を忘れ、すごく集中できる至福の時間なのでは、と思いました。製作中の様子や車について熱く語ってくれる様子が目に浮かぶようです。リアウイングがなぜないのかをいつか教えてください。おめでとうございます!これからも熱い作品を作ってください。まとめ出典 : いかがでしたか?想像力に富んだ子どもたちらしい、個性豊かな作品たちですよね。どの作品を見ても、細部にまで宿っているこだわりから、子どもたちの頑張りがひしひし伝わってきます!また、作品を紹介する親御さんたちの文章にも、子どもに対する愛情が感じられ、とても温かい企画になりました。皆さん、ご協力ありがとうございました!
2017年08月31日発達支援施設とは?発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんを、ご家庭の中だけでサポートすることは容易なことではありません。そういった子どもたちのためにあるのが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設です!児童福祉法では、障害児通所支援と呼ばれ、全国各地にある施設に直接通うことで、必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後デイサービスです。児童発達支援では、小学校就学前の子どもを主に対象とし、支援を受けることができる施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、多様な支援を目的としています。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。放課後等デイサービスでは、生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。どんな支援が受けられるの?児童発達支援や放課後等デイサービスにはさまざまなタイプがありますが、一部の施設では療育的なアプローチによる支援を受けられることもあります。ソーシャルスキルトレーニングをはじめ、さまざまな独自の療育プログラムが組まれている場合もあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門資格を保有しているスタッフがいる施設もあります。また、障害のある子どもにとって、児童発達支援や放課後等デイサービスは、家庭・学校(園)につぐ3つ目の居場所となります。子どもにあった施設を選ぶことができれば、親子ともども充実した時間を過ごすことができるはずです。発達支援施設を選ぶときのポイントは?お住まいの地域にどんな施設があるかは、保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口で確認することができることもあります。これらの窓口で、子どもの特性にあった施設について相談してみることも有効です。公共の相談窓口以外に、インターネット上で施設を探すこともできます。LITALICO発達ナビの「施設情報」では、全国の児童発達支援施設や放課後等デイサービスを、合わせて約15,000施設掲載しています。それぞれの施設の受け入れ状況や、サポートの内容も詳しくまとめられています。また、各施設のスタッフが自分たちで更新している写真付きのブログや、実際の利用者さんからの口コミ情報も合わせて見ることができます。さらに、発達ナビ上から24時間いつでも、空き状況の確認や教室見学などの問い合わせをすることが可能です。利用にかかる費用は?児童発達支援と放課後等デイサービスは障害児給付費の対象となるサービスです。通所受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円このほかにおやつ代などの食費や教材費などの実費が必要になる場合もあります。また、自治体により独自の助成制度があります。児童発達支援の利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「児童発達支援施設の利用方法」の章にまとめられています。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円原則一割負担ですが、前年度の年間所得によっては負担額が0円であったり、1割以上である場合もあります。施設によってはおやつ代や制作物の材料代などがかかるところがあります。これらに加え、自治体により独自の助成制度がある場合もあるので、行政の窓口に問い合わせてみましょう。放課後等デイサービスの利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「放課後等デイサービスの利用方法」の章にまとめられています。施設の利用方法は?発達支援施設に通うためには「通所受給者証」が必要になります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行うとで取得することができます。この通所受給者証があることで、自己負担1割でサービスを受けることができるのです。障害者手帳がなくても、通所受給者証があれば、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」を利用できます。詳しい取得法や、申請の方法はこちらを参考にしてください。その他にも受けられるサービスはあるの?また、児童発達支援や放課後等デイサービス以外にも、受けられる支援があります。受けられる支援の詳細や申請方法はこちらにまとめられています。療育手帳・障害者手帳とは?障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。まとめサービス・支援は多岐にわたるため、すべてを把握できず戸惑うこともあるかと思います。そんなときは、早めに相談することで、一歩ずつ疑問を解決してゆきましょう。保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口に相談することで、次のステップが見えてくるかもしれません。また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどのスタッフも相談に乗ってくれるはずです。一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけ、適切な支援につなげていくことが大切です。
2017年08月29日私はアスペルガー症候群、ADHDと診断された、26歳男性です。以前、正社員の登用見込みで採用された企業で、発達障害であることをカミングアウトし、退職せざるを得ない状況に追い込まれる経験をしました。今回このコラムを書いたのは、その企業を批判するためではありません。発達障害のある人自らが、現在の社会の現状や、自分たちを守る法律や制度について知ってほしいと思ったことが執筆の動機です。自分の経験がすこしでも役に立てば幸いです。問題なく過ごしてきた学生時代、仕事を始めて問題が表面化出典 : 私は大学までの学生生活で、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、毎日を過ごしてきました。自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出したのです。例えば、空気が読めない発言によって商談の雰囲気が悪くなってしまったことや、声の大きさやトーンをTPOに応じて変更することが難しいために、ちょっとしたぼやきが部署内の全員に聞こえてしまうことがありました。学校生活では、対人関係に多少問題があっても、テストで問題のない点数をとっていれば、目をつむってもらえます。ですが、社会人となるとそうもいきません。行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてしまったのです。そうするうちに私は、就職後半年足らずで転職することをくり返してきました。コミュニケーションスキルの低さから「正社員としての基本的なスキルに欠ける」ということを言われ、辞めざるを得なくなってしまうのです。表面的なコミュニケーションスキルという点では問題がないので、面接は突破出来ても、継続的に働くということが難しいと感じていました。確定診断はまだ。そんな状況で向かった採用面接出典 : 人間関係のつまずきや解雇の原因が、自身の発達障害にあるのではないかと考えていた私は精神科を受診し、発達障害の疑いがあるということを主治医から告げられます。しかしこのときは「疑いがある」と告げられたレベル。確実な診断に必要な検査は数ヶ月先まで予約で埋まっており確定診断は下っていない状態でした。そんな状況で私はある小売店の採用面接に応募します。任される仕事は主に接客。採用面接では聞かれない限り、不利になることは話す必要が無いと考え、発達障害の可能性があるということには触れませんでした。そして面接の結果は採用。まずは6ヶ月の試用期間となり、社会保険付きのフリーターのような形で働くことになったのです。職場で生じた困りごとと気づき出典 : 職場での仕事は多岐に渡りましたが、耳から聞いたことを忘れやすい特性や、聴覚過敏から引き起こされる困り事が特に辛く私にのしかかりました。たとえば、こんなことがありました。1. 業務の指示、シフトの交代、口頭で交わされた指示や約束等を忘れやすい。そのため、シフトを変更して、来なくていい日に会社に行き、「あれ?今日は休みだったよね?」という会話になってしまうことがありました。2. 業務の指示が長かったり、一度にされたりすると理解が追いつかなくなってしまう。その会社には、面倒見の良い先輩が多く、丁寧に説明してくださることが多かったのですが、耳から聞いたことを理解すること、長い話を要約することが苦手だったので、理解が追い付かなくなってしまう場面が多くありました。3. BGMなどの雑音がある場所で、電話などの声が正しく聞き取れない。また、私は切り替えやマルチタスクが苦手です。電話がかかってきたときには、電話に出るモードに切り替えなければいけないのですが、人よりも切り替えに時間がかかります。加えて、聴覚過敏があるため、BGMやマイクやスピーカーを使ったイベントなどが近くであると、部署名や社名を聞き取りづらい感じることが多々ありました。4. 一つの仕事に没頭しやすく、周りを見ることが苦手。アスペルガー症候群である私は、細部に注視しやすく、全体が見ることが難しくなる特徴があります。上司から進捗状況を尋ねられるまで、報告をしなかったこともありましたし、他人の迷惑を顧みず勝手に仕事を進めることもありました。譲れない自分のこだわりのために、他人と摩擦が起きてしまうことも少なくはありませんでした。仕事は仕事という考え方ができなかったのです。5. 突然のスケジュール変更などに弱く、探し物がいつもの場所にないと、イライラしやすい。いつもと変わったこと、配置が換わったりするだけで頭の中がパニックになります。こうした予想外のハプニングに対してどうしていいかわからずパニックになり、それが怒りとして感じられるというステップを踏んでいるのです。逆に、できるとわかったこともあります。一般的にアスペルガー症候群を抱える人には、接客業は向かないと言われることもあります。しかし、私の場合、質疑応答のパターンがある程度定まっており、マニュアルがしっかりしていれさえすれば、さほど不自由なく対応できました。その点、今回の職につく前の事務職では、上司の考えていることを察しながら働くことが多く、困難さを感じていました。そういった働き方が苦手だと感じたため、あえて接客業を選んだ経緯があります。また私にとって、見知らぬ人と短時間雑談をするのは、そんなに難しいことではありません。むしろ、何時間も何週間も誰かと一緒にいる方が難しいのです。社会性の弱さが露呈する瞬間が必ずあり、障害を隠し通すことができなくなるからです。上司に障害があることを、上司に伝えることになった理由ときっかけ出典 : 発達障害の心理検査が近づいてきた日、自分が大きなミスをしてしまった事に気付きます。それは、確定診断のために必要な心理検査の日に休みの希望を入れることを忘れてしまったことでした。そのため、上司に「大事な検査があって、この日はどうしても出社する事ができません」と伝える必要性ができてしまったのです。どうするか悩みましたが、「私は自分が発達障害だと思っていて、半年前から心理検査の予約をしていた」ということを正直に話しました。そして結果として診断日にお休みをもらうことができたのです。適当な言い訳をせず、あえて正直に伝えた理由は、シフトの休み希望などの締め切り自体を忘れることが、1回や2回ではなかったことが関係しています。障害特性による困り事が、そのときから既に仕事にも支障を与えていました。このことから、どうせなら正直に伝えてしまおうと思い、事実をありのままに話したのです。判明した診断名は......?出典 : こうして、発達検査を受けた私には、確定診断が下ることなりました。診断名はアスペルガー症候群と、ADHD。言語性IQは平均以上であるが、処理能力、場面の推察力、ワーキングメモリーのいずれも平均より大きく劣るという結果でした。主治医は比喩として、メモリーが極端に少なく処理速度も速くはないパソコンに例えて説明してくれました。25年間、自分が普通だと思って生きてきた私にとって、自身が発達障害であると突然突きつけられた事実は想像以上に重いものでした。「どうして、もっと早く教えてくれなかったんだ」と両親に対して憤りをぶつけてしまうほど、信じたくない気持ちでいっぱいだったのです。「まさか自分が障害者だなんて...」出典 : 診断を受け止めることができなかった当時の私は、思わず母親に詰めよります。「どうしてくれんだ!?アンタが出来損ないに産んでくれたせいで、俺の人生は台無しだッ!!」家の外にまで聞こえるような怒声で母親を罵った事を今でも覚えています。「出来損ない」を突き付けられたような感覚。健常者と比べて能力が欠けているという感覚は自分を苦しめました。他人と比べては、自分に足りないものを見つけネガティブの思考に陥る。そういうループを繰り返していたのです。この頃を振り返ると、仕事が上手く行かない、余暇を楽しむ余裕がない事から生じた怒りだったと思います。また日頃から見ていたSNSも原因のひとつだったのではないかと考えています。仕事で自分なりの居場所を見つけていたり、結婚という次のライフステージを選ぶ人が、同じ大学を卒業した同期から早くも出ていたりする中で、自分だけが社会の中で居場所を見つけることが出来ず、置いていかれている気がしていたからです。そのような言葉にすることが難しい孤独感や焦燥感が私を追い詰めました。また診断が下ってから主治医の勧めでストラテラを服用し始めたのですが、私の実感ではこれといった効き目の実感がなく、喉の渇き、食欲減退、イライラ感、中途覚醒などの副作用に悩まされます。このときは思うように治療が上手く行かない苛立ちを両親にぶつけることも少なくありませんでした。また、後から知ったことですが、ストラテラには、気分変化や不安、攻撃性を引き出すなどの副作用が出る場合があるそうです。その副作用が苛立ちや、すぐに怒鳴ってしまうことに影響していたかもしれません。結局、私の場合、副作用が強く出てしまったため、続ける事が困難だと判断され、現在は服用を中断することになりました。周囲にカミングアウトするか否か。悩んだ末に出した結論は?出典 : 確定診断を受けたものの、発達障害を職場に本格的にカミングアウトするかどうかは非常に悩みました。休み希望を出す段階で、上司に発達障害かもしれないと告げていたとはいえ、同僚や部内に対してカミングアウトすることはわけが違います。しかし一方で、障害特性による困りごとのため、仕事そのものや職場の人間関係に支障があり「もう隠し通すのは限界だな」という自覚もありました。悩みぬいた私は、試用期間にカミングアウトすることが人事面でのリスクであると知りつつも、「結局は受け入れてくれるだろう」という思いで、カミングアウトをすることを決意したのです。カミングアウトをすると決めた、私が取った行動とは?出典 : 発達障害をカミングアウトすると決めた私は、発達障害のことを全く知らない人でも分かるような説明を考え抜きました。その際に発達ナビのカミングアウトの記事を参考にし、自身の特性と、その障害に対して具体的にどうして欲しいかを簡潔に書いたナビゲーション・ブックを用意しました。ナビゲーションブックには、下記の3点を記入しました。1.アスペルガー症候群まとめアスペルガー症候群とはどのような症状なのか、障害を知らない人にもわかるようにまとめました。2.アスペルガー症候群具体例身体的な特徴や、作業面での特徴などをまとめ、どのようなことが自分の中で起こっているかを説明しました。3.自分が抱えている症状と、その対策そして、自分の困りごとに対する対処法と、その配慮を場面ごとにまとめました。ADD女性の指南書とも言われる『片付けられない女たち』サリ・ソルデン著もカミングアウトする際、参考にしました。片づけられない女たちこの本は、障害の当事者の方に、ぜひ読んでほしいと考えているのですが、障害を抱えたまま、どう自分を受け入れ前向きに生きて行くのかが書かれています。特に参考になったのは、騒がしい場所での仕事は苦手なことを明らかにし、落ち着いた環境で効率化を図ることや業務量を減らす代わりに、丁寧な仕事をすることなどです。さらに、障害があるから配慮してもらって当然という姿勢ではなく、自分で工夫できることは自分でする。自分に出来ないことだけ配慮してもらうというトレードオフを本書では提案しており、カミングアウトをどう行うかの道しるべとなりました。また、ナビゲーションブック作成の際には、下記の発達ナビのコラムを参考にして、私の障害特性を分かりやすく説明することを意識しました。職場でのカミングアウト、そして......出典 : カミングアウトをする順番は、影響する範囲などを考え、上司→人事→部署内の同僚のように進めていきました。Upload By ツーちゃんこうして事前にナビゲーションブックを用意して、自分がどのような障害があり、それに対してどうような配慮を望んでいるかをハッキリさせたことで働きやすくなった一面もありました。引き継ぎの際に、同僚が紙を使って視覚的に説明してくれるようになったり、イレギュラーが生じたときには、それをきちんと説明してくれるようになったのです。しかし、中には良く思わない人もいました。障害があり能力が劣る人と同じ給与で働くことに抵抗があり、良く思わない人も少なくなかったのでしょう。障害があることを、噂話のネタに使われてしまい、公開する予定の範囲が当初の想定以上に広がってしまったということがありました。どんな情報をどこまでに公開するかは、カミングアウトを考えるときに、最も慎重に考えなければならない問題の一つだと思います。発達障害は、脳の特性でもあります。この職場で健常者と共に働くということは、自身の特性を言わば矯正して生活をすることに他ならないものでした。カミングアウト1ヶ月後の、実質的な退職勧奨出典 : カミングアウトからちょうど1ヶ月後のことです。その会社では、直属の上司と定期的に仕事での悩みや日々の業務の改善点などについて、1対1で話し合う定期的なミーティングがありました。その日は半年間の試用期間を振り返る日の予定の日でした。いつもは温和な雰囲気のミーティングが、そのときばかりは暗い雰囲気だった事を覚えています。空気を読むことが苦手ではありますが、重苦しい人事考査を何回か経験していたため、その空気感には覚えがありました。人事が慎重を期して、書記として議事録を取っており、直属の上司が社内規定を読み上げ始めたので、不安は確信に変わりました。そして案の定上司から言われたのは、5ヶ月の間、君を見てきたけれども、正社員としてのスキルに欠けるといった趣旨の言葉でした。仕事を続けるために、突きつけられた条件とは?出典 : そして私には雇用継続に新たな条件を突き付けられます。試用期間を1ヶ月間延長しさらに人事部が示した条件を飲む。その条件とは、ナビゲーションブックに書いた、障害特性上難しいと書いたことをできるようにすること。それが達成できない場合は、引き続き雇用する事は出来ないというものでした。さらに、今の部署の仕事を完璧にこなし、他の部署のサポートにも回れるようにする。そして、その仕事ぶりが直属の上司と人事部の代表者から見て、条件を達成したと判断されたときにに改めて正社員としての採用を決定するという内容だったのです。「それが出来ない場合は、今月末で退職することに同意をしてください」いうなれば、特性を克服するか、辞めるか、どちらかを選ぶことを迫られたのです。このとき、つまりは辞めろと言われているのだと悟り、退職書類ににサインをしました。ナビゲーションブックが、このような形で使われるなんて...本当に悔しくてたまりませんでした。こんなことがあっていいのか。これは、障害者差別ではないのか?そう思った私は、法律相談なども赴き、専門家から知見を集めることにしたのです。退職してから知った、発達障害者を取り巻く現状と法律出典 : このような出来事は、法律用語で退職勧奨と呼ばれ、強制的に退職を迫った場合には法律に違反するそうです。これは、訴訟も視野に入れて法律を調べていたときにわかりました。私が知る限りで発達障害者を守る法律は3つあります。1.障害者雇用促進法2.障害者差別解消法3.発達障害者支援法障害者雇用促進法では、36条に障害者差別の禁止が規定されています。障害者の雇用の促進等に関する法律それに拠れば、「事業主は障害者である労働者に対して、配慮することが必要」という旨が書かれています。しかし、合理的配慮の提供は義務付けられているものの、障害者雇用促進法に違反していても罰則は無いという法律の抜け道が用意されています。現在、発達障害のある人は、手帳を持っていなくても医師の診断書などで障害があることが分かっていれば、上記の法律の対象者にはなります。しかし現状、発達障害者は、障害者であると定義されていながら、手帳を持っていない場合、法定雇用率にカウントされません。つまり、手帳を持っていない発達障害者は、単に法定雇用率をクリアしようとする企業によっては、雇用するメリットがない人材と言えてしまうのです。この退職勧奨があった当時、私は、精神障害者手帳を取得していませんでした。訴訟も視野に入れたが、証拠が無かった......出典 : 私は法律にはついては、何も知らなかったので法テラスという場所の無料法律相談を利用しました。法テラスとは経済的な困難を抱えている人が不利益を被ることがないように設けられており、通常弁護士に相談すると1時間4000円程度かかるところを、無料で相談することが出来ます。そこで相談をすることで、法的な自分の状況がのみ込めてきました。退職のきっかけとなった面談時、会社側は人事部の社員を書記につけていましたが、私にはそこでどのような会話があったかを証明する証拠がありませんでした。訴えを起こそうにも、強制的に退職を迫られたという証拠が自分の側になく、会社側に都合の良い解釈が出来る証拠がたくさん残っていたのです。また、退職届けを自ら書いてしまったことが痛手となりました。一度、退職することに同意をしてしまうと、会社側としては、労働者から退職したいとの申し出があり、会社としては、それを受理したまでという主張が通ってしまいます。また私は、今回、会社の所在地を管轄する労働基準監督署にも行きましたが、労働基準監督署は、労働基準法に違反するかどうかをチェックする公的機関のため、相手にしてもらえませんでした。やきもきしている私に弁護士が勧めてくれたのが、労働局の個別労働紛争解決の制度を利用することでした。労働局の調停(個別労働紛争解決制度)とは?出典 : 労働局の個別労働紛争解決の手段として、あっせんと、調停の2つがあります。どちらも無料で活用できる紛争解決の手段です。今回、利用したのは後者の調停です。調停は障害者差別により不利益が生じたと主張する労働者と、会社間の紛争を解決するために行われます。労働相談における紛争調整委員会によるあっせん | 福岡労働局調停は、民事裁判とは性格が異なります。労働者と会社の双方から言い分を訊き、1日で審理が終わります。所要時間は申し出から平均で3ヶ月と、一般的な裁判と比べると短期間で済ませることが出来ます。そして労働者自らが無料で申請することが出来る制度です。また障害者自身が申請書を1人で書きあげることが難しい場合は、代理人が当事者の承諾を得て申請することも出来ます。調停が成立した場合、そこでの決定は民事裁判と同等の効力を持ちます。しかし、裁判のように参加の法的な拘束力がありません。自由参加だということです。また調停は、非公開で行われます。つまり調停の過程や結果については公表してはならないのです。私も調停の申し出を行いましたが、その結果をここに書くことはできません。退職してからというものの......出典 : 僕にとって、辛かったのは「自分が発達障害であるという事実」と会社が自主退職をするように暗に示してきたことの2つがほぼ同時期に起こったことでした。まさに泣きっ面に蜂のような状況。そのため退職してからは、気分が落ち込み、やり場のない怒りや苦しみを両親にぶつける日々が続きました。うつ病とまではいかないものの、抑うつ状態にもなり、心身ともに辛い日々となったのです。また、私はアスペルガー症候群の症状がADHDよりも強く出ており、視覚優位なタイプでもあります。そのため、目で見て、モノを考えるタイプであると同時に、目で見てモノを思い出すタイプでもあります。その企業のコーポレートカラーや、上司の名前、その企業の商品など、色々な刺激を見たり、聞いたりすることで頻繁にフラッシュバックが起こりました。フラッシュバックの辛さを言葉で説明することは難しいのですが、まるで、その場にいるときと同じように、その当時の感情を思い出してしまうのです。また、切り替えが苦手で、マルチタスクが苦手なため、怒りを感じたときはそのことしか考えられなくなり、感情に長く翻弄されてしまうのです。悔しくて堪らなかった。見かねた父が私に掛けてくれた言葉出典 : 上述したように私は、退職してからずっとその企業の行ったことが許せませんでした。やがて、証拠がなく裁判をして白黒をつけたいと考えるようになった私に、父がかけてくれた一言があります。「過去に囚われて、苦しむお前を見たくない。俺が見たいのは、お前の笑顔だ。嬉しそうに笑うお前を取り戻して欲しい。ただ、笑ってくれていれば、それでいいんだ。仮に裁判をしても、思うような結果は得られない。お前も分かっているはずだ、証拠が無いと。つらいことは忘れられなくても仕方がない。それでも視点を変えれば、見えてくるモノも自ずと変わってくる。早くお前に笑顔が戻ればいいなと思っている」この言葉を聞いたとき、感動して涙が出たことを今もちゃんと覚えています。そしてこの父の言葉が一つのきっかけとなり、前を向いて歩きだす機会になりました。自分を責め続けていた私を救った言葉とは?出典 : 父の言葉だけでなく、カウンセラーの方がかけてくれた言葉にも救われることになります。辛い過去を忘れることができずにいるとき、カウンセラーの方が、こう声をかけてくれました。「許さなくてもいい、許せない自分がいてもいい。」このたった一言が怒りに苛まれる心を楽にしてくれました。日々感じていた怒りの感情の認知を、カウンセリングなどで丁寧に取り除くことに時間をかけ、今現在は怒りの感情に支配されることもなく落ち着いて過ごすことができるようになりました。自分の生い立ちを振り返って出典 : 今振り返ってみると、私は、障害のことを10年くらい前に分かっていたら良かったなぁと考えています。今現在26歳なので、中学生とか高校生くらいのときにあたるでしょうか?たとえ、自分に障害があることを知らなくても、人と上手くなじめない感覚や、ほかの人と自分は何かが違うという違和感を幼い頃から感じながら生きています。だから、自分自身に発達障害があるともっと早く知っていれば、その違和感にも納得することができたし、障害特性を理解して、自分に合った道を選ぶこともできたはずです。また、障害の受容に関しては、信頼できる第三者の大人の存在がとても重要だと考えています。障害を受け入れることが出来なかった頃、両親の声はなかなか届かなかったからです。私の場合は、カウンセラーの方だったのですが、小学生や中学生のお子さんであれば、小学校の先生などが信頼できる大人にあたるでしょうか。そうした関係づくりが後々役に立つのではないかと思いました。私の経験から皆さんに伝えたいこと出典 : これまでのことを振り返ると、職場にはカミングアウトしないことも選択肢の一つだと思います。また個人的な見解ですが、私のように途中でカミングアウトをした場合、周囲からは後出しジャンケンをしたような目で見られます。また入社前に障害の有無を伝えていない場合、障害により生じた人間関係の不和はカミングアウトをしたからといって埋まらないような気がするのです。私は、今現在、この反省を活かし障害者雇用で配慮を得られる企業を探しています。私が使用しているナビゲーションブックを公開します。企業へのカミングアウトを考えている方は、参考にしてみてください。この記事が一人でも読者の皆さんの参考になれば、これほど嬉しいことはありません。Upload By ツーちゃん
