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生理中に体重計にのり、がく然としたことはありませんか? いつもと変わらない生活を送っていたはずなのに、体重が増えていたらがっかりしてしまいますよね。
実はこれ、ホルモンのせいかもしれません。なぜ生理中は体重が増加するのか、増えた体重はいつ戻るのかなど、気になる情報をお届けします。
【監修】
イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生
小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。
著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム健康BOOKS)をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)等30冊を数える。
■生理中に体重が増える原因
どうして生理が始まると体重が増えてしまうのでしょうか。どうやら、
ホルモンがもたらす
3つの影響が関係しているようなのです。
体内に水分を蓄えようとするため
女性の体は周期的にホルモンバランスが変化します。生理前になると、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の関係から濃度が上がるホルモンがあります。
それは、副腎皮質から分泌されるアルドステロン。アルドステロンは、水分やナトリウムを体内にためこむ働きがあります。生理中に体重が増えたのなら、それはホルモンの影響で体に水分がたまっているからかもしれません。
▼体重増加のポイント 1:便秘
食生活や運動不足などが原因で便秘になることはありますが、実はホルモンが原因で便秘になることもあります。プロゲステロンの分泌が増えると、腸のぜん動運動が弱まって便秘になることが。月経前になるとプロゲステロンが増加するので、その影響で便秘になり生理中に体重が増えることもあるようです。
便秘を解消するために便秘薬を使うケースもあると思いますが、使い続けると腸の働きが弱くなり、さらなる便秘を招くことも。ぜん動運動を活発にする乳酸菌と、その乳酸菌のえさになる食物繊維をとったり、水分をとったりおなかをマッサージして自然な排便につながるように工夫してみましょう。
▼体重増加のポイント 2:むくみ
ホルモンバランスのせいで体内に水分が蓄えられるのは、先にご紹介した通り。その余計な水分のせいで、体がむくむことがあります。
体のむくみは体重に変化をもたらすだけではなく、見た目にも影響が! 鏡に映るむくんだ自分の姿にはげんなりしてしまいます。でも、プロゲステロンが減少すれば、むくみは自然と解消されるのであまり心配しないでくださいね。
▼体重増加のポイント 3:体脂肪の増加
ダイエットをしていると、体重だけではなく体脂肪率も気になるもの。実はこの体脂肪の増減は、食事や運動量だけではなく、月経の周期とも関係しているのです。
生理中は、おなかや太ももの皮下脂肪がもっとも厚くなる時期。体脂肪率が測定できる体重計にのった時、身に覚えがないのに体脂肪率が高くなっていたら生理中のせいかもしれません。
しかし、ご心配なく! 生理が終わってから排卵するまでには、皮下脂肪の厚みも元に戻るでしょう。
参考サイト:
日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」
参考書籍:
中公新書「月経のはなし」(著者:武谷雄二)
主婦の友社「主婦の友新実用BOOKS 最新版女性の医学大全科」(監修:女性の健康週間委員会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会)
PHP研究所「正しく知れば体が変わる! 栄養素の摂り方便利帳」(監修:中村丁次)
■生理中は体重が落ちないから、ダイエットには不向き?
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「がんばっても体重は増えるし、ダイエットしたって意味がない」。そう思うのも無理はありませんが、ちょっと待ってください。生理中にどう過ごすかによって、体重の変化だって違ってきます。
▼メンタルも不安定になりがちだから、無理をしないで
生理痛をはじめとする不快感により、イライラしたり気分が落ち込んだりと、生理中は精神的に不安定になる人もいることでしょう。
アメリカの女子大生を対象とした調査では、月経中はチョコレートを食べたくなる人が多いという報告があります。このように、生理中には食べ物の好みが変わることも。ホルモンの変化で、いつもとは違うコンディションなのですから、体重を減らすことを考えるのは少しお休みしてもいいかもしれませんね。
▼体重維持を心がけよう
生理中であることを理由に、ついつい自分を甘やかしたくなることはありませんか? 体調がよくないからといって運動量を減らしたり、食べ過ぎてしまったり…。このような行動こそが生理中に体重が増える大きな原因となっているかもしれません。
生理中で無理をしないと決めたからといって、好き放題していいわけではありません。生理が終わった時に体重を元に戻したいのであれば、生理中に余分なお肉を蓄えることのないようにコントロールすることを意識しましょう。
