■「良い大学を出ることが幸せじゃない」時代のママの役目は?
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楢戸:とても現実に即したお話ですね。
木村:
「学校は立派」「先生の言うことは聞け」「たたいてでも、先生の言うことを聞かせる」それは化石時代の話。いままでは、ひとつの価値観を信じたら、みんなが幸せになれると信じられた、イケイケ・ドンドンの時代だったでしょ?
その当時の学校や学校を取り巻く社会と、いまは、全然違う。そういう世の中から、いま、向かっている世の中は、「良い大学を出ることが幸せじゃないよ」ということに、みんな気がつきはじめた時代だと思うの。
「幸せは、
自分がなりたい自分になることだよ。幸せは、人が決めない。自分が決めるものやで」。だからそのフォローは、まわりがしなさいよってこと。
それが、これからの教育だと思うの。昔と今では、
教育の目指す方向が全然違う。違うのに、過去の価値観だけを引きずっている。
楢戸:つまりは、ママの役目は、子どもが決めた幸せをフォローすることですか? もっと言えば、何が幸せかを自分で決められるような子どもを育てることなんでしょうか。何というか、子育てについてコペルニクス的な発想の転換が求められている気がします。
■「一般的な子どもになって欲しい」と願う親がすべきこと
楢戸:では、「普通から
ハミ出てしまう子」の母親として、まず、私は何をすべきなのでしょうか?
木村:まず、自分の子どもを「発達障害」という
言葉で括らないということ。親が自分の子どもを信じないとね。
楢戸:「普通からハミ出てしまう子」を育てることは、毎日が戦いなんです。
そんな日々の中で子育てをしていると、疲れてきちゃって。「子どもを信じる」ということが、正直、厳しいです。
木村:それって、「わが子が、一般的な子どもに近づいて欲しい」って思うからじゃないの?
楢戸:そういうことなのかもしれないですね。
木村:でもいまは、反省しているんですよね?
楢戸:反省していますね。(はじめて取材で)木村先生にお会いした2016年の7月以降、さほど、子どもを怒らなくなりました。
■「子どもを、枠にはめること」が教育なのか?
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木村:すばらしい! いま、
「親の立場」で、「苦しかった」と楢戸さんは言うけれど、子どもの立場になって、そのときのことを振り返ってみたことがある?
子どもは、どんな暴れている子でも、芋虫みたいにゴロゴロしている子でも、反抗したくてやっているのとは、違うの! これは、私が子どもから学んだことだから、確信を持って言える。
親の価値観は、「何で、私の言うことを聞かないの!」ってことだと思うけど、そうやって、ゴロゴロしている中で、その子は、その子なりの
学びの時間をもっている。だからその場所を、安心して「学びの場」にしてあげたら、その子自身、傷つかないでしょ。
「みんなはできているのに、どうして、アナタはできないの?」と、「こういう子であって欲しい」という枠に、無理やり子どもをはめないで、子どもを信じることが、とても大切です。
楢戸:「子どもを、
枠にはめること」。それが教育だと、先生と出会うまで思っていました。
次回は、「「みんなができることが、アナタはできないの!」と言ってしまうママへ」 です。
■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】
8. 学校の先生は、すべての子どもたちを
守ってくれる時代じゃない
9. 幸せは、自分がなりたい自分になることだよ。
幸せは、人が決めない。自分が決めるもの
10. 昔と今では、
教育の目指す方向が全然違う。過去の価値観にママは引きずられないで
11. 「どうしてアナタはできないの?」という枠に子どもをはめないで。
子どもを信じてあげて
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■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書
『
不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力』
木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
木村 泰子先生プロフィール
大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
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