2017年08月28日NHK「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みNHKが1年を通してさまざまな番組で、発達障害の多様な姿を伝えていく「発達障害プロジェクト」7/24(月)にも「あさイチ」で特集が放送されました。今回のテーマは、「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」朝の番組で、発達障害のある子どもの子育てを取り扱ったことから、特に保護者の方々の視聴・感想が多かった様子です。発達ナビ編集部でもTwitterで番組の内容を実況し、視聴していた方々の感想もまとめました。以下の、Twitter「モーメント」機能によるまとめをご覧ください。「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みワガママと発達障害の境界線は…?番組で投げかけられた問いと、視聴者の声今回の番組では、発達障害のある小学生の子どもが二人いるご家庭が取材されました。小学6年生の女の子が、学校から帰って来た場面。直前までお友達とおしゃべりしていた内容が心に残って、なかなか気持ちや行動の切り替えをすることができない、結果、宿題を始めるまでに50分もかかったという様子が映されます。お子さんの発達に違和感を感じたのは3歳児の頃。癇癪が激しく周囲に相談したが、その時は周囲から「大丈夫だよ」と言われるだけで、お母さんはギャップに苦しんだそうです。その後4歳児になったとき病院を受診、発達障害と診断されました。お子さんが「宿題をなかなかやろうとしない」「学校に行きたがらない」といった状況や悩み自体は、子育てしているご家庭なら大抵、一度は直面することかもしれません。ですが、発達障害のあるお子さんの場合、気持ちや行動の切り替えの難しさ、困りごとが起こる頻度や程度には大きな差があり、なかなか簡単には困りごとは解消されません。番組で映されるお子さんとお母さんのやり取りから、診断されてから今に至るまでの日々、積み重ねて来た工夫や理解、お子さんの成長の足跡も感じられます。それでもやはり、思うようにいかなくて、パニックや癇癪を起こしてしまうこともある。同じく発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方や、ご自身も幼少期に似たような状態になっていたと語る、成人の発達障害当事者の方など、視聴者の方々から共感の声が寄せられていました。一方、スタジオゲストの方からは、「これが単なるワガママなのか、発達障害によるものなのか、わからない」という意見も出てきました。ワガママと障害はどう違うのか。そんな疑問に対して、Twitter上でも視聴者のさまざまな声が寄せられます。番組中でも、一見して誰にでも起こるような困りごとでも、発達障害の場合は、生活に支障がでるぐらい、程度や頻度が大きいという説明がなされていました。ですが、程度や頻度は違えど、起こっている症状や困りごと自体は、どんな子どもにも見られうるものであるゆえに、周囲の人からすると一見してその違いはわかりにくいのでしょう。どこまでがワガママで、どこからが障害なのか…発達障害が身近でない人からそのような疑問が呈されること自体は、無理もないことかもしれません。また、性質や程度の違うさまざまな凸凹のある人々が、連続体(スペクトラム)のように存在していると言われる発達障害それ自体の特性からも、明確な線引きをすることは非常に難しいと言えます。目に見えにくい、わかりにくい障害としての発達障害の性質を示すようなエピソードだったように思います。こうしたジレンマに対して、具体的にはどのように対処すれば良いのか。番組のゲストコメンテーターとして出演された、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のコメントがヒントとなります。わがままと障害の線引きはどこかと線引きすることは、厳密には難しい。それよりも大切なのは、周りがどういう風に対応して工夫すれば本人が頑張れるようになるのか、という観点だと井上先生は語ります。線引きをすること自体を目的としても、議論にキリをつけることは難しいですが、その子が何に困っていて、周囲の人たちには何ができるのかと、個別具体的な対応・行動をベースに考えることができれば、発達障害かどうかに関わらず、どんな子どもにとっても有効な困りごと解決のアプローチが見つけられるはずです。番組の後半には、下のような声も寄せられました。どんな状況であれ、お子さんも、親御さんも、それぞれのありのままを受け止めて認めて合うことを願う声です。あさイチ出演、古山さんより保護者の方々へのメッセージ最後に、今回の番組のVTRに出演された古山さんからのメッセージをご紹介します。番組終了後、発達ナビ編集部宛にご連絡をいただき、いま、子育てに頑張っている保護者の方々へ伝えたい思いを語ってくださいました。Upload By 発達ナビ編集部「7月24日のあさイチで取り上げて受けていただいた、古山です観ていただいた皆様、本当に本当にありがとうございます井上先生はじめ、スタジオの皆様が沢山協力して下さり、短い時間でしたが、濃い内容になっていたと思います放送後も沢山の反響をいただき驚いています発達障害の子育てをしているママの沢山の方が涙を流しながら共感してくださったメッセージをいただき、勇気を出して良かったと思っています我が子の姿をさらけ出すことに抵抗がなかったわけではありませんその中で取材を受けた理由は、育児に悩んでいるママに伝えたい想いがあったからです毎日毎日、育児に行き詰まり悩んでいるかもしれません発達障害の子育ては育児上級者コースを受講しちゃったと私は捉えていますだから、もう、毎日100点は目指さないでください今日が20点だった日も落ち込んだり自分を責めたりしないで20点だったなら次の日60点以上を目指せばいい一週間で平均60点取れたら、花マルだから、40点が続いたらお休みの日に80点目指せばいいんですそれだって、1人で頑張らないで家族総出でかき集めたっていいんですあ、失敗した、言いすぎたって時は、素直に謝っちゃえばいいんですママが悪かったです、言い直すからさっきの言葉、消しゴムで消して欲しいっていま、悩んでいるママたち毎日、育児に奮闘していると一人で闘っている気持ちになるかもしれません誰にもカミングアウト出来ず誰にも共感してもらえず苦しくて寂しくて辛い毎日を過ごしているかもしれません私もそんな風な光の見えないトンネルの中にいた経験がありますでも少し勇気を出して周りを見てみてくださいあなたには必ず味方がいるはずですあなたは毎日毎日、子供に向き合い悩みながら色々なことを選択していることでしょうもしかしたら世間一般的には間違いかもしれない選択をしていることもあるかもしれません私自身が、子供達に学校以外の場所に行かせることを決めたように…でもあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら出した選択ならたとえ、間違いかもしれない選択だとしてもあなたの決めたことなら応援してくれる人がいるはずです私にとっての実母のように味方がいればたとえ一緒に生活していなくても頑張れるチカラになります勇気を出してみてくださいまたもしも味方がみつからなくても覚えていてくださいあなたが真剣に子供達と向き合い孤独と闘いながら子育てしているとき同じ空の下で私も同じように過ごしていますあなたが今日も上手く対応してやれなかったと子供達の寝顔を見ながら涙しているとき同じ空の下で私も同じように涙していますあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら頑張っているなら私はあなたの味方ですあなたは一人ではありませんつらいときくるしいとき良かったら私を思い出してくださいあなたとお子様達の幸せを心から願っています」
2017年08月07日先日、NHK 「あさイチ」 で「発達障害の子育て」についての特集が放送された。番組に出演した古山さん一家は、小6の長女と小3の長男が共に発達障害と診断されている。元気にあいさつしてリポーターを出迎える2人の姿は、障害があるとは思えないほどだが、3日間生活に密着しているうちに、「あれ?」と思うことが見えてくる。古山家のお母さんは、子どもとのコミュニケーションに、言葉ではなく筆談でそっと気持ちを伝えたり、タイマーを使って時間をわかりやすく提示するなど、随所に工夫を凝らしていた。また、お母さんは「長女の子育てに悩んだ末、4歳の時に1人で決めて1人で病院に行った」「旦那は診断を受け入れられず、障害者のレッテルを張ったのは私なのか? と悩んだ」とのこと。それから6年、今も整理できない気持ちを抱えながら、夫婦で手探りの子育てが続いているという。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。決して感情的にならず、子どもの気持ちを受け止めて待つという古山家のお母さんの姿は、とても学ぶところが多かった。■子どもが発達障害と診断。その時、夫は……?しかし、今回の番組を見ていて私が一番気になったのは、子どもでもお母さんでもない。それは、お父さんの存在だ。当事者として出てくるのはほとんどがお母さんで、お母さんの話を通してからも、お父さんの存在があまり見えてこなかったのが気にかかった。個人的には「夫婦や家庭内の葛藤をもっと掘り下げて聞きたい!」と感じた。今回は放送時間の都合上、残念ながら「お父さんの存在」にはあまりフォーカスされていなかったようだ。次回以降のNHK「あさイチ」特集を含む、 NHK「発達障害」プロジェクト で、このテーマが深堀りされることを期待したい。「お父さんの存在」という問題。じつはこれ、療育ママの間では、よく聞く話である。「夫が子どもの障害を認めてくれない」「旦那が『就学先は絶対普通級』と言っている」「旦那が、幼稚園での発表会の様子を見てショックを受けちゃった…」などなど。他に、義理両親や自分の両親から理解してもらえないという話も時々聞く。「義理母に、あなたがちゃんと躾ければなおると言われた」「母親に、『あなたは甘やかしすぎ。このままじゃわがままな子になる』と注意された」などなど。こういう発言にはイラッとくるけれど、百歩譲って、祖父母世代に発達障害の理解は難しいのかもしれない。自分たちが子育てしていた頃には、きっと聞いたことのない話だろう。でも、同居していたらちょっとキツイ問題だけど、別々に住んでいるならうまくわかすこともできるし、子育てにそれほど強い影響もないはずだ。だが、夫の場合はそうはいかない。夫がきちんと向き合ってくれなければ、お母さんのストレスは2倍、いや数倍にも膨れ上がる。日々の小さなことまでフォローする必要はないと思うが、「ここぞ!」という時には、真剣に向き合ってほしい。意見が衝突することもあるかもしれないが、いざという時に一緒に本気で問題に取り組んでくれる同士(夫)がいると感じられれば、それは、お母さんにとって何よりも大きな心の支えになるはずだ。 ■他の子と比べすぎるお母さんと、比べすぎないお父さんまた、一般的に、子育てはお母さんが主役になることが多いので、同世代の友達と関わることも増えるが、お父さんは集団でのわが子の姿を見る機会がほとんどない。なので、年相応の発達状態を把握しにくく、「男の子なんてこんなもんじゃない?」とか「俺も子どもの頃そうだったよ」などと問題を見逃しがちな面がある。でも、これって悪い面もある反面、意外と良い面もあると思うのだ。わが家の場合は、私が他の子と比べてばかりいて、「普通」であることに縛られ、ふさぎ込んでしまっていた時期があった。だが、夫は、他の子と比べることは一切しなかった。「他の子と同じである必要はまったくない」、「比べることには何の意味もない。もし比べるなら、『他の子と』じゃなく『過去の息子と』」「『普通』の定義って何?」と、落ち込んでいる私を容赦なく詰めて(励まして?)くれたものだ。そんな夫に、「あなたは他の子のことを全然知らないからそんなに呑気なの!」と噛みついたこともあった。だが、文句を言いつつも、わが子のことだけをしっかり考えるという夫のブレない姿勢は、どこかで、とても心強い支えになっていたのだ。また、夫と私では子どもについての見方も全然違ったので、多面的に話し合えることもありがたいことだった。お父さんというポジションは、お母さんより、子育てを冷静かつ客観的に見られる位置にいると思う。お父さんには、ぜひそういう強みも活かしてほしいのだ。■「わがまま」と障害の線引きは?最後に、番組を見ていて、もう一つ気になったことがある。「わがまま」と障害の線引きは? ということだ。番組に出演した古山家のお父さんも、「どこまでが発達障害の特性なのか個性なのか切り分けが難しい」と葛藤していたし、スタジオの出演者たちもそのことについては判断つかないようだった。このことは、私も、よく健常児のママから聞かれるのだが、私も答えがわからずに困っている。専門家の井上雅彦さんも、「(線引きは)厳密には難しい」と言っていたので、かなり悩ましいテーマなのだろう。ただ、重要なのは、障害との線引きにこだわることではなく、「どう工夫すれば(生きにくさを感じている)子どもたちの努力が報われるか?周りがどう対応するか?ということの方に目を向けるべき」(井上雅彦さんコメント)とのこと。そう、私たちの目的は、子どもをカテゴリ分けしたり、レッテルを張ることではない。困っている子どもたちが、いかに生きやすくなるかを考えぬくことなのだ。まちとこ出版社N【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年08月01日7月24日(月)、NHK 「あさイチ」 では、子どもの発達障害についての特集が放送される。「あさイチ」からの事前情報によると、「これまで番組に寄せられたメールやファックスの中でも特に多かった、発達障害の子どもを持つ親の悩みに徹底的に向き合う」とのこと。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。5月の NHKスペシャルの放送 から、ぜひ次回は、発達障害の子どもや子育て中の親にフォーカスした企画を! と思っていたので放送が楽しみだ。■当事者が語る、発達障害の子育てのリアル今回の放送では、3人(うち2人が発達障害)の子育て真っ最中の家庭を訪問し、発達障害の子育ての大変さや、それに対してどう向き合い、対応しているのかを伺っていくのだそう。子どもが診断された時の気持ちや、夫や祖父母、周囲の反応、子どもの将来への不安など、様々な角度から、当事者たちに発達障害の子育てをリアルに語ってもらうそうだ。さらに、番組では、ペアレントメンターなどの親を支援する仕組みなど、当事者の親に役立つ情報も紹介する予定だという。■娘とは桁違いの大変さだった、息子の子育て筆者のケースをお話しよう。定型発達児(娘)と発達障害児(息子)の両者を育ててみて思ったが、その子育ての大変さは、まさに桁違いだった。もちろん娘だって、成長の過程では、当然大変なこともあった。イライラして頭が沸騰しそうになったことだって、多々ある。でも、娘の怒りや泣きのツボはだいたい理解できたし、コミュニケーションもしっかり通じたので、私の理解の範囲内で対処することができた。ところが、息子の場合はまったく違った。指示が通らない。言葉の説明を理解してくれない。急に走り出したと思ったら、今度はテコでも動かないなど、動きが読めない。保育園ではイベント事が大の苦手で、隙あらば逃走。歯磨きやお医者さんの診察では毎回大暴れ…。何より困ったのは、コミュニケーションが通じないこと。変な言い方だが、言語も思考も違う異星人を相手にしているようで、本当にお手上げ状態であった(4歳過ぎた今では、ずいぶんマシになってくれたが)。■3歳で確定。「だから大変って言ったじゃん!」周囲に相談しても、「男の子なんてそんなもの」「上が女の子で楽だったんだよ~」などと言われ、なかなか理解してもらえなかった。だから、3歳で息子が自閉症スペクトラムと診断された時は、もちろんショックではあったが、同時に、「だから大変って言ったじゃん!」と、周囲にちょっと毒づきたいような気持ちも生まれた。今思うと、周囲は私が思い詰めないように、気を使ってくれていただけだろうに…。不健康な考え方に陥っていた当時は、ひねくれたとらえ方しかできなかった。 ■周囲にガードを張っていのは、私の方?息子は1歳半検診から疑いをかけられていたので、宙ぶらりんの期間が長かった分、私にとって診断は、腹をくくる良いきっかけになった。その頃には、この障害についてしっかり勉強して、一生向き合っていこう! という覚悟もできた。また、さまざまな専門書を読んで勉強するうちに、息子の特徴や対処法が少しずつわかるようになり、突飛な行動にも笑えるような余裕も出てきた。周囲にも、息子のことを説明しやすくなった。仲の良い園ママにはすでに話していたが、診断がおりるまでは、息子のことをクラス全体にどう説明したらいいのかわからなかった。保護者会で息子のことを説明した時はちょっと緊張したが、幸い、クラスのママたちからの理解も得られ、温かい言葉もかけてもらった。私の方も、長年抱えた秘密(?)をやっと言えたような気がしてとてもスッキリした。それまでは、保育園のイベントで息子が突飛な行動をするたびに、「他のお母さんにどう思われてるんだろう…」とビクビクしたり。お迎え時、他の子がお母さんと楽しそうにおしゃべりする姿を見るのが辛くて、園から逃げるように帰ったり。そんな日々の連続だった。だが、今にして思うと、周囲に対して変にガードを張っていたのは私の方で、私は、勝手に傷ついていただけだったのかもしれない。■自分の物差しだけに縛られない。意識して視野を広げることこうして振り返ってみると、一番辛かったのは、息子のことを周囲に話せず、ひとりで抱え込んでいた時期だった。そんな状況を変えてくれたのは、オープンにしたことと、やはり人との関わりであった。家族や両祖父母、療育の先生、取材で会った方々、そして、同じ悩みを持つお母さん仲間と繋がれたことはとても大きかった。発達障害の子育ては、子どもに手がかかる分、心も生活も余裕をなくし、周囲が見えにくくなってしまう。自分の偏った考えだけに浸食されて、それがすべてのように感じてしまいがちだ。でも、自分の物差しだけがすべて、なんてことは決してない。物事は、捉えようによって、どうにでも変わるし、世の中には変わった人(?)がいっぱいいて、いろんな考え方がある。発達障害の子育て中は、特に、自分とは違った考えを持つ人に会ったり、新しい考え方を学んだり、自分の視野を広げるという気持ちを、常に意識してもち続けた方が良いと思うのだ。今回の特集に関して、担当ディレクターからは「外からは『見えにくい障害』と言われる発達障害の子育ての苦労や、当事者のリアルな姿や声を伝えることで、少しでも誤解を解いていきたい」という、力強いメッセージをいただいた。また何か新しい発見があるかもしれないと、私も放送を心待ちにしている。・NHK「あさイチ」 シリーズ発達障害 「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」 2017年7月24日(月)放送予定 ※内容は変更になる場合があります文:まちとこ出版社N【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年07月21日「正しい発達障害理解」を追求しつづける当事者たちの戦いUpload By 宇樹義子ここ数年、世間での発達障害についての認知は高まりつづけているように感じる。今年に入るとついにNHKが1年がかりの発達障害特集を開始し、当事者界隈はたいそうざわついた。NHKは「とにかく当事者の声を届けたい」という熱意を前面に出していたので、私も本気になった。特に第1弾のNHKスペシャル生放送時には、ブログで事前の情報記事を用意し、当日はTwitterで実況。後日、感想をやはりブログでまとめた。そもそもテレビが苦手な私が、仕事そっちのけでかじりつくようにテレビを見つめ、仲間といっしょに、放送される内容の正誤やニュアンスについてTwitterで意見する。「えっ? 正しくは『自閉症スペクトラム』だよねえ?」「これは誤解を招くからやめてほしいなあ…」「取り上げられた人たちばかりが当事者なわけではない。もっとこういうケースにもフォーカスを!」タイムライン上をいつ終わるともしれず流れ続ける、「もっと完璧な、正しい発達障害理解を!」という叫び。よく考えたらあたりまえだけど、発達障害者についてであろうがなかろうが、私が100%満足できる番組なんて世の中に存在するわけないんだし、仲間たちにとってもそれはそうだったと思う。私自身も皆も、どこか「どこでやめたらいいのか」「こうする代わりにどうしたらいいのか」をつかめずに困っているようにも思えた。「敵」と戦った日々と、「敵」と手をつなぐまでの日々Upload By 宇樹義子そこからの私は、いま振り返ってもずいぶん必死だったと思う。テレビやネットの発達障害特集の内容に誤りがあれば指摘し、親や当事者の不安につけ込むニセ医学を批判し、成人発達障害当事者の生きづらさを理解してくれない社会にブログで警鐘を鳴らし…そうやって毎日、戦っていた。「自分と同じような思いをする人たちを一人でも減らしたい」。先に述べた思いの通り、これまで発信してきたこと自体は後悔していない。だけど、そうして戦いつづけている間、いつもどこか虚しさのようなものを感じていた。…いまここで告白すると、この記事を書かせてもらっているLITALICO(りたりこ)も大嫌いだった。過去に、LITALICOが運営する就労移行支援「LITALICOワークス」を利用したことがある。結論としては、当時の私が納得できる支援は受けられず、私の心には大きな傷が残った。ここ「LITALICO発達ナビ」でも、サイト立ち上げ当初にライターに立候補したものの断られたことがある。保護者向けのコンテンツが多く、私たち成人発達障害当事者が無視されているような気がして、悔しかった。それで私はますます、LITALICOに負けるものかと、たったひとりでの「戦い」に必死になった。「絶対に発達ナビよりもいいコンテンツを作ってやる。彼らが見捨てた成人当事者の益となるコンテンツを」… そんな気持ちを原動力に猛然と仕事した。だけどそのうち、そんなやりかたも限界だと思った。きっかけは、NHKの発達障害特集だ。Upload By 宇樹義子私が必死にNHKの番組を実況しているとき、当然発達ナビも大きなリソースを注いで実況していた。今や発達ナビは、世間の発達障害者へのイメージを左右するような影響力と、それを実現できる経済的人的資源を持ったメディアに成長していた。発信するコンテンツも、大人の発達障害者をもカバーするようになってきており、質も日々上がってきている。私がずっと望んできた、発達障害者が一般の人たちに広く理解される大きなチャンス。私がこの期に及んで発達ナビに対してそっぽを向き続けるなんて、バカバカしいし不自然じゃないか。もうこんなことはやめよう…ある夜突然、発達ナビの編集長の鈴木さんに連絡をとった。そしていま、こうしてここで書いている。たったひとりで「発達障害者代表」の看板を背負う必要なんてない以上は、「いち成人発達障害当事者としての宇樹義子」のごくごく個人的な物語だ。けれど、私と同じように、自分が「マイノリティ」であることへの意識が大きくなりすぎて、かえって自分を追い詰めたり、苦しめたりしている発達障害当事者は少なくないんじゃないかと思う。だからこそ伝えたい。仮にあなたが発達障害当事者であったとしても、たったひとりで当事者全体を「代表」して戦う必要なんてないんだ、と。社会の発達障害への関心が高まったことはいいことなんだと思う。誰もが生きやすい社会のために当事者として声を上げること、誤った情報に対して批判を加えていくことにも、ある程度の範囲内であれば大きな意味がある。けれど、最近までの私がそうだったように、自分自身がその狂乱に飲み込まれ、もしかすると手をつなぐことができるかもしれなかった人たちを「敵」として、24時間戦闘状態に陥ってしまっては本末転倒だ。Upload By 宇樹義子誰かが何かの属性の看板を背負い、「お前はここが違うから仲間じゃない」「お前にわかってもらえるはずがない」などと声を枯らして叫びつづけることは、皮肉にもコミュニティをバラバラにしていってしまうことがある。なぜって私たちは、何かの属性を持つ者たちである前に、バラバラな違った個人の集まりだから。戦闘的になって違った属性を指摘しつづけていったら、最後には誰も残らなくなってしまう。たまねぎの「皮」を剥き続けたら最後には消えてしまうのと同じだ。言葉づかいの丁寧さの問題じゃない。発信に向かうときの心の態度の問題だ。私はこの点で、長いこと間違ったことをしていた、と思う。言葉は丁寧なものの、私は間違いなく「看板を背負って戦っていた」からだ。私がこよなく尊敬する精神科医・臨床心理士であり、日本におけるPTSD治療の第一人者である白川美也子先生の本がある。この本ではまず、トラウマを抱えた人は「3つのF」と呼ばれる症状を示すようになると説明される。・Fight(戦う)・Flight(逃げる)・Freeze(固まる)Fight(戦う)の項ではこんな説明がされている。私は上のくだりを読んだとき、ああ、これは私と仲間たちにそっくりだと思い、ひとしきり涙が止められなかった。そして、そのあとに出てくるこんなメッセージに、とても楽になった。やがて自分の苦しさをそっちのけにして、同じような被害に遭う人をなくすため、果敢に立ち上がり、戦い始めます。その戦いによって自分の身近にいる人を暴力や虐待から守ることができたとしても、世界にはたくさんの傷ついた女性や子どもたちがいて苦しんでいることに気づきます。戦いには終わりがありません。大切なことは、被害者にも加害者にも、そしてそれを傍観する人にもならない、三角形の3つの角の真ん中にしっかりと立つことなんだよ回復の過程において、あなたが誰かに過去のトラウマ体験を語ることだけが、誰かを救うメッセージになるのではありません。それを生き延びたあなたの身体の動きや声や、あなたの創る詩や奏でる音楽や描く絵が、人に何かを伝えます。あなたが生きているだけで本当に十分なのです。私たち発達障害者は、生きてきた中でたぶん、人よりも少し多くの傷を抱えてきた。だから、つい戦いに身を投じてしまうこともある。もちろん、それは本当に切実な情熱と願いのこもった行動だ。だけど、もしそれがつらいとか、虚しいとか、疲れたとか思う瞬間があるのなら… ときどき、ゴールがあまりに遠く感じられたり、ますますゴールから遠ざかっていくような気がするのなら…私は、あなたは、重たい戦士の鎧を脱いでもいいはずだ。Upload By 宇樹義子そして、どこかに傷を抱え、それをなんとか乗りこなしている「ひとりの人間」として、もっと自由に、軽やかに生きたとき、きっといつか、私やあなたが、そして仲間たちが願った「ゴール」が近づいてくるんだと思う。
2017年07月10日3歳児健診の目的は?印象的なAくん親子を例に…出典 : 歳児健診は、子どもと保護者の、身体・心の健康を総合的にチェックする健診です。その中では、発達障害疑いの子どものスクリーニングをすることもあります。ただスタッフは、決して子どもを「発達障害」と決め付けたい訳でも、保護者の皆さんの育児を批評したい訳でもありません。成長に凸凹が見られる子どもには成長しやすい環境を、育児に悩む保護者には皆で協力し合う環境を、提案し、皆が幸せになれる方法を一緒に考えていきたいのです。私はこれまで保健師、看護師として、沢山の子どもと保護者の支援に携わってきました。この記事では、発達障害疑いのAくん親子を例に、スタッフである保健師の目線から3歳児健診の裏側をご紹介します。保護者の皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。スタッフにとっては当日の前から「健診」は始まっている出典 : 保健師にとって健診は、前日までに健診対象者全員の生まれてから今までの記録をチェックするところから始まります。記録には過去の新生児訪問・健診で保護者から直接得た、出生時の身長・体重、予防接種歴、3~4ヶ月健診、1歳半健診の情報が記録されています。「今度3歳児健診に来る予定のAくんは、生まれてから夜泣きがひどくて、3~4ヶ月の時にお母さんが5kgも痩せちゃってたのよね。1歳半の時は、言葉も出ていて、お母さんも笑顔だったわ。保育園には行かずに、3歳過ぎたら幼稚園に行く予定って言ってたけど、今は元気に子育てしてるかしら。」そんな風に、これまでの記録を振り返りながら、健診にやってくる親子の姿をイメージします。3歳児健診当日にお子さんの様子を見たときに、それがその子にとって順調な成長なのか、少し心配で様子見した方が良いのか、専門家の相談に繋げた方が良いのか…適切に見極めるためにも、あらかじめこれまでの成長の記録をチェックし、頭に入れておくことが大切なのです。そして3歳児健診当日!舞台裏のスタッフ達は…出典 : 健診には、小児科医、保健師、看護師、心理相談員、管理栄養士、歯科衛生士、保育士など(自治体により多少の差あり)が参加します。診前には、スタッフ全員で対象者の情報共有を行います。「Aくんは、生まれてから夜泣きがひどくて、○○○な子です。Bくんは、○○で、○○な子です。Cちゃんは、○○で、○○な子です。・・・」ようやく健診開始!健診で見ていることは…?出典 : 健診は、まずは保護者に対する問診から始まります。ここで、親子のニーズを把握し、必要があればアドバイスをします。生まれてから今までの大きな病気やケガ、睡眠や食事等といった生活のリズム、子どもの普段の状況、保護者の困っていること等を聞き、育児ストレスについて聞くこともあります。また、家で行った視聴覚検査の結果を確認します。子ども自身には、名前を聞いたり、ボタンで遊んでもらったり、丸を描いてもらったりして、その様子を観察します。問診は、保健師、看護師が行いますが、皆、小児保健の知識・経験があるので、誰がどの親子を担当するかはランダムに割り当てられることが多いです。もし保健師が問診をしていて、病気に関する悩みがあり、アドバイスは看護師の方がいいと思えば、その部分は看護師にアドバイスをもらうなど、皆、臨機応変に保護者のニーズに対応しています。さて、それではAくん親子との問診の様子を覗いてみましょう。保健師: Aくん、お名前教えてください。Aくん: Aです!(元気に名前を言える)あ!救急車!(他の子が持つトミカを見て走り出そうとする)Aくん母(以下Aママ): Aくん、ダメよ!あの救急車は、お友達のものよ!(走り出そうとするAくんを捕まえる)Aくん: イヤーーー(A母の手が緩むと、すぐに逃げて走り出そうとする)Aママ: はぁ(ため息)、いつもこうです。全然じっとしていられなくて(暗い表情)。保健師: そうなんですね。Aママ: この子、他の子と違うのかな。それか私の子育てがいけないのかしら……(涙を浮かべる)保健師: お母さん、頑張ってきたんですね。お母さんがAくんを大事に思っている気持ちは、Aくんにきっと伝わってると思いますよ。Aママ: そうでしょうか。保健師: 今まで沢山の子どもを見てきましたが、親の子どもへの愛は、必ず伝わっています。お母さんの愛も、Aくんに必ず伝わってますよ。誰か、子育てを手伝ってくれる人はいますか?Aママ: ありがとうございます(涙を流す)。夫は仕事で毎日夜遅くて、実家も遠方なので、ほとんど頼れません。どうやればAをちゃんと育てられるのか、分からなくて。保健師: そうなんですね。もし良ければ、後でゆっくり子育ての相談をお聞きすることも出来ますよ。Aママ: そんなことができるんですか。(悩みながら)お願いします。いろんな専門家が一堂に集まる機会出典 : 問診が終わったあとは、小児科医の健診、尿検査、歯科医の健診、管理栄養士の栄養相談を行います。疑問や悩みがあれば質問し、アドバイスを受けましょう。おそらく何千人という子どもを見てきただろう専門家のアドバイスを聞ける絶好の機会です。遠慮して聞かないなんてもったいないと思いませんか?先ほどのAくん親子の問診では、お母さんがずいぶん思いつめて悩まれていた様子。管理栄養士との栄養相談ではどのようなお話をするのでしょうか。管理栄養士: Aくんのご飯で困っていることはありますか?Aママ: 緑の野菜が嫌いで自分でよけてしまうので、刻んでカレーやハンバーグに混ぜています。刻み方が少し大きいと出してしまうので、かなり小さくしています。小さくしてしまえばよく食べてくれるので、そんなに困ってないです。管理栄養士: 頑張ってらっしゃるんですね(Aくんは敏感な子なのね、痩せ型だけど標準範囲内だし、食事の量と質は大丈夫だわ)。色や見た目での好き嫌いはこの年齢ではよくあることですけど、お母さんがそうやって工夫をされて食べることができているのは、素晴らしいと思いますよ。必要があれば個別相談も出典 : 健診では、身体の健康だけでなく、子どもと保護者の心の健康もサポートします。3歳児って、なかなか大人の言うことを聞きませんし、こだわりも強くてイヤイヤも多く、待つこと、じっとしていることが苦手です。どの子どものお母さんも悩み、一生懸命色んな声かけや方法で、しつけを行っています。Aくんのお母さんも同じように悩み、問診時に希望したため、心理相談員の個別相談を受けることにしました。心理相談員は、臨床心理士などが行っています(自治体により違いあり)。問診、栄養士相談を経て心理相談員の部屋にやってきたAくん親子。心理相談員は、ゆっくりと時間をとり、お母さんに普段のAくんとの生活や悩みを聞き、お母さん、傍らで遊ぶAくん、2人のやりとりの様子を観察し、今、お母さんが出来るAくんの育児アドバイスを行いました。心理相談員: Aくんの育児はいかがですか?Aママ: 毎日いっぱいいっぱいです。Aは優しい子なんですが、とにかくじっとしていられないんです。家ではおもちゃ箱を引っくり返したり、トミカを投げて遊んだりします。公園でも、割り込みをしたり、他の子を押しのけたりしてしまって。私は子どもの頃から大人しいタイプで、Aを産むまで子どもと縁がない生活だったので、Aみたいな元気な男の子の気持ちが分からないんです。どうしたらじっと遊べるようになるんでしょうか。心理相談員: そうなんですね。Aくんは、よく一緒に遊ぶお友達がいますか?Aママ: 私自身が社交的じゃないので、人に気を遣うのが苦手で、Aと2人で遊ぶことが多いです。幼稚園から通わせようかと思っていますが、まだ入園まで半年あるので、それまでは今の状態かな、と思っています。Aくん: (傍らで保育士と静かに遊んでいる)心理相談員: (Aくんがじっとして遊べないことが困っていると言っているが、ママの一番の困り事は「子育てを相談する人がいない」ことだな…)お母さん、ではまず今日から、Aくんと話をするとき、耳よりも目で見せるよう意識してみて下さい。例えば、割り込みをしてしまったら「割り込んじゃダメよ」と言うのではなく、割り込みをされたお友達が悲しんでいる姿を目で見せて「割り込みをしたらお友達が悲しいよ」と伝えるようにしてみて下さい。家でも外でも、言葉だけでなく、Aくんの目で視覚的に分かるよう意識してみて下さい。3歳児健診の目的は…Aくんには、ADHDの子どもの特性が見られましたが、発達障害は、1度の観察で分かるものではありません。Aくんはものすごく快活な子で、毎日の生活でエネルギーが発散できていないだけかもしれません。そして、そもそも私達は、診断することが目的ではありません。Aくんとお母さんにとって一番良い方法を、一緒に探していきたいと思っているのです。まずは、お母さんがAくんの子育てを一人で抱え込まないこと、それがスタートだと思いました。Aくんのお母さんは、心理相談員のアドバイスを活かして育児をしてみます、とおっしゃり、また3ヶ月後に個別相談のフォローアップを受ける予約をして帰宅されました。健診が終わっても保健師の仕事は終わらない!出典 : 健診後はスタッフ全員で、今日の健診の子どもや保護者、今後もフォローしたほうがいいと思われることに関して、情報共有をし、スタッフはそれぞれの専門性を生かして、意見を出し合います。Aくん親子のことも共有され、「まずは3ヵ月後、フォローアップの予約に来てくれるといいね」と皆が同意見でした。Aくんのお母さんが「言葉だけでない視覚的なしつけ」のアドバイスを活かせなくてもいい、まずは何よりも、一人で悩まないで欲しい、スタッフは皆、そう思っています。3歳児健診、怖がらずにこの機会を利用して出典 : 歳児健診は、皆さんが無料で平等に利用できる機会です。スタッフは、今までに、何千人という子ども達を見てきました。この健診をぜひ活用して、少しでも子育ての役に立てていただけたら、と思います。もし、健診日にスケジュールが合わない方は、別の日に変更することも可能です。お住まいの自治体にご連絡下さい。ぜひ、私達に気軽に悩みを相談して下さいね。
2017年06月28日神経発達症とは?出典 : 神経発達症(neurodevelopmental disorder)は、情動・学習能力・自己コントロール・記憶といった様々な知的活動に影響する、脳機能の障害です。この言葉は、米国精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に採用されたことで、広く知られるようになりました。『DSM-5』の日本語版では、正式には「神経発達症群/神経発達障害群(neurodevelopmental disorders)」という形で使われています。「神経発達症」と「神経発達障害」が併記されている歴史的経緯については、「DSM-5」の記事をご覧ください。以下、この記事では「神経発達症」で統一します。神経発達症には、いくつかの障害が含まれます。『DSM-5』では、以下のような障害がまとめて神経発達症と呼ばれています。・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害・限局性学習症/限局性学習障害(ディスレクシアなど、いわゆる「学習障害」)・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)・他の神経発達症群/他の神経発達障害群どうして、これらの障害がすべて「神経発達症」という一つの障害にまとめられるのでしょうか。それは、これらの障害は別々のものではなく、神経の発達阻害という共通の原因を持つ連続的な障害なのだという考え方に基づいています。「神経発達症」という言葉は、そうした連続的な障害の全体を指すための言葉です。近年、この考え方が広まりつつあります。神経発達症と発達障害は、どう違うの?出典 : これまで、自閉症スペクトラム障害・学習障害・ADHDをはじめとするいくつかの障害の総称として「発達障害」という言葉が使われてきました。発達障害という言葉も、神経発達症と同じように、いくつかの障害を統一的に理解するための言葉です。それでは、神経発達症はこれまでの発達障害と何が違うのでしょうか。結論から言えば、「神経発達症」は「発達障害」よりも広い範囲を指す言葉だと言ってよいでしょう。日本での「発達障害」の定義として、「発達障害者支援法」の中で使われている定義がよく知られています。それによると、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」です。発達障害者支援法(2004年)|文部科学省「政令で定めるもの」とは、ここでリストアップされたもの以外の「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害」です。発達障害者支援法施行規則(2007年) |厚生労働省「発達障害」という言葉の範囲は、それほどはっきりと決まっているわけではありません。実際には、リストアップされなかった障害も、必要に応じて「発達障害」に含められてきました。こうした多くの障害を、発生原因に注目してグループ化しなおすために持ち出されたのが「神経発達症」という言葉です。神経発達症の原因は?出典 : 障害と神経発達を関連付ける見方そのものは、『DSM-5』(2013年)で初めて現れたわけではありません。精神医学の中では、一部の障害が中枢神経系の発達阻害に関連しているという仮説が以前から持たれており、研究が進められてきました。近年とりわけ注目されているのは、神経発達症と染色体との関連です。たとえば、“Handbook of Neurodevelopmental and Genetic Disorders in Children”(編集部訳題『児童期の神経発達症・遺伝子疾患ハンドブック』)(初版1999年)では、個々の障害(自閉症やターナー症候群など、約20件)について、それぞれ神経の発達阻害をもたらす遺伝学的性質に関する研究がまとめられています。 Goldstein and Cecil R. Reynolds, eds., Handbook of Neurodevelopmental and Genetic Disorders in Children (New York: Guilford, 1999).こうした研究に関連して、昨年、大阪大学が発表したプレスリリースが話題になりました。この研究では、ある染色体の重複が多動に関連するということを、マウスを用いた実験で示すことに成功しました。もちろんこの研究は、神経発達症全体の原因を完全に明らかにするものではありません。しかし、原因の一部を明らかにする研究を積み重ねることによって、原因全体の解明に一歩ずつ近づいているということは確かです。 Fujitani, S. Zhang, R. Fujiki, Y. Fujihara, and T. Yamashita, ’A chromosome 16p13.11 microduplication causes hyperactivity through dysregulation of miR-484/protocadherin-19 signaling’, Molecular Psychiatry 22 (2017): 364–74.神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明|RESOU Research at Osaka Universityところで、障害の原因を遺伝学的なものに求める立場は、歴史的にずっと中心的だったわけではありません。過去には、「子どもの発達障害は、親の育て方が悪いせいだ」という立場が主流だった時期もありました。自閉症研究のパイオニアであるレオ・カナーも、はじめは自閉症の原因が母親の育て方にあると考えていました。すなわち、母親が子どもに愛情を十分に注げなかったとき、子どもの情緒的発達に悪影響が出て自閉症になる、という見方でした。この考え方は「冷蔵庫マザー」と言う象徴的な言葉とともに広まりました。 Kanner, ‘Autistic Disturbances of Affective Contact’, Nervous Child 2 (1943): 217–50.「冷蔵庫マザー」論は、およそ1970年代までは一世を風靡していました。このことにより、自閉症の親たちは長く批判され責められてきました。しかし、その後はこの見方は多くの専門家によって否定され、またカナー自身もこの見方を自ら放棄しました。そして、自閉症をはじめとする障害の原因は、親子の情緒的関係にあるのではなく、子どもの神経発達のありかた(さらには、その発達を方向づける遺伝学的性質)にあるのではないかという考えが広まり、現在の研究につながっています。DSM-5でも、おおむねこの考え方が採用されています。実際の診断・臨床の場面における神経発達症出典 : 実際の診断では、「自閉症スペクトラム障害」や「限局性学習障害」といった言葉が使われていて、「神経発達症」よりも細かい診断がなされます。これは、「神経発達症」という言葉でいくつかの障害をまとめるという考え方がまだ新しく、今まで使われてきた言葉が浸透しているためであると思われます。しかし、2013年に『DSM-5』が発表されてから数年が経ち、「神経発達症」という言葉も徐々に広まりつつあります。これから先は、診断の中で「神経発達症」が使われていくかもしれません。古荘純一、磯崎祐介『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』明石書店、2014年。もともと、『DSM-5』は精神科医の診断マニュアルとして使われています。また、精神科医が実際に使うことを通して問題点を発見し、改訂することによって、精神医学の発展が目指されています。「神経発達症」のような言葉を使って障害をグループ分けすることには、精神医学を単なる精神科医の「カン」ではない体系的なものにする上で大きな意味があります。いくつかの障害に共通点があることがわかれば、それに対するアプローチを考えるにあたって大きなヒントになります。たとえば、自閉症スペクトラム障害は本人のやる気の問題なのか、それとも親の育て方の問題なのか、はたまた染色体の状態に関係しているのか――これがわかれば、障害のある子どもに対して周囲が何をできるのか、あるいは何をできないのかを知ることができます。神経発達症は治るの?出典 : 神経発達症には、根本的な治療法はありません。近年の研究によって、神経の発達阻害を引き起こす因子がいくつか特定されつつあります。しかし、これは神経発達症の原因の一部がわかるにすぎません。また、研究のレベルでわかったことが臨床の現場に応用されるまでには、さらに多くの研究が必要になります。「治す」ことは難しいですが、症状や困難を軽くすることはできます。その具体例として、ここでは3つの例を挙げます。1.環境調整本人の能力や特性に合わせて、接し方・環境・ルール・課題を変えることができれば、障害のある子どもが感じる困難は軽くなります。これまでも行われてきた「合理的配慮」は、神経発達症のある子どもにももちろん有効でしょう。「神経発達症」には様々な障害が含まれていますので、合理的配慮を考える上では、一人ひとりの特性に合わせるということが一層重要になります。2.療育とトレーニング本人の特性に合わせてトレーニングを行い、子どもが認知や行動についての能力を習得できれば、社会生活において感じる困難が軽減されます。この療育についても、今まで行なわれてきたものが同じく有効でしょう。3.薬物療法神経発達症に関連するいくつかの症状は、投薬によって症状を抑えることができます。重要なことは、投薬によって神経発達症そのものを治療できるわけではなく、症状を緩和することと、症状によって生じる不利益を避けることを狙っているということです。投薬による症状緩和についても、これまでと同じように、主治医の先生によく相談することをおすすめします。ここまで見てわかるように、神経発達症に対する向き合い方は、基本的にこれまでの発達障害と大きく変わりません。変わったのは、精神科医が使う診断マニュアル(DSM-5)で使われる名称にすぎません。神経発達症という名前がつくことそれ自体で、障害のある子どもたちの症状が変わったり、困りごとが軽くなったり重くなったりするわけではありません。このことは、神経発達症について考える上で、非常に重要な点です。おわりに出典 : 「神経発達症」という耳慣れない言葉に戸惑っている方は、少なくないでしょう。たとえば、お子さんに自閉症スペクトラム障害があって、そのお子さんの障害を説明するとき、「自閉症スペクトラム障害」「発達障害」「神経発達症」をどのように使い分ければ良いのでしょうか?重要なことは、障害の名前が変わっても、子どもたちの症状や困りごとまで変わるわけではないということです。とりわけ、発達障害は一人ひとり症状が少しずつ違うということが、これまで知られてきました。神経発達症という言葉が登場しても、そのことは同じです。一人ひとりの特性と能力に合わせたサポートが求められます。精神医学はまさに発展の途上にあり、今後も多くの言葉が新たに広まることが予想されます。その新しい専門用語は、実際のサポートにあまり関係ない場合もあれば、サポートのあり方を大きく変える場合もあるでしょう。簡単ではありませんが、こうした見極めが大切です。
2017年05月30日歩いたり言葉を覚えたり、さまざまなことをグングン吸収して成長していく1歳〜3歳の時期。叱ることも多くなってくるけれど、できるだけたくさん褒めてあげたいですよね。でも、まだあまり言葉を理解できないこの時期に、どう褒めてあげたらいいのか迷ってしまうことはありませんか?今回は、1歳〜3歳児の上手な褒め方をご紹介します! 「いい子だね〜」ばかり使ってしまう…という方もぜひチェックしてみてください。“いい”褒め方とは?“いい”子どもの褒め方は、「自信をつけてあげる褒め方」です。いい褒め方をされて育つと、自分に自信をもって行動できる子どもになっていくといわれています。1歳〜3歳の時期は、「まだよく理解できないだろう」と受け答えも適当になりがちですが、大人が思う以上に子どもは多くのことを感じているので、きちんと対応してあげるのが理想です。そんな、新しいことをどんどん吸収していく1歳〜3歳児を褒めるときのポイントは3つあります。■ポイント1:とにかく一緒になって喜ぶまだ言葉を覚えている途中の小さな子どもには、言葉で褒めるよりも態度や表情で示してあげることが大切です。何かできたときには、“一緒に喜ぶ”。これだけで十分“いい”褒め方につながっていきます。この時期に「嬉しい」という感情を共有することで、もう少し大きくなってきたときにも「褒められると嬉しい」「一緒に喜んでもらえることが嬉しい」と思えるようになっていくのです。■ポイント2:「いい子だね」よりも「頑張ったね」「いい子だね」という言葉かけをしたときのことを振り返ってみると、大人の都合に合わせて、静かにできたりじっとしていられたりしたときが多いのではないでしょうか?“いい子”の定義を今一度考えてみて、本当に“いい子”だと褒める場面なのか、それとも“頑張って”くれていたのかを判断して、褒め方を変えるようにしましょう。■ポイント3:同じ言葉も年齢に合わせて進化させていく何かができたときに伝える「できたね」「頑張ったね」の言葉も、1歳台には言葉よりも態度や表情重視で伝え、3歳の言葉がわかるようになってくる頃には、具体的に何が褒められているのかを伝えるといったように、進化させていくのがポイントです。1歳と3歳では、理解できる言葉に大きな差があるため、少しずつ子どもの成長に合わせて切り替えていくようにしましょう。年齢別子どもにかける褒め言葉例■子どもにかける褒め言葉例:1歳何かができたとき:「やったね!」「できたね!」挑戦したけどできなかったとき:「頑張ったね」【コツ】子どもにとって最大のご褒美となるのが、ママやパパの笑顔です。褒めるときには、満面の笑顔で「やったね!」「頑張ったね」と少し大げさなくらいに褒めてあげると子どもにもしっかり伝わります。褒めるときは、短くパッと伝えられる言葉がおすすめです。■褒め言葉例:2歳“自分で”何かが達成できたとき:「できたね!」「よく頑張ったね」静かにしてほしい場面で静かにできた、など大人の言うことが聞けたとき:「ありがとう」【コツ】イヤイヤ期真っ只中の2歳児は、あれこれ自分でやりたがるものの、結局できなくて親子ともにイライラしてしまう場面も多いですが、何かを自分で達成できた時には目一杯褒めてあげると喜びます。また、静かにしてほしい・じっとしていてほしい、という大人の都合に合わせて我慢してくれたときには「いい子だね」よりも、「ありがとう」とお礼を伝えるようにしましょう。「ありがとう」という言葉も、ママやパパから笑顔で言われれば、ステキな褒め言葉になりますよ。■褒め言葉例:3歳上手にできたとき:「上手にできたね!頑張ったんだね」お友だちに親切にできたとき:「◯◯できてえらかったね」【コツ】いろいろなことが上手に自分でできるようになっていく時期には「“上手に”できたね」と褒めてあげるのもおすすめです。同時に、「できた」という結果だけでなく、できるようになるまで頑張ってきた経過に着目してあげると、「できないことも頑張って挑戦してみよう」という意欲につながっていきます。また、言葉も覚えてくる頃なので、具体的に何について褒めているのかを言葉にして、「どの行動が褒められているのか」をしっかり伝えることも大切です。性別によって褒め方に違いはあるの?「男の子だから◯◯」「女の子は△△」といった決めつけはよくありませんが、まだ小さい1歳〜3歳でも男女の性別による違いが見られることも多くあります。ここでは、よく見られる傾向から、男女別の褒め方のコツをご紹介します。■男の子に見られる傾向興味や関心の方向があちこちにいってしまう男の子の場合、褒めたい場面ですぐに褒めてあげることがポイントです。また、かける言葉も「すごいね」「頑張ったね」「えらいね」など一言にまとめて、褒められても嬉しそうにする姿が見られなくても気にしないことも大切です。男の子は、褒められたそばから違うことに興味がいっていて、褒められた余韻に浸る間もなく次のことに集中している様子もよく見られます。でも聞いていないようで、褒めてもらえているとちゃんとわかっています。反応が薄くてもできるかぎり褒めてあげるようにしましょう。■男の子に見られる傾向実は女の子の場合は、基本的な褒め方を押さえておくだけでも十分対応ができるため、女の子特有の褒め方パターンなどはあまり紹介されていません。言葉が出てくるのが早い子が男の子と比較すると多いため、しっかりお話できるようになってきたな、と思ったら2歳頃から「◯◯ができたね、頑張ったね」など具体的に伝えてみるようにしましょう。また、「“わたし”を見て!」という欲求が強い子も多いので、「◯◯ができた〜ちゃん」「△△を頑張った〜ちゃん」というように“できたこと”“頑張った経過”とともに、存在そのものを褒めてあげるのも女の子を褒めるときのコツのひとつです。1歳〜3歳頃は、できることも増えてくる時期ではありますが、イヤイヤ期でもあるため、「どう褒めたらいいかわからない」と悩むことも多いものです。「褒めなきゃ」と気負わず、一緒に成長を喜び、笑顔で接してあげるだけでも十分伝わります。「できたこと」「できるようになった過程」「できなくても挑戦したこと」それぞれのポイントで褒めてあげられるように、子どもの様子を見てあげるようにしましょう!
2017年05月28日先週末(2017年5月21日)、NHKスペシャルで発達障害の特集が放送された。( NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~」 )番組内では、最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、発達障害の人にはどんな風に世界が見えているのかを映像化したり、発達障害の人がどんな悩みを抱えているか、ひとつひとつの事例を丁寧に紹介。発達障害でない人にとっても、とてもわかりやすい形で解説していた。筆者は発達障害の子を持つ親として放送を楽しみにしていたが、期待を裏切ることのない、とても良い内容だったと思う。当事者の親として私なりの感想をまとめてみた。■やっぱり映像の力はすごい!まず、「おぉ!」と思ったのは、発達障害当事者の視点を再現した映像力だ。発達障害は外見からはわかりにくい障害だ。それゆえ、よく「我慢が足りない」「わがまま」などと言われ、なかなか理解してもらえないことも多い。だが、今回の番組の映像化により、一般の人にとっても発達障害の人が見ている世界がどんなものかわかり、ずいぶんと認識が変わったのではないだろうか。■もしかして、あれが息子の見ている世界なの…?私自身も、大きな発見があった。自閉症スペクトラムでADHDの傾向もありと言われている筆者の4歳の息子は、集団に向けた一斉指示が入りにくい傾向がある。確かに同世代と比べると、言葉の理解度は低いところもある。だが、決して言葉の意味が分からないというわけでもない。その証拠に、療育などで先生が目の前で1対1で説明すれば、指示に従うことができる。番組では、教室でいろいろなものが気になってしまい黒板に集中できない女の子の例や、カフェの雑踏の中で相手の話がうまく聞き取れない女性の例などが紹介されていたが、あれが息子が見ている世界なのかもしれない……と考えさせられた。今、保育園のクラスで集まる時、息子はたいてい後ろではじっこの方に配置されている(おそらく、もう一人の先生がフォローに入りやすいという配慮でこの場所になったのだと思う)。もちろん先生方がいろいろ考えた上での場所であり、それもありがたいのだが、先生が遠くなると先生の声はますます聞きとりにくくなってしまうし、注意も向けにくくなってしまう。番組を見て、例えば、集まりの時は思い切って席を先生のど真ん前に配置したら、注意力が変わってくる可能性もあるのでは? などと、息子をとりまく環境について、改めて見直すきっかけをもらった気がした。「この子には無理」「この子はやる気がない」ではなく、子どもの状態に合わせて環境を変えてあげれば、解決できることがもっとあるかもしれない。そして、息子ももっと今より楽しい生活が送れるようになるかもしれない。■みんなが楽になれる配慮は、障害にかかわらず真似したいまた、番組にはモデルの栗原類さんをはじめ、発達障害と診断された当事者たちが出演していた。みな、なんらかコミュニケーションに苦手を抱えており、スタジオのセットをより心地よい環境に変えたり、ずっと相手の目を見ないで話してもOKというルールを作ったり、ぬいぐるみを抱っこして気持ちを落ち着かせるという工夫もされていた。これ、発達障害にかかわらず、もっと広げてもいいのでは?だって、程度の差こそあれ、健常の人だってコミュニケーションで苦手なことを抱えていると思うのだ。健常の人だって、思った以上にコミュニケーションで必死に気をつかって戦っていると思うのだ。■どこからが個性で、どこからが障害?自閉症スペクトラムのスペクトラムとは、連続体のことだ。よく、虹に例えられる。虹は微妙に色が変わっていくが、その境界線ははっきりせず、基本的には連続している。 「今(番組で)見てきたような特徴は、どんな人でも多かれ少なかれありますよね。問題は、それがどのくらい程度が大きいのかということと、一番重要なのは、それによって自分やまわりの人にどれくらい生活に支障があるかということだと思うのです。逆に言うと、本人に特徴が強くても、まわりが全面的に受け入れてくれるような生活環境ならばあまり苦痛にならない場合もあるんです。(中略)本人と環境との関係というのが大きいですよね」出典: (NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~」番組出演者・本田秀夫医師のコメントより) このことは、以前取材した放課後デイを経営されている(株)アイム代表の佐藤典雅さんの「発達障害の子育ても健常児の子育ても、本質的には何ら変わりはない」や「普通って何だろう?」という話に通じるところがあった。 参考:【連載】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 出演者たちも、「発達障害というものでひとくくりにしないでほしいこと。一人一人の特徴は違うということ」を繰り返し伝えていたように思う。発達障害に目を向けるということは、一人一人の特性にきちんと目を向けるということ。それはすべての人へとっての、生きやすい環境作りにつながるのではないだろうか?■「社会の役にたつから認めるっていうのは、ちょっと違う気がする」今回の番組では、自分のことをきちんと話せるような高機能な人たちを中心に、発達障害が紹介されたように思う。後半では、発達障害の人の能力に注目した就労支援の話にまで展開した。もちろん、その取り組み自体はとても素晴らしいことだと思う。だが、今回はあまり紹介されなかったが、発達障害の中にはどんなにがんばっても就労が困難な人たちもいるのに…と、ちょっとモヤッとしたところで、有働由美子アナウンサーのこのひと言。「(発達障害の)能力が注目されると、能力があって社会の役にたつから認めるっていうのがあって、それもまた違うのかな…?と思って」ちょっとめでたしめでたしで終わりそうな流れの中、こういう意見をしっかりはさんでくれる有働さんのコメント、個人的にとてもうれしかった。NHKが1年かけて取り組んでいくという「発達障害プロジェクト」、今後はぜひ、自己表現がまだうまくできない子どもや、知的障害を伴う発達障害、コミュニケーションをとることが難しいような重度の自閉症の世界なども、取り上げてほしいと思っている。そして、司会はぜひ有働由美子アナウンサーとイノッチのコンビに続けてほしいと願っている。文:まちとこ出版社N 【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年05月26日人口の9割が「定型発達症候群」!?NHKが発達障害プロジェクトをスタート「およそ20年前に、アメリカの研究所が残した報告から、全人口の9割以上がある深刻な症状にあることが判明しました。」Upload By 発達ナビニュースとあるニュース番組で、キャスターが紹介した「衝撃のレポート」以下のチェック項目に一つでも当てはまったら、人間関係に深刻な問題を引き起こしかねない、「定型発達症候群」の可能性があるというのです。・暇な時はなるべく誰かと一緒に過ごしたい・集団の和を乱す人を許せない・社会の慣習にはまず従うべきだ・はっきりと本音を言うことが苦手・必要なら平気でウソをつけるUpload By 発達ナビニュース…実はこれは、NHKが制作した架空のニュース動画なんです。NHKが2017年5月から1年をかけて展開する、「発達障害プロジェクト」のページ上で公開されています。Upload By 発達ナビニュース「発達障害プロジェクト」「定型発達症候群」という言葉にびっくりした人もいるかもしれませんが、これは、医学上の病名でも、公式に定められた障害の名前でもありません。1998年、発達障害のひとつASD(自閉スペクトラム症)と診断された海外の一般女性が、ASDに関するさまざまな報道への皮肉の意味で「創作」した言葉が発端であると言われています(諸説あり)。「定型発達」とは、発達障害と対比して、心身の発達が「定型(平均的)」という意味で、「発達障害ではない人」をさす言葉として用いられます。つまり「定型発達症候群」とは、発達障害の人から、いわゆる「普通の人」を見た視点です。でも、「普通」ってそもそもなんでしょうか?全人口の大半の人が定型的(平均的)に感じているから「フツウ」?それじゃあ、違った感じ方をしている人は「フツウ」ではないの?そんな問題提起の意味も込めて、冒頭の架空のニュース動画はつくられました。NHKの発達障害プロジェクトでは、これまで当たり前に考えられてきた「普通」の概念にとらわれず、発達障害のある人々の感じ方・考え方を様々な角度から紹介していくことで、発達障害のあるなしに関わらず、一人ひとりの多様な感じ方や生き方への理解の促進をめざしていきます。NHKスペシャル、あさイチ、ハートネットTVをはじめ、番組横断で、継続的に発達障害を取り上げていくことが今回のプロジェクトの特徴です。知ってるようで知らない発達障害のこと、みんなの投稿で“トリセツ”をつくろうUpload By 発達ナビニュース生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)によって、社会生活に困難が発生する発達障害。「なんとなくは知っているけど、結局どういうことかわからない」「漠然としたイメージはあるけど、何に困っているのかわからない」という方も少なくないのではないでしょうか。プロジェクトページでは、「この際、はっきり知っておきませんか?」という呼びかけと共に、発達障害の定義や特徴、困りごとなどが、イラスト付きでわかりやすく紹介されています。コンテンツ監修は、LITALICO発達ナビの監修も務める、鳥取大学大学院の井上雅彦教授です。また、「みんなで作る発達障害の“トリセツ”」と題したコーナーでは、日常生活の様々な場面での困りごとや対応策を、発達障害の当事者やその家族、学校や職場などの周囲の人々の投稿を通して集め、公開していく企画もスタート。「生活・暮らし」「対人関係」「学校・職場」と、大きく3つのカテゴリーの中で、様々なテーマに対するみなさんの投稿を募集しています。サイトオープン時の2017年5月16日現在では、事前に集めた投稿の中から「聴覚過敏」に関するエピソードを18件公開しています。以下のリンクの投稿フォームから、それぞれのテーマに対する体験談を随時投稿することができます。Upload By 発達ナビニュースみんなで作る発達障害の"トリセツ"投稿フォーム5/21(日)21:00から「NHKスペシャル」で生放送特集!Upload By 発達ナビニューススペシャル, 「発達障害 ~解明される未知の世界~ (仮)」ウェブ上のプロジェクトページと連動して、NHKの様々な番組で、継続的・多角的に発達障害について取り上げていくのが、今回のプロジェクトの特徴。テレビ特集の第1弾は、NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~ (仮)」。初回放送は、2017年5月21日(日) 午後9時00分~9時59分です。これまで、主に社会性やコミュニケーションに問題がある障害として知られてきた発達障害ですが、最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、生まれつき、独特の「世界の見え方・聞こえ方」をしているケースが多いことがわかってきました。多くの人にとっては何でもない日常空間が、耐えられないほどまぶしく見えたり、小さな物音が大音量に聞こえてパニックになったり…NHKスペシャルでは、こうした発達障害当事者の方々の独特の感覚・認知や、それによって生じる生きづらさを映像を通して再現し、「目に見えにくい」障害の実態を伝えることに挑戦します。番組中では、大阪大学と東京大学が共同研究・開発した「自閉症知覚シミュレータ」も登場。発達ナビでは、当事者やご家族の方をお招きしての体験会兼取材・撮影に協力しました。今回のNHKスペシャルの最大の特徴は、生放送・リアルタイムで視聴者からのコメントを紹介しながら展開していくこと。たとえ同じ診断名でも、一人一人の特性や感じ方は、本当に様々です。十把一絡げに「発達障害」をまとめてしまうのではなく、一人一人の多様な暮らしぶりや思いを紹介していくことこそが、発達障害への理解・関心を広げていく上で大切だという趣旨からの企画だそうです。ご自分の経験について伝えたい思いやご経験、発達障害に対する疑問や悩みがある方は、ぜひ以下のメールフォームからご投稿ください。スペシャル, 発達障害特集メール投稿フォームUpload By 発達ナビニュース 「発達障害プロジェクト」また、NHKスペシャルの生放送終了直後から、「発達障害プロジェクト」ページ上でライブストリーミングが始まり、番組のアフタートークが催されるようです。ここでは、生放送中に紹介し切れなかった視聴者からの投稿を追加で紹介していくとのこと。あなたの投稿も紹介されるかも…!?発達ナビTwitterでNHKスペシャル&アフタートークを実況中継!発達ナビ編集部では、5/21(日)21:00からのNHKスペシャル及びアフタートークを実況中継予定!Twitterをご利用の方は、ハッシュタグ #NHKスペシャル #発達障害 でぜひ感想をご投稿ください。番組前の予習に、発達ナビの関連記事はこちら!プレスルーム: 5月21日(日)放送 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」の制作にLITALICOが協力しました。
2017年05月17日私って発達障害?気づいたのは42歳の時でした。出典 : 子どもの発達障害の場合、まず親や周りが気づいて、子ども自身は何の検査をされているのかわからないまま、診断を受けることが多いと思います。診断を聞くのも受け入れるのもまず親で、そこからタイミングを図って告知するというのがよく見られる流れではないでしょうか。それに比べて大人の場合は、仕事や日常生活で「なんだか変だな。どうしてうまくいかないのだろう?ひょっとして『私って発達障害?』」と疑ったうえで、自分の意志で検査を受けることが多いと思います。私は娘がアスペルガー症候群と診断されてから2年後、42歳の時にコンビニでのバイト中にパニックを起こしたのがきっかけで、発達診断を受けることになりました。しかし、その結果を受け止め、自身のことを理解するまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。9年の付き合いの主治医の診断は・・・出典 : 当時の主治医は、それまで9年にわたって私を診察してきてくれた精神科の先生でした。でも、その主治医は発達検査の結果を見て「うーん、ヨーコさんが発達障害とは思えないんだけどなぁ」と言うだけでした。このままじゃらちが明かないと思った私は、同じ病院内にいる娘の主治医に事情を話して、検査結果を見てもらいました。ざっと目を通した先生は「ああ、アスペルガー症候群ですね」と言いました。その後、私の特性も説明してくれてとても納得したのですが、それを主治医に伝えても「そうかなぁ?」とまだ納得できない様子。私の主治医の先生は発達障害には詳しくない様子で、長い付き合いの間でも先生の口から「発達障害」という言葉を聞いたことがありませんでした。だから、今まで長い間見てきて私の様子から「発達障害とは思えない」と言ったのではないかと思っています。私はあきらめずに先生やカウンセラーに「こんな困りごとがあってずっと苦しかった」、「娘が診断を受けたときの説明がそのまま私に当てはまる」と訴え続けました。そして「精神障害者手帳を取りたい」と先生にお願いしたのです。その時出してもらった診断書を見ると「広汎性発達障害」という診断名が記載されていました。こうして私は診断書を得るところまでこぎ着けることができました。しかし私は、ちゃんとした診断の上で広汎性発達障害と言われたのか疑問を抱くことになりました。それは診断が出たとはいえ、発達障害に詳しくない先生からの診断であることと、半ば無理やり勝ち取った診断のように感じられたからです。私が「ちゃんとした診断」を求めたわけ出典 : ひとまず診断を受けた私は、仕事を辞め、障害者福祉を受けながら暮らしていく道を選ぶことにしました。そんなときに、相談支援員から気になる話を聞きました。ある病院に発達障害に詳しい医師がいて、その病院で発達検査を受けたら、ものすごく詳細な所見をもらえて、説明の時も自分の特性や向いている職業まで教えてくれるらしいというのです。私はその"完璧"とも言える診断にひどく心惹かれました。「広汎性発達障害」の診断は出ていたものの、改めて発達障害に詳しい医師にきちんと診てほしいと思っていたからです。それは、「あなたはこういう人ですよ」という自分に関する説明書が欲しかったからでもあります。それまでの人生は謎だらけでした。どうしてみんなのように友達と打ち解けて遊ぶことができるのか、どうして他の人は分からないことは適当にしておいたまま勉強していい成績をとれるのか。社会に出てからは、なぜ他の人は会社の方針に溶け込んで洗脳されたようにふるまえるのか、なぜ自分はみんなと同じように仕事ができないのか、なぜミスばかり繰り返してしまうのか…。私はなぜ、他の人と同じようにできないのかと何度何度も悩んだのです。ずっと苦しかった。ずっとさみしかった。その診断があれば、今までの謎が解けてこれからの人生が開けるかもしれないと思ったのです。そして、期待に満ちあふれてその病院に転院することしたのです。「こんなことまで聞かれるの!?」驚きながらも、その専門性に感動!出典 : その病院は今までとは違うところばかりでした。事前に渡される問診票では、ハイハイした月齢や喋りだした月齢など乳幼児期の様子も事細かく聞いてきます。「人の臭いや物の臭い、ものの見え方や感触や音に極端な興味を持つことが、これまでにありましたか?」など、0歳から5歳くらいまでの成育歴の質問が多いので、親に見せて聞きながら回答を書きこみました。病院に問診票を持っていくと、それを見ながら「何か好きな素材や逆にこれは受け付けないというものはありましたか?」「学校では得意・苦手な教科は何でしたか?」「忘れ物は多かったですか?」「臭いや光、味に敏感ですか?」「仲の良い友達はいますか」など次々と追加の質問を受けました。その答えを聞いた先生は納得したように頷き「今ついている診断で間違いないでしょう。それに加えて注意欠陥障害もあるでしょうね」と言われました。この診察に私は感銘を受けました。というのは、質問は自閉症の子どもに特有の症状について的確に尋ねられており、追加の質問でも問診の答えを確かめるように進めてゆくことが分かり、先生の専門性の高さに感心したからです。ただ正式な発達検査を受けることはできませんでした。これは発達検査に使われるWAIS-Ⅲは、一度受けたら次は2年間は空けなければいけない決まりがあるためです。療育手帳取得挑戦の際にすでにWAIS-Ⅲを受けたことがあった私は、この2年間のインターバルが経過していなかったのです。それでもなお、憧れの診断にこだわる私に、ソーシャルワーカーはこう言いました。「とことん気になる、知りたがるというのは、生きづらさにつながるアスペルガーの特性からきてると思う。憧れの診断書が手に入らなかったら次に何が欲しいの?」その問いは、私が医療に何を求めているのかを問うものでした。自分の説明書はやっぱり欲しいけれど、2年待たなければならないのはどうしようもない。その現実をこの問いで突きつけられたのです。このとき初めて前を向いて、いま困っていることを何とかしてもらうことが大事だと思うことができました。その上で私の答えは「今の心のしんどさをやわらげてほしい。発達障害であるという視点から二次障害の精神症状やうつの治療もしっかりしてほしい」でした。こうして、先生の専門性を信じてその病院に通い続けることを決めました。自分の特徴を知ることで、今までの謎が解けてゆくように出典 : 今は二次障害である精神症状やうつの治療を受けつつ、自分の困りごとの原因は何なのか、先生の解説で謎が解けていっている感じです。そして生きづらさの解消のため、それまで飲んでいた薬は大幅に見直され、ADHDの治療薬のストラテラを服用することに。新しい主治医を始め、ソーシャルワーカーなど理解ある人に関わってもらっているおかげで、自分の特性が生活や仕事のどんなところに影響を与えているのが理解することができるようになってきたのです。自身の弱点や、疲れ切ってキレてしまう前の予兆なども分かるようになり、意識して自分をコントロールすることできるようになったと感じています。診断を生かしていくために出典 : 発達障害の診断を受けたら、具体的な自分の特性をじっくりと説明してもらうことをお勧めします。そうすることで、今までの生きづらさの理由が氷解し、自分の特徴をしっかりと理解することができるはずです。その上で、医療や福祉の支援を受けて理解者・支援者を増やし、困っているときは助けてもらうことができれば、自分の直面した困難にくじけてしまうことも防げるはずです。繰り返しになりますが大切なのは、診断を受けっぱなしで終りではなく、自分の特徴を知り、より自分をコントロールできるようになることです。診断を受け、なにが自分の生きづらさを作っているのか。自分で工夫できるところはあるのか。どんなサポートを受けたらいいのか。それを知ることが、生きづらさの解消につながるのではないでしょうか。
2017年04月28日よく聞く、「小学校は別世界」という言葉出典 : 発達障害のある子どもを育てている親にとって、小学校入学というステージはとても不安なものだと思います。それまで楽しく遊んでいれば良かった幼稚園・保育園の頃と違い、学習という活動がメインとなるのが大きな理由でしょう。また、幼稚園や保育園では手厚い支援をしてもらい、とにかく褒めて育ててもらえていた状態だったお子さんにとって、集団のルールを守ることに重きが置かれている小学校では、息苦しさを感じることが多いのです。幼稚園・保育園ではのびのび楽しくやっていたのに、小学校に入ってから急に自信を失うようになって…というようなお話を、私は幾度となく発達障害児の保護者から聞いてきました。ですから、発達障害のある息子の小学校入学は私にとって緊張感が漂うものでもあったのです。今のところ、息子は小学校の先生たちに手厚く支援していただいているおかげで、毎日楽しく通っています。けれどもやはり、小学校生活のさまざまなことで混乱をしている様子。それは、幼稚園時代にはなかったことでした。トイレに行ってはいけない!?息子の混乱例えば、小学校から帰ってきた息子が、こんな相談をしてきたことがあります。「今日ね、授業中におしっこもらしそうになって。先生にトイレ行きたいです!って言ったんだ。そしたらね…」Upload By モビゾウ「『小学校ではトイレは休み時間に済ませましょう』って先生に言われたの。それなのにね…」Upload By モビゾウ「先生は休み時間に済ませましょうって言ったのに、『はい、じゃあ行ってらっしゃい』って言われたんだよ。意味が分からないでしょう?」なるほど、先生は「本当は休み時間に済ませるのがルールだけど、今日は特別に行ってもいいよ」ということを言いたかったのでしょう。けれども息子は、この「今日は特別に」という部分が先生の言葉から読み取れないのです。先生の言葉をそのまま理解するため、「行ってはいけない」「はい、行ってらっしゃい」という言葉を同時に言われたことに混乱してしまったのでした。Upload By モビゾウさらに息子は、「小学校ではトイレは休憩時間に済ませるってことは、授業中にお腹痛くなったり気持ち悪くなったりしてもトイレに行っちゃいけないのかあ。どうしようどうしよう。お腹痛くなったらどうしよう」と悩み始めたのです。息子の発達障害の特性の一つなのですが、言外の意味を読み取るのが苦手なだけではなく、思考が0か100の両極端に偏りやすいのです。息子は「トイレは休み時間に済ませましょう」という先生の一言を、「具合が悪くても、何があっても、授業中のトイレは我慢しなければならない」という風に、極端な形で解釈してしまうのでした。無数にある集団生活のルール。それを把握することの困難さ出典 : このように、小学校には集団生活を円滑に送るための無数のルールが散らばっています。さらに、そのルールには例外や変更が沢山あるのですが、発達障害児にはそれを把握することがなかなか難しいのですのびのび遊ぶこと、褒められることがメインだった幼稚園時代に比べて、小学校に入ると「こういうルールがあるからダメ」ということが増えていきます。発達障害児は、なんとなく周りとうまくやれる程度にルールを把握するということが苦手です。小学校が別世界というのはこういうことだったんだな、と毎日混乱する息子を見ながら、私もなんとなく理解できたのでした。
2017年04月20日「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、発達ナビでアンケートを実施厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、LITALICO発達ナビでは発達障害に関する意識調査を実施しました。ご協力してくださった皆様どうもありがとうございました。この記事では、調査結果の一部を抜粋しお伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害当事者:101名、発達障害の子どもをもつ保護者:788名の回答を集計しました。(調査期間:2017年3月7日~3月15日)※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100 にならない場合があります。発達障害児の子育てで困り感を感じている保護者は約8割お子様の発達障害の特性と思われることによって、保護者であるあなたご自身は、どの程度日常生活で困っていますか?という質問に対して、「とても困っている/やや困っている」と答えた保護者は80.7%、「全く困っていない/あまり困っていない」と答えた保護者は19.3%と、日常生活に困りを感じている保護者は8割を超えました。Upload By 発達ナビニュースどういったことに困りを感じているかに関しては、「障害の特性ゆえの言動が周囲から理解されず、しつけをしていないといつも白い目を向けられ精神的に追い詰められる場面が多い(ASD・6~12歳の親)」「他人について行く、母子分離が難しい、訓練会やセンターでも体操や手遊びを嫌がる(ASD・3~5歳の親)」「本人の生きづらさを変える手助けをしてやりたいが、その方法がわからない。気持ちが不安定になり荒れているのを見ても、寄り添って落ち着くのを待つしかできなくて苦しい。(ASD・13歳以上の親)」「将来が心配。毎日息子が朝ブツブツ文句を言って大変。何でも決めつける。こだわりが強すぎて疲れる。(ADHD・6~12歳の親)」「指示が入りにくいため、同じ事を何度も伝えなくてはいけないが、上手く伝わらない。思い立つと行動してしまうため迷子になることが多い。(ASD・6~12歳の親)」などといった意見があげられました。発達障害の診断を受けると楽になる?苦しくなる?お子様が発達障害と診断・告知された後の心境に、どのような変化がありましたか?という質問に対しては、「とても楽な気持ちになった」が12.1%、「やや楽な気持ちになった」が32.9%、「特に変化はなかった」が11.5%、「やや苦しい気持ちになった」が21.1%、「とても苦しい気持ちになった」が22.5%と、楽な気持ちになった親御さんは計44.9%、苦しい気持ちになった親御さんが43.5%とほぼ同数になりました。Upload By 発達ナビニュース楽な気持ちになった理由としては、「子どもの行動の理由がわかったから(ASD・13歳以上の親)」「今後の子育てをどのように進めていけばよいかがわかったから(ASD・3~5歳の親)」「自身の育て方に問題があったのではないことがわかったから(ASD・6~12歳の親)」などが挙げられました。苦しい気持ちになった理由としては、「もっと早く診断されていればよかったと思ったから(ADHD・13歳以上)」「子どもの将来が心配になったから(ASD・3~5歳)」などが挙げられました。周囲の無理解を感じる理由は…お子様の発達障害の特性について、周囲の人たちから理解されていると思いますか?という質問に対しては、「理解されている」が50.7%、「理解されていない」が49.3%と、ほぼ同数となりました。Upload By 発達ナビニュースどういうときに理解されていないと感じるかに対しては、「見た目がふつうに見られるから(ADHD・6~12歳の親)」「厳しく躾ければやれるようになると思われている(ASD・6~12歳の親)」「本人の困り感が見た目には分かりにくく、助けてもらえない。(ASD・6~12歳の親)」「勉強もでき、多動もないため一見なんともなく見えるため、親が気にしすぎだと考えられがち。(ADHD・6~12歳の親)」「見た目は普通なので、親が甘やかしているからワガママなだけなんじゃないかと思われる。(ASD・3~5歳の親)」などといった意見が挙げられました。発達障害のある子どもの保護者は、世間の発達障害に対するイメージをどう思ってる?発達障害に対する世間のイメージと実態にギャップを感じることはありますか?という質問に対しては、「ギャップを感じる」は80.8%、「ギャップを感じない」は19.2%と、約8割の保護者がギャップを感じているという結果になりました。Upload By 発達ナビニュースどのようなことにギャップを感じるかに関しては、「発達障害と診断されたらお先真っ暗と思っている方が多いけど、そんなことない!わかることでできるフォローがある!(ASD・3~5歳)」「考えるプロセスや、行動というアウトプットが異なるのでなく、そもそも感じ方というインプットの段階が異なっており、しつけや訓練でどうなるものでもないこと(ASD・6~12歳の親)」「1つの診断名でもいろんなタイプの人がいることを知らない人が多いなぁと思うし、自分も息子のことだけをみて発達障害を理解してはいけないなぁと自戒の念も含め思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害そのものを知らない人が多いと思う。もっと重くてコミュニケーションがとれないような障害と思われているように思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害は天才だと思われているせいで、親の育て方で変わると思われているところ(ASD・13歳以上)」などといった意見が挙げられました。さらなる調査結果はプレスリリースにてその他の回答に関してはLITALICOのプレスリリースに記載しています。発達障害の当事者・発達障害児の保護者へ意識調査を実施 過半数の当事者・保護者が「発達障害」に対する社会の理解は「進んでいない」と回答LITALICO発達ナビでは今後も発達の気になるお子さんや親御さん、当事者のさまざまなご意見やご経験を参考にしながら、よりよいサービスづくりと世の中に対する情報発信を続けていきます。今後ともLITALICO発達ナビをよろしくお願いします。
2017年04月07日「できること」を増やしたい!発達障害のある子どもを持つ親心出典 : 自分の子どもが発達障害だと診断を受けたならば…。「発達障害児でもできること」「発達障害児の発達を促すこと」を血眼になって探すのが、親心なのかもしれません。私もその1人でした。発達障害児を育てていると、どうしても出来ない部分ばかりが目についてしまいます。「協調運動ができない」「手先が不器用」「跳び箱やマット運動ができない」「字をマスの中におさまるように書けない」「きちんとした姿勢を維持できない」…他の子どもと並べては、「うちの子だけこんなこともできない…」と落ち込む日々が続いていました。「出来ることを褒めてあげて」と育児本には当たり前のように書いてあります。けれども、保育参観やちょっとした行事で「できない息子」を目の当たりにするたびに、「一体どこを褒めればいいんだろう…」という気持ちにすらなります。そんなとき、インターネットには心ひかれる文言が出典 : そんなどん底の気分になりながらも、「なんとか息子のできることを増やしたい」と思いネットを検索してみます。すると、キラキラときらめく言葉たちが並んでいるのです。「発達障害児向け○○!」「○○は発達障害児の発達を促してくれます!」「○○をすれば、発達障害は治る!!」こんな煌めくような魅力的な言葉たちが、私の親心をがっちり掴んでしまいました。「発達障害向け」の文言をみると居ても立っても居られなくなり、私はすぐに申し込みのメールを書き始めていました。それがどんな内容の習い事や塾であっても、息子に意思を確認することはありませんでした。これが原因で、私がしてしまった失敗を2つ、ご紹介します。出典 : ネットでの検索に取りつかれていたころ…私が一番に心惹かれてしまったのは、「発達障害を治す能力開発塾」でした。この「発達障害を治す」という触れ込みに惹かれてしまうのは私だけではなかったようで、中には新幹線や飛行機に乗って相談に訪れる人も後を絶たないそうです。ところが相談に伺ってみると、その塾の目標は「子どもを支援級に入れないこと」でした。私は当時、まだ小学校就学後のことまで考えてはいませんでした。その目標が果たして本当に適切かどうか、まだ分かっていなかったのです。その塾が何を目指しているのか、発達障害児がどう育っていくことを望んでいるのかという点について意見が合致しない場合は、私は入塾はやめたほうがいいと思いました。結果的に、入塾はお断りしました。「発達障害児向け」「発達障害が治る」という文言だけに飛びついてしまい、実態をきちんと把握していなかった失敗例です。出典 : 他にも、「これは発達障害児の発達に良い」「前頭前野の発達を促す」という言葉に、私は飛びついてしまいました。そんな私を突き動かしたのが、「乗馬は発達障害の発達に良い」「カヌーは発達障害児の発達に良い」という情報でした。私は息子を連れて、発達障害児を対象とした乗馬教室とカヌー教室に出かけました。その教室では他に参加する子どもたちもみんな同じように特性がある子どもたちだったため、息子だけが浮いてしまうこともないだろう…という期待もありました。ところが…。感覚が過敏な息子は、馬の臭いと大きさと肌触りにパニックです。泣いて泣いて暴れて暴れて、止まらなくなってしまいました。そんな息子を横目に、他のお子さんたちは悠々と馬に乗っています。カヌーはカヌーで、救命胴衣の感触にパニックになり大泣き。さらに、前日雨が降って川岸がぬかるんでいたのが嫌だったようで、足に泥がつくたびに大泣き。ここまで来て、こんなに息子を泣かせて、自分はいったい何がやりたかったんだろう…。私は帰りの車でため息しか出ませんでした。この教室以後、息子は馬が怖くなってしまい、今でも馬に近づけません。大切なのは、「発達障害児向け」ではなく「息子向け」だった出典 : 数え切れないほどの失敗を繰り返して、私が学んだのは、大切なのは「発達障害児向け」ではなく「息子向け」のものを選ぶことだということでした。いくら「発達障害児向け」と銘打ってあっても、息子に合った環境整備がされているとは限りません。いくらそのアクティビティ自体が発達障害児の発達に良いとしても、息子は盛大なパニックを起こし、それが失敗体験になってしまいました。逆に、発達障害児対象のアクティビティでなかったとしても、息子に合った環境整備がきちんとできていれば、息子は楽しくこなすことができます。成功体験につながることもあるでしょう。「発達障害児向け」「発達障害児の発達に良い」というのは、あくまでも理論的な話です。脳回路の話などが出てくると、どうしても飛びついてしまうのが親心。でも、理論と実践は違うのです。適切な環境整備と子どもに「やりたい」という気持ちが少しでもあれば、それが一番「その子の発達に良い」ことなのだということを忘れてはいけないのだと思います。
2017年03月30日発達障害があると「生きづらい」?出典 : 歳の発達障害の息子を育てていると、ごく当たり前のように「この子が生きづらくないように」と考えている自分がいます。「生きづらさ」という言葉は、発達障害児を育てていると頻繁に見聞きするものではないでしょうか。大人になっても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。発達障害でなくても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。でもやはり、発達障害の息子を見ていると、私はいつも「この子は生きづらいだろう」と感じてしまうのです。そして、「どうやったらこの子の生きづらさが取り除けるだろう」とそればかり考えています。では一体、発達障害児の「生きづらさ」って何なのでしょうか。発達障害特有の困難さは、支援で克服できることも増えてきた出典 : 息子には発達障害児特有の様々な困難があります。言葉の使い方が変わっているのでお友達に不思議がられたり、お友達の輪に入るのが好きではなかったり、聴覚や触覚が過敏だったり、運動が苦手だったり、手が不器用だったり…。これらの困難のために、息子は集団の中で様々な苦労をしているようですが、それは息子が自己肯定感を落とす直接的な原因になっていないようなのです。今は、支援方法がかなり確立されています。運動が苦手だったり、手先が不器用だったりしても、先生方や私たち親の工夫次第で結構頑張れてしまうようです。例えば息子は運動会で足が遅いことをずっと気に病んでいましたが、今は発達障害児専門のスポーツ支援の本などが結構出ています。先生方はそれに基づいて、息子に走り方の指導をしてくださいました。おかげで、運動が苦手なことで息子がひどく落ち込むようなことはありません。また、気にして見ていると、発達障害児向けの学習支援グッズなども沢山発売されています。私はそのようなグッズを探して購入したり、自分で作ってみたりしました。ですから、息子が手先の不器用さでひどく生きづらさを感じているようなことはありませんでした。また、私も幼稚園の先生も決して息子に友達の輪に入ることを強制しませんでした。周りが「この子はこういう子だ」と淡々としていれば、本人はそれほど気に病まないのです。運動や手先の不器用さなどについては支援で克服できることは結構多く、それが即息子の「生きづらさ」に繋がるわけではないように思いました。では何が「生きづらさ」につながっているのだろう。私が息子を見ていて気付いたこと出典 : けれども、どんなに支援をして息子の困難を取り除いても、私はやっぱり「この子は生きづらいだろうなあ」と感じてしまう瞬間があるのです。それは何かといえば、息子の「認知のズレ」です。例えば、息子とのやり取りで以下のようなことが毎日のように起こります。・誰かが息子の言ったことが可愛くて笑った。→「僕のことをバカにして笑っただろう」と激怒orパニック。・何かについて「ダメだよ」と注意された。→ 「この人は僕を嫌っている」と激怒。・何かの問題が難しくて解くことができなかった。→「僕はどうしようもないバカなんだ」と落ち込んで立ち直れない。・先生に「これはいけないよ」と注意される→「僕はいつも先生に叱られているダメな奴だ」と思う。・誰かが息子をからかう。→「みんなが自分を嫌っている」と落ち込む。このように、息子には認知のズレがあり、物事を過度に一般化したり、そうかと思えば突然自責の念にかられたりするところがあります。また、物事を白黒極端に捉える傾向もあり、「え?どうしてそんな風に考えちゃうの??」ということが頻繁にあります。その思考を助長するのが、相手に否定語で何か言われたり、ちょっと笑われたりということなのです。「認知のズレ」は支援することが難しい。私が息子に接するときに心がけていること出典 : 息子の生きづらさの根本的な原因について考えたとき、この「認知のズレ」が大きいのではないかと思うのです。そして、こういった認知のズレは、支援することがとても難しいです。手の不器用さや学習上の困難などは、支援グッズを使いながらなんとか解決の糸口を見つけ出すことができました。けれども、「認知のズレ」だけは、長い時間かけて手探りで修正していくしかないのです。支援グッズを使うでもなく、支援方法が確立しているでもない。私たち親ができることは、ただただ失敗したり落ち込んだりしている子どもに辛抱強く語りかけていくことだけです。だからこそ、認知のズレは親にとっても子ども本人にとっても「生きづらさ」へとつながっていくのかもしれません。けれども、だからこそ、発達障害の子には、なるべく大きな失敗をしないように環境調整をすることに意味があるのだと思います。私は息子の生きづらさを知ったうえで、人間関係や学習などで大きな失敗をさせない、挫折をさせない、本人が乗り越えられるハードルをうまく設定しながら成功体験を増やすことに集中しています。なかには、それは過保護だという人もいます。けれども、認知にズレがあるからこそ、ひとたび大きな挫折でボッキリと折れてしまうと、それを立て直すのに大変な労力がいるのです。また息子の場合、大きな失敗をすることで、他者への不要な憎しみや恨みが長いこと心に残ります。大きな失敗や挫折の体験は、発達障害の子どもの生きる糧にはなりづらいと私は思います。私は失敗を乗り越えさせることに力を振り絞ることよりも、成功体験を積ませることに力を使っていきたいです。発達障害の子どもにとって、小さな成功体験の積み重ねが心の体力になっていきます。心の体力があれば、多少の認知のズレがあっても、自分で態勢を立て直すことができるはずです。認知のズレそのものを修正するために躍起になるよりも、小さな成功体験を増やしていくことに重点を置いていくほうが、親も前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。生きづらさは、心の体力で克服できるものだと私は信じています。
2017年02月23日ハンドリガード(Hand-regard)とは出典 : ハンドリガード(Hand-regard)とは、自分の手をじっと眺める赤ちゃんに特有のしぐさです。regardとは英語で「~をじっと見る」という意味であり、手を見つめる赤ちゃんは、どこか神妙で不思議そうな表情をします。握りこぶしをつくった片腕を見つめるだけではなく、腕をゆらゆらと動かすのを見たり、手先をグーパーと開閉したり、胸の前に両手をもってきて指先を合わせることもハンドリガードの一種です。ハンドリガードは、赤ちゃんが自らの手を認識したときに起こるしぐさです。私たち大人にとっては、「自分に体があること」と「その体を自らの意思で動かせること」は当たり前の事実であり、普段意識することはなかなかありません。ですが、生まれたての赤ちゃんにとっては、そのような事実は新しい発見であり、不思議なことなのです。赤ちゃんはある段階で「あれ、目の前のモノが動くと、自分の体がモゾモゾするなあ」というように、手の動きと身体感覚がリンクしていることに気が付きます。その手は「自分の体の一部」であり、動かしたいように動かせるものだと次第に認識していきます。赤ちゃんと自分自身の「手」との出会いは、幼児期にかけて思い通りに体を動かしていくためのはじめの一歩であると言えるでしょう。ハンドリガードは、赤ちゃんが発達していく中でのステップのひとつであり、だいたい生後3~4ヶ月頃に見られるといわれています。ハンドリガードが見られてから数ヶ月がたち、次の発達のステップに進むと自分の手を眺めるハンドリガードのしぐさは徐々に消失していきます。ハンドリガードのしぐさは発達のしるし出典 : ハンドリガードのしぐさが出るときには赤ちゃんには「ものを見る力」と「体を動かす力」というふたつの力が身についたと考えることができます。ハンドリガードをするためには、まずは見たい対象へ焦点を合わせる目の力が必要です。新生児期の段階にも、強い光が当たると目を閉じたり、光が当たると瞳孔が縮む、などといった目の動きは見られます。ですがこの段階では見たいものに対して自らピントを合わせることはできません。だいたい生後1ヶ月には、ものをじっと見つめることができる「注視」という力が、そして2~3ヶ月頃には、ものが動いたほうへ視線を動かす「追視」という力が身につきます。目の前にある手をじっと見るためには、このように手との距離感に合わせて焦点を合わせたり、手の位置のほうへ視線を移したりするなど、いくつかの力が求められます。奈良間美保ほか/著『小児看護学概論・小児臨床看護総論』2015年/医学書院/刊生後間もなくの赤ちゃんは、私たち大人のように思った通りに体を動かすことができません。成長につれて、次第に自らの体を動かすことができるようになってきます。自ら体を動かすことを、専門用語で「随意運動」といいます。この随意運動は、脳から発せられた「動け!」という指令が神経を通って筋肉に届き、その指令にそって筋肉が反応するというメカニズムによって達成されます。つまり自分の力で体を動かせるようになることは、脳が発達し、体を動かすメカニズムが整ってきた証拠だといえるでしょう。以上で紹介したように「見たいものを目で見る力」と「体を動かす力」という二つの力が合わさったときに、ハンドリガードのしぐさが出ます。体の動きの発達ステップ - ハンドリガードが出る時期は?出典 : 私たちが普段何気なく行っている「体を動かす」ことですが、赤ちゃんは生まれた瞬間には思い通りに体を動かすことができません。思い通りに体を動かすためには、体の成長と脳の発達が必要です。生まれた瞬間には、体を動かすことのできない赤ちゃんがどのようにして体を動すことができるようになるのか、ステップごとにお伝えします。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の意志で思い通りに体を動かすことはできません。しかし、姿勢を保ったり危険から身を守ったりするために、体を動かします。例えば、赤ちゃんの手の平に指を乗せてみるとギュッと握り返してくれたという経験をされた方は多いのではないでしょうか。これは「把握反射」という生まれたばかりの赤ちゃんに特有の反応の一種です。このような外からの刺激に対して体が自動的に反応する動きを「原始反射」と言います。他にも、足の裏をかかとからつま先にかけてなぞると足の指を広げる「バンビスキー反射」や、体が傾いたときにバンザイをするかのように両手をあげる「モロー反射」などがあります。原始反射はしばらくすると消失してくるものです。原始反射は「脳幹」という脳の下にある部位によりコントロールされている体の動きです。やがて、月日が経って発達が進むにつれ、原始反射は必要でなくなり体を動かす役割を担うのは、「脳幹」から脳みそにある「中枢神経系」という領域へと移っていきます。つまり原始反射の消失は、脳の働きをつかさどる中枢神経系の発達が順調であるかを判断するためのごく簡単な指標となります。原始反射が徐々に消えていくとともに、赤ちゃんは少しずつ体を動かせるようになってきます。まだ自由自在に体を動かすことはできないものの、音が聞こえるほうへ首を傾けるなど、体を動かそうとする赤ちゃんの意欲がさかんに見てとれるようになります。徐々に反射が消えていく時期にハンドリガードがあらわれます。「目でみること」と「手を動かすこと」という二つの動作が合わさることで、赤ちゃんは自分の体があることを認識します。加えて自分の体があることを知って、「目」以外でも自分の体を感じようとし、こぶしを口で舐めることもあります。最初は、こぶしで握った片腕をじっと見つめているだけだった赤ちゃんはやがて、手が動くことを確かめるように腕を動かしたり、両手を胸のあたりにもってきて、組んだりする動作もします。これもハンドリガードの一種です。ハンドリガードのしぐさをするようになると、次第に腕だけではなく、手指の動きが盛んになってきます。まだ遊ぶ力はないものの、おもちゃを握らせるとしばらくの間は自分で持って、ものをもっているという実感を楽しんだりします。赤ちゃんの体の動きの発達は「体の中心から、先っぽへ」という方向性があります。これは脳の部位が発達していく順番にしたがっています。発達するサインのうちのひとつが、手先の指が動くことであると知っておくと、赤ちゃんのささいな変化にも気づくことができるかもしれません。出典 : 自分の手があることを十分に確かめると、赤ちゃんから徐々にハンドリガードのしぐさは消失します。指しゃぶりなど、体の一部を口に入れるしぐさは残ってはいるものの、赤ちゃんの興味の対象は、自らの体から周囲の環境へと移っていきます。周囲の環境とは人やモノなどです。第二期までは周りからお世話してもらうような受け身なあり方だった赤ちゃんは、少しずつ環境に対して積極的に働きかけていくようになります。このときに、ハンドリガードのしぐさの段階で身につけた「目で見る力」と「体を動かす力」が発揮されます。例えば、目に見えたものを自分の手を使ってつかもうとしたり、抱かれている大人の顔にふれようとしたりと、この時期の赤ちゃんには好奇心旺盛な様子が見られるでしょう。外界に対して自ら行動を起こして、その結果や相手の反応を楽しんでいるところですので、赤ちゃんが何か行動を起こしたときには声をかけてあげるとよいでしょう。この時期には、赤ちゃんは周囲の環境に対し興味関心をもって自ら働きかけていきます。口に入れて飲み込む恐れのあるものや、のどや目をつく危険のあるものなどは、置かないようにしましょう。ハンドリガードに関するお悩みQ&A出典 : ハンドリガードのしぐさを頻繁にする赤ちゃんもいれば、なかなかしない赤ちゃんもいます。もしかすると保護者の方が見ていないときにしていることも考えられます。しかし、ハンドリガードのしぐさが実際に見られないことで不安になっている方もおられるかもしれません。先ほどお伝えしたように、ハンドリガードは、目で体の一部である自分自身の「手」を見て、獲得した体を動かす力を使うことにより、自らの体に気付いていくサインです。例えば、ハンドリガードをしていなくても、足を見るフットリガードであったり、目で確かめながら口に手をもってきて舐めるような様子が見られるとしたら、ハンドリガードと同じような発達的な意味をもっているので安心してよいと考えられます。◇発達障害があるのかしら…という不安な気持ちをもつ方へハンドリガードを含め、一般的に対象の月齢でできるとされている何らかの動作を、自分の子どもができないときによく聞かれるのが「発達障害があるのではないか」という不安の声です。子どもがすくすくと育つことを願う保護者ならば、自然にもたれる感情かもしれません。確かに発達障害のある場合には、「●●ができるようになる」と一般的な育児書に載っている月齢や年齢になっても、その行為をすることができないことは多くあります。しかし、実際に発達障害があるかどうかは「他者とのコミュニケーションがとりにくい」「人と気持ちを交わすことが難しい」「活動の対象や興味の幅が限られるなどといった」などの発達障害の複数ある基準にどの程度該当するかにより、診断されるものです。特に、生後数ヶ月の段階では、自閉症スペクトラムなどの発達障害があるかどうかは医師でさえも、判断することが難しいとされています。生後数ヶ月の時期の赤ちゃんとかかわる周囲の大人にとって大切なことは、赤ちゃんが発達の中でどのステップにいるかを把握すること、そしてその赤ちゃんの発達を促すためにどのような支えが必要か知ることです。例えば、・上記の章で述べた「体の動きのステップ」の中で、赤ちゃんがステップにいるのかどうかを観察すること・「目でものを見ているか」「自ら体を動かすことはできているのか」とハンドリガードに必要な二つの動作をひとつひとつ観察することなど、まずは赤ちゃんの様子を観察をしてみてください。観察をして赤ちゃんができている点と発達の課題点を把握していくことが大切です。発達を促す工夫として、ひとつご紹介したい体操があります。それは赤ちゃんの感覚に刺激を与えることです。新生児期は、感覚の中でも特に触覚が研ぎ澄まされている時期です。ですので、手をさすりながら軽く引っ張ってあげて、手の感覚に外部からの刺激を与えてあげましょう。このように外から刺激を受けることにより、身体を動かしたいという気持ちが起こり、自分の体を使って主体的に試していこうとする「好奇心」や「意欲」をもつことができます。これによりハンドリガードが出るとは限りませんが、引き出された「好奇心」や「意欲」が発達を促していくことは確かであるといえます。赤ちゃんが手で顔をひっかいてしまうときには、手にミトンをはめることにより顔をひっかくのを防止することができます。しかし、「赤ちゃんにミトンをつけさせるとよくない」という噂を聞いたことがあるかもしれません。確かに赤ちゃんは周りの物や人に触れることによって行動の幅を広げていきますが、実際にはミトンをつけることが発達に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。ミトンの着衣の良し悪しについて考えることよりも先に、なぜ赤ちゃんが顔をひっかいてしまうのか原因を把握し、顔を引っ掻かないよう対処を考えることが大切です。赤ちゃんが顔を引っ掻いてしまう原因とは何なのでしょうか。◇顔を引っかく原因って?赤ちゃんが顔をひっかいてしまう原因により、対処法は異なります。顔を引っ掻く原因として考えられるのは、ストレスや空調環境の悪さや、体の動きをコントロールできないことなどさまざまです。【ストレス】お腹がすいたことや体調の不快さなどの要求が通らないときには、赤ちゃんはストレスがたまります。そのようなときには、大人が近くにいることにより赤ちゃんの要求がなるべく通る環境を準備してあげるとよいでしょう。【体のコントロールの不十分さ】赤ちゃんのハンドリガードが出るころには、確かめるように自分の顔を触ることが増えてきます。しかし、赤ちゃんは思うように正確に体を動かすことができないので、顔に触れるときに伸びた爪で顔をひっかいてしまうことがあります。爪をこまめに切ってあげることはもちろんですが、とがった部分がないように爪を切った後にはやすりをかけてあげるとよいでしょう。【環境の温度や湿度・衣服の問題】体温があがり顔が熱くなったときには、かゆみがでることがあります。赤ちゃんの体温は周囲の環境の影響を受けやすいために、部屋の中に赤ちゃんがいるときには空調の調節に気をつかってあげるとよいでしょう。適度な温度と湿度を調整してあげるとよいでしょう。また、空調のほか、寝ているときに、厚着をしていたり、布団をたくさんかけていると体温があがり、かゆみを感じやすくなる場合があるので、着衣やかけ布団の枚数にも気を付けたいものです。着衣の目安は、だいたい大人より1枚多めくらいがよいでしょう。ハンドリガードなど赤ちゃんの発達について相談したいときは?出典 : ハンドリガードをはじめ、子どもの発達の早さや道筋は一人ひとり違います。ハンドリガードが出る出ないだけで子どもの心身の成長をはかることはできませんし、心配し過ぎて目の前の赤ちゃんの今の姿を認めてあげられなくなったらもったいないですよね。もしも不安に感じることがあれば、以下にあげる子育ての専門家に相談するとよいでしょう。乳幼児健康診査は乳児健診とも呼ばれ、母子保健法の定めにより各自治体が実施するものです。各市町村の保健センターなどで行い、赤ちゃんが順調に発達しているかどうかを確認し、病気の予防や早期発見をするための検査です。3ヶ月、6ヶ月、1歳半といった乳幼児の発達の節目に受けることができます。普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。乳児健診は同じ月齢の赤ちゃんを育てるほかの保護者も来ており、育児の工夫や悩みを共有したり情報交換したりできる場としても利用できます。検査を受けるには、出生届を出した自治体から送られてくる受診票の案内に従います。指定された日時に集団で受けるケースがほとんですが、事情があれば日付の変更や受診場所の変更をしてもらえることもあります。以下のサイトでは、全国の発達相談にのってくれる施設を検索することができます。全国児童発達相談所一覧|厚生労働省行政や自治体が主体となって運営している施設です。子育ての不安・悩みに対し専門的なアドバイスをしてくれる保健師が在籍または巡回しています。日時によっては乳幼児の発達相談を無料で行っています。地域の母子向けに子育てサロンを開催や発達に合わせたセミナーを主催していることもあり、気軽に利用できます。育児の相談、健康の相談、発達の相談など、0~17歳の児童を対象としたさまざまな相談を受け付けています。必要に応じて発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、理学療法士などからの支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て、スケジュールを確認するようにしましょう。発達相談に関する検索サイト|国立障害者リハビリセンター小児科は病気の診断、治療だけではなく乳幼児の発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。予防接種などで主治医を訪れるついでなどがあれば、日ごろの発達の悩みを聞いてもらうのもよいでしょう。日常気がかりなことを事前にメモをしておくと、医師の前でスムーズに状況を説明することができます。小児科の中には、ゆっくりと保護者自身の子育ての悩みをカウンセリングしてくれる「相談外来」を設置している所もあります。時間が限定的で要予約の場合は事前に連絡をしましょう。まとめ出典 : この記事では、ハンドリガードと発達の関係からハンドリガードに関する悩みや、赤ちゃんの発達の相談先などについて解説しました。ハンドリガードを含め、自分の体に気付いていくという瞬間は、赤ちゃんが発達していくときにひとつのステップです。目で見ることと、体を動かすことができると知った赤ちゃんは、やがてその体をめいっぱい使って、周囲の環境に働きかけていきます。ハンドリガードをして、周囲の世界へと好奇心が広がってきたときには声かけをしてあげたり、ボールやおもちゃなどを赤ちゃんの近くに置いたりすることによって、より赤ちゃんの好奇心を広げるように環境をつくっていくとよいでしょう。参考:白石正久/著『発達の扉(上)』1994年/かもがわ出版/刊参考:重度精神遅滞児にみられるハンドリガードの発達的意味|神園幸郎
2017年02月22日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、「発達障害の子育てを楽しむコツ」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの障害は親のせいではありません―― この連載もいよいよ最終回。いろいろ伺ってきましたが、ずばり、佐藤さんが思う発達障害の子育てを楽しむコツって何でしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): まず、親自身がハッピーであること、充実した楽しい人生を送ることです。人が他人を幸せにするのは無理。幸せって自分が作り出す状態だから。状態である以上、自分で作り出すしかないんですよ。―― 子どもの障害に対して、親は自分の人生すべてを捧げるべきという風潮がありますよね。そういう中、親は自分のことを優先しにくいのかもしれませんね。佐藤さん: でも、親が療育に必死になって、「子どもには充実した人生を送ってほしい」ってボロボロな状態になっていたら、それを見た子どもがうれしいわけがないよね? こんなの、子どもにとっては重荷でしかない。―― 自分を犠牲にしてまでがんばってしまうのは、もしかしたらお母さんは「自分に責任があったのでは?」と感じてしまうからかもしれません。「妊娠中に無理したのが良くなかったのかな?」とか「早くから預けて働いたのがいけなかったのかな?」とか、いろいろ考えて自分を責めてしまうのかもしれません(※)。※もちろん発達障害の原因にそんな根拠はありません。佐藤さん: 子どもの障害は親のせいではありませんよ。僕は、それぞれの人にはそれぞれの生まれ持った宿命と人生があるのだと思っています。そして、その子どもが自分の人生の使命をまっとうできるようにサポートするのが親の役割。後は、親自身が自分の人生を楽しむのが、親の仕事だと思っています。―― 障害者の親って他の保護者より制限があるように思えるのですが、人生を楽しむことってできるのでしょうか?佐藤さん: 大切なのは、子どもに障害があろうがなかろうが、いかに、自分が今の状態を楽しめるか? なんですよ。お母さんが自分の人生を謳歌していれば、子どももその姿を見ていて楽しくなるでしょう。もちろん、普通の子育てより大変なことは多いですよ。でも、地獄で幸せになれない人は、天国にいっても絶対幸せになれませんから!―― どういう意味でしょうか?佐藤さん: 地獄で「暑い、暑い」って言ってる人は、天国に行けったら、絶対「暇だ~、なんかつまんない~」とか言い出すから。―― おもしろい考えですね(笑)。また、お母さんが生き生きとするためには、お父さんの存在も欠かせませんよね?佐藤さん: もちろんです。でも、残念ながら、うちの放課後デイに親子が面談にやってくる時、夫婦そろって来られるのは一割以下。平日の昼間、お父さんは仕事だから仕方がないにしても、お母さんの話からお父さんの存在が見えない家庭が多いのです。―― 療育センターなんかでも、付き添いはお母さんばっかりですものね。佐藤さん: 父親がちゃんと関わってくれないと、母親のストレスは2倍になります。日々の小さいことまでフォローする必要はないのかもしれないけど、重要なことには決断を下し、時々、お母さんの頭の中を整理してあげてほしいと思います。それに、話を聞いていると、お父さんの意見は結構合理的で的を得ているんですよ。なので、お母さんたちも、もう少し素直にお父さんの意見を聞いてあげてほしいと思います。■先輩お母さんとつながろう。人脈をどんどん広げよう―― 旦那が一緒になって考えてくれる、それだけでお母さんは十分心強いと思います。あと、私が心強かったのは、同じ悩みを持つお母さん仲間とのつながりです。佐藤さん: ただ、療育センターでは同じ年頃の子どもを持つ親同士でしか接点がないよね? 特に、就学前は一番不安な時期だし、子どもの先の姿が想像できない。だから、同世代だけで集まると不安を交換しあって、不安だけが増幅してしまうという難点もあります。―― 確かに。いつも同じメンバーで、ぐるぐると同じ話になってしまいがちなところもありましたね。佐藤さん: 一番有効なのは、発達障害をもつ未就学児のお母さんは、同じ発達障害を持つ中学生の親から話を聞くこと。すでにいろいろ経験してきたお母さんたちは、いろいろな情報を持っているので役立つアドバイスをくれます。わが子の将来のイメージもつかみやすいので、お母さんもあんまりパニックにならないですむ。違う世代とつながりを持つことをおすすめします。―― でも、なかなか違う世代とつながる機会がないのですが……。佐藤さん: うちの放課後デイに遊びにいらっしゃい! いろんな先輩お母さんがいるから。みんな仲が良くて、よくバーベキューやクリスマスパーティーしたり、頻繁に交流会をしていますよ!ただ、おもしろいんだけど、うちのお母さんたちが集まっても、みんな誰も子どもの話をしないんですよ。子どもそっちのけで、爆笑トークで盛り上がってるの(笑)。でも、これこそが健全な姿だと思うわけ。―― みなさん、佐藤さん同様、笑い飛ばす力を持っているんですね!佐藤さん: 発達障害の子育てをする親は、特に、開かれた視点で物事をみつめなおす必要があります。療育に通うのに夢中になっていると、気づいたら、接するのは療育センターの先生か学校の先生かママ友だけになってしまいますよ。意識的に努力して、開かれたマインドをもっておかないと。―― 人脈もどんどん広げるべきなんですね。佐藤さん: 例えば、子どもが興味のある業種に人脈を作って、その企業にインターンできるようにするとか、どうでしょう? うちの長女は将来ゲームクリエイターになりたいと言っているので、僕はプロが使うAdobeのフォトショップを覚えさせたり、夏休みは友達の会社でインターンさせたりしています。もちろん、中学生だからたいしたことはできないんだけど、興味ある業界で普段接することのない大人と過ごすことができるのは刺激的でしょう。それができたのは、僕に人脈があったから。―― なるほど! 子どもの興味があることにつながる人脈力か……。佐藤さん: 世の中にはいろんな人います。いろんな人と会って話して、どんどん外の世界に出て行ってほしい。自分の親とか同じ学校とか、同じマンションとか、同じ世帯年収とか、そういう狭い世界だけでみて、こうあるべきだと決めつけないでほしい。臨機応変に考えられるように、いろいろな情報収集をしてほしいと思います。 ■運命を受け入れることも、大切―― ところで、ここの子どもたちはとても自由に寛いでいますね(取材中の様子を見ながら)。図鑑に没頭している子もいれば、ボール遊びをしている子もいるし、寝ている子もいれば、カラオケで熱唱している子もいる(笑)。佐藤さん: 僕は、自分の放課後デイを「川崎のNASA」と呼んでいます。なぜなら、発達障害の子は宇宙人みたいなものだから。僕の役割は地球側の外交官みたいなもので、彼らの地球滞在が充実したものとなるように努めること。そして、いつか彼らが宇宙船に乗って地上に降りてきた時に、「あの時はありがとう」と言ってくれればいいな、と妄想しています(笑)。―― その妄想、素敵です(笑)。佐藤さん: 発達障害はガンダムのニュータイプみたいなもんで、既成概念の外にいる子どもたちなのだから、親の方も子どもに常識を求めるのはナンセンス。期待すればするほどドツボにはまるだけ。そしてもっというと、親自身も「こうあるべき」「こう育つべき」っていう規制概念の呪縛から出る必要があります。―― そう考えると、発達障害の子どもたちは、親に、子育てで忘れがちな、とても大切なことを教えてくれているのかもしれませんね……。佐藤さん: ちょっと話それるけど、みんなよく「結婚して幸せになりたい」とか言うじゃない? でも、結婚したって離婚する人もいるし、結婚は幸せを保証するものじゃない。「結婚すれば老後がさみしくない」っていう人もいるけど、うちのお祖母ちゃんはお祖父ちゃんが早く死んじゃったから、30年間ひとりだったわけ。結婚はさみしくない老後も保証しない。つまり、人生は何が起こるかわからない。だから、一生懸命人生の方程式を作ったって無駄なんですよ。―― では、どこを目指したらいいのでしょうか?佐藤さん: 死ぬときに本人が充実した人生だったと納得して死ねるか、そこしかないと思うんです。だから、子どもに障害があっても、お母さんは自分の人生を思いっきり生きるべきなんですよ! ―― 「やりたいことがあったなら、とりあえずやっておけ!」と?佐藤さん:そう。そして、運命というのか宿命というのかわからないけど、ある程度、受け入れることも重要だと思っています。自分にそういうカードがまわってきたということは、巡り合わせだと。―― 佐藤さんがまったくの異業種から福祉の世界に入ったのも、運命なのですね。佐藤さん: 福祉が大嫌いだった僕が、今福祉の世界で仕事をしているのも、きっと何か理由があるから(笑)。だとしたら、グダグダ文句言ってないでしっかりやりきろう、と。今目の前のことをやりきらないと、次のステージは見えてきません。それに、僕は一生福祉の世界で生きていくつもりはないので、せめて「他の福祉施設よりも結果を出してから辞めてやる!」と思っています(笑)。長時間にわたり、自身の熱い思いをしゃべり倒してくれた、佐藤さん。時に、厳しい指摘もあったが、ユーモアたっぷりの話しぶりで、発達障害の子育ての凝り固まった偏見や閉塞感を気持ちよくブチ壊し、勇気を与えてくれた。そして、著者は何より、佐藤さんのポジティブな姿勢と、常に息子さんの幸せな人生を考え、全力で取り組んでいる行動力に深い感銘を受けた。「この子なりの楽しい生き方ってなんだろう?」「この子が充実した人生を送るために、親として何ができるだろうか?」発達障害の子育てで、本当に親が悩むべきところは、そこにあるはずだ(もちろん、普通の子育てだって変わらない)。そして、大切なことは「子育てを楽しむ」ということを、常に忘れないでいたい。取材・文・撮影/まちとこ出版社 【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界】 全4回・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら ・ 【第4回】発達障害の子育てを楽しむコツ
2017年02月18日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、発達障害の子育てをする親の「心の持ち方」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■「大変」と「不幸」はイコールではない―― 芸能人の告白やメディアの影響などで、発達障害はだいぶ世間に認知されてきました。でも、まだまだ発達障害への社会の受け皿や理解は少ないと感じています。また、子どもに手がかかる分、親が心のゆとりを失ってしまったり、子育てにおける精神的な負担も多いように思います。日々多くの発達障害児を持つ親御さんと接している佐藤さんは、どのように感じていますか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん):まず、初めに言っておきたいことがあります。「子育ての本質とは、子どもに障害があってもなくても変わらない」というのが、僕の結論です。放課後デイの仕事をはじめてから、発達障害児を持つたくさんの親子を面談しましたが、面談中、「子育てが辛い、苦しい」と言って泣き崩れるお母さんも珍しくありませんでしたよ。―― やはりお母さんの負担は大きいと? 佐藤さん: でも、僕は、苦しいか苦しくないかというのは、その人の受け止め方の問題だと思っている。親が「発達障害の子育ては辛い、苦しい」と思った瞬間、それは本当に辛いことになってしまうんです。もちろん、事実として、発達障害の子育てで大変なことはあります。ただ、それを不幸だと捉えるかどうかは、親の受け止め方次第だと思うのです。―― 確かに、同じ障害を持つお母さんでも、軽く受け流せる人と重く受け止める人がいますものね。佐藤さん: 大変と不幸は、決してイコールではない。だって、オリンピックの選手だって、自分の練習が大変だからって自分が不幸だとは思わないでしょう?あと、これは、僕がいつも言っていることなんだけど、不幸な子どもなんていないんですよ。でも、周りがいつも「この子は不幸だ」って言い続けたら、子どもも親も本当に不幸になってしまう。だって、もし、あなたが自分の親から「あなたはかわいそうな子だ、不幸な子だ」って言われ続けたら、「ちょっといい加減にしてよ!」と怒りたくなるでしょう(笑)?―― 確かに(笑)。それに、自分のせいで親が悲しむなんて、そんなの辛すぎますよね……。佐藤さん: 僕は「不幸だ、辛い」と言っている親ほど、発達障害に対する差別や偏見があると思っている。だって、親に発達障害に対する偏見がなかったら、「あ~、そうなんだ」で終わる話でしょう? でも、「発達障害は不幸だ、かわいそうだ」と悲観して泣き暮らすってことは、それだけ発達障害であることが悲しいと思っているということ。実は、親自身が発達障害を差別している可能性が高いんですよ。―― これはずいぶん痛いところをつかれました(苦笑)。というのも、以前、私は周囲に対して「子どもの障害に偏見を持ってほしくない」と強く思っていた時期がありました。でも、そこにこだわっている自分こそが、何より、わが子のことを受け入れていなかった、ということだったのでしょうね……。佐藤さん: 親が社会的通念や常識で、「受験勉強をして、いい学校に入って、いい企業に入る」という、こうあるべきだという考えに縛られてしまっていると、そのルートから外れた瞬間に、子どもにも親にも、双方にストレスがかかってしまんです。でも、本来は、これが苦手でもあれは得意、というのがあればいいはず。例えば、うちの顧問で新田明臣さんというキックボクシングの元世界チャンピオンがいるんだけど、彼はいまだに割り算ができません。でも、キックボクシングのチャンピオンになれたら、割り算なんてどうでもいいじゃないですか?―― おっしゃる通り。でも、なかなか佐藤さんのように強くはなれません(泣)佐藤さん: もちろん、落ち込んで泣いて過ごす時期があってもいい。落ち込むのは自然な現象ですし、物事を消化するためには必要な過程です。でも、「1年以内に終わらせよう!」とか、短期間に蹴りをつけることが大事。思いっきり泣いた後に、「とりあえずわかりました。では、次はどうしたらよいだろうか?」って、しっかり取り組めばいいんです。 ■笑い飛ばすって、すごく重要―― ところで、著書の中では、がっちゃん(息子さんの名前)のエピソードをユーモアたっぷりに描いていましたね。佐藤さん: 僕は、笑い飛ばせるということが、すごく重要だと思っているんです。うちの子だってすごく大変だけど、もう全部お笑いネタにしちゃってる(笑)。例えば、ロサンゼルスで過ごしていた7歳の頃なんか、がっちゃんが部屋の真ん中でウンチすることにハマった時期もあって(笑)。最近だって、こっそりビニール袋にウンチして勝手にどっかに捨ててくるワザを覚えちゃったり。だから、僕はどこかに捨てられたわが子のウンチを探しにいかなくちゃならないわけ(笑)。すっごく大変ですよ!―― 著書では漫画でとても面白く描いていましたよね(笑)。でも、これと同じことが起こったら、ものすごく深刻に受け止めちゃう親だって多いと思うのです。でも、佐藤さんは「それって、おもしろくない?」と笑い飛ばしている。まさに先ほどのお話の、「親の受け止め次第で全然違ってくる」ということなんですね。佐藤さん: うちにはたくさんの親が面談にくるんだけど、だいたいみんな「学校でこんなことがあって……」と泣きながら話すの。だから、僕はそこで「はい! ストップ!」と大声で声をかけます(笑)。そして、「お母さん、それって本当に悩むべきことでしたっけ?」と言うと、だいたい「え?」とビックリして止まるんですよ。たとえ笑いにできなくても、意識して悩みにストップをかけることはできるんじゃないかな?■問題をごちゃ混ぜにしない。目の前にある課題を客観的に適正評価しよう―― でも、泣いてしまうお母さんの気持ち、よくわかります。私もいまだに、わが子が突飛な行動をすると、周囲の目が気になってしまうことがあります。佐藤さん: でも、それって「周りに迷惑をかけているかもしれない」「周りに申し訳ない」と、お母さんが過剰に周囲に遠慮してしまっているだけなんじゃないかな? もし、実際に面と向って子どものことで悪口言ってくるような人がいたら、そんな人権に侵害してくるような低レベルな奴は放っておけばいいんですよ!―― お母さんはもっと堂々とするべきだ、と?佐藤さん: うちに通っているお母さんには、「わが子のためには親として死ぬ覚悟がある」と豪語する人も多いのですが、そのわりには、隣のお母さんの顔色を気にして謝ったり、学校の先生の顔色を見て傷ついたりしている。それって、どんだけの覚悟なの? 本当に覚悟があるなら、たとえ世間になんと言われようと、「うちの子はこうだ!」って通す強さを持たないと!―― 周囲や世間はともかく、身内の理解はどうでしょう? よく「旦那が理解してくれない」なんて声も聞きますが?佐藤さん: これは、子どもの問題ではなく夫婦の問題。障害児の子育ては、健常児の子育てより、より夫婦で一緒に取り組まなければならない問題が起きやすいので、どんな家庭でも起こりうるトラブルが早く顕在化しやすいという面があります。今までは「この人、なんとなく窮屈だな」って思うくらいで、スルーしていたかもしれない。でも、子どもの障害によって夫婦で向き合うべきことが増えて、問題が浮かびあがってしまったわけ。新しく問題が増えたわけではなく、もともとあった夫婦問題が表面化しただけのことです。―― そうすると「子どもの問題どうするの?」という話ではなく、「夫婦関係どうするの?」という話になってきますね。佐藤さん: 事実として、発達障害の子育てで大変なことはあります。ただ、それを取り巻く環境、例えば、自分とどう向き合うかとか、旦那とどう向き合うかとか、義理両親とどう向き合うかとか、学校の先生とどう向き合うかとか、問題にしなくてもいいことも問題にしてしまっている方が多いと思う。表面に出てくる問題と問題の原因をごちゃ混ぜにしてはいけない。だから、僕はいつも、うちに通っている親には言っています。「今、目の前にある課題を客観的に適正評価しましょう」と。今回、佐藤さんのお話を通して、改めて「笑い飛ばすことの強さ」に気づかされた。「笑いにするなんて不謹慎だ」と感じられる方もいるかもしれない。でも、そうできるのは、何より、佐藤さんご自身が息子さんと放課後デイに通う子どもたちの障害をまるごと受け止めて、受容しているからこそ。笑い飛ばせる強さや、たとえ誰に何と言われようとも負けない強さを、佐藤さんのお話を通して、ほんの少しだけもらえた気がした。次回、最終回は「発達障害の子育てを楽しくするコツ」について伺います。取材・文・撮影/まちとこ出版社
2017年02月15日こんにちは。イラストレーターの栗生です。1歳児ってなんとなくマイペースで生きているイメージだったんですが、わが家の1歳児が明らかに周囲の反応を見てネタをやっているように思えて仕方ないので、今回はその話について書きたいと思います。ネタその1「腹見せ興行」誰かがお風呂に入っていると必ずやるのがこちら。以前、まんまるなお腹を家族で笑いながら愛でたのがきっかけだと思います。この歳で笑いを取った時の快感を知ってしまったというのでしょうか。何度も見せに来て、そのたびに他の家族に強制退場させられるという芸が仕上がってしまいました。ネタその2 「流行りのネタ」これは集団生活をしている子どもに顕著かもしれません。2016年冬、保育園にてわが子が仕込まれた芸は「アイハバ?」「ペン!(天高く拳を突き上げる)」「ペッペッペー」(トレンディエンジェルのネタ)でした。パ行は1歳児でも発音しやすいので、まだうまくしゃべれない園児への浸透力もバッチリです。ネタその3「いないいない変顔」保育士さんにウケたネタらしく、これもまたお風呂に入っている家族に披露しにいきます。どうもお風呂は新しいネタを見せるところらしいのです…。保育園に迎えに行くと、毎日のように保育士さんに「おもしろくて笑っちゃいました~」と言われる(お世辞かもしれないけど…)1歳児。次はどんなネタを披露してくれるのか楽しみです。
2017年02月06日発達障害の専門的医療機関が不足している!?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。これまでの記事では、①早期発見について、②発達障害発見後の支援と引継ぎについて、それぞれ総務省による調査の結果と勧告内容についてお伝えしてきました。今回の記事では、発達障害の専門的医療機関の確保に関する調査・勧告内容についてご紹介します。調査対象の18.5%で発達障害の専門的医療機関が確保出来ておらず出典 : 各都道府県において、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければいけないことは、発達障害者支援法に定められています。「都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。 」発達障害者支援法第19条(専門的な医療機関の確保等)では実態はどうでしょうか。今回総務省が19都道府県及び8指定都市の計27団体に関して調査したところ、専門的医療機関を確保していたものは22団体(81.5%)で、残る5団体(18.5%)は確保できていなかったことが明らかになりました。また、専門的医療機関を確保済みの22団体の管内に所在する専門的医療機関から、27機関を抽出し、発達障害に係る初診待機者数及び初診待機日数も調査しました。その結果、約4割の医療機関で初診待機者数が50人以上となっており、その中には最大316人が待機している例も存在しました。加えてその初診待機日数は、半数以上の医療機関で3か月以上となっており、その中には最長で約10か月の例もみられるなど、専門的医療機関の更なる確保が必要な状況がみられたとのことです。なぜ発達障害を診ることができる医者は少ないのか?出典 : 総務省の調査した医療機関の中からは、以下のような意見があがったとのことです。①小児科医が発達障害を診断する場合、風邪等の診察と違って、幼児期の状況や成育歴などを聴き取る必要があり、手間と時間を要するため、診療報酬上のメリットを与えてほしい。②発達障害児に対する精神科医による診察は、その特性上、1 人に対し1 時間から 2 時間費やすことが多く、30 分を大幅に超えるため、現行の「通院・在宅精神療法」の時間区分(30 分未満の場合は 3,300円、30分以上の場合は 4,000 円の 2区分のみ)のうち30分以上を細分化し、その時間区分に見合った診療報酬にしてほしい。③発達障害児に対する小児科医の診察による診療報酬では、「小児特定疾患カウンセリング料」(月の1回目は5,000円、月の2回目は 4,000円)が算定可能であるが、発達障害という特性上、長期にわたり通院が必要であるにもかかわらず、2年を限度にしか算定できないことから、2年という期限を設けないようにしてほしい。太字は引用者注発達障害の専門医となるのは難しい上に、診療の旨味も少ないため、医師にとっても魅力を感じにくい領域なのかもしれません。市町村によっては不安解消のため独自の取り組みを行っています出典 : この度総務省が調査した都道府県及び指定都市の中には、初診待機者の不安解消を図るための取り組みを実施しているところもあったとのことです。ひとつは市町村が医療機関と連携して小児科の診察優先枠を毎月1日設定し、保護者の了解のもと県職員も医療機関の診察に同席、医師、保護者及び県の三者で情報の共有を図っている事例です。そしてもうひとつは、医療機関の受診前や療育前に、市町村の主催で臨床心理士等による親子小集団活動、保護者同士のグループワーク等を「にこにこ教室」として実施している事例です。医療機関の受診などを待っている保護者の不安感の解消が図られていることがメリットとして挙げられています。総務省は専門的医療機関の確保を勧告こういった現状に対し、総務省は厚生労働省に対し、発達障害が疑われる児童生徒が専門的医療機関を早期に受診できるよう、専門的医療機関の確保のための一層の取組を行うことを勧告しました。また専門的医療機関の受診までの間、保護者の不安解消を図る取り組みを都道府県等に示し推進するようにも勧告しています。以上、いかがだったでしょうか。発達障害者支援者法は施行されてからまだ10年と少し。発達ナビではこれからも国の取り組みと状況についてお伝えしていく予定です。
2017年02月02日2歳に近づいてくるころからはじまる「アレやだ」「コレもいやだ」「やだ・やだ・やだ」のイヤイヤ期。第一次反抗期といわれることもある2歳児は“魔の2歳児”とも呼ばれています。まさにイヤイヤ期真っ盛りのお子さんをもつ方もこれから始まるイヤイヤ期にドキドキしている方も必見の、2歳児のイヤイヤ期を上手に乗り越えるためのコツを6つご紹介します。2歳児のイヤイヤ期とは? 子どもは、2歳前後から、「○○しようね」と促しても「イヤだ」と自己主張するようになってきます。それまでは、素直にママやパパなど周りの大人の言うことを聞いていたのに、反抗しているような様子を見せてくるのが、イヤイヤ期と呼ばれる状態です。▼なんでも自分でやりたがるまだうまく自分でできないことでも、自分でやりたがるようになります。たとえば、“靴下を履く”“お茶をコップに注ぐ”など、これまで大人がやってあげていたようなことを「自分でやる!」と主張しはじめるのはイヤイヤ期の大きな特徴です。主張はするものの、まだまだできないことも多いため、挑戦したもののうまくいかずにイライラして泣いたり、暴れたりします。それでも、自分でやらないと気が済まないのが2歳頃のイヤイヤ期なのです。▼まずイヤがるママやパパから何か提案されると、本当はやりたいことであったとしても、まずは「イヤ」と否定してしまうのもこの時期の特徴です。「お散歩に行こう」「ヤダ」、「ごはん食べようか」「イヤ」と何を聞いても、最初に返ってくる答えは「ヤダ」や「イヤ」なので、一緒にいて疲れてしまうというママやパパも多いのではないでしょうか。「イヤ」と言ったものの、本当はやりたかったことである可能性も高いため少し経ってから「やっぱり行く/やる」と言い出すこともしばしば起こります。そんなときにも「そういう時期だから仕方ない」と割り切った対処法にするようにしましょう。▼夜泣きをすることも授乳することもほとんどなくなり、離乳している子も多い2歳のイヤイヤ期に突然夜泣きがはじまることがあります。2歳過ぎからはじまる夜泣きは、怖い夢を見たり、昼間にあったことを思い出していたりすることが理由だと言われています。特にイヤイヤ期は、日中に「イヤイヤ!」と激しく興奮したことで、夜中にその気持ちを思い出して泣いてしまい、夜泣きしやすくなる時期です。ひどいときには、一度起こして「大丈夫だよ」と安心させてあげると収まることがあるため、試してみてくださいね。▼イヤイヤ期って結局どんなものなの? 早い子で1歳半頃からその兆候が見られるようになってくることがありますが、2歳を過ぎ2語文(2つの単語を組み合わせること)以上の長い文を話せるようになってくると、より主張する機会が増えてきます。それは、それまで「こうしたい」という自我がなかったり、自分の思いを言葉で表現したりできなかった状態から、「ぼく/わたしは、こうしたい」という思いが芽生え、言葉で言い表せられるようになってきた証拠でもあります。イヤイヤ期の様子を“魔の2歳児”と表現し、「言うことを聞かなくなる手のかかる時期」だとする見方も多くありますが、これは“自我の芽生え”という大事な成長過程のひとつです。「イヤイヤ」が出てきたら「自我が芽生えてきたな」「順調に成長している証だ」と考えて受け止めてあげましょう。イヤイヤ期はいつから始まっていつ終わるのかイヤイヤ期は「この日からはじまって、○週間で終わる」という決まった期間はありません。個人差も大きいため、同じ兄弟でもイヤイヤ期があっとう間に終わってしまう子もいれば、「まだ終わらないの」と長く感じてしまう子もいます。一般的に、自我が芽生え、言葉が出てくる2歳頃からはじまり、3〜4歳頃にかけて徐々に収まっていくといわれています。終わるタイミングも、ある日突然「イヤイヤ」と言わなくなるのではなく、徐々に自分でできることが増えていき、自分の思いとそのときしなければならないことの折り合いを心のなかでつけることができるようになっていくことで、少しずつ変化が現れるようになっていきます。「いつかはイヤイヤとの格闘も終わる」と気長に構えておくと、ママやパパの気持ちもラクになっていきます。それまでは、コツを押さえた対処法で乗り切るようにしましょう。2歳児のイヤイヤ期にしつけは必要? 「2歳児のイヤイヤ期でのしつけがその後にかかってくる」と言われることもありますが、2歳の自己主張をすべてわがままと捉えて叱ってしまうと、ママやパパも疲れてしまいます。家庭のルールを決め、主張している内容によって必要なときにはしつけをするスタイルを取れるように、まずはママとパパとで話し合っておくのがおすすめです。具体的には、「自分で何かしたい」という欲求から、大人がやってあげようとしたことを「自分でやる」と主張しているときにはできるだけ聞いてあげるようにしても、夜寝る時間になっても「○○したいから寝ない」という主張を通そうとするのは「いけない」こととして言い聞かせるようにするなどです。イヤイヤ期の自己主張は、成長の過程においては重要なポイントとなるものです。ただのわがままなのか、成長のために必要な自己主張なのかの判断は難しいところもありますが、「言うことを聞かせたいのは、ママやパパの思い通りにしたいからではないか」「家のルールに沿えていないことなのか」を常に意識しながら対応し、必要なときにしつけをするようにしていきましょう。2歳児のイヤイヤ期に上手に対応する6つのコツ2歳児のイヤイヤ期にも上手に対応するためのコツを押さえておくことで、ママやパパも笑顔で気持ちよく過ごすことができるようになっていきます。まずは、そのコツを知り対処法を変えてみるようにしましょう。1.時間に余裕をもつと心のゆとりが生まれる イヤイヤ期に、大人がイライラさせられてしまう原因のひとつが“時間”です。特に朝は、サッと準備をして家を出たいのに「靴下や靴を自分で履きたい!」と主張し、やってあげようとするとイヤイヤされてしまうと、待っている間中、大人はイライラしてしまいます。このイライラを解決するコツは大人が“時間に余裕をもつこと”です。家を出るには15分かかると見込んで計画を立てておけば、スムーズに準備ができて5分で出られたらラッキーと思えるようになります。さまざまな場面で想定の倍以上の時間がかかると予想し行動していると、大人がイライラしてしまう回数も減っていき、心のゆとりができるため笑顔で対応してあげることができます。イヤイヤ期には、とにかく時間に余裕をもてるようにすることを最優先にして考えておくのがおすすめです。2.“急がばまわれ”で気の済むまでまずやらせる 急いでいるときほど、「自分でやる!」と言われても「時間がないからママ/パパがやるね」と、自分でやらせずに手を出したくなってしまいます。自分でやりたいと思っているのに、手を出されると子どもは泣いて暴れることもありますよね。結局、やってあげることもできず時間だけがどんどん過ぎてしまったり、無理やりやってあげてしまったことでその後ずっと子どもが不機嫌になっていつもならできることもできなくなったりというパターンも多く見られます。急いでいるときに、「自分で」と主張されたら、まずは気の済むまでやらせてみましょう。まだ自分でうまくできないことであっても、まずはやりたいという気持ちを受け入れてやらせてあげ、途中で「手伝ってもいい?」と声をかけてから手をだすようにします。子どもが自分から「ママやパパにやってもらいたい」という気持ちになるよう、うまくできなくてイライラしてきそうなタイミングを見計らうのがコツです。 “急がば回れ”と心でつぶやきながら、まずは見守るようにしてみましょう。3.選択肢を提示して”選ばせる”「○○して」と声をかけると「イヤだ」という答えが返ってきてしまいます。そのため、何かをやらせたいときには、「自分でやるのと、ママ/パパがやってあげるの、どっちがいい?」と視点を“すべきこと”をするかしないか、ではなく“だれがやるのか”に変えた質問するようにしましょう。イヤイヤ期の子どもにとって大切なことは「自分で選んだ」という事実です。「○○しなさい」「ママ/パパがやってあげる」と伝えてしまうと、「イヤだ/いいよ」の2択から選ぶことになってしまい、多くの子どもは「イヤ」を選んでしまいます。ところが「自分でやるか、やってもらうか」の2択を提示されると、“自分でママやパパにやってもらうことを選んだ”ことに満足してくれるため、無理やりやってあげようとするよりも、スムーズに受け入れてくれることも多くなるのです。選択肢はどちらも“やってほしいこと”にするか、“自分でやるかやってもらうか”にしておくと失敗せずに促すことができます。4.イライラしたら深呼吸あれこれ対策をたてていても、イヤイヤ期にはどうしてもイライラしてしまうものです。特にひどいイヤイヤ状態に陥って、どこでも寝そべってイヤイヤしてしまうようなときには、イライラも増していきます。イヤイヤ期の子どもと接していて、イライラしてしまったときにはまず深呼吸をするようにしましょう。特に、鼻から息を吸い、口からゆっくり吐き出す深呼吸方法がおすすめです。子どもが危なくない状況であれば目を閉じて深呼吸するのも効果的です。5.多少泣かせてもひとりになって落ち着く時間をつくる家のなかでイヤイヤされてイライラして怒ってしまいそうになったときには、多少泣かせたままにしても、トイレや別の部屋に行って、ひとりになる時間をもちましょう。何十分も離れてしまうのは危険ですが、5分程度であれば安全性を確保している部屋に置いておいても大丈夫です。思わず手が出そうになってしまったときにも落ち着く時間をもつことは効果的です。息が詰まりそうだと感じたときには、別室でひとりになるようにしましょう。6.イヤイヤは大事な成長過程だと理解するイヤイヤ期は、心の成長にとってとても大事な成長過程のひとつです。自己主張をし、自分でやろうとする気持ちが育ってきた証拠でもあり、“自分の気持ちとすべきこととの折り合いをどうつけていくか”や“我慢を覚える”ということにもつながっていきます。イヤイヤ期真っ盛りには、とにかく早く終わってほしいと願うものですが、面倒な時期ではなく、子どもの成長を強く感じられる期間だと考えを変えて対応するようにしてみましょう。イヤイヤしている姿を見て、「自己主張できるようになってきたなんて順調に成長しているな」と思えるようになったら、ママやパパにとってもこの時期が楽しいものとなっていくはずですよ。イヤイヤ期にパパにしてほしいこと子どもと接している時間はママのほうが長いというケースも多く、イヤイヤ期に対応するのもママであることは多いものです。何もかもが一筋縄ではいかないイヤイヤ期には、ママもイライラしたり、フツウに過ごすだけでもぐったり疲れてしまったりします。そんなときに、パパにしてほしいことは「大変だということを理解する」「ママと話し合って家庭のルールを認識しておく」の2つです。まずは、どうしてママがそこまで疲れているのかイヤイヤ期の大変さを理解してあげましょう。子どもと一緒に過ごすことで大変さを知ることもできますが、まずはママの話を聞いてあげるのがおすすめです。日々どんな大変なことがあったのかを聞いておくことで、子どもの姿をイメージしやすくなります。話を聞くときにはアドバイスしようとするよりも、ただママの話を聞いてあげるようにすることもポイントです。また、ママを休ませてあげたいと子どもと一緒に過ごすときに、パパがママとは違った対応をしてしまうと子どもは「どちらが正しいのか」がわからず混乱してしまうことがあります。ママと話し合って家庭のルールを把握し、イヤイヤ期の接し方を身につけておきましょう。2歳児なのにイヤイヤ期がない!? 2歳を過ぎてしばらく経ってもイヤイヤ期が一向にやってこないように思える子もなかにはいます。「イヤイヤ期がなくていい子だな」と思っていたら自己主張がうまくできない子だったということもあるため、まったくないときには注意して見てあげることも必要です。しかし、なかには、ママやパパの自然な対応が子どもに合っていて、自己主張はしっかりしているものの、いわゆるイヤイヤ期と言われる状態になっていなかったり、それをイヤイヤ期だと認識していなかったりするケースも見られます。イヤイヤ期は、絶対あるものでも必ず大変になるものでもありません。「イヤイヤ期がないかも?」と思ったときには、「自分はこうしたい」「自分でやってみたい」という自我がしっかり芽生えているかを見てあげ、問題なく成長している様子が見られれば心配ありません。「ないと思っていたら突然はじまった」ということもあるので、「そのうちはじまるかもしれない」とおおらかな気持ちで構えておくことをおすすめします。イヤイヤ期の子どもと接していると、イライラしたり、つい叱りすぎてしまったりとママやパパも疲れてしまいがちです。今回ご紹介した6つのコツを押さえて上手に乗り越えて、家族みんな笑顔で過ごせるようにしていきましょう!<参考>『乳児保育の実践と子育て支援』榊原洋一・今井和子編著/ミネルヴァ書房/2007年4月20日初版第4刷発行
