むしろ頭痛の原因に「痛みが心配だから」で鎮痛剤を飲んではダメ
「8カ月を待たずに、(3回目接種は)できる限り前倒しする」
12月6日の所信表明演説で岸田文雄首相がこう明言した。新たな変異ウイルス「オミクロン株」の流行拡大を受け、早ければ来年1月から新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が始まる。
厚生労働省は、ファイザー製ワクチンの3回目接種後の副反応について、米国の臨床試験から「接種部位の痛み」が出る人が83%ともっとも多く、「頭痛」は48.4%、「発熱」は8.7%と、2回目接種後と「ほぼ同様」の副反応が出ることを報告している。
副反応に備えて市販の解熱鎮痛剤(以下、鎮痛剤)を用意する人も多いはずだが……。
「ワクチンによる副反応が出た場合に、手軽に購入できる鎮痛剤で頭痛や発熱などの症状をやわらげること自体は問題ありません。しかし、副反応が出る前から予防的に鎮痛剤を飲むのは避けるべきです。昨今、増えている『薬物乱用頭痛(正式名称・薬剤の使用過多による頭痛)』の第一歩になりかねません」
と語るのは、慶應義塾大学医学部の元教授で、湘南慶育病院の鈴木則宏院長だ。頭痛研究の第一人者である鈴木先生が薬物乱用頭痛について解説する。
「市販されている鎮痛剤は大きくわけて、エヌセイズ(NSAIDs)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬と、アセトアミノフェンの2種類ありますが、薬物乱用頭痛はこれら鎮痛剤を常用して起こる慢性頭痛です。鎮痛剤は頭痛以外にも腰痛や歯痛などさまざまな痛みに対して常用されますが、薬物乱用頭痛は片頭痛や緊張型頭痛を抑えようと鎮痛剤をひんぱんに服用している人に生じます。薬物乱用頭痛のメカニズムはよくわかっていませんが、頭痛を抑えようと薬を飲んでいるのに、その薬によって頭痛が慢性化。さらに薬に頼ってしまうという悪循環を招いてしまうのです」
■「痛みが心配だから」と無症状で飲むと危険
日本人女性の12.9%が悩んでいるといわれる片頭痛は、こめかみ辺りが脈を打つように激しく痛む。頭痛発作は4~72時間続き、寝込んだりして生活に支障が出る。吐き気やを伴うのも特徴だ。
一方、日本人のおよそ5人に1人が悩んでいるという緊張型頭痛は、首や肩の筋肉が緊張することで起こり、頭全体が締めつけられたような鈍い痛みが1~2カ月ほど続くこともあるという。「片頭痛の場合は、体を動かすと痛みが出るため、病院に行くことができなくなることも。
また緊張型頭痛は痛みが片頭痛ほど激しくないため、休まずに仕事や家事をする人が多いでしょう。こうした理由もあって、頭痛が出ても医師を受診せず、自己対処として市販の鎮痛剤で済ませる人は多い。そのうち『痛くなるのが心配だから』『今日は会議があるから』など予防的に鎮痛剤を使っていくことで、服用回数が増えてしまうのです」
コロナ禍による精神的ストレスや、テレビ・スマホによる肩こりや首こり、マスク習慣などが要因となり頭痛に苦しむ人が増えているという。さらにワクチンの副反応への対応で、ふだん使っていなくても鎮痛剤を使ったという人も多いだろう。
私たちの生活に、より身近になった鎮痛剤。正しい付き合い方を知っておく必要がある。