「糖質制限」系ダイエットでも、群を抜いてメディアに取り上げられることが多い
「ケトジェニックダイエット」。
何かとセンセーショナルなイメージで紹介されることが多いのは、一見ダイエットとは関係ないような
メリットが数多く報告されているからに他なりません。ちょっと舌を噛みそうで名前も覚えにくいですが、どんなダイエットなのか、一度きちんと知っておきましょう。明日からでも、すぐに実践してみたくなること請け合いです!
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「ケトジェニックダイエット」のメリットとは?■肉や魚も
おなかいっぱい食べられる
■食後、眠くならない
■肌に
ハリが出て若々しく見える
■
むくみが取れる
■運動をしなくても
脂肪が燃える
■極力筋肉量を減らさずにダイエットが可能
■面倒なカロリー計算をしなくてよい
■イライラしなくなる
■頭がはっきりして
集中力がアップする
■
長寿遺伝子がスイッチオンする
■
メタボリックシンドロームが改善される
これらが、よく挙げられるケトジェニックダイエットの特長です。なんだかいいこと尽くめだと思いませんか? 一体どんなダイエット? 他の糖質制限とは何が違うのでしょう?
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「ケトジェニックダイエットは、ズバリ
“食べて痩せて健康になる”食事法です。ダイエットという言葉は、日本では『減量』さらには『痩身』の意味でも使われていますが、本来は
『健康になるための食事法』という意味。ケトジェニックダイエットも、まさにこれです。
別名
『ケトン体ダイエット』とも呼びますが、
ケトン体という耳慣れない言葉のせいか、間違った理解や、誤解を招くような紹介のされ方も少なくありません。
もともとこの食事法は、薬では治らない小児てんかんの治療として、1世紀も前から使われてきたもの。近年それが、ダイエット効果があることがわかってきた。しかも、アンチエイジングやその他の効果もあるというデータが続々出てきたんです。それを健康増進を目的としたダイエット法に結びつけたのが我々の協会です」
そう語るのは、アンチエイジング・機能性医学のドクターで「一般社団法人 日本ファンクショナルダイエット協会」副理事長の
斎藤糧三先生。ケトジェニックダイエットを体系立てて提案し、実践ノウハウを確立、教える側の人間(アドバイザー)を育成しています。
一般社団法人 日本ファンクショナルダイエット協会(http://www.functionaldiet.org/) 副理事長 斎藤糧三先生
単純な糖質制限には、異議を唱える方もいます。それは、お菓子やご飯などの糖質だけでなく、野菜などあらゆる食材に含まれる糖質を控えることは、当然栄養不足を招いてしまうからです。その点、ケトジェニックダイエットは
病気を治療する目的から始まった食事法であり、機能性医学に基づく栄養指導で成り立っています。正しく実践すれば、健康にこそなれ、栄養不足に陥ることはなく、筋肉の減少も最小限にとどめることができます。
「ケトン体」って何? その驚きの正体が明らかに!昔から、「脳のエネルギーは、糖質(炭水化物)だけ」と言われてきました。仕事や勉強中に集中力が欠けてくると「甘いものを食べれば頭が冴える」ともよく言います。ところが、これ、間違いであることがわかってきたのです! まずこのことをしっかりと理解しましょう。
小学校でも習うように、体のエネルギー源となるのは、
「糖質・脂質・タンパク質」の三大栄養素です。脳には、
血液脳関門(ブラッド・ブレイン・バリア)という関所のような場所があり、異物が侵入できない仕組みになっていますが、ここを通れるのはブドウ糖だけ。脂肪やタンパク質は分子量が大きすぎて通過できません。そのため、「脳は糖しか使えない、糖質は必ず摂取しなければならない」という俗説が生まれたのです。
通常、私たちは食物から摂った糖質を分解して使う「解糖系」の回路でエネルギーを得ています(第1の回路)。糖質を毎食欠かさず食べていると、体内には糖質がたっぷり蓄えられるので、体は優先的に糖質を使います。使い切れない分は中性脂肪として蓄えられるため、運動もせずに糖質をとり続けていると太るのは当然のこと。
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でも実は、私たちの体には糖質が入って来ないとき(いざというとき)、自力でエネルギーを生み出す回路も備わっています。その1つが「糖新生」。これは筋肉を分解し、アミノ酸の一部など
糖以外の物質から糖エネルギーを作り出す回路(第2の回路)のことです。
さらに糖新生と同じく、糖質がないときに働く回路もあります。これが
中性脂肪を分解して使う第3の回路、まさに「痩せる」回路です。この回路では、分解された脂肪酸は肝臓へ運ばれ、そのままでもエネルギーになりますが、一部の脂肪酸は
「ケトン体」という物質をつくり出します。これを
ケトン体回路(ケトジェニック回路)と呼び、この回路が活発になることをケトジェニック状態と名付けています。
糖に変わるエネルギー、それが「ケトン体」さあ、ここからが注目すべき「ケトン体」のお話です!