▼「体重計にのらない」と決めてしまうのも一手
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生理が終わると体重だって自然と戻ります。体重の増加が月経によるホルモンバランスのせいだとわかれば、あえて生理中は体重を気にしないで過ごしてみるのもいいでしょう。
生理中はイライラしたり、落ち込んだりと、ただでさえ心の動きが大きいもの。体重計の表示を見てがっかりするより、気分良く過ごしたいものです。
■生理中に体重を増やさないための3つの対処法
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生理中に太ってしまうのは自然なことだとわかってはいても、それでも体重を増やしたくないのが女心。ほんの少し意識することで、体重増加を防ぐことができるかもしれません。
【体重を増やさない対処法】
1)いつもよりよくかんで食べる
「食事はよくかみましょう」とはよく言ったもの。よくかむことは消化を助けるだけではなく、やせやすい体を作ることにもつながるのだとか。
食べ物をよくかむことで刺激が脳に伝わり、分泌された脳内物質によって、脂肪の分解と脂肪の燃焼を促します。これを「食事誘発性熱産生」といい、食事をすることで内臓の動きを活発化させ、エネルギーを消費してくれます。
太ることに直結するはずの食べるという行為が、食習慣や食事内容によってエネルギーの消費につながるというのは驚きですね。生理中ではなくても、よく噛んで食べることを習慣にしたいですね。
参考サイト:厚生労働省 e-ヘルスネット「食事誘発性熱産生 / DIT」
【体重を増やさない対処法】
2)食べる順番を意識する
最近では、血糖値が急激に上昇しないような食べ方をするのがダイエットのスタンダードになっています。
これは、生理中も同じです。食物繊維が豊富な食べ物から箸をつけるよう、気をつけてみましょう。簡単にいえば、野菜ファースト。次にお肉やお魚などのタンパク質を。ごはんやパンなどの炭水化物は最後にとっておきましょう。
【体重を増やさない対処法】
3)カリウムで水分排出
むくみをとりたかったら、食事の減塩に努めましょう。塩分をとりすぎると、体内のバランスをとるために水分をためこんでしまうのです。
余分な水分を排出してくれるのが、カリウムです。カリウムには体内にたまった水分だけでなく、塩分も排出して体内のナトリウム(塩分)量を一定にする働きがあります。
【カリウムを多く含む食品】
りんご、キウイ、こんぶ、きゅうり、キャベツ、トマト、アボカド
フルーツならそのまま食べられますし、野菜ならサラダにするだけの簡単調理! 手軽に取り入れることができそうですね。ただし、カリウムは水に溶けやすいので洗いすぎないように気をつけて。
ただし、しっかりと水分をとることも大切です。むくみのせいで水分を控えたくなる気持ちもわかりますが、実は逆効果。水分を多めにとって新陳代謝をよくしたほうが、むくみを解消するのにはいいでしょう。
無理は禁物!
体重が減らない時期と思って過ごそう
生理中は体重をキープすることを目標にして。やせるためにハードな運動をするというよりも、ストレスをためないために適度に体を動かすことを心がけましょう。
生理中に運動をする気が起こらない人もいるでしょうが、生理中の運動はPMS(月経前症候群)や生理痛の緩和にもなるという研究結果もあるそうです。
ダイエットをがんばるなら、生理が終わってからがベター。エストロゲンの分泌が増えることで、食欲が抑えられたり代謝が上がってやせやすい時期でもあります。
参考書籍:
大和書房「美人は『食べて』綺麗になる。この栄養素があなたをつくる」(著者:木下あおい)
主婦の友社「主婦の友新実用BOOKS 最新版女性の医学大全科」(監修:女性の健康週間委員会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会)
PHP研究所「正しく知れば体が変わる! 栄養素の摂り方便利帳」(監修:中村丁次)
■まとめ
人間の体に影響を与えるホルモン。そのホルモンに逆らって生理中に体重を減らすのは少しむずかしそうです。生理中はやせる努力をするよりも、太らないことを意識した生活を送ることのほうが大切です。
生理中に太るのはホルモンのせいなのですから、生理が終わってホルモンバランスが整えば元通り。むしろ、生理中の過ごし方によってはダイエットが成功しちゃうなんてうれしい結果になるかもしれません。
参考資料:
・日本産科婦人科学会
・厚生労働省 e-ヘルスネット
・中公新書「月経のはなし」(著者:武谷雄二)
・主婦の友社「主婦の友新実用BOOKS 最新版女性の医学大全科」(監修:女性の健康週間委員会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会)
・PHP研究所「正しく知れば体が変わる! 栄養素の摂り方便利帳」(監修:中村丁次)
・大和書房「美人は『食べて』綺麗になる。この栄養素があなたをつくる」(著者:木下あおい)
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