私の愛する香り。セント・オブ・ピースと歩み進める人生の続き【猫川舐子】
直感的に「いい香り!」と思うものを次々に購入し、手元には香水のボトルが増えていきました。
女友達との華やかな夜にはトム フォードのヴェルベット オーキッドを纏い、ビジネスシーンでは凛とした印象を漂わせるメゾン フランシス クルジャンのフェミナン プルリエル。
ダークリップを楽しむ日には、ピリっとした雰囲気にブラックベリーの酸味がシンクロする、ジョー
マローンのブラックベリー&ベイ……。
装いやメイクを変化させるように、香りとシーンのイメージを結びつけて、さまざま楽しみながらも、気分に左右されないコアとなる1本が欲しかった。
長きに渡り探し求め、行き着いたのは、かつて愛した香りに非常によく似たボンド・ナンバーナインのセント・オブ・ピースでした。
■セント・オブ・ピースと共に歩み進める、人生の続き
思わず過去へ回帰してしまいそうなほどに良く似た香りは、二度と迎え入れてはならないものであるはずでした。香りがトリガーとなり、引き出されたくない過去の記憶が蘇ってくることを恐れていたからです。
しかし、エクラ・ドゥ・アルページュを手放してからの数年で幾分タフになったのか、過去を思い起こすことはありませんでした。