寒い時季に出がちな体のトラブル、原因は栄養素不足? 冬の不調時の「おくすり代わり」食材
気になる症状がある人は、その栄養素が不足しているという体のサインだそう。
「私たちは毎日食べたものでできあがった、いわゆる“作品”です。よい作品を作るには、まずは“よい食べ物”が必要です」
こう話すのは栄養学博士の白鳥早奈英さんだ。
体にとって必要な栄養素は食材からとることができるが、栄養素が足りていないと、不足のサインが体に“症状”として出るという。
「特に50歳を過ぎたら、そのサインはテキメンです。風邪をひきやすくなったり、胃腸の働きが弱くなったり、肌のハリやツヤが落ちて血色が悪くなったり、シワが目立つようになったり……。若いころは無理がきいたり、お化粧でごまかせても、50歳を過ぎると、そうはいきません」(白鳥さん・以下同)
若いころはできていた寝だめや食いだめも、年齢とともにできなくなっている。さらに、この年代から免疫力が低下し始めるため、風邪をひきやすくなったり、冷えやすくなったり、倦怠感が抜けにくいなど、体調を崩しやすく、若いころに比べて回復も遅い。
そうした“症状”をいち早く察知し、食事で補おうというのが今回の提案だ。
この時季に起こりがちな「風邪系」「消化器系」「ストレス系」「冬の美容系」「婦人科系」の5項目から、さまざまな症状を改善する「おくすり食材」を白鳥さんに教えてもらった。
気になる症状がある人は、その栄養素が不足しているという体のサインだそう。積極的にその食材や栄養素を含む食材をとるようにしよう。
■冬の不快な症状に効く「おくすり食材」
【風邪の症状】
〈鼻水・鼻づまり〉
おくすり食材:ブリ
青魚は良質なタンパク質を多く含む。さらに、寒ブリは脂溶性の血行をよくするビタミンEを多く含んでいる。
〈のどの痛み・声がれ〉
おくすり食材:みょうが
みょうがに含まれる辛味成分、ミョウガジアールには抗菌作用や解毒作用があり、のどの痛みを和らげる。
〈咳〉
おくすり食材:ブロッコリー
コラーゲン合成に欠かせないビタミンCが豊富で、白血球を活性化させて免疫力を高め、咳を和らげる。
〈頭痛〉
おくすり食材:ミント/ナッツ類
ミント:ミントに含まれるメントールには抗菌・解毒・鎮痛作用があるほか、自律神経に作用して頭痛を和らげる。
ナッツ類:ナッツに含まれているマグネシウムとビタミンB2には血行を促進する働きがあり、頭痛の緩和にも効果がある。
【内臓・消化器系の症状】
〈口内炎〉
おくすり食材:チーズ/カツオ
チーズ:チーズのビタミンB2は、タンパク質や脂質の代謝にかかわり、細胞の再生やエネルギーの代謝を促す。
カツオ:水溶性ビタミンのビタミンB6は、体内でタンパク質が有効に使えるよう働き、皮膚や髪、歯の成長を促す。
〈食欲が出ない〉
おくすり食材:わさび
シニグリンという辛味成分が、血行促進、食欲増進、利尿作用などに働き、食欲を活性化する。
〈胃の疲れ〉
おくすり食材:大根
大根に含まれている消化酵素のジアスターゼが、食べ物の消化を促して胃腸の働きを助けてくれる。
〈腸の不調〉
おくすり食材:りんご
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれていて、腸のぜん動運動を盛んにし、胃腸の働きを助ける。
〈二日酔い〉
おくすり食材:梅干し
クエン酸などの有機酸が多く含まれるため、肝臓のアルコールを分解するスピードを速める効果がある。
【ストレス系の症状】
〈目の疲れ〉
おくすり食材:レーズン
アントシアニンには強い抗酸化作用、さらに血流を促進して目の毛様体筋の緊張をほぐす効果・効能がある。
〈首・肩こり〉
おくすり食材:レモン/かぼちゃ
レモン:酸味成分であるクエン酸は、ブドウ糖の代謝に欠かせず、乳酸がたまるのを防ぎ、疲労回復に働く。
かぼちゃ:脂溶性ビタミンのビタミンEが豊富で、抗酸化作用で活性酸素の害から体を守り、血行をよくする。
〈イライラする〉
おくすり食材:ライ麦
水溶性ビタミンのビタミンB1は脳内の神経伝達物質を正常化するのに働き、精神の安定を助けてくれる。
〈不眠〉
おくすり食材:青魚
安眠効果があるホルモン、メラトニンはトリプトファンから生成される。青魚はそのトリプトファンを多く含む。
〈気分が沈む〉
おくすり食材:セロリ
独特の強い香りや精油成分であるアピインやセネリンには、ストレスによる精神不安を緩和する働きがある。
