そこで昨年、同じような悩みを抱えた友人らと、プロのヘアメイクをやっている知人のTさんにお願いして、パーソナルメイクレッスンを受けた。するとこれが本当に画期的だった。このときのTさんの教えによって、私は大きな気づきを得たのだ。
Tさんの基本的な考え方は、“歳を重ねれば重ねるほど、化粧は極力シンプルにしていくべき”というものだった。シミやクマといった肌の粗を、カバー力の高い下地やファンデーションで塗り隠そうとしてはいけない。なぜなら老けて見えるからだという。
……この「老ける」という言葉もまたざっくりしすぎで語弊を招く。私達はこの言葉を無自覚に使うことによって、自動的に「加齢は悪」という印象の強化を後押ししてしまっているけれど、厳密に言うと私達は年齢より上に見えることが怖いのではないのだ。
元気がないように見えたり、古いものに固執しているように見えるのが嫌なのだ。だからくすんで見えない肌を作るし、血色の良く見えるチークを入れる。化粧によって作られた自分によって自分が鼓舞されるためにも、元気に、健やかに見える自分でいたい。
そんな私たちの本音を知り尽くしたTさんは、あえて下地も、カバー力の高いファンデーションも使わない。