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“森の幼稚園”って知っていますか? 森の中で自由に遊べば、子どもたちの感性も、のびのび育ちます。先日、森の幼稚園発祥の地、
デンマークのロラン島の視察報告会が、「ガイア都市創造塾」の主催で行われました。
「ガイア都市創造塾」の塾長であり、宮城大学 事業構想学部の教授でもある
風見正三(かざみ しょうぞう)さんに、
子どもと自然の関わりの大切さについてお話を伺いました。
風見教授は、東北の震災復興事業として東松島市の「森の学校」プロジェクトも推進している。自然との距離を縮めることにより、大震災で傷ついた子どもたちの心を癒そうという取り組み。 ©ガイア都市創造塾
デンマークが発祥の地
“森の幼稚園” ってどんなもの?
森の幼稚園とは、子どもたちが森の中で自然との関わりを通して、さまざまなことを体感し、感性を磨いていくという試み。
今では、北欧諸国をはじめ、ドイツなどでも盛んに行われていますが、その発祥の地は、デンマークの
ロラン島。そこへ、日本でも
森の学校プロジェクトを東北で推進する、風見正三さんが視察に行かれました。
昨年の「風見塾長と行く サスティナブルアイランド・ロラン島ツアー」の様子。©ガイア都市創造塾
―― ロラン島はどんなところですか?
ロラン島は、
風力発電などの環境政策でも日本で話題となった島です。コペンハーゲンから電車で2時間ほどの場所にある、人口約7万人の小さな島。
そこは森の幼稚園発祥の地でもあります。美しい田園風景の中に、農家の方が厚意で森の幼稚園を作りました。今では島内にいくつもの森の幼稚園があります。
幸福度世界一と言われるデンマークのロラン島はサスティナブルアイランドとも言われる、人口約7万人の小さな島。©Peter Hermes Furian- stock.adobe.com
―― 森の幼稚園、森の学校とはどんなところですか?
森の幼稚園は、小学校に入る前の子どもたちが森の中で自由に暮らし、
クリエイティビティを育むという幼稚園です。デンマークの教育は進んでいて、そこではいろいろな体験学習を通して子どもたちの自主、自立の感覚が磨かれているのです。またほとんどの森の幼稚園は
公立です。
幼稚園だけでなく、「フォルケスコーレ」という義務教育の現場では、子どもたちは
セルフビルドで授業を楽しんでいます。
先生と生徒は
対等の立場で、子どもが外で遊びたくなったら『外で遊んできます!』と外に飛び出しても構いません。
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森の中では、先生も子どもも、大人も子どもも同じ目線で会話しています。自然の中では、いつ、何が起こるかわかりませんから、それぞれが
自分にできることをやるというのが、当たり前に行われているのです。
とにかく自分で考えて、自分で責任を取っていくという教育。どの学校にも自然があふれていて、
そのままでいいんだよ、自由でそのままの個性を出せばいいんだというメッセージにあふれているんです。
―― ロラン島やデンマークの子どもたちと接して感じたことはどのようなことですか?
自然での体験を通して、
課題を解決する力を身につけた子どもたちは、自ら考え、工夫する力が優れているように感じました。私たちが訪れたときも、子どもたちが素敵な歌をプレゼントしてくれたり、森の中を案内してくれました。
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また、森の中では、常に
選択や判断が求められますから、その中で
冷静さを養い、
創造性を発揮するようになります。子どもたちは、精神的にも落ち着いています。森の幼稚園では、子どもたちは、のびのびしており、子どもも大人もお互いを
信頼し、心地よいコミュニティが形成されているのです。
デンマークは福祉国家で、税金は高いのですが、教育は大学まで無償であり制度的にも恵まれています。世界一幸福といわれるゆえんは、そうした教育支援と、ひとり一人の
自主性を大切にする風土もあるのでしょう。
自然との関わりは、
「子どもの脳の発達」にも影響する
―― 森の中で遊ぶことは、子どもたちにどのような影響があるのでしょう?
子どもたちの、自然との関わりは、
脳の発達にも影響が及ぼされることが近年わかってきています。自然との関わりを持たずに育った子どもは、
コミュニケーション能力に問題が起こりやすいという研究報告も出されてきています。
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これは
「自然欠乏症候群(Nature Deficiency Syndrome)」と呼ばれています。
自然の中で
適応力を身につけることが、子どもの脳の発達に良い影響を及ぼし、
コミュニケーション能力を伸ばすことができるのです。
こうした社会的な変化を踏まえて、東北の震災復興事業として私たちが進めている
「森の学校プロジェクト」においても、子どもたちの
自然への距離を縮めることにより、大震災で傷ついた心を癒そうと考えています。
―― 東北の「森の学校プロジェクト」とは、どのような試みですか?
「森の学校(東松島市立宮野森小学校)」は、3.11の大震災で被災した小学校を高台に移転させるとともに、それを自然と融合した“森の学校”として再建するプロジェクトです。こどもたちは、森の中で過ごすことで、木の温もりや、生きものなど、自然の優しさに触れながら、心も癒されていきます。
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また、大震災で、私たちは自然の脅威を感じると共に、
自然の偉大さを知りました。そして、様々な状況を乗り越え、
「生きる力」の大切さを知りました。都市機能が止まったとき、どうやって火をおこすのか、何が食べられるのか、そうした
究極の生命力が大切になることを実感したのです。「森の学校」は、こうした自然や森の中から
「生きる力」を体験的に学ぶことのできる場となります。
―― 今後、日本でも森の幼稚園のような活動は増えるのでしょうか?
日本では、“森の幼稚園”といったコンセプトは知られていますが、その本質を実現したものは未だ少なく、教育機関として認可されたものはまだ多くありません。しかしながら、日本は、本来、森林大国であり、国土の約7割は森林となっています。これらの森をしっかりと活用すれば、“森の幼稚園”、“森の学校”はどんどん増えていきます。
© Monet - stock.adobe.com
日本の森には、それぞれの地域に、炭焼きの名人や、きのこづくりの達人、林業家等がたくさんいます。そういう人たちが教師になり、“森の学校”の子どもたちに様々な知恵や技術を教えることになれば、森を支える人材を育成することになるだけでなく、そこに、森を生かした持続可能な産業が生まれていきます。
森は活性化し、地元の木材も流通し、木工技術や家具産業も成長していく。これからは、地域の資源を発掘し、それらを踏まえた地域経済が育まれることにより、「森・里・海」の豊かさを享受できる
持続可能な未来が実現していくことになることでしょう。
風見正三さん プロフィール
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宮城大学 事業構想学部長・事業構想学研究科長、ガイア都市創造塾塾長。日本ダム協会での調査研究、大成建設での都市開発等を経て、英国ロンドン大学大学院留学中に地球サミットに参加し、
「持続可能な発展」の概念と出会い、コミュニティを核とした持続可能な地域創造の研究や実践を進める。
2008年から宮城大学教授に就任。2017年に落成した東松島市の
「森の学校」プロジェクトでは、震災直後から基本構想・基本計画の策定に携わる。ガイア都市創造塾では、震災の教訓を踏まえながら、東北や日本を再生していく
人財(ガイア人)を育成すべく、ソーシャルビジネスの分野にてさまざまな活動を行っている。
*風見正三さんが塾長を務めるガイア都市創造塾では、毎年、
ロラン島への視察ツアーを開催しています。
昨年のツアー参加者による報告会では、風見さんの講演のほか、フードデザイナー横田美宝子さん(3.p.mさんじ)のロラン島イメージの食のコラボや、参加者による発表や意見交換も活発に行われました。詳しくはホームページやFacebookページをご覧ください。
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