ココア甘酒はポリフェノールたっぷり 美味しい「飲む点滴」
ココアパウダーを牛乳や豆乳で溶いてココアを作り、甘酒を加えて飲む
「温かく甘くておいしいココアに、栄養価が高く“飲む点滴”ともいわれる甘酒を加えた『ココア甘酒』には、血圧を下げる効果が期待できます。降圧剤と同じ作用が見込めるので、無理なく血圧のセルフケアができますよ」
そう教えてくれたのは、高血圧を中心とした循環器病の専門医・渡辺尚彦先生。渡辺先生は30年以上、24時間血圧計を装着して、血圧を測定し続けている。血圧の上がるタイミングや血圧を下げる方法などを自ら実験・考察してきた血圧のエキスパートだ。
ココアと甘酒の組み合わせで血圧が下がるとは、にわかには信じ難いかもしれない。しかし、れっきとした根拠がある。
まずは甘酒の降圧作用について説明しよう。甘酒に含まれる成分に、アミノ酸の一種・ポリペプチドという物質があるが、血圧を下げる効果があると注目されている。
「血液中のアンジオテンシンIという物質が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)という酵素によって、アンジオテンシン2というホルモンに変わると、強力な作用で血圧を上昇させます。甘酒のポリペプチドはアンジオテンシン1が2に変換するのを抑える作用があります。このことにより、血管が拡張して血圧が下がるのです」(以下・渡辺先生)
高血圧の患者に降圧剤として使用されるACE阻害薬と甘酒は、ACEの働きを阻害するという点で、同じような働きをしていると言える。
渡辺先生の患者のなかにも、甘酒で血圧を下げた人がいるという。この患者は生活習慣の改善でだいぶ血圧が下がったが、あと少し下げたいときに甘酒を勧めてみたところ、開始後3カ月ほどで最小血圧が徐々に低下。おいしい甘酒を飲み続けることによって、無理なく血圧を下げることができたのだ。
■砂糖や粉乳が添加されていないカカオ100%のピュアココアを
一方、ココアにも降圧作用がある。ココアに含まれるカカオポリフェノールに血圧を下げる効果があるのだ。
「カカオポリフェノールの主要成分・エピカテキンは、摂取後に小腸で吸収された後、血管内部に浸透します。血管内部が炎症を起こしている場合は血管が狭くなり、赤血球が通り抜けにくくなっている状態。そこでエピカテキンが活性化すると、炎症が軽減され血管が広がり、赤血球が通りやすくなり、血流がよくなります。血流が悪いことで起こる高血圧だけではなく、冷え、頭痛、肩こりなどの悩みも改善されるでしょう」
近年、カカオポリフェノールについて多くの研究があるが、’12年に行われた「蒲郡スタディ」と呼ばれる大規模調査でもカカオポリフェノールの降圧作用が実証されている。この調査は蒲郡市内外の45~69歳の男女347人が4週間、カカオポリフェノールを多く含むチョコレート(カカオ分72%)を1日5グラム×5枚、毎日摂取するというもの。摂取前後の血圧測定や血圧検査などを検証したところ、血圧のピーク値が低下し、血圧が高めな人ほど血圧低下量が大きいことが判明した。
「ここで使用されたのは、カカオポリフェノール70%以上含有の高カカオチョコレートです。食べる量も1日25グラムという少量で血圧を下げる効果が高いことがわかっているのです」
この強力な降圧タッグである甘酒とココアを「ココア甘酒」として一緒に摂取すれば、1杯でダブルの降圧作用が得られるというもの。
【ココア甘酒の材料】分量は好みで調整
甘酒…50~100g
ピュアココアパウダー(無糖)…小さじ1
牛乳または豆乳(お好みで)…適宜
どんなココアでもいいわけではなく、ガブガブと大量に飲んでいいわけでもない。注意点をしっかりと押さえておこう。
「使用するココアは砂糖や粉乳が添加されていないカカオ100%のピュアココアを選ぶこと。濃縮タイプの甘酒にココアパウダーを振りかけても、牛乳や豆乳で溶いたココアにストレートタイプの甘酒を混ぜても◎。オススメは起床後や活動量が多い日中に飲むこと。甘酒自体に糖分が多いため、飲みすぎないようにしましょう」
濃縮タイプにココアパウダーを振りかけたものは、甘味の強い甘酒にほろ苦いココアがマッチして、まるでデザート。小腹も満たされる。ストレートタイプの甘酒とココアをブレンドしたものは、通常の砂糖入りココアより素朴な甘味があって、飲みやすくおいしかった。
また、好みでしょうがを加えてもOK。しょうがに含まれるカリウムにも血圧を正常に保つ効果がある。スパイシーで味変にも◎。
寒いこの季節にもピッタリな「ココア甘酒」、高血圧に悩む人の救世主になりそうだ。
【PROFILE】
渡辺尚彦先生
医学博士。“ミスター血圧”の異名を持つ高血圧治療の名医。『測るだけ血圧手帳』(アスコム)など著書多数