近年の研究で、このケトン体は前述の “脳の関所” を通過できることがわかってきました。脳の神経細胞の
エネルギー源として利用されるほか、ケトン体はあらゆる細胞のエネルギー源としても使われます。特に24時間フル稼働している脳、心臓、腎臓は、休みなくケトン体を使うため、
ケトジェニック回路が活発になり、中性脂肪はどんどん燃えていく。それがケトン体を出して
痩せるというしくみです。
脳も体も、糖質がなくてもエネルギー不足にはならないこと、わかりましたよね? そこで「
あえて体内に糖が足りない状態をつくり、脂肪をメラメラ燃焼させ、ケトジェニック回路を回す食べ方をしよう!」これがケトジェニックダイエットの考え方なのです。
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「ケトン体は長い間、悪者だと誤解されていました。糖尿病の検査項目のひとつになっているからです。医学部では、血液中や尿中にケトン体が出ているときは、糖尿病が悪化した“ケトアシドーシス”と教えられる。でもそれは糖質が細胞に取り込めなくなったために、代替物質としてつくられたケトン体が過剰になってしまう症状であり、
ケトン体が健康に悪影響を及ぼしているわけではありません。
さらに、ケトン体についての研究が進むにつれ、
ケトン体は悪者どころか、抗酸化物質であることもわかってきました。体のサビとも言われる活性酸素を無害にしてくれる酵素を活性化する働きがあるのです。
さらには、アルツハイマー病や認知症の予防・改善にも効果が期待できるとのデータも。最近になって、がんの再発予防に効果が認められたとの報告も増え始めているんです。今後ますますケトン体は、いろいろな分野で注目されることは間違いありませんよ」(斎藤先生)
脱・糖質中毒!「ケトジェニック回路」をスイッチON!歩いているときに、どこからか漂ってくるパンやスイーツの焼けるいい匂い、無視できない人も多いのでは? おなかが減っているいないに関わらず、糖質が食べたくてたまらない人がたくさんいます。
糖質を控えれば痩せる、ケトン体をつくろうと頭でわかってはいても、糖質がやめられずに、なかなかケトジェニック回路にスイッチできない人が多いのも事実。
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糖質とは砂糖などの甘い物だけではありません。主食にしているご飯、麺類、パンなどの炭水化物を日常的に大量に摂取しているために、「糖質依存」状態になっているのだと斎藤先生は言います。
「まさに
『糖質中毒』です。煙草がなかなかやめられない、というのとまったく同じ症状。だから、食べないでいるとイライラする。
ヒトが米などの穀類を食べるようになったのは、人類史600万年のうちわずか1万年前。250万年間に渡り、ヒトは肉食でした。約1万年前に農耕が始まり穀類を食べるようになりました。さらに、精製された炭水化物や砂糖などが広がったのはたった200年前です。日本が米食になったのなんて150年前ですよね。
日本人はお米を食べてきたと言われますが、私達は日本人である前に人間。消化器官の構造からして、草食ではなく肉食動物に近いんですよ」
まさに、目からウロコの事実。甘い物だけでなく、炭水化物を摂らずにいられないのは、日本人が150年間摂り続けてきたことによる習慣によるものだったとは?!
