介護現場で働く医師が推奨「認知症の予防に1日1.5リットルの水を」
年をとれば誰しも気になる認知症。食事や運動、脳トレなどさまざまな対策が提唱されているが、実は「水」とも深い関わりが。介護のスペシャリストに水分の重要性を解説してもらった――。
「年をとると、どうしても若いころに比べて水分摂取量が少なくなります。新陳代謝が落ちていることもその理由のひとつですが、トイレに行く回数を減らす目的の人も多いです。しかし、脳は体の中でも最も水を必要とする組織です。摂取する水分量が少ないと、当然、脳への水分も足りなくなり、血液がドロドロになり認知機能が低下します」
こう話すのは一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会会長の竹内孝仁先生だ。
日々の現場で患者さんと接しながら解決法を模索していた竹内先生。
突然熱が出たり、原因不明のまま入院したり、寝たきりになる高齢の患者さんたちは、総じて摂取している水分量がとても少ないことがわかった。
「実際、人体の総水分量の1~2%減少しただけでも疲労感、イライラ、頭がボンヤリする、覚醒レベルが低下といった意識障害が起こります。3%になると血流が悪くなり、脳梗塞が起こりやすくなり、5%になると体の自由が利かなくなり、7%で幻覚、幻聴、意識混濁、10%で死に至ります。人の体から500ミリリットルのペットボトル1本分の水が失われるだけで意識障害が起こるのです」(竹内先生・以下同)
竹内先生は、最低でも1日に1.5は水分をとってほしいという。水分は水に限らず、お茶やコーヒー、牛乳、ジュース、スポーツ飲料などを含めても構わないが、アルコールは含まない。
「お水で1.5ミリリットルとれれば理想的ですが、水だけではそんなに飲めないという人は、お茶やコーヒーといった好みの飲料を含めて構いません。カフェインのとりすぎには注意が必要ですが、脳の働きを考えた場合、水分をとってもらうことが第一です」
ただし、味噌汁やスープについては塩分や具の量など家庭によってまちまちなので、水分として計算するものは“食べる”ではなく“飲む”ものに限るそう。
「特に、朝起きぬけのコップ1杯の水(または白湯)はおすすめです。
午前中に半分の750ミリリットルほど飲んでいれば、脳から全身が活性化され、活動的な一日が送りやすくなります」
■運動習慣も大事。相乗効果が見込めそう
そして、水不足を解消するためにも習慣づけてほしいのが運動。
「運動といってもウオーキングで十分です。運動習慣がある人は、自然と体が水分を欲する傾向にあります。そういう人たちは好奇心も旺盛です。積極的な意識は認知力を高めてくれますから、いつまでも若々しさを保てます」
水と運動の次は食事も大切だ。「栄養は脳の働きと密接な関係があります。かむことで脳が刺激されますし、体を動かす筋肉をつくるためにも、良質なタンパク質を含んだ栄養バランスのよい食事が必要です」
最後に日々の排せつ。
実は排便と認知機能にも相関関係がある。
「大腸の動きが悪くなると脳の認知機能も鈍くなることがわかっています。便秘で悩まされている人はだまされたと思って1日2リットルくらいの水を飲み続けてみてください。5日もすれば便秘が解消されるでしょう」
水、運動、食事、そして排せつ。この4つが整うと、ほぼ認知症も改善するという。
「実際に発症後10年くらいたっていても、認知症が改善された人をたくさん見てきました」
1日1.5リットルの水で、脳の健康を保とう!
【PROFILE】
竹内孝仁先生
’73年から特別養護老人ホーム、在宅高齢者のケア全般に関わる。近著に『薬に頼らず認知症を治す方法』(エクスナレッジ)がある