女性ホルモンの量が減ることで、特有の症状が出たり病気にかかったりするのであれば、
ホルモンの分泌量を増やせばいい、ということになります。
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そこでよく登場するのが
HRT(ホルモン補充療法)や
漢方、
サプリメントというキーワード。いろいろあってよくわからないし、わたしにも必要なものかしら? と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
どうやったら女性ホルモンを増やせるの?
「更年期障害」や「プレ更年期」なんてまだ先のこと、と思っていてはいけません。アラフォー女子はすでに女性ホルモンが減少している年代。老化していく自分の身体のことを知り、今からしっかりと対応していくことが重要です。
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「老化してホルモンを出せなくなった卵巣の機能を取り戻すことは、残念ながらできません。サプリメントや食事で“女性ホルモンをアップする”という言葉もよく使われますが、ホルモンを直接増やせるわけではありません。
現実的に増やすことができるのは、HRT(ホルモン補充療法)だけ。
例えて言うなら、砂漠を渡りきるためにラクダに
栄養と水分を補給するのが
HRT、何日も
水なしで生きられるラクダ体質に改善していこうというのが
漢方です」と教えてくださるのは、日本のHRT(ホルモン補充療法)の先駆者である小山嵩夫先生。
小山嵩夫先生 Profile
婦人科医。専門は生殖内分泌学、女性の健康増進。日本のHRT(女性ホルモン補充療法)の第一人者として知られる。1996年、女性の健康管理を目的としたクリニック「小山嵩夫クリニック」を銀座に開業。
「NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア」および「一般社団法人 日本サプリメント学会」理事長として、更年期前後から元気に生きるための啓発活動を行っている。著書に『遺伝子を調べて選ぶサプリメント』『女性ホルモンでしなやか美人』(ともに保健同人社)、『40歳であわてない! 50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」』(角川学芸出版)など。
http://koyamatakaoclinic.jp
HRT(ホルモン補充療法)は、究極のアンチエイジング法!
HRTとは「Hormone Replacement Therapy」の略で、女性ホルモンを薬剤によって補う療法。女性ホルモン(エストロゲン)の量が以前のように戻れば、更年期症状を
緩和するだけでなく、閉経後にリスクの高まる
骨粗鬆症や
動脈硬化の
予防にもなります。
何より女性ホルモンによって美しさを保たれている髪や肌にも
潤いが戻り、
美と健康の底上げができるのがメリット。
HRTが究極のアンチエイジングと称される理由はそこにあります。
でも、50代のホルモン量をいきなり30代の量まで戻すわけではありません。基本的には、更年期症状を抑えることができる必要最小限の量をプラスするもの。
閉経後の女性ならホルモン量を40代半ば程度にアップさせるという具合です。
薬剤のチョイスや量の調節や補充のタイミングは、医師と患者さんとの細やかなやりとりで、的確に判断されなければなりません。
HRTの処方はまさに
オーダーメイドなのです。
HRT(ホルモン補充療法)が
日本であまり普及していない理由とは?
欧米諸国では、すでに40年以上前から盛んになっていたHRT(ホルモン補充療法)。日本での普及は格段に遅れているのが実情です。国民性のせいか「人工的にホルモンを足すなど、不自然なことまでしなくていい」という考えを持つ人がいることが、普及が遅れた原因のひとつだとか。
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さらに国内では「HRTを続けていると乳がんになる」という報道がされたことがあり、医師でさえもHRTに偏見を持つ人が少なくないと言われます。
「発端となったのは、米国で2002年に発表されたWHIの報告なんです。
5年以上HRTを続けると、乳がんのリスクが26%上がるというもの。でも、この臨床試験には大きな問題がありました。
サンプルの女性1万6000人は、HRT開始が平均63歳、喫煙率50%、肥満率や高血圧率も高く、もとから乳がんや心筋梗塞などのリスクが高い人が対象。日本のHRTの利用者とは、あまりにもかけ離れていますね。それを真に受けて報道した日本のマスコミの責任は、重大だと今でも思っています。
2006年に厚生労働省が行った、
日本女性を対象とした調査結果では、
“HRTにより、乳がんのリスクは60%減る”という、まったく逆の報告がされているんですよ」と小山先生。
もちろん、HRTが絶対に安全な治療とは言えないかもしれません。エストロゲン剤だけの投与では子宮体がんのリスクが高まるなどのデメリットもあります。
もともと受けてはいけない人もいることも覚えておきましょう。
【HRTを受けられる婦人科の目安は?】
●HRTに理解のある医師がいる
●「更年期外来」を掲げている
●日本女性医学学会や、更年期医療関連団体の認定医リストに掲載されている
●カウンセリングに時間を割いてくれる
●外来患者に更年期世代の女性が多い
●更年期医療に関してカウンセリングなどを自由診療としている
【すぐにHRTを受けられない人】
●乳がんになったことがあるか、治療中の人
●子宮体がんや他のがんの治療中の人
●血栓症・塞栓症になったことがある人
●心臓病や脳卒中と診断されている人
●原因不明の不正出血がある人
●重度の肝臓疾患がある人
※そのほか、受けるのに注意が必要な人もいます。
詳しくは、医師に相談してください。
健康保険で受けられる、HRT(ホルモン補充療法)
HRT(ホルモン補充療法)を受ける場合、具体的にどの方法で行うか、どの薬剤をどの程度の量で投与するかは、年齢や症状、その人の体の状態次第です。前述のように女性ホルモンにはエストロゲンと黄体ホルモンがありますが、子宮のある女性には、ふたつを組み合わせて使うのが基本。黄体ホルモンを加えるのは、子宮体がんのリスクを低下させるためです。
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エストロゲンによって厚くなった子宮内膜を剥がして排出させる働きがあるので、当然、生理と同じような出血が起こります。
手術などで摘出し、子宮がない場合や、とても作用の弱いエストロゲン剤の場合は、エストロゲン単独でも使われます。治療薬の種類もさまざまで、飲み薬だけでなく、皮膚に貼るパッチタイプやさっと塗るだけのジェルタイプもあります。
ほとんどが保険の適用内です。
ここでHRTについて、ちょっとした素朴な疑問を小山先生にぶつけてみました。
■体に何か変調は起こらないのですか?