〈体がだるい、疲れやすい〉
おくすり食材:にんにく/アスパラガス
にんにく:アリインをアリシンに変えるビタミンB1はエネルギーを生み出して疲労回復の効果を高める。抗菌作用も強い。
アスパラガス:アミノ酸の一種であるアルギン酸が新陳代謝を活発にし、疲労回復やスタミナアップに効果をもたらす。
【冬美容の症状】
〈肌の乾燥〉
おくすり食材:生芋こんにゃく
生芋こんにゃくのタンパク質は肌、筋肉、内臓などを作るもとになる栄養素で、セラミドの生成をサポートする。
〈目の下のクマ〉
おくすり食材:アボカド
アボカドに含まれるビタミンEには肌荒れの改善や細胞の新陳代謝を促す効果がある。美白効果も期待できる。
〈脂肪がつく(太る)〉
おくすり食材:冷やご飯
冷蔵庫で4度以下で冷やご飯にすると、でんぷんがレジスタントスターチに変わり脂肪の吸収を妨げる働きをする。
〈髪の毛のパサつき〉
おくすり食材:牡蠣
髪の毛を作ってくれる栄養素であるタンパク質と亜鉛、ビタミンB群が豊富。これらがすべてそろっている食材。
〈爪が割れる〉
おくすり食材:レバー
丈夫な爪を作るケラチンの形成にビタミンAが不可欠。
動物性食品のレバーに含まれるビタミンAからだと吸収が速い。
【婦人科系の症状】
〈ホルモンバランスの乱れ〉
おくすり食材:山芋
若返り効果の高い性ホルモンの材料となるDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)を多く含む。安眠効果もある。
〈冷え・血行不良〉
おくすり食材:鶏むね肉
代謝の過程でエネルギーを生み出して、体を継続的に温めてくれる良質なタンパク質が豊富に含まれている。
〈むくみ〉
おくすり食材:キウイフルーツ
体内にたまった塩分が水分をためこむ結果、むくみが生じる。水分を排出する働きのあるカリウムが多い。
■50代以降に積極的にとりたいたんぱく質
寒さが厳しくなるこれからの季節は寒暖差による冷えや、ストレスからくる体調不良など、不調を招きやすい。こうしたトラブルにまず必須なのがタンパク質だと白鳥さんは言う。
「中年期以降になると、ぜひ、しっかりとっていただきたいのが良質なタンパク質です。肉や魚、大豆食品は、筋肉や内臓、血管や皮膚など、私たちの体を維持する器官を作ってくれます。体温を維持したり、血流に関係する器官も、タンパク質によって作られているのです」
しょうがやとうがらしなどの辛味成分は血流を促進するが、それは一時的なこと。
「持続的にエネルギーを燃焼させるためには、タンパク質は不可欠。でも、タンパク質をとりながらさらに辛味成分をとるのであれば、より効果が期待できます」
さらに、免疫力を上げたり、体の回復・修復をするのに取り入れたいのが、ブロッコリーやナッツ類、山芋、かぼちゃなど、ビタミン豊富な食材。
「ビタミンはタンパク質や脂質など、多くの栄養素の代謝や吸収を高める働きがあり、血流を促進したり、肌にハリやうるおいをもたらしてくれます」
ビタミンには水溶性と脂溶性があるが、どちらも必須だ。
たとえば、これからの季節は風邪の症状が出やすくなるが、血流を促進してくれる寒ブリは、脂溶性のビタミンEを多く含み、鼻水や鼻づまりの改善にも働いてくれる。
「肉、魚、卵にもビタミンは含まれていますが、緑黄色野菜には、ビタミンだけでなく、抗酸化作用があるポリフェノールも多く含まれているため、積極的にとってほしいですね」
■季節の旬のものは吸収がよく高栄養価
おくすり食材には、冬が旬の食材が多く入っているが、旬の野菜やフルーツは栄養価が高く、効率よく栄養素を吸収できるので、特におすすめなのだそう。
「牡蠣、青魚は強くおすすめしますし、かぼちゃ、大根、りんご、キウイフルーツなどもいいですね」
お酒の席も増えるこの季節は、顔や手足がぱんぱんにむくみがちになる。
「むくみは血流の悪化により体内に老廃物がたまった状態になって起こります。カリウムの多いキウイフルーツは水分の排出を促す働きが高いのでおすすめです」
ちょっとした体の異変や体調不良に気づいた時点で、必要な栄養素をきちんととると、回復も早くなるそう。
ただ、基礎代謝が落ちてくる中年期以降は、食べる量を抑えよう。満腹になるまで食べていると食べすぎになってしまう。
「若いころは消費できていたカロリーも、この年代から肥満につながりやすくなります。腹六~七分目くらいが適量でしょう」
これから迎える寒い季節。食事は重要な体調管理のひとつだ。