感染の原因に鼻粘膜の冷え…冬の病気防ぐ「レンチン温かマスク」
マスクに一工夫で感染を防ごう
昨年12月22日、東京都は3年ぶりにインフルエンザの流行が始まったと発表した。すでにコロナ第8波突入のニュースもあり、感染症が猛威を振るっている。
冬になると一層流行する感染症。実は、寒さで鼻の“守備力”が低下することが一因かもしれない。
米ハーバード大学の研究チームは’22年12月6日、寒さによる鼻の粘膜の冷えにより、免疫力が低下することを医学専門誌『JACI』に発表した。
■鼻粘膜の守備で多くのウイルスをブロック
たかしま耳鼻咽喉科(栃木県宇都宮市)の院長、高島雅之先生が解説する。
「鼻の穴内部の表面を覆っている粘膜には、空気を吸ったときに入り込んだウイルスや細菌などの病原体を攻撃したり、体内へ侵入するのを防いだりする免疫物質が備わっています。とくに『IgA』という抗体は、鼻にいるさまざまな病原体を退治して感染を予防することが知られています。
今回の研究では、これら免疫機能とは別に、ウイルスが鼻から入ったことを認識した鼻粘膜細胞から、ウイルスを攻撃する『細胞外小胞』(EV)と呼ばれる小さな物質を大量に放出。EVがおとりとなってウイルスを取り込んで増殖を防ぐ機能があり、それが低温環境では半減してしまうことが明らかになったのです」
ハーバード大学の研究チームによると、通常ならば鼻にウイルスが侵入すると“巣をつつかれたスズメバチ”のようにEVが飛び出してくるという。ところが研究に参加した4人を気温4.4度の環境で15分過ごさせたところ、ウイルスを退治するEVの量が42%近く減少。それにより、ウイルスを取り込み排除する“”能力は7割も減弱することが明らかになったという。
高島先生が続ける。
「たとえ鼻にウイルスが入ったとしても増殖させないように鼻の粘膜は、さまざまな“武器”を備えて守備力を強化しています。ところが冬になって気温が低下すると、鼻のバリア機能が弱体化。風邪をひきやすくなったり、寒い季節だけインフルエンザが猛威を振るったりするのです。
また冬の乾燥した環境もウイルスが増殖しやすい要因になります」
空気中にはさまざまなウイルスや細菌が漂っている。その侵入を防ぐことはほぼ不可能。だからこそ鼻粘膜をつねに強化してバリア機能を高めておくことが感染予防のカギを握っているのだ。
「鼻粘膜の守備力を保つため、鼻の寒さと乾燥の対策をしっかりやりましょう」(高島先生・以下同)
■体の中から免疫力アップ!食べ物で鼻粘膜強化を
具体的に、どのようにすればいいのだろうか?
「飛沫による感染予防として習慣化されたマスクは鼻粘膜を加温、加湿してくれる効果的なアイテムです。ただしマスクをし続けていると、気がつかないうちに口呼吸になっているケースも少なくありません。鼻粘膜というフィルターを通さない口呼吸では、外気に直接触れるのどに負担がかかり、ぜんそくの悪化や気管支炎などのリスクを高めます。また加温や加湿が十分にされない空気が肺に到達することにより肺機能にダメージを与えてしまいます。ときどき口呼吸になっていないかチェックすることも重要です」
またマスクは、寝るときに着用しても効果的だという。
「睡眠前に蒸しタオルやホットマスクを利用することも鼻粘膜の強化につながります。たとえば顔の形にフィットさせる金具がない布マスクの表面を少しぬらして電子レンジで適度に加熱して、寝る前につけてもいいでしょう。寝室の湿度は50~60%に加湿しておくとより効果的です」
マスクを加熱するときは、安全のために電子レンジから離れないようにしよう。20~30秒を目安に少しずつ温め、必ずワイヤのない布製のマスクを選ぶこと。
とりわけ就寝中は、自律神経のなかでもリラックスモードである副交感神経が優位になり血管も拡張。血流がよくなった鼻粘膜のメンテナンスをしてくれるという。
「鼻粘膜の強化には睡眠の質を高めることも不可欠。入浴は鼻機能だけでなく眠りの質を高めます。
就寝60~90分前に40度程度で15分くらい、肩までしっかり湯船につかり、全身を温めておくことも大切なポイントです。寝室にリラックス効果のあるアロマオイルをティッシュなどに少量つけて近くに置いたり、アロマディフューザーを使用したりすることも有効でしょう」
加齢によって鼻粘膜は機能低下することも。鼻の乾燥を防ぐドライノーズスプレーを使ったり、「鼻うがい」でウイルスや細菌などがたまった鼻水を洗い流したりして、日々、鼻粘膜の補強を心がけておくことが肝要だ。
さらに体の中からも、鼻のバリア機能を強化するすべを知っておくことも忘れてはならない。「豚レバーやカキなど肉類や魚介類に多く含まれる亜鉛は、粘膜の状態を良好に保つ働きがあります。またウナギやシジミなどの魚介類や卵、アーモンドなどに多く含まれているビタミンB2、赤身の魚、豚のヒレ肉、ささみ、バナナ、さつまいも、玄米などに多く含まれているビタミンB6は、粘膜細胞の再生に役立ちます。また納豆や山いも、めかぶなどのねばねば成分には粘膜を守ってくれる働きがあります。これらの食材も積極的に取るようにしましょう」
これから寒さが本格化し、ウイルスがどんどん活発になる季節。
鼻粘膜を強化して、病気にならない体を作ろう!