肥満ホルモン「インスリン」を刺激しないのもポイントところで、血液中にはブドウ糖が含まれていますが、その量がどのくらいなのか知っていますか? それが血液検査でわかる
「血糖値」です。
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糖質の多い食事を摂ると、血液中のブドウ糖濃度=血糖値が急激に上がり、バランスを取ろうとしてすい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血管の外に糖を出して血糖値を下げてくれますが、外に出た糖の多くは脂肪細胞に取り込まれ、
中性脂肪に変わってしまいます。これこそ、インスリンが
「肥満ホルモン」と呼ばれ、
ダイエットには大敵だと言われるゆえんです。
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また、大盛りのごはんを食べたはずなのに、すぐにおなかが空いてしまうこともあります。
空腹を感じるのは、インスリンによって血糖値が急激に下がるとき。血糖値を急上昇させなければ、急に下がることもないので、よけいに食欲が湧くことがなくなります。
実は、糖質は「必須栄養素」ではありません。意外だと思われた方も多いかもしれませんが、国の指針である厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 2015年版」にも書かれている事実です。
まずは、「人は必ず食事から糖質を摂取しなければならない」という思いこみをやめましょう。
糖を摂らなくても糖新生によってブドウ糖がつくられること、脳はブドウ糖の代わりにケトン体を使えること、これを覚えておくことが大切なのです。「なかなか糖質がやめられない」と嘆く人も、そこから抜け出す第一歩になります。
何を食べたらよい?「ケトジェニックピラミッド」の考え方ケトジェニックダイエットは、21世紀の新しい栄養学「ファンクショナル栄養学」に基づいた、健康を実現するための食事の摂り方です。糖質を制限すると言っても、食べないダイエットとは根本的に違い、モリモリ食べられるのが特徴。
ベースとなるのは、栄養素を
7つのグループにわけた、ピラミッド。これを守って食べることで、インスリンを刺激しない低糖質、脂肪を燃焼させる
ケトジェニック状態をつくっていきます。
底辺のグループほど、しっかり摂るべき重要な栄養であることを表しています。とはいえ、細かい計算をするわけではなく、見たままを目安に食材を選んでOK。特に重要なのは「毎日必ず摂るべき食材」となる1~3のグループです。
【毎日必ず摂るべき食材】
▼グループ1肉、魚、卵、大豆 タンパク質の確保
▼グループ2野菜(葉野菜)、きのこ、果物 食物繊維とミネラルの確保
▼グループ3オメガ3系脂肪酸、中鎖脂肪酸
グループ1の
タンパク質は、ケトジェニックダイエットでは最も欠かせない栄養素。自己流の糖質制限などでは、例外なく筋肉量が減ってしまうもの。筋トレのような運動なしではなおさら、ダイエット中は筋肉量が保てません。
ケトジェニックダイエットでは、驚くほどのタンパク質量(1日あたり1.2~1.6g/kg)を摂ることを推奨しています。そのため、ケトジェニックダイエットは、別名
「肉食ダイエット」などと呼ばれたりするのです。
野菜の中でも
「葉野菜」は必ず摂るべきグループ2ですが、「イモ類・根菜類」は「摂ってもよい」として別のグループに分類。これらは糖質が高いためです。
残念ながら、糖質は「避けるべき食材」として最初から例外チーム。「グループ8」に分けられています。ここで、もう一度、糖質や炭水化物の定義をおさらいしてみましょう。
「糖質」と「炭水化物」の違いとは?まず、炭水化物とは、小学校でも習ったように三大栄養素(タンパク質・炭水化物・脂質)のひとつ。炭水化物と糖質は同義語のように扱われることが多く、それも間違いではありませんが、わかりやすいのは・・・
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
糖質 = 炭水化物 ー 食物繊維
こう覚えておくと、食品表示などを見る際にも理解しやすくなります。
食物繊維は、体に吸収できない炭水化物のことで、カロリーはゼロ。体から排出されるので便秘解消のお話によく出てきます。ここで“糖類ゼロ”や“糖質オフ”などの表示があるものなら安心だと思う人もいるでしょう。でも、
糖質と糖類は意味が違うことに気をつけて。
「糖質 > 糖類」と覚えておきましょう。
“糖質ゼロ” なら確かに糖質は入っていないかもしれませんが、 “糖類ゼロ” には、糖類以外の糖質が含まれている可能性大。たとえ “無糖” と書かれていても、でんぷんなどの多糖類が山盛り入っているかもしれないのです。