「おりものは増えますが、もともとの作用なので心配は無用。最初は乳房の張りや下腹部が張るなどの症状が出るものの、続けるうちに消えていきます」
■閉経してからでないと使えないのですか?
「更年期の症状がある人は、閉経前でも問題ありません。閉経後、だいぶ経過してしまってから始めるよりは、いろいろなメリットがあります」
■どれくらいの期間続けていいのですか?
「日本では『5年が目安』と言われることが多いもの。『学会のガイドラインで5年と決まっている』と告げる医師もいるようですが、決められているわけではありません。更年期症状緩和が目的なら5年を目安に。きちんと管理し、医師との話し合いされていれば、長く使い続けてもよい場合のほうが多いと思います」
漢方やサプリメントで、ホルモンUPをサポート!
最近は、婦人科でも普通に処方してもらえることが多くなった
漢方薬。現在、厚生労働省から認可を受け、
保険が適用になる漢方製剤(生薬のエキスを抽出して加工した薬)は約150種、生薬(天然の植物や動物、鉱物)では約200種あります。
HRT(ホルモン補充療法)の先駆者である小山先生も、漢方治療に長年の経験を持ち、以前から更年期症状の治療薬としてクリニックで処方してきました。
「更年期女性には、HRTには抵抗があるけれど、漢方であれば・・・と安心感を持つ人がとても多いと思います。漢方は穏やかに作用するので、こじれた更年期症状をピタッと止めるような劇的な効果はそれほど期待できません。でもナチュラルな分、安心してもらえます。いまや
HRTと漢方薬を併用するのも普通ですよ」と小山先生。
「女性ホルモンの減少というはっきりした原因に対し、ホルモンそのものを補充するという、
シンプルだけど根本的な治療が
HRT。一方、漢方はほとんどの場合、中枢に働きかけ、その人がもともと持っている防衛機能を利用して、今出ている症状を改善していくんですね。
ですから、
漢方薬は更年期に多いホルモンバランスの乱れやストレスなどが関係していそうな
不定愁訴が得意なんです」
更年期の症状緩和におすすめのサプリメントとは?
そして、最後に
サプリメントについてです。日本では食品に分類され、日本の薬事法では「○○に効く」「○○の症状を改善する」のように効能を謳ってはいけないことになっていましたが、2015年度より、ある程度は言えるようになりました。
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また、サプリメントの本来の目的は
健康増進なので、自分の更年期の症状にズバリなサプリメントが見つからない…ということも。でもサプリメントは日々進化。新しい臨床データが発表されたり、どんどん改良されたり、新しいタイプも登場しています。
アラフォー女子に知っておいていただきたい、主なサプリメントを幾つかご紹介します。
【更年期の症状緩和におすすめのサプリメント】
●抗酸化作用:コエンザイムQ10、アスタキチンサン、ピクノジェノール
●女性ホルモン様の成分:エクオール、大豆イソフラボン
●精神症状を抑える:セントジョーンズワート
●代謝を促進する:EPA、αリポ酸
●アンチエイジング効果:DHEA、プレグネノロン
身体の不調が気になる方は、これらのサプリメントを試してみるのもよいでしょう。1種類のサプリメントは少なくとも3週間は続けて摂るとよいそうです。
いかがでしたか? 45〜55歳が平均と言われる"更年期"に向けて、いまからアラフォーが知っておくべき「ホルモンUP大作戦」。
不安を感じる前にまずはきちんとした「知識」を得ることが大切です。自分の身体の状態を把握して、改善やサポートできる術を知ることから始めましょう。それこそが、美と健康を維持していくことにつながるのです。