子育て情報『海外論文「ASD児における第二言語習得の認知的利点」レビュー記事を公開!』

2023年1月19日 12:15

海外論文「ASD児における第二言語習得の認知的利点」レビュー記事を公開!

の能力を測るときには、多くの研究者が「誤信念課題」と呼ばれるタスクを使っています。このタスクは、相手がこれから取る行動をうまく見極められるかどうかを見ることで、他者の立場に立つ能力を調べるものです。定型発達児を対象にした先行研究では、バイリンガル児の成績がモノリンガル児よりも優れていることが示されています。
例えば、4歳時点で相手の立場に立つことができた子どもの割合は、バイリンガル児60%に対し、モノリンガル児がわずか25%だったことを報告しています(Kovacs, 2009)。これらの知見を踏まえ、Peristeriら(2021)の研究は、次の二つの問いに答えることを目的としました。

1. ASDの子どもがバイリンガルであることは、他者が自分とは違う心を持っていること(誤信念)の推論における困難を軽減する役割を果たしうるか?(バイリンガリズムによって、他者の立場に立ちやすくなるか?)
2. バイリンガリズムが困難を軽減する可能性があるとすれば、どのような認知メカニズムがそれを支えているのか?例えば、抑制、ワーキングメモリ、注意の転換、メタ言語知識の能力など。

この二つの問いに答えるため、6~15歳のバイリンガルASD児43名、モノリンガルASD児60名、計103名を対象に、他者の立場に立つ能力を評価するテスト(誤信念課題)を行いました。テストは、1、二人のキャラクターが登場する、さまざまなストーリー展開の短編アニメを見せる、2、アニメを見終わった子どもに、ストーリーの登場人物が最後に取った行動が適切だったかどうかを答えてもらう、という内容です。
登場人物が自分とは違う視点を持っているかもしれないことを理解していなければ、正解することができません。

■ 実験結果「バイリンガルはモノリンガルよりも他者の立場に立つ能力が優れていた」
分析の結果、バイリンガルのASD児のほうがモノリンガルのASD児よりも、ストーリーの登場人物の視点に立って正しく回答することができ、回答の正確さに有意差がありました。論文の著者らは次にように結果を分析しています。
1)バイリンガルの子どもは、話す相手によって、どの言語をどのように使うかを常に考えなければならない(Grosjean, 2010)という説明。つまり、それが相手の立場に立つ練習になるということ。
2)モノリンガルよりもバイリンガルのほうが実行機能(目標のための計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する脳機能)

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