2017年02月01日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日子どもの発達障害診断が終わった直後、「お母さんも、あるね」出典 : 8年前に、子どもを連れて初めて精神科を訪れた日のことでした。予約時に「受診日には母子手帳を持ってくるように。」と言われていたのに、言われていたことすら忘れてしまい、母子手帳を持参しませんでした。子どもの診察が終わり、子どもには発達障害があると診断をした次の瞬間、病院の先生が私に言いました。「お母さんも、あるね」そしてこう続けました。「息子さんと貴女は似てところが沢山あるでしょう?お母さんもありそうだから、診察受けてみたらどう?お薬も出すよ。楽になるよ。」あまりに軽々しく言う先生の言葉を信用できずにいました。当時の私には、「楽になるよ。」と言う言葉が悪魔の囁きにすら聞こえたのです。発達障害の診断を受けることは、「逃げ」だと思っていた出典 : 子どもたちが発達障害と診断を受けて、通院しながらお薬飲んでいるのを見ると、私は羨ましく思う気持ちが生まれ、「私も子ども達のお薬を飲んでみたい」と何度も思いました。私は幼少期から忘れ物や宿題忘れが酷く、先生にきつく叱られた時には「明日は必ず忘れ物しないようにしよう。宿題は必ずやろう。」と決意するのですが、帰宅すると宿題の存在自体を忘れたり、さらには学校に勉強道具の忘れ物をする始末。数学や社会なども、教科書の文字全部が飛び込んでくる感じがして、どうしても覚えるということができませんでした。結婚して家事をするようになって困ったのは、片付けられないこと。1つのことに集中して片付ける、ということがどうしてもできませんでした。1番困ったのは鍋に火をかけたまま忘れること。いったい何度鍋の中身を真っ黒に焦がしたか分かりません。他にも財布をなくす、鍵をなくす、保険証をなくす、いろいろありました。探し物をするだけでクタクタに疲れてしまう日々でした。それなのに受診を拒んだのは、「私には診断が必要ない」、「診断を受けるのは、頑張ることから逃げることだ」という風に思えてしまったから。本当は、日常生活にたくさんたくさん困っていた。私は、それを認めたくなかったんだと思います。それでも、子ども達のカウンセリングを通じて少しづつ自分を知っていきました。子ども達が成長し、子育ての手が少しづつ離れてくると、ようやく自分と向き合ってみようかな?と思うようになってきました。そこである日、思い切って精神科での検査を受けてみることにしたのです。「忘れ物をするのは、あなたのせいじゃないんだよ」精神科で受けたのは、特性を見るための様々なテストです。そこで再確認したのは「私って覚えておくことが本当に苦手なんだな。」ということでした。次に感じたのは「子ども達はこんなしんどい検査を受けてたんだな。」ということ。子どもが経験した事を私も体験する事ができて嬉しく思いました。そして、私を検査した心理士さんからは心強い言葉を沢山いただけました。出典 : 心理士さん「あなたは人当たりやさしく気を使えるので、周りと上手くやっていけるタイプ。でも、本当の気持ちを言えているかは疑問。言いたい事を言えるようにしていきましょう。でも、自分の中に入ってくる情報が多過ぎるので、どうしても抱え込んでしまいがちになります。うまく休養をとっていきましょう。湧き上がるやりたいという衝動は、創造性が豊かということです。それからあなたのような人は、アイデアがポンポン出てくるあまり、あれもやりたいこれもやりたいとやり過ぎる傾向があります。そういう人は、なんでも自分でやろうとするのではなく、プロデュース業を仕事にすると良いです。貴女の創造性と人との関わりは素晴らしいところです。その素晴らしいところは消す必要はないですよ。ただ、少し荷を下ろす必要はあると思います。5つあるとしたら、3つにするとか。少し整理すると良いでしょう。忘れ物することは貴女のせいじゃないからね。そこは周りに助けてもらいましょう。後は周りに気持ちを伝えられるように、頼ったり甘えたりできるように、少し言葉を工夫して伝えていきましょう。自分が思う自分と、周りが思う貴女とでは、大きなギャップがあるように思います。そのギャップが、少し人間関係を難しくしてるようです。でも、お子さんを通して自分と向き合ってきて、おおよそ私から言われる事が予想できているようですから、今回のことは『あぁ、やっぱりそうか』と納得するのではないでしょうか?今回、テストを受けて自分と向き合うと決めたことは良いことですよ。それと、処理能力が遅いのもあり、仕事を失敗しないように丁寧にしようとすることで仕事の能率が悪くなりやすいようです。苦手なことはどんどん人に委ねていきましょう。」などなど…私の特性を説明するだけでなく、その活かし方まで伝えてくださる方でした。後は、日常生活での具体的な対応の仕方や言葉遣いの工夫なども教えてくれました。カウンセリングでの言葉を聞きながら「あぁそっか!そう言えばいいのか!」と納得しました。知ることって大事だと再確認できました。1番安堵したのは「忘れ物をするのは貴女のせいじゃないからね。」という言葉。努力だけでは乗り越えられないものがあると分かり安心しました。今回の心理士からの言葉から、やりたいという衝動が多い末っ子の「学校がつまらない」という言葉を意味を初めて理解しました。末っ子にとっては、自分の衝動性を満足させるものが学校にはなかったのだということに、初めて気付きました。自分の特性を知ることは、子ども達の発達障害の特性を理解するのにも良い参考材料となったのでした。診断を受けても変わらないもの出典 : テストの結果とその後の医師の診断から、私も子ども達と同じように発達障害があることが分かりました。結果が出たとして、私という存在は変わりませんし、これからも変わりません。変わるとしたら社会の目かもしれません。でも、今回の結果から、分かった事を利用して生活を豊かに過ごすことはできます。苦手を少し楽に過ごす工夫もしやすくなりました。得意なことはより自信を持って進んでいけます。診断を受けるまで長い年月がかかりましたが、今は勇気を出してテストを受けてみて良かったなと思っています。
2017年01月26日もっと自由に、もっと気軽に、語り合える場所にしていきたい。Upload By 発達ナビ編集部本日1月26日、LITALICO発達ナビはオープン1周年を迎えました!オープンから今日まで、たくさんのユーザーさんからの応援の声やアドバイスをいただきながら運営して参りました。1年間、本当にありがとうございました!記念すべき1周年の日に、発達ナビから新しい機能をリリースしました!【新機能はこちら】発達ナビトップページからオレンジ色のボックスをチェックしよう!「発達障害にかかわりのある発達ナビユーザーさん同士だからこそ、共に語り合えることがある」という趣旨のもと、気軽に投稿し、交流できる新たな機能です。発達ナビの新コーナー「みんなのアンケート」って?Upload By 発達ナビ編集部気になる新機能の名前は「みんなのアンケート言いたい!聞きたい!」というアンケートコーナーです!現在、発達ナビのトップページである「タイムライン」には、FacebookやTwitterのようにフリーテーマで気軽にだれでも投稿ができるようになっています。今回の新機能は、「発達ナビユーザーさん同士だからこそ、他のみんなにも意見を聞いてみたい、考えや工夫を教えてほしい!」という具体的なテーマを設けて、みなさんから投稿を募集するというものです。これまでのようなフリーテーマでの投稿だけでなく、発達ナビユーザーさん同士で、同じテーマに紐付けて子育ての考えや出来事を共有していくことができます。笑いあり、涙あり、学びあり…!と様々なテーマを考えておりますので、ぜひみなさんも参加してみてくださいね。例)・これってADHDだから?何年たっても変わらない「わたしあるある」を募集!・子どものかんしゃくはいつ起こる?!発生エピソードを5・7・5で大募集「かんしゃくカルタ」・療育手帳の取得、家族でどんな話しをした?みんなの体験談を教えてください「みんなのアンケート言いたい!聞きたい!」はどこにあるの?「みんなのアンケート」の募集テーマは、タイムライン上に以下の図のようなオレンジ色のボックスで掲載されています。テーマは一定期間で次々と変更していく予定です。Upload By 発達ナビ編集部「みんなのアンケート」にはどうやって投稿するの?オレンジ色のボックスをクリックしていただくと、アンケート投稿の一覧ページにうつります。一覧ページにある投稿フォームを使って、投稿内容を書き込んでいただく仕様になっています。Upload By 発達ナビ編集部投稿していただいた内容は、タイムライン上、アンケート投稿一覧、ご自身のマイページの3つに表示されます。タイムライン上は、新着の投稿から表示されるようになっていますので、マイページの投稿履歴からの確認がおすすめです。タイムライン上かご自身のマイページから、アンケート投稿のグレーボックスをクリックしていただくと一覧でみることができます。Upload By 発達ナビ編集部マイページの投稿履歴にはこのように表示されます。Upload By 発達ナビ編集部タイムライン上かご自身のマイページから、アンケート投稿一覧へ移動します。そこにある投稿フォームより再度入力をお願いします。Upload By 発達ナビ編集部みなさんの投稿、お待ちしております!さっそくアンケート投稿をしてみるご利用上の注意事項のご案内 利用規約・ガイドラインについて投稿いただく際の注意事項は以下の通りです。【1】タイムラインの投稿は、誰にどこまで公開されるの?・ログインをしていないユーザーさんも一部閲覧可能です・コメントや♡を出来るのは、会員ユーザーさんのみとなります【2】 テキスト・画像を投稿するときの注意事項は?タイムラインにご投稿いただく際は、他者の著作権を侵害することの無いよう、以下の点にご留意ください。◇テキストについて書籍や記事等で他者が執筆した文章を投稿する場合、"引用符"で区切った上で出典を明記するなど、引用の要件に注意して、無断盗用・剽窃の無いようご注意ください。気軽な日常の投稿はじめ、ご自分で書き下ろしていただいた文章はお気軽にご投稿いただいて大丈夫です。◇画像について他者の著作物である画像の無断転載はご遠慮ください。・ご自分で撮影された写真など、ご自分に著作権がある画像・フリー素材サイトの写真など、自由利用が許可された画像などはご投稿いただいて大丈夫です。文化庁: 「著作権なるほど質問箱」【3】利用上の規約やガイドラインはあるの?LITALICO発達ナビ全体で、ユーザーの皆さまに守っていただくルールとして、「利用規約」がございます。一人ひとりの権利を守り、サービスを安全に維持・運営していくための、運営会社である株式会社LITALICOと、お客様であるユーザーの権利義務関係を定めた大切な「お約束」です。こちらも併せてご確認の上、タイムライン投稿をご利用ください。りたりこ)発達ナビ利用規約また、医療情報を含む投稿に関しては、以下のガイドラインもご参照ください。ユーザーさまによる医療情報に関する投稿の取り扱いについてこちらは2017年1月26日時点の仕様となっており、以降デザインや機能などの変更をする場合もございます。ご理解のほどお願いいたします。
2017年01月26日こんにちは、イラストレーターの栗生ゑゐこです。「魔の2歳」という言葉があるように、イヤイヤ期と言えば2歳児の印象が強いですよね。しかし、赤子の面影を残す1歳児もその片鱗をチラつかせつつあり、なかなか油断なりません。今回は、わが家で観測された1歳児のイヤイヤポーズをご紹介いたします。1歳児のイヤイヤその1 伸びちぢみする小さい子が、抱っこされたくないときにこんな姿勢をとることはありませんか? わが子は湯船から出されたくないとき、全身をまっすぐにし、こんなイヤイヤ体勢をとります。あまりにも体がまっすぐになるので笑っていたら、どうやら味を占めたらしく、2回目以降はわざとやっているフシがあります。もはや様式美ですね。着地は体を「く」の字に折りたたんで抵抗するか、バレエダンサーのようにつま先を伸ばし、そのまま床に置かれないような工夫を施したりしています。そこそこ重量があるので、いつか腰がやられそうでドキドキしています。1歳児のイヤイヤその2 反り返る自転車や車のチャイルドシート、飲食店のベビーチェアの上で見られるイヤイヤポーズ。「バネが入っているのかな?」と思うほど勢いよく反り返るのですが、時間が差し迫っている時などにこれが始まると「…チッ!」と心の中で舌打ちしてしまう私がいます。1歳児のイヤイヤその3 全力死守先が尖っているペンのような、持って欲しくないものを取り上げようとすると全力で死守しようとします。取り上げようとしていることを気づかれたり、もみ合いになるとかえって危ないので、刺激しないよう優しく説得しつつ、油断した瞬間さっと取り上げます。人質をとって立て篭り中の犯人にスピーカーで語りかける母親と、裏から突撃する機動隊を頭に思い描きつつ…。1歳児のイヤイヤその4 横になるこちらはイヤイヤ期のお手本のようなごろ寝ポーズ。仰向けのまま上方へずりあがってみたり、もも上げ運動のように両足をバッタンバッタンさせるなどのアレンジを観測したこともあります。面白いのが、「えーん えーん」とわざとらしい泣き声をあげながら親の様子をチラチラとうかがっている時。バリエーション豊かなイヤイヤフォームに1歳児の成長を感じずにはおれません。イヤイヤは子どもの成長の証。とは言え、実際接する人間としては「そんな悠長なこと言っていられないわ!」という場合がほとんどです。じっくり鑑賞できるくらいの余裕を持ちたいなと思うこのごろです。
2017年01月18日発達指数とは出典 : 発達指数とは、日常生活や対人関係などにおける子どもの発達の規準を数値として表したしたものであり、DQ(Developmental Quotient)とも言います。子どもの成長には個人差があり、一人ひとり異なる特性を持っています。しかし個人差がある一方で、発達の道筋や順序には共通して見られる特徴があります。子どもは成長するにつれて、視野を広げ、認識力を高め、まわりの人との関わりを深めていきますが、その経験が次の成長のステップにつながります。子どもが成長していくには、それぞれの発達段階に合った生活を送ることが大切です。そのため、発達を客観的に知るものさしの一つとして発達指数が使われています。発達指数は発達検査と呼ばれる検査によって知ることができます。発達検査で分かる「発達年齢(発達の状態がどのくらいの年齢に相当するか)」を「生活年齢(実年齢)」で割り、100を掛けて算出します。発達年齢と実際の年齢が同じ場合、発達指数の値は100と計算できます。そのため平均は100前後とされていますが、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。参考:子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題|文部科学省参考:発達検査とは?|てんかん情報センター発達指数を知ることができる年齢は?出典 : 発達指数を計ることができる検査としては、主に「新版K式発達検査」と「遠城寺式乳幼児発達検査」の2つが挙げられます。新版K式発達検査であれば生後100日後から成人まで、遠城寺式乳幼児発達検査であれば0歳0ヶ月から4歳8ヶ月まで、発達指数を計ることができます。適用年齢は幅広いですが、主に就学前の子どもが発達検査を受けることが多いです。小学生以上であれば、発達状態を計るよりも、知能検査によって知能を計るほうが一般的だからです。ただし知的障害がある場合など、知能検査だけでは発達の状態や障害の度合いを把握することが難しいケースでは、成人でも発達検査を受けることがあります。参考:発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン|厚生労働省発達指数を調べる目的出典 : 発達指数を調べる主な目的は、1. 子ども一人ひとりの発達状況を理解すること2. 発達段階に合った適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知ることの2つです。注意点として、乳幼児においては、検査を受ける際の子どもの状態や環境に左右されるため、発達指数の値は変動しやすいといったことが挙げられます。そのため1歳6ヶ月健診などにおいて、発達指数の値が低く出てしまったために、軽度の知的障害の可能性を指摘される場合もあるようです。しかし知的障害があるかどうかの判断は、発達検査や知能検査の結果を長期的に把握しながら行う必要があります。発達指数はあくまで発達状態を知るものさしの一つです。発達指数だけでなく、発達検査から分かる発達の特徴、検査を受けている時の様子、日常生活の様子を総合して発達状態を判断することが大切です。発達指数の値だけにこだわるのではなく、定期的な検査結果から分かるお子さんの発達のペースや発達の特徴に注目するようにしましょう。発達指数と知能指数の違い出典 : 発達指数が子どもの発達の基準を数値化したものであるのに対し、知能指数とは人の知的能力(認知機能)の基準を数値化したものです。ここではそれぞれがどのように使われているのか、適用年齢に差はあるのか、検査内容の違いについてご紹介します。・目的発達指数は一人ひとりの子どもの発達状態を知る、知能指数は知的能力の発達に遅れがあるかどうかを知るために使われるものです。適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知るという目的はどちら検査にも共通していると言えます。知能指数と発達指数のどちらを用いるかは、年齢や障害の程度、疾患の種類などによって変わってくるため、専門家の判断によります。また知能検査と発達検査の両方を受ける場合もあります。・適用年齢発達指数は0歳から成人まで計ることができます。就学前の子どもが発達検査を受けることが多いですが、成人でも発達や障害の程度を知るために発達検査を受けることがあります。一方、知能指数は2歳から成人まで計ることができます。子どもに発達障害がある場合、乳幼児期からその兆候が表出することも少なくありません。しかし発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だとされています。乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。・検査内容発達指数は発達検査によって知ることができ、知能指数は知能検査によって知ることができます。発達検査はガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料を用いた検査です。それに対して知能検査は主に小学生以上を対象としているため、言語や書字などを用いて回答する問題が多くあります。知能指数も発達指数もその数値だけで、障害や疾患の確定診断をすることはありません。発達検査や知能検査を受けたとしても、診断を受けるかどうかは、本人や保護者の希望によります。乳幼児健診などにおいて、発達の遅れの可能性を指摘された場合も一度の検査だけでなく、定期的な発達検査の結果によって疾患や障害を見分けたり、診断していく場合が多いようです。さらに2歳からは知能検査を受けることができるため、だんだんと知能検査を中心に受けることになります。障害や疾患によっては、年齢が上がらないと見分けられない場合もあるため、長期的にお子さんの成長を把握していくことが大切です。発達検査を受けることで広がるメリット出典 : 発達指数と発達検査から分かることを組み合わせてどのようなメリットがあるかご紹介します。・相談機関で子どもの成長に対するアドバイスをもらえる児童相談所などの相談機関では、「検査報告書」をもとに今後のお子さんの成長に対してアドバイスをもらえます。「検査報告書」は発達検査を受けたあとにもらえるもので、検査結果や今後日常生活において注意すべきことが記載されています。発達指数の値は「数値結果」欄にあります。相談機関によるアドバイスによって、例えばお子さんの苦手な部分に対し、「なぜ苦手なのか」を知ることができます。また苦手なことだけでなく、お子さんの検査に取り組む姿勢やプロセスなども教えてもらえるため、「総合的にどう成長しているか」を把握することができます。・小学校就学のヒントを得ることができる発達検査から分かることを小学校就学の際に活かすことができます。家庭では特に気になることがない子どもでも、幼稚園などで集団生活に参加することで困りごとが現れる場合もあります。そのような場合、小学校就学を前にして不安になる保護者の方も少なくないようです。お子さんの発達に気になる点があれば発達検査を受け、早めにお子さんの得意・不得意を把握しておくことで、小学校就学後にもどのような支援をしていけば良いか、検討しやすくなるでしょう。さらに発達検査の結果や発達指数の値によっては、療育手帳をもらえる場合があります。療育手帳があることで、特別支援学級といった就学の選択肢を広げることができます。療育手帳については、記事の後半で詳しくご説明します。発達指数を知りたい時は?出典 : 小さいお子さんの場合は、乳幼児健診の際に相談してみましょう。乳幼児健診では、お子さんの身長・体重測定や診察のほかに、日頃の疑問点や悩みごとについて質問できます。特に保健センターで受ける場合は、医師、保健師、心理士などの専門のスタッフに相談することができます。また乳幼児健診では、発達の遅れの可能性を見極める精密検査が必要かどうかを判断するスクリーニングが行われます。スクリーニングにおいて気になる兆候が見られた場合は、保健機関での相談、発達検査の受検、医療機関での2次スクリーニングなどをすすめられることがあります。そのほかで発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くと良いでしょう。子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。発達検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診すると良いでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。検査を受ける際は、まず病院に問い合わせてみましょう。さらに発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達指数を知ることができる発達検査の内容出典 : 発達検査にはさまざまな種類がありますが、この章では主に発達指数を知ることができる2つの検査について紹介します。これらの検査は、任意で受検することも可能ですが、基本的には相談機関や病院ですすめられて受検することが多いです。適応年齢:生後100日後~成人検査項目:328項目(「姿勢・運動領域」、「認知・適応領域」「言語・社会領域」の3領域で構成)それぞれの年齢において、一般的と考えられる行動や反応と、対象となる方の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。適応年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月検査項目:151項目(移動運動、手の運動、基本習慣、対人関係、発語、言語領域)「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。上記の発達検査は発達指数や発達の全体像を知る検査です。これらの検査結果をふまえたうえで、特定機能の発達を計る検査と組み合わせることもあります。なぜなら発達指数の値が正常だった場合でも、異なる検査によって発達における課題を見つけることができるからです。例えばIPTA言語学習能力診断検査であれば、学習障害や言語発達の遅れを見つけることができます。発達検査を受けてもお子さんの発達に心配な点がある場合は、他の検査を検討してみても良いでしょう。発達指数の値によって療育手帳をもらえることも出典 : 発達指数の値だけで受けられる支援はありませんが、発達指数の値は療育手帳の取得判定の際に参考とされます。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された場合や、知能指数が75以下(自治体によっては70以下)の場合にもらうことができるとされています。乳幼児の場合は、知能指数の代わりに発達指数を指標とすることができます。療育手帳を貰う流れとしては、まず発達検査を受けて発達指数を知り、指定された医師による診断書を用意する必要があります。注意点として、知的障害の程度は年齢とともに改善が見られることがあるため、療育手帳の更新ごとに障害の等級が変わるということが挙げられます。特に乳幼児においては、発達指数の値は変化しやすいので、更新期限までに必ず再判定を受け、適切な支援を受けられるようにしましょう。障害の判定は発達指数に加えて、日常生活における能力を総合して行われます。療育手帳の基準は地域によって異なりますが、参考までにここでは東京都が交付している「愛の手帳」の例をご紹介します。◇判定基準知能測定値、運動、社会性、意思疎通、身体的健康、基本的生活の6項目を0歳~6歳の子どもの判定基準としています。知能測定値として、知能指数や発達指数を用います。◇区分知能指数や発達指数の値と日常生活における能力を総合し、最重度~軽度の4区分に判定されます。参考:愛の手帳|東京都福祉保健局療育手帳を貰うことで以下のようなメリットがあります。・保育園入園時など保育・教育面での援助・公共交通機関などの割引・レジャー・スポーツ施設などの割引・給付・税の減免や控除に役立つ・就労に向けての支援さらに療育手帳を持っていることで特別支援教育を受けたい際に役立ったり、特別児童扶養手当を貰えたりする場合もあります。自治体によって異なるため、地域の相談機関に相談してみることをおすすめします。まとめ出典 : 発達指数はあくまで発達の度合いを計るものさしの一つです。発達指数の値が低いからといって障害があると決めつけることはできませんし、年齢によって改善されることもあります。そのため発達指数の値だけを見て思い込みをせず、発達検査から分かるお子さんの得意・不得意にも注目し、サポートにつなげることが大切です。客観的、総合的に成長を捉えることで、お子さんに合った学習指導や支援を見つけることができるでしょう。お子さんの発達が気になる場合は、児童相談所などの相談機関に相談し、長期的にお子さんの成長を把握していくようにしましょう。岩﨑 清隆・岸本光夫/著『発達障害の作業療法実践編』2015年三輪書店小山正/著『乳幼児臨床発達学の基礎』2006年培風館/刊
2017年01月09日