2024年3月12日 14:42
【『不適切にもほどがある!』感想7話】クドカンがちくりと刺すドラマと伏線
この人達の承認欲求はここで満たされてるわけですから」という羽村由喜(ファーストサマーウイカ)のセリフが、非常に耳が痛い。
SNSと切っても切り離せぬ令和のテレビ制作・視聴を描くこのエピソードで、とりわけ印象深かったのは、純子をデートに連れ出したナオキ(岡田将生)が淡々と語った『好きなドラマ』の評価だった。
「ぼく、ドラマって全部通して見たことないんですよね。たまたまテレビつけたらやってて。6話とか7話だけ見て。
その回が好きならぼくにとってそれは、好きなドラマです」
おそらく今この国で一番巧妙に伏線を張り、ストーリーの美しい多面体を構築する脚本家・宮藤官九郎が書き上げたこのセリフ、複雑な余韻の言葉を噛みしめてみる。
本来は一つのフィクションを楽しむのに、初回から画面の隅から隅まで注視してSNSで語りあう楽しみ方も、あるいは言葉として語らず胸の中で噛みしめる楽しみ方も、ナオキのような偶然の断片的な楽しみ方も、正誤も上下もないはずである。
楽しみ方に『べき』はない、好きに見てくれればいいというなんとも風通しのいい、力の抜けたセリフ。
同時に、どこから入ってもらっても構わないという意味で、プロとしての矜持を感じさせる言葉でもあった。