連載記事:イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て”
親の「算数苦手」脳は子どもに遺伝する?【イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て” 第1回】
■算数苦手ママでも今すぐできる「数のかぞえ方」
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―― なるほど。ママ自身にもできることは何かありますか?
池谷先生:小さな子どもと一緒にものを数えるときに、「1個、2個、3個…」と単位をつけるのではなく、「1、2、3…」と数えてみてはどうでしょうか。
算数は抽象的な思考を学ぶもの。だから、単位をつけずに「数の概念(ルール)」を教えたほうが、汎用性が高くなります。ものごとのルールをほかに当てはめてみたり応用させたりする「水平思考」が、算数では求められています。
例えば、イチゴを1個と数えてしまった場合、「じゃあミカンは?」「1個!」と答えられますが、魚や動物を数えようとなった時に、そのまま1個とは数えないですよね。イチゴやミカンの「1個」と魚や動物の「1匹(頭)」は同じ「1」という概念であることを、まずは教えなくてはいけません。
だから、単位をつけずに数えるんです。
単位をつけて数えることや単位を覚えることは、大きくなってからでも十分間に合います。
■国語も算数も肝心なのは「コミュニケーション力」
―― 親としては算数と国語の両方が得意になってもらいたいですが、先生は可能だと思いますか?
池谷先生:それはできると思います。学校の勉強における国語と算数とは意味合いが違うのですが、国語力と算数力はコミュニケーションにおいて大事ですよね。
知能指数(IQ)テストを考案したフランスの理学者アルフレッド・ビネーは、知能を支える3大要素を「論理力(主に算数や物理で身につくもの)」「言語力(主に国語で身につくもの)」「熱意」としています。
適切な時に適切な言葉で伝える、相手が何を言おうとしているのか察知するなどのコミュニケーションには、論理力や言語力、やる気(熱意)が欠かせないわけです。
―― そうですね。肝心のコミュニケーション力を高めるにはどうすればいいのでしょうか?
池谷先生:親子の会話が大切です。正直、子どもってちょっと面倒な時がありますよね(笑)。
何度も同じものを「見て!」と話しかけてきたり。でもそういう時に、親がスマホの画面ばかり見ていて、子どもと会話しないのはいかがなものかと。
夕飯の支度をして忙しいなら、「準備が終わったら見せてね」の一言だけでも違ってくるはずです。そうやって親子の会話を通じて、子どもは空気を読むなど言語力を身につけているんです。なるべく誠意や愛情を持って接することができるといいですね。
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