早期診断で生存率は大きく上がる!コロナ禍でも「肺がん検診」を
女性の肺がんの罹患者が増えている。’18年の新規罹患者は約4万人。死亡者数も急増していて、同年は約2万2,000人が肺がんによって亡くなった。じつは新規罹患者の60〜80%は、たばこを吸わない非喫煙者だという。
「米国でも過去42年間で男性の肺がんは36%減少したのに対し、女性は84%増加。罹患した女性のうち約20%が生涯非喫煙者でした」
ボストン在住の医学博士で内科医の大西睦子さんはこう語る。
「米国のジョンズ・ホプキンス大学やペンシルベニア大学、イエール大学、アメリカ疾病予防管理センターなどで、非喫煙者と肺がんの関係は研究されています。昨年には、ミズーリ州のトルーマン医療センターが、『非喫煙者の欧米女性より、非喫煙者のアジア女性のほうが、より肺がんになりやすい』という考察を出しました。
米国では肺がん女性の約20%が非喫煙者ですが、アジアでは肺がん女性の60〜80%が非喫煙者だったからです」
早期発見・早期治療には、検診が欠かせないが、「コロナ禍での検診控え」が懸念されている。コロナ治療にもあたっており『倉持仁の「コロナ戦記」』(泉町書房)の著書もあるインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長はこう語る。
「うちは地域密着型のクリニックなので、毎年、健康診断を受けに来られる患者さんがいます。ですが、新型コロナが流行しはじめた’20年は、前年度比7割減でした」
実際に日本対がん協会は11月、コロナ禍による診療控えが原因で、主な5種類のがんで約4万5,000人の診断が遅れたという推計を発表した。
「この状態が続くと、治るものも治りません。とくに女性に多い腺がんは、転移はしにくいが、自覚症状も出にくいため、検査しないと気づきにくいのです。コロナ禍でも健康診断は控えず、年1回の肺がん検診は受けていただきたい」(倉持さん)
ただし、3ミリ以下の初期の腺がんの場合、レントゲン検査で見過ごされてしまいがちだという。
「レントゲンで初期の肺がんを発見するためには、大前提として昨年やそれ以前との比較がないと見落としやすい。
なるべく毎年同じ医療機関で検診を受けて比較してもらうのがおすすめです」(倉持さん)
■大豆イソフラボンに予防効果の可能性
万が一、肺がんが見つかった場合でも悲観することはない。「肺がん治療は、ここ数年で驚くほど進歩しました。早期発見できれば外科手術や化学療法、放射線治療などを組み合わせて根治に近い形にもっていくことができる患者さんも増えています」(倉持さん)
がん研究センターがん情報サービスによると、非小細胞肺がんの場合、ステージ1の5年相対生存率は約84%、リンパ節転移などがあるステージ2は約55%、気管支周辺のリンパ節に転移しているようなステージ3は約30%、多臓器に転移しているようなステージ4は約10%弱となっている。
予防策も重要だ。がん対策研究所・室長の澤田典絵さんは次のように話す。
「野菜や果物を摂取することは、肺がんリスクを低下させるという報告があります。また、メカニズムは解明できていませんが、化学構造が女性ホルモンのエストロゲンに似ている大豆イソフラボンを摂取すると、肺がんのリスクが低下する傾向であることも報告されています」
過度に摂取する必要はないが、納豆や豆腐などを日々の食事にうまく取り込むとよいかもしれない。
「女性ホルモンなどが使用されている可能性がある赤身肉や加工肉は少なめに。
またアルコールの過度な摂取は肺がんのリスクを高めるという報告があるので適度にとどめましょう」(大西さん)
また、「肺がんだけに特化せず、健康寿命を延ばす生活を送ることが大事」と話すのは倉持さん。
「従来から言われているように、バランスの取れた食事、適度な運動、肥満の軽減、ストレスをためない、など総合的に見て健康的な生活を送ることが、ひいては肺がんの予防にもつながるはずです」
健康的な生活と定期的な検診で肺がんに備えよう。