1日3分舌はがし 口呼吸改善で頭痛不眠たるみも解消
舌が健康のカギ(写真:アフロイメージマート)
「コロナ禍で長引くマスク生活のなか、口をしっかり開いて動かす機会が減ると、次第に舌の筋肉が衰えます。すると、舌があるべき位置より下がる『低位舌(ていいぜつ)』の人が増えていきます。放置してしまうと、さまざまな心身の不調の原因になりますが、『舌はがし』をすることで、舌を正しい位置に戻すことができます」
そう話すのは歯科医師の石塚ひろみさん。石塚さんは外来や訪問歯科診療を行うなかで、不調を訴える患者に舌はがしを伝授。すると、見違えるように効果があったという。
「本来、舌の場所は上顎にくっついているのが正しいのです。しかし、筋力が衰えると舌が上顎から離れて低い位置に行き、下の歯の内側に押し込まれるよう、落ち込んでしまいます。多くの人は日ごろ歯磨きをしていても、舌には関心をもたずにいますが、低位舌になると口呼吸になり、滑舌や姿勢の悪化、頭痛、顔のたるみやシワの原因になるのです」(石塚先生・以下同)
なぜ、低位舌がそのような症状に関係しているのだろうか。
「舌があるべき場所にないと、自然と口が開きやすくなり、口呼吸になりがちです。本来、人の口は消化器であり、呼吸は鼻でするほうが体に負担がありません。舌が上顎にくっついていれば口で呼吸をすることはできず、おのずと鼻呼吸になるものなのです」
低位舌を放置し口呼吸になると、どんな弊害があるのだろう。
「ドライマウスや口臭、いびきの原因にもなり、食いしばりによる頭痛や三叉神経痛、睡眠呼吸障害など、深刻な事態に陥ることもあるので決して侮れません。また、口が緩むと舌まわりだけでなく顔の筋肉も衰えて、フェースラインのたるみや、太っていないのに二重顎になるなど美容面でも悪影響があります」
まずは、自分が低位舌かどうかをつぎのチェックリストで確認を。
【「低位舌」チェックリスト】
□ 無意識のうちに口が半開きになる
□ くちびるが荒れやすい
□ くちびるの色が上下で違う
□ 前歯の着色が歯磨きしても落ちない
□ 朝起きたとき、のどが乾燥していて違和感がある
□ 口の中がねばつく感じがする
□ 口臭がある(特に起床時、指摘されたことがある)
□ 口の中が乾きやすい
□ 歯並びが悪い
□ 下の顎が小さい
□ 早食い、丸のみすることが多い
1つでも当てはまったら、舌の筋力を高め、舌を正しい位置に戻りやすくする「舌はがし」がおすすめだ。
「実践する前に、舌はがしの効果を高めることができるウオーミングアップも忘れずに行いましょう。まずは、椅子に姿勢を正して座り、首や肩まわりのコリを優しくもみほぐすとよいです」
■簡単で時間も短く続けやすい舌はがし
耳たぶを両手でつかんでゆっくりと回す「耳ほぐし」や、両手のひらでこめかみの辺りを優しく押し当てる「側頭筋マッサージ」もおすすめ。
さらに鎖骨の上のくぼみに指を入れてほぐしたり、肋骨の間に両手の指を入れて左右にひろげるなど、頭部から上半身にかけてしっかりウオーミングアップし、リラックスしてから本番の舌はがしを行うことが大事だ。
【1】舌根はがし
舌を口の中で上に向ける。舌の付け根に人さし指を入れ、押してしごくようにマッサージする。引っかかりがあるところや硬いところは凝り固まってねじれや癒着があるのでゆっくり。力を入れすぎず、優しく行おう。
【2】舌小帯つまみ
舌を上げられるだけ上げ、舌小帯(舌の裏のすじ)を親指と人さし指でつまむ。この動作が難しい人は、まずは舌先だけを上の前歯の後ろあたりにつけて口を開き、人さし指を舌の下に入れて舌小帯をかき出してみよう。
【3】うなじ伸ばし
後ろ手で、手のひらをうなじの皮膚に密着させながら引き上げ、うなじを伸ばそう。
髪の長い人は結んだ髪の毛を上に引っ張り上げる感じでもOK。続いて、無理のない範囲で頭頂部の髪をつかみ、上に引き上げよう。
「舌はがしは、まずはくちびるや頰など口まわりのこり固まった筋肉を指でほぐすことから始まります。続いて【1】の通りマッサージを。【2】【3】もセットで毎日少しずつ続けると、舌が上がりやすくなり、口まわりや舌が動かしやすくなります。低位舌が改善してくると、口呼吸やそれが原因の不調もおのずと軽減していき、健康・美容面で見違えるほど効果があります。患者さんのなかには『口ってこんなに大きく開くんだ!』と驚く方も。舌のコリやこわばりがほぐれて口まわりが動かしやすくなり、続けやすいですよ」
すべての運動をしても、1日3分ほどで終わる。
舌を本来あるべき位置に戻して、自在に動かし、若さと健康を手に入れよう。