「マスクで目が乾く」眼科医に聞いた“簡単すぎる対策&解消方法”
マスクをする機会が増えるこの時季。目が乾きいやすい人は要注意だ(写真:Luce/PIXTA)
インフルエンザが猛威をふるい、マスクを使用する機会が増える季節になった。だが、そこには思わぬ落とし穴があるというーー。
マスクの着用は感染症防止に効果はあるが、「マスクドライアイ」という症状を引き起こす要因にもなると警鐘を鳴らすのは、ドライアイに関する眼科研究の第一人者、伊藤医院(埼玉県さいたま市)の有田玲子先生だ。
「マスクドライアイとは、着けているマスクの上部から漏れ出した呼気が目に向かって流れて、目の表面を乾燥させてしまう現象のことをいいます」
マスクをしていると眼鏡がくもるのと同じ仕組みだ。
「ドライアイは環境に左右されやすく、なかでも風は目に最も悪影響を及ぼします。マスクから漏れた自分の息が風となることで、目の水分が蒸発しやすくなります。
また、ドライアイは湿度にも影響を受けます。特に冬は温度も湿度も下がり、室内では暖房機から出る風が目には大敵。
目にとってただでさえ過酷な季節なのに、そこにマスク着用による風の影響を受ければ、ドライアイはより進行することになります。マスク着用の際は呼気が漏れないよう、ワイヤーを鼻の形に密着させるようにしましょう」(有田先生、以下同)
コロナ禍以降は、一年を通じてマスクをする機会が増えたため、このマスクドライアイの問題が浮き彫りに。
マスクを着ける習慣のなかった欧米では、マスクドライアイに関する論文が多く投稿されている。ある調査研究では、対象者3,605人のうち18.3%マスク関連ドライアイを経験。そのなかの26.9%がマスク着用時に症状が悪化すると答えているという。
日本では推計2,200万人、成人の約17.4%がドライアイに罹患しているといわれている(ドライアイ研究会より)。
■頭痛や肩こりの悪化、うつ病になるリスクも
ドライアイは「ただ目が乾いて疲れているだけ」と思う人もいるだろうが、決して甘く見てはいけない疾患だと有田先生は話す。
「ドライアイは目の表面が乾燥して角膜が傷ついたり、障害が起きたりする病気。
目の疲れや乾き、異物感といった症状を伴います。ドライアイは放置すると角膜にダメージが及んで視機能が低下するだけでなく、うつ病や睡眠障害になるリスクも高めるという研究結果もあるんですよ」
また、ドライアイを放置すると自律神経のバランスが崩れて、頭痛や肩こりといったさまざまな全身症状の悪化を引き起こす可能性もあるという。
このドライアイは前述したとおり環境に大きく左右されるため、日々の何げない生活習慣が、発症リスクを高めていることがある。そこでチェックリストを見てほしい。チェックが多くつく人ほどドライアイになりやすい。
「ドライアイには複数のタイプがあり、長い間、水分不足が原因だと考えられていました。しかし近年、ドライアイ全体の8割以上を占めるのが目の油分不足、あるいは目の油の質が悪いタイプであることがわかったんです。
目の角膜は表面を涙に覆われています。
涙は3層構造になっていて最も外側にある油層が蒸発を防ぐ役割を果たしています。ドライアイは油分不足が原因であることが大半なので、いくら目薬をさして水分を補っても、この涙の中の油分の膜がない場合、水分は蒸発してしまい、逆に目の乾きを助長させてしまいます。
目薬を1日7回以上さしても目の乾く人は、明らかな油分不足ですね」
このような目の油分不足を助長させる可能性があるのが、チェックリストにある生活習慣だ。
「油分はまつげの生え際にある“マイボーム腺”と呼ばれる器官から分泌されていて、皮脂やメーク汚れなどで詰まることがあります。ここが詰まると油分の分泌がされないので、アイメークはしっかり落としてください」
それ以外にも、中性脂肪やコレステロールの値が高くなる食生活、体を冷やす、コンタクトレンズの長時間装用、運動不足もマイボーム腺の働きが低下する要因になりうる。
「油分不足によるドライアイは別名“目のメタボ”といわれています。つまり、体がメタボリックシンドロームになると、体内の油がドロドロになって涙の質も悪化してしまうのです」
体をメタボにさせない生活習慣がドライアイ対策に直結するので、食事や運動には気を使いたい。
■入浴はシャワーだけでなく湯船にゆっくりつかること
また、女性に多い冷え性は油分が固まりやすくなるので、目にも大敵。
「手足が冷えやすい人は、ドライアイのリスクが高いです。入浴はシャワーだけで済ませず湯船にゆっくりとつかることが重要です」
ここまで確認したように、ドライアイの予防・改善には目の油分対策が大切だということがわかった。この油分対策に効果的な動きが今回紹介する“きつね目”運動だ。
「これはまばたきに必要な筋肉を鍛える筋トレです。まばたきをするとマイボーム腺から油分が出てくるため、まばたきは油分対策にとってとても重要。行う回数は1日5セット以上が目安です。
即効性があり、始めて1日以内には効果を感じられると思います。ただし、サボるとすぐ元に戻ってしまうので、ぜひ習慣化するようにしてください」
この運動の注意点は、まばたきをするとき上まぶたと下まぶたがしっかりとつくのを意識すること。
ここで、上まぶたと下まぶたがしっかりついていないと油分が出ないからだ。特にパソコンやスマホなどを見る時間が長いと、きちんとまぶたが閉じなくなっていて、まばたきをしているつもりでも、できていないことがあるというから要注意だ。
“きつね目”運動は1日5セットやってもかかる時間は1分程度と非常にお手軽。マスクが必須の今こそ習慣化して、ドライアイを防ごう。