米国大学の研究で明らかに「健康寿命を延ばす朝食」
寝たきりにならないために何を食べればいいのか……。米国の最新研究から料理研究家が“最強の食べ合わせ”を導き出した--!
「死ぬまで元気に過ごしたい--。そんな思いから、日常生活を制限なく過ごせる健康寿命を1日でも延ばそうと、みなさん、日常的に食事に気を配っていることと思います。しかし、漠然と食材を選ぶより、具体的に何を食べれば、何分健康寿命への影響が出るのかわかれば、献立も立てやすく、幅も広がるのではないでしょうか」
こう語るのは、米国ボストン在住の内科医・大西睦子さんだ。日本人女性の平均寿命は87.45歳だが、健康寿命は75.38歳(ともに’19年)。約12年も、介護などが必要な期間があることになる。
“寝たきり”など、不健康な期間をいかに短くするのか、そのヒントが’21年8月、『ネイチャーフード』誌で発表された、米国ミシガン大学による論文だ。
「世界の研究者7,000人の協力を得て開発されたデータベースから、食材、加工品、料理など約5,800品目を対象に、健康寿命がプラス、またはマイナスになるのかを、1食あたりの分単位で算出しています」
たとえば、ホットドッグ140グラムで36.11分、ハンバーグ(牛肉)85グラムで7.79分健康寿命が短くなり、納豆ご飯239グラムで13.79分、焼きサーモン85グラムでは15.98分健康寿命が延びるという結果が出ている。
■健康寿命を縮める食事
ホットドッグ(140g):-36.11分
ハム(55g):-28.52分
ソーセージ(豚肉・55g):-22.15分
コーラ(360g):-12.48分
ミートローフ(牛肉・140g):-8.58分
ピザ(肉と野菜入り・140g):-7.81分
ハンバーグ(牛肉・85g):-7.79分
ビーフステーキ(赤身肉・85g):-7.00分
ベーコン(豚肉・15g):-6.44分
チーズバーガー(140g):-6.26分
■健康寿命を延ばす食事
ピーナツ(ロースト、塩味・30g):+25.50分
ピスタチオ(塩味・30g):+25.28分
ピーナツバター(甘くない・32g):+23.91分
サーモン(焼き・85g):+15.98分
納豆ご飯(239g):+13.79分
バナナ(140g):+13.49分
りんご(140g):+13.46分
もも(缶詰・140g):+11.94分
豆類(調理済み・90g):+10,42分
オートミール(調理済み・234g):+8.03分
※ミシガン大学の論文より抜粋して本誌作成。一部、品目名は日本で身近な食品名に置き換えた
「具体的な数字が示されているぶん、マイナス食材を敬遠しがちですが、食べたいものを食べないというストレスも体によくない。牛肉や加工肉なども、野菜などのプラス食材と合わせることで、マイナスを“帳消し”にすることができます」
そこで、管理栄養士で料理研究家の松尾みゆきさんに、論文をベースに朝食での健康寿命を延ばす“食べ合わせ”を提案してもらった。
■朝食での健康寿命を延ばす“食べ合わせ”
【豆乳グラノーラにバナナ】+21.44分
「ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランスよく含むグラノーラには、抗酸化作用のあるイソフラボンやサポニン、鉄分を多く含む豆乳をかけて食べましょう」(松尾さん・以下同)
グラノーラ+豆乳+バナナ(+7.05+0.9+13.49=21.44)
【オートミールとミニサラダ、卵添え】+10.78分
「最近、人気の高いオートミールは、食物繊維が豊富で便秘改善に役立ちます。キャベツなどが入ったコールスローサラダで、さらに食物繊維とビタミンCをプラスして、栄養価アップを!」
オートミール(調理済み)+コールスロー+ゆで卵1個(+8.03+3.99-1.24=10.78)
【ピーナツトーストとハムサラダ、牛乳】+22.81分
「ピーナツバターは甘さ控えめなものを。サラダの具材には、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1を含むハムをチョイス。1枚(10g)あたりで計算すると、マイナス5.19分にとどまります」
トースト(全粒粉)+ピーナツバター+ハムサラダ(ハムとレタス)+牛乳(+0.72+23.91-5.19+3.8-0.43=22.81)
【トマト目玉焼き定食(ヨーグルト付き)】+1.66分
「朝食はご飯派の定番メニュー。ほぼ完全栄養食品の卵に欠けているビタミンCと食物繊維を補給する意味で、目玉焼きと輪切りのトマトを一緒に焼いても、生のトマトを添えてもOKです」
白米+トマト+目玉焼き+フルーツヨーグルト(-2.15+3.82-0.86+0.85=1.66)
【納豆ご飯、野菜、味噌汁】+13.79分
「納豆は食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富で、血栓溶解効果も。
論文データにはありませんが、ビタミンCとβ-カロテンが豊富なブロッコリーや、野菜たっぷりの味噌汁を合わせてみましょう」
納豆ご飯+ブロッコリー+味噌汁(+13.79+α=13.79)
「論文では豆類、野菜、果物、ナッツ類、魚料理、シリアル食品は全般的にプラス傾向ですが、’19年の国民健康・栄養調査の結果、日本人に不足している食品に位置付けられているものがほとんどです。積極的にとりましょう。また、論文では牛乳がマイナス0.43分になっていますが、日本人はカルシウム不足なので、毎日、飲んでもいいでしょう。健康保持、増進に望ましい栄養素の基準値は国ごとに異なります。こうしたことに留意しつつ、献立を考えました」
どれもおいしくいただける“食べ合わせ”なので、箸が進む。おいしい食生活で、健康寿命も延ばそう!