アメリカ次期大統領のトランプ氏へのさまざまな注目が集まる中、2016年は残りわずか。この一年、政治の世界ではめまぐるしい出来事が起こったけど、
「政治のことがよく分からない!」とはっきりいうのは恥ずかしい。
そんな人のための連載「ママは政治一年生」を執筆する政治ジャーナリストの細川珠生さんに、
2016年のこれだけは知っておきたい! 重要な政治ニュースをランキング形式で教えてもらいました。
第5位 アメリカ大統領選
細川珠生――第5位はアメリカ大統領選です! 11月9日未明、オバマ大統領の次、
第45代アメリカ大統領に、ドナルド・トランプ氏が選ばれましたよね。元ファーストレディで、上院議員、国務長官を務めた政治のプロ、ヒラリー・クリントン氏を僅差で破っての勝利に、アメリカのみならず、世界中が仰天したのは、世界のニュースで今年一番のトピックとも言えるでしょう。
実業家としての手腕はあっても、政治経験ゼロ。トランプ氏に会ったことがある日本の政治家も、選挙の時にはゼロという、異例中の異例の、アメリカ新大統領の誕生です。
――トランプ氏が大統領になって、日本は大丈夫なんでしょうか…。
細川珠生――日本は、唯一の同盟国(日米安保条約を結んでいる国)として、アメリカは世界の国々の中でもっとも重要な国です。その日米安保条約によって駐留している
日本国内の米軍の費用を、全額日本が持つべきだというのが、選挙中のトランプ氏の発言でした。
でも、日本に米軍が駐留しているのは、日本を守るためだけではなく、アメリカの世界戦略の一環でもあるのです。
このあたりは、トランプ氏も、もう少し勉強してほしいというのが、日本側の本音。
また
「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ氏は、移民によって雇用が奪われること、質の良い日本製品によってアメリカの製造業が脅かされていると訴えていました。
市場開放を目指すTPPには反対し、あくまでもアメリカの国益と、アメリカ人が損をしない、そういう政策をとることを選挙では訴えてきましたが、どこまで本気でやろうとしているのかが、世界の国々にとっては脅威なのです。
またオバマ政権で優先してきた、黒人やヒスパニック系、移民などへの政策は、軒並みくつがえされるとも言われています。アメリカ国内のみならず、世界が注視するトランプ次期アメリカ大統領。日米関係は世界の安定の上においても最重要でもあるだけに、来年も、トランプ氏から目が離せませんね。
第4位 子育て支援の政策
細川珠生――第4位は子育て支援の政策が進んだことです。安倍政権は、4年前のスタート時から、「女性の活躍」を、日本が変わるための重要な要素として、進めてきました。
そのための
「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」は、最優先で取り組む政策と考えられています。
待機児童解消のために、これまでの施設保育(保育園の増設)だけでなく、
ベビーシッターの費用を公費で補助することも検討中。また長時間労働を改善し、育児中の時短勤務の拡大やテレワークの活用、また男性の育児休業の取得増加など、今年になって矢継ぎ早に、多様な働き方を国の方針として進めていくようになりました。
ただ、長い年月の中で作られた日本社会の象徴とも言える「働き方」は、なかなかその文化を変えられず、すぐに成果が表れることを期待するのは難しいかもしれません。
――細川さんが子育てをされている中で変化したなと思うことはありますか?
細川珠生――私は子どもを出産してから、全てベビーシッターを利用しながら仕事との両立をしてきましたが、これまで、シッターへの補助がなかったことを考えると、ようやく一歩でも前進、と思います。
すぐに日本の社会は変わらない、変えられなくとも、女性が結婚しても、出産しても、社会で自分の役割を得られるという社会を目指すのなら、どうすればよいか、根気よく訴えていくことが必要ですね。
子供の教育費を支援する
「給付型奨学金」(返済の必要のない奨学金)や返済猶予の期間を設ける(働き初めてからすぐは、給与も少なく返済が困難であることに対応)も、来年度から実現の方向です。所得制限が設けられたりと、利用できる家庭は限定されていますが、第一歩ではありますね。
第3位 消費税
細川珠生――第3位は消費税です。2014年4月に、消費税が17年ぶりに増税し、8%となりました。法律により、一度延期はしたものの、
2017年4月に2回目の引き上げを行って、最終的に10%になることが決まっていました。
今年6月に、安倍総理は
2度目の延期を決め、2019年10月に行うと表明。その理由を、日本経済が本格的に改善していないことを挙げています。
消費税の増税は「社会保障と税の一体改革」の中で、決められました。その狙いは、今の
社会保障制度を維持すること、そのための安定的な財源を確保するということです。しかしながら、10%まで引き上げを行っても、
子育て支援を含む社会保障制度の充実のためには、増税5%のうちの1%しか充てられません。
残る4%は、社会保障制度の安定、特に国の借金である赤字国債の返済に約3%、
7兆円が充てられることになっています。
子育て支援のためには7000億円しか充てられないことを考えると、ケタが一つ違ってびっくりしますね。
そもそも、日本の社会保障制度は、人口が増えていくことを前提に作られています。すでに人口減少社会となった日本では実態にあっていないことはあきらか。老後の安心が少子化対策にもつながることからも、増税の延期を繰り返すより、制度の根本的な改善が必要です。
第1~2位の発表は後編へと続きます! 後編はこちら→
(イラスト・インタビュー ちゃず)