「人工甘味料にもだまされないで。合成甘味料や糖アルコールは、確かに血糖値を上げにくくインスリンの追加分泌を促さないので、摂ってもよいイメージがあります。
ただ、人工甘味料を口にして、あなたの脳が『あ~甘い♪』と感じた瞬間に、体内ではインスリンの追加分泌が始まってしまいます。実際には血糖値が上がらなくても、パブロフの犬のように、条件反射が起こることも考えられるんですから」(斎藤先生)
また、表現自体にも注意が必要。厚労省の栄養成分表示では、以下のようにちょっとゆるい決まりしかありません。
◆含まないという表示 [無、ゼロ、ノン、レス、0]
食品100g当たり0.5g未満、または飲料100mL当たり0.5g未満の場合に表示してよい。
◆低いという表示 [低、ひかえめ、小、ライト、ダイエット、オフ]
食品100g当たり5g以下、または飲料の100mL当たり2.5g以下の場合に表示してよい。
「無糖」と表示されていても、決して糖質ゼロではないのがわかります。食べ物を口に入れる前に、そんな目線で見てみると、いろいろ発見があって新鮮。楽しみながら糖質コントロールができそうです。
「ココナッツオイル」と「ケトジェニックダイエット」のイイ関係今年、テレビ番組でケトジェニックダイエット中に、
ココナッツオイルを取り入れている様子が放送されました。番組を見た人の中には「ココナッツオイルはケトン体を出すから、脂肪を燃やす効果がある」と理解した人が少なくなかったようです。
実際はどうなのでしょうか? 答えは、YESでもありNOでもあります。バージン・ココナッツオイルは約60%が
「中鎖脂肪酸」でできています。これは飽和脂肪酸のひとつで、MCTオイルとも呼ばれるもの。体に蓄積しない特徴を持っています。
一般的な植物油の多くは分子をつなぐ鎖が長い「長鎖脂肪酸」ですが、「中鎖脂肪酸」は鎖の長さがその半分程度で、何倍ものスピードで消化吸収されると言われます。ココナッツオイルを摂ると、腸で吸収された後すぐに肝臓へ運ばれ、なんと
「ケトン体」をつくることがわかってきました。
前述のように、
ケトジェニックダイエットで言うケトン体は、
糖質をあえて枯渇させ、体脂肪を燃やしたときにその証として出る物質。でも、口から摂った脂肪、中でも
中鎖脂肪酸からもケトン体はつくられるのです。
「ブドウ糖が体内にあるときでも、ココナッツオイルを食べればケトン体をつくれるわけです。その意味では、残念ながらココナッツオイルが直接的に体脂肪を燃やすわけではありません。でも、ケトン体をつくる
ケトジェニック回路が活性化し、体脂肪を燃やしやすくすることは十分考えられます。ちょうどいま、我々の協会でも、その検証を進めているところです」と斎藤先生。
「しかも、中鎖脂肪酸は他の油脂よりはるかに体内に留まらないので、他の
油やバターなどの代用として日常的に使えば、
体脂肪が貯まりにくく、ダイエット効果は期待できるでしょう。もちろん、置き換えなければだめですよ。ココナッツオイルも、普通のオイルと同じカロリーはありますから、今使っている油類はそのままに、追加でココナッツオイルをたくさん摂ったのでは、ダイエットどころか太ってしまう人もいます。
ココナッツオイルはブームのように扱われていますが、アルツハイマー病の予防・改善に効果があるデータは数多く上がってきています。1日大さじ2杯で、みるみる改善される例も見られるほど。ブームだから使うのではなく、効果を上手く実感できるように、正しい方法で取り入れてほしいと思います」(斎藤先生)
これが真実。ココナッツオイルは熱に強く、酸化しにくい性質を持っているため、炒め物はもちろん揚げ物に使うなど、どんなオイルの代用にもなります。冬場や冷蔵庫内では固体に変わるため、バターのような使い方もOKです。
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エネルギーを
糖質から
脂肪に切り替え、
ケトジェニック回路にシフトするべく、ココナッツオイルを一度試してみるのも手です。いまの食生活をあらためて見直して、美と健康のためにも「ケトジェニックダイエット」の考え方を取り入れてみてはいかがでしょう。
斎藤糧三先生 プロフィール
日本機能性医学研究所CMO、ナグモクリニック アンチエイジング・機能性医学 外来医長、「一般社団法人 日本ファンクショナルダイエット協会」副理事長。1998年日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、「機能性医学」の普及と研究推進のため「日本機能性医学研究所」を設立。著書に『サーファーに花粉症はいない』『腹いっぱい肉を食べて1週間5kg滅! ケトジェニックダイエット』。
http://www.ifmj.jp/