2016年3月1日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (52) カレー沢薫、「ゆとり」「さとり」を語る
キャラを演出するため、自己紹介で「猟奇殺人鬼に興味あります」とドヤ顔で吹かしてみたり、極めつけに一人称が「ボク」になったりと、まあ全部自分のことなのだが、1ミリ先も見えない暗黒道に身を投じはじめるのだ。
それから、十年余り。今の私はどこにでもいる、小汚い人となった。たまに一人称が「拙僧」になったりもするが、少なくとも当時のように悪目立ちはしていないと思う。
しかし、これは年を取って落ち着いたからとか、自分を客観的に見られるようになったからではないということが30を過ぎてわかった。ただ「やらかす」元気と、自分に対する期待がなくなっただけなのだ。
現に、20代の時の「車で片道3時間かけて、そこでしか売ってないド派手なデザイナーズブランドの服を買う!ただし高くて一式は揃えられないので、しまむらで買ったデニムとあわせるという上級ハズしテクを使う!ボクのセンスならヤレる!」みたいな元気、行動力、自信がもうないのである。
そんなことをするより自宅から五分で行けるユニクロに行くし、それすら行くのが面倒なので、服を買うのは2年に1回ぐらいになっている。
このように「やらかし」というのは、主にチャレンジ精神が引き起こすので、それがなくなると起こらなくなるものなのだ。