コロナ禍でペンギン歩きになってない?「ライオン歩きのすすめ」
日本には認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の人が約400万人いるという。加えてコロナ禍で外出の機会も減って、狭い歩幅でペタペタ歩く「ペンギン歩き」になると、認知症になるリスクが増大するというーー。
「脳と足の関係は深く“足は脳を映し出す鏡”といわれるほどです。脳の衰えには気づきにくくても、足腰の衰えには気づくことができます。足腰の衰えは認知症のサインだと考えています」
長年、歩幅と認知機能との関係を研究している東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員で国立環境研究所主任研究員の谷口優先生はこう話す。
谷口先生の研究から、65センチを境に、歩幅の広さによって認知機能低下や認知症のリスクに大きな差が出ることが明らかになったという。
歩幅とは、後ろ足のつま先から前に出した足のつま先までの距離を指す。一般的な目安として、横断歩道の白線の幅を踏まずにまたげるくらいの距離が65センチだ。
「脳内の変性が進行し、脳の働きが障害されると、広い歩幅を維持することが困難になります。しかし、歩幅の変化に早く気づき、脳が障害される前に歩幅を改善し、生活習慣を見直すことができれば、認知機能の維持・改善が可能です」
これまでコロナ禍で運動不足になりやすかったぶん、これからは3密を避けながらもしっかりと体を動かすように心がけたい。特に、簡単に誰でも実践できるウオーキングは、認知症予防の第一歩になる。
そのためにも、正しい歩き方について知っておこう。
うつむき加減で、視線が下がり、狭い歩幅で膝が上がらずペタペタ歩く「ペンギン歩き」になっている人は要注意。
【悪い歩き方】ペンギン歩き
・視線が下がっている
・姿勢が前傾している
・腕の振りが小さい
・太もも、膝が上がっていない
・足裏全体で着地
・とぼとぼ小股で歩いている
正しい歩き方として「ライオン歩き」を意識してほしい。背筋が伸びて、しっかり前を見て、広い歩幅でさっそうと歩くのだ。
【よい歩き方】ライオン歩き
・視線が水平
・腕の振りが大きい
・背筋が伸びている
・太もも、膝が上がっている
・かかとから着地
・足指の付け根でけり出している
・さっそうと大股で歩いている
「『ライオン歩き』では、背筋が伸びて胸が広がることで、呼吸が深くなります。
また、視線が上がることで、自然と気持ちが上向きになるはずです」
■日常生活の工夫で足腰の筋肉や脳を刺激しよう
コロナ禍で遠方に住む高齢の家族に会えずに健康状態が心配な人は、電話で足腰の衰えがないかをたずねてみるのもいい。
「たとえば、『歩くのがつらくなった』『歩くスピードがめっきり遅くなった』といった状態の場合は、歩幅が狭くなっている可能性があり、生活習慣を見直すタイミングにあるといえるでしょう」
足腰の衰えを把握した場合は、身近な行動から見直しを図りたい。
たとえば、歩いて通院する、買い物袋を持って家まで帰る、こまめに家を掃除する、テレビを見ているときはコマーシャルのたびに立ち上がる、などといった日常生活の工夫で、足腰の筋肉を刺激することができる。
こうした日常生活の中のちょっとした行動から歩幅を広げることを意識できると、脳を刺激することも可能になる。
「正しい歩き方は、心身の機能を向上させるだけではなく、見た目の印象も大きく変化させます。姿勢や呼吸が整うことで、若々しい印象を与えることが期待できるからです」
人生100年時代を迎えた今、正しい歩き方を習慣化しておきたいのは高齢者だけではない。若い世代も今から正しい歩き方を習得しておくことで、いつまでも健康な脳と体を維持することができる。
早速、今日から「ライオン歩き」を心がけよう!