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「教育ライター」という名刺で仕事をしている筆者は、常に「客観的な視点での取材」を心がけているつもりです。それでも花まる学習会の取材のあとは、いつも、「やっぱり、そうだよね。これからの教育は、そういう方向だよね!」と、つい感情移入してしまいます。
そんな
花まる学習会を率いている
高濱正伸(たかはま まさのぶ)さんが、「これからの教育について語る」というので行ってきました!
高濱正伸さん
花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。
■日本の教育は、何が問題か?
高濱学級『教育の本質ってなんだろう』
高濱さんは、言います。「いまの日本の教育の問題点は、何か? ひと言でいえば、
もう古いんです」。
尾木ママこと尾木直樹先生が
「博物館」、映画『みんなの学校』の木村泰子先生が
「化石時代」と表現する、いまの日本の教育。それは、高濱さんの言葉で言えば、「粒のそろった兵隊を作る教育」なのだとか。それでは、もう古いそうなんです。
具体的に、どんな感じで古いのでしょうか? 「たとえば、スポーツ。
いまの日本の部活動は、『生涯スポーツを楽しめる人を育てる』という方向ではありませんよね? 『大会で勝つ』『いい記録を出す』ということが良しとされている。そもそもの方向性自体が、ずれてしまっているんです(高濱さん)」
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そもそもの
ゴール設定が根本的にずれてしまっている…。そう「解説」してもらえれば、「そうかもしれない」と感じますが、「そういうこと、自分では気がつけないよな」と思いました。
高濱さんは、「上の言うことを忠実に聞く兵隊を作るのではなく、これからの教育では
『自走する人間』を育てていく必要があるんです」と、言います。
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■「家庭の力」があれば子どもは伸びる
「そのために必要なのは、
言葉です」(高濱さん)。
高濱学級『教育の本質ってなんだろう』
言葉の力は、つまりは「本質をとらえる力」ということ。「何千という家庭を見てきて、
言葉がしっかりした家の子は伸びるというのは確信を持って言えます」(高濱さん)。
家庭の力…。そう言われてしまうと、「やっぱり、母である私がちゃんとしなければ!」と緊張を強いられるような気分になってしまいます。
でも、高濱さんは「各家庭で、しっかりとした教育をしてください」と、突き放しはしません。「親ごさんが変われば、子どもは変わってきますよ」と、まるで悩んでいるお母さんたちを「抱きしめる」よう。
そういえば。
私が初めて高濱さんを取材させていただいた日のこと。取材前の雑談で、「ママたちがテンパってしまうのは、あたり前のことなのですよ」と励ましていただいて、「そうか、キーキーと子どもを怒鳴ってしまうのは私だけではないんだ」と、心がスッと楽になりました。
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このときの様子は、
「つい子どもを叱り過ぎてしまうママに伝えたいこと」をぜひお読みください。
ちなみに、高濱さんが開催する「お父さん講座」では、お父さんたちを800人を集めて、妻の話を聞くときの「うなずき方」の練習をしているのだとか(笑)。高濱さんの本質を突いた取り組みