「トマト×アスパラ」で紫外線疲れ、「ツナ×にら」で冷房病……酷暑で蓄積した「夏ダメージ」は食べ合わせで解消
トマト×アスパラガスは抗酸化作用が高い組み合わせのひとつ
「暑さで『なんとなく不調』を感じるという方は、必要な栄養が不足していたり、ストレスで慢性的な炎症が起きている可能性があります。『食薬』の考え方を実践すれば、“夏ダメージ”の解消につながります」
著書に『すっきりしない不調を改善 組み合わせ食薬』(WAVE出版)などがある薬剤師で国際中医師の大久保愛さんが、こう話す。
長びく猛暑により、特に病気ではないけれど、胃もたれ、不眠、肌荒れなど「なんとなく不調」が重なっている人も多いだろう。
そんな不調の改善につながるという「食薬」とは、なんだろうか。
「『なんとなく不調』を、生活習慣から見直し、長期的視野で治していくのが東洋医学。その目的は治癒力を高めることにあります。一方、データを基に病気を特定し、薬や手術などで即時治療するのが西洋医学。両者の利点を組み合わせ、日々の食事に応用したものが『食薬』なんです」
つまり数千年の歴史がある漢方医学と、エビデンスに基づく現代の予防医学を「いいとこ取り」したのが「食薬」。
「また、分子栄養学などの観点から具体的な対応をすることもできます。家の中に“台所薬局”を導入し、日ごろからうまい・安い・早い・“健康”の観点で食事を選択する。それを、10年、20年と日常的に積み重ね、結果、健康寿命を延ばし、自分自身も周りの大切な人たちも元気に楽しく過ごしていこうというのが目的です」
では、日ごろ心がけるべきことはどんなことなのか。
「朝、起きて1時間以内に食事を取ることができるコンディションに体調をもっていくことです。夜10時以降に食べないとか、糖質を夜多く取らないとか、睡眠の質を下げないとか。胃腸の状態が悪ければ、朝食べる気にならない。改善しないと害になる可能性も。それを食べ物で改善していくんです」
■《うまい、安い、早い》にプラスα《健康にいいもの》
そのときの体調や気候に合わせて自分に適した食材を選び、組み合わせ、食事する。
さっそく大久保さんに、夏の「なんとなく不調」の症状別におすすめの食べ合わせを教えてもらった。
【紫外線疲れ】トマト×アスパラガス
効果:トマト=グルタミン酸の含有量が野菜ではトップクラス。疲労回復に役立つクエン酸、抗酸化作用の高いリコピンも豊富/アスパラガス=疲労回復に役立つアスパラギン酸や、抗酸化作用のあるβカロテン、ビタミンC、Eも豊富
おすすめの食べ方「アスパラ豚丼」:みじん切りのしょうがとにんにくを炒め、一口大に切ったアスパラ、トマト、豚こま肉を加え、醤油、みりん、塩、胡椒で味を調えてごはんにのせる
「太陽の下で長く歩くと、どっと疲れますよね。紫外線がシミ、しわの原因になるだけでなく、全身の疲労にもつながるんです」
目も紫外線を浴びるため、角膜で大量に活性酸素が発生して炎症を起こし、その刺激が脳に伝わると、自律神経にも負荷がかかり、疲労につながるのだという。
「『食薬』では、活性酸素を除去して疲労を回復することを考え、抗酸化作用の高いトマトとアスパラガスを使います。アスパラに含まれるアスパラギン酸には、体力回復や、アンモニアの排出を促す働きがあります」
【胃腸の疲れ】オクラ×大根
効果:オクラ=ネバネバ成分であるペクチンやガラクタンは胃腸の調子を整え、血糖値やコレステロールの上昇を抑える/大根=ジアスターゼなどの消化酵素を含み、消化吸収を助け、胃もたれや食べすぎなどからくる胃の不調を改善
おすすめの食べ方「オクラのみぞれ大根ポン酢がけ」:1分ほどレンチンしたオクラをみじん切り、大根おろし、みょうが、大葉とあえてポン酢がけと超簡単で、ドレッシングとしても使える!
「オクラのネバネバ成分のペクチンやガラクタンには、胃腸のダメージをやわらげて支え、血糖値やコレステロールを抑える働きが。大根はジアスターゼなどの消化酵素を含み、消化吸収を助けますので、食べすぎや、お酒の飲みすぎにもやさしいんです」
【不眠】豆腐×イカの塩辛
効果:豆腐=タンパク質、ビタミンB、カルシウムなどを含み栄養素が高く、セリンが睡眠の質の向上に役立つ/イカの塩辛=発酵食品の塩辛は消化吸収がよく、イカのグリシンが睡眠の質の向上に役立つ
おすすめの食べ方「豆腐のイカ塩辛のせ」:豆腐の上にイカの塩辛をのせ、みょうがや大葉、ごま、かつお節などをのせて完成
「暑い夏の夜はなかなか寝つけないことも。発酵食品のイカの塩辛は消化吸収がよく、睡眠の質を高めるグリシンが豊富です。
豆腐はそのグリシンの合成を助けます」
【肌トラブル】かぼちゃ×りんご
効果:かぼちゃ=皮には抗酸化作用のあるビタミンA、C、E。種には鉄、亜鉛などのミネラル、タンパク質、食物繊維が/りんご=抗酸化作用の高いポリフェノールを含み、シミ、しわなど活性酸素によるダメージの軽減に役立つ
おすすめの食べ方「りんごとかぼちゃのソテー」:かぼちゃ100グラムは皮、わたつきでスライスし、りんご1/2個もスライスしてソテーする。乾燥肌対策としてお酢やレモン汁、オリーブオイル、シナモンで調整
「ポリフェノールやペクチンを含むりんごと、βカロテンを含むかぼちゃは、抗酸化作用が高い食べ合わせです。りんごのペクチンは整腸に働き、肌の状態を整える作用もあります」
【冷房病】ツナ×にら
効果:ツナ=タンパク質、ビタミンB群、ミネラル、オメガ3脂肪酸などを含み、タンパク質不足の解消に役立つ/にら=代謝を促すビタミンB群、血流を促す硫化アリルなどを含むため、冷えや運動不足に役立つ
おすすめの食べ方「ツナのマーボースープ」:ツナ1缶を汁ごと、にら1/2束、豆腐1丁、にんにく1かけ、酒50ml、水400mlを煮立て、味噌、豆板醤、醤油で調味
「にらは代謝を促すビタミンB群、血流を促す硫化アリルなどを含むため、運動不足による代謝低下や、冷えの解消に効果があります。ツナはオメガ3脂肪酸などを含み、タンパク質不足の解消も」
【イライラなどストレス】セロリ×手羽先
効果:セロリ=香り成分のアピインやセネリンには心を落ち着かせ、気を巡らせる作用がある/手羽先=立ちくらみなどは胃腸が弱っているケースも。骨付きの鶏肉から抽出するスープはタンパク質や鉄が豊富
おすすめの食べ方「セロリと手羽先のスープ」:水に干し椎茸、昆布を入れて煮出し、手羽先か手羽元とセロリを葉もすべて投入して煮る。しょうゆと塩で最後に味を調整
「小さなストレスでもイライラしてしまうこと、ありますよね。気の巡りを改善する理気作用で、このストレスを軽減するのがセロリ。
そして、鉄やタンパク質不足の解消に役立つのが鶏肉です」
最後に、大久保さんが「食薬」の食材選びのコツを教えてくれた。
「健康食というと高価なイメージがありますが、お総菜より食材を買って調理するほうが、やっぱり安いです。旬の食材ならなおさら。ただ、たとえばタンパク質を摂取したい場合でも、ツナを選ぶときに『マグロは水銀の影響が不安』という方はカツオを選ぶとか、1つの食材にA案、B案と選択肢を持ちましょう。その蓄積が長期の健康につながります」
食薬とは「市販薬のような即効性よりも、健康長寿を意識した食べ方」だと大久保さん。季節ごとに最適で手軽なレシピを持とう!