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「生理はいつも赤色だったのに、今回なぜかドロッとした黒っぽい色。これって病気?」
生理が黒い血だったとき、ちょっとグロテスクに感じて、思わずドキッとしてしまいますね。生理が黒かった場合、体は大丈夫なのでしょうか。量が少なければ問題ないでしょうか。
今回は、生理の色と量について紹介していこうと思います。
【監修】
イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生
小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。
著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム健康BOOKS)をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)等30冊を数える。
■正常な生理と経血の色は?
正常な生理、経血の色というのは、どのような状態をさすのでしょうか。
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▼正常な生理とは
毎月確認している生理ですが、そもそもどんな状態が正常なのかご存知でしょうか。医学的な基準から言えば、色は赤~赤褐色、量は20g~140gとされています。量はかなり幅があり、個人差が大きい部分。ナプキンを一日4回変える程度なら量的にも正常範囲でしょう。周期としては、25日から38日で、変動は6日以内が目安です。排卵があり、月経障害も軽いものなら正常範囲内です。
もし生理周期が24日以下など短かったり、逆に39日以上と長い場合、原因はさまざまですが、卵巣が弱っている可能性があります。または生理周期が不規則な場合は、ストレスなどで卵巣や子宮の働きが乱れていると考えられます。
参考サイト:日本産婦人科医会「正常な生理(月経)の目安を教えてください!」
▼正常な生理中の経血の色
正常な生理の血は鮮やかな赤~赤褐色ですが、量が減ってくるにつれ、茶褐色に見えても問題ありません。経血の色が暗い場合は子宮の血流が低下している状態です。座ったままだと良くないため、適度に運動をするなど、血流を促すようにしていきましょう。
また、経血の色が淡い場合は血液が薄まっている状態と考えられます。エネルギーや血液が不足している可能性もあるため、病院に相談し、早めの改善が必要でしょう。
■生理中に黒い血が出る原因
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▼生理中に黒い血が出たら妊娠?
生理中の黒い血は、血液が空気に触れて酸化したからその色になったのです。傷にできるかさぶたも黒っぽく見える場合がありますが、それと同じ原理です。赤い血が空気にふれて酸化すると、少しどろっとしたような黒い血になります。
妊娠したときに出血するケースで「着床出血」というものもあります。これは受精卵が着床するときに、子宮壁を傷つけて出血したもの。色は通常の生理と同じ赤っぽい色、またはうすいピンク色です。
ですので、生理中に黒い血が出たからといって、妊娠に結びつくわけではありません。
▼生理初日や生理中、一時的に黒血が出る時は
経血量の多い生理2日目や3日目ではどんどん血流が流れるため、血は赤い色をしています。しかし、生理初日や終わりかけなど、一時的に黒い血が出ることは珍しくありません。
これは、経血が子宮のどこかにとどまっていたり、ゆっくりと流れ出ていたりで、その間に酸化が起こったため黒い色になっているのです。
▼生理中ではないのに黒い血が少量続く
上記以外のケースで、黒い経血がだらだらと少量続く、生理ではないのに黒い血が出る、などは何らかの病気が隠れている可能性があります。
量や色、頻度などをメモをして自身でも確認しておきましょう。黒い経血が続くようなら受診をおすすめします。
■生理とは関係なく黒い血が出る時に考えられる病気
以下で紹介する4つの病気は、必ずではありませんが、症状のひとつに黒い血が出るケースがあります。気になる場合はチェックをしておきましょう。
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▼1.子宮筋腫
子宮筋腫は子宮に良性のこぶ(腫瘍)ができる病気です。ひとつとは限らず、いろいろな場所にできます。もともと子宮の筋肉はこぶができやすく、多いときは数十個ほどできることがあります。そして、少しずつ大きくなる場合があります。
なぜ子宮筋腫ができるのかはまだはっきりと分かっていませんが、女性ホルモンと関係があるようです。自覚症状がないケースが多く、30歳以上の女性ではの3〜4人中ひとりは子宮筋腫があると考えられています。
症状は、経血量の増加や血の塊(レバー状)が出てくるなどがあります。生理の日数が長くなる傾向があり、月経量も多くなるので、貧血になりやすいです。めまい、たちくらみ、疲れやすいなどには注意しましょう。また、月経のときに腹痛や腰痛があったり、月経以外でも腹痛があったりすることがあります。
子宮筋腫はすべてを治療しなければならないわけではありません。その位置、数、大きさ、さらに今後大きくなりそうかなどを総合的にみて、医師と相談します。
月経が多い、貧血になるなど、気になる点がある場合は治療が可能です。またそれぞれの状況によりますが、定期的な検診で様子見を希望する人も多いようです。
参考サイト:日本産科婦人科学会「子宮筋腫」
▼2.子宮頸がん
子宮は赤ちゃんを育てる臓器で、大きさは鶏卵くらい、洋ナシを逆さまにしたような形をしています。膣(ちつ)につながる、子宮の下から3分の1を子宮頚部、上の3分の2を子宮退部と呼んでいます。
子宮頚がんは主に子宮頚部の入り口付近に発生するがんです。一定の時間をかけてゆっくり増殖していきます。最近は20代から30代の若い女性に多く見つかる傾向があり、子宮がん全体の約80%から90%を占めているがんでもあります。
原因のひとつに「パピローマウイルス」感染があります。これは、ほかの性感染症といっしょに感染する可能性があるものです。
子宮頚がんは定期的に検診を受けることで、「がんになる前段階」の状態を発見することが可能です。がんを形成する前、組織にがんに移行する可能性のある細胞(異形成)が増える特徴があることから、検診では早めに見つけやすいのです。
参考サイト:日本産科婦人科学会「子宮頸がん」
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▼3.子宮体がん(子宮内膜がん)
子宮体がんはそのほとんど(約95%)が子宮内膜から発生するので、「子宮内膜がん」とも呼ばれています。子宮体がんのピークは40代後半以降で、50代から60代が最も患者数が多くなっています。しかし、最近は若い女性にも増えてきているがんでもあります。
女性ホルモンのエストロゲンが原因に影響していると考えられ、出産回数の少ない人、閉経が遅い人に発生が多いです。また、太りすぎや糖尿病、喫煙、高血圧、食生活の欧米化なども発生の原因とされています。
参考サイト:日本医師会「子宮がんとは」
▼4.子宮腺筋症
子宮腺筋症は子宮筋のなかに、子宮内膜に似た組織ができる病気です。子宮にできる良性の病気という部分は子宮筋腫と似ているかもしれません。特徴としては、子宮筋と病気の部分の境界が分かりにくくなっているという部分です。
症状は強い生理痛で腰痛や下腹部痛が出ることがあり、月経量が増えるため、貧血になることもあります。30代後半から50代くらいで病変が大きくなり、症状が出て発覚するケースが多いです。
また、子宮筋腫の人が子宮腺筋症も合併しているケースもあります。女性ホルモンによる影響で病気が大きくなる傾向がありますが、閉経すると縮小し、症状も治まることが一般的です。
参考サイト:女性の健康推進室ヘルスケアラボ(厚生労働省)「子宮腺筋症」
■生理中の黒い血や塊が気になる時は病院へ
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生理中で急に黒い血が出てきたら「もしかしたら病気かも」と心配になってしまいますよね。焦ってしまう気持ちも分かります。通常の場合は酸化によるものなので問題はないケースが多いといえるでしょう。
ただし「生理中ではないのに黒い血が少量でも出る」「黒い血がだらだらと長く続く」などは要注意。不正出血はがんのような病気が隠れている可能性もあり、少量だからと見逃すのは問題です。
もし気になる症状があった場合は、放置せずに、きちんと病院でみてもらうように心がけましょう。
参考資料
・日本産婦人科医会
・日本産科婦人科学会
・日本医師会
・女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省)
元バレーボール日本代表・古賀紗理那選手「働く女性たちの環境に改善が必要」