連載記事:イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て”
きょうだいの性格「正反対に感じるのはどうして?」【イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て” 第5回】
■脳が「子どもの違い」をあえて見いだそうとしている
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―― なるほど。では多くの親が「うちの子たちは本当に性格が違うのよね」と感じてしまうのはどうしてなのでしょうか?
池谷先生:それは、脳の元来の目的が「差分検出器」だからだと思います。「差分検出器」とは共通しているものではなく、違いを見いだすこと。脳にはそういうクセがあるのです。
極端ですが、カエルを例にあげてみましょう。カエルには止まっているものはよく見えていません。動くものが小さければ虫だと思って舌を出し、大きければヘビだと思って逃げます。ヒトも視界の片隅で動くもの、すなわち違いがあれば、それを見ようとしますよね。
「違いを見いだす」という意味では、人もカエルも同じなんです(笑)。
―― なんと、カエルと同じとは…! 衝撃が走りました。
池谷先生:さらにいうと、脳は違いを細分化しようとするんですね。ライオンから見れば、ヒトは全部同じですよね。でも、人間はそうは思わない。日本に住む私たちからすればアメリカ人と日本人は違うし、韓国人と日本人も外見は異なります。もっといってしまえば、隣の子とわが子は違いますよね。
そうやって細かいところにどんどん目がいくように脳はできているので、きょうだいの違いばかりに目が向くのです。
本来の違いはごく一部であって、共通していることのほうが多いはずなのに。
■「性格が正反対」と感じるのは子どもをよく見ている証拠
―― 違いばかりに目がいくようにできているとは驚きました!
池谷先生:きょうだいの性格を正反対に感じるというのは、親としてお子さんたちをよく見ている証拠ともいえます。毎日頑張って子育てしているからこそ、見えてくるものですね。
ただ、気をつけてほしいのは、違いを見つけることが「アラ探し」になってしまうこと。例えば、出かけるときに上の子はさっさと用意するのに、下の子はマイペースで時間がかかるなど、きょうだいを見比べると、人はどうしても悪いほうに目がいきがちです。
「弟はできているのにどうしてあなたはできないの?」などと、きょうだい間での差別に結びつけないよう、その点だけは注意してほしいなと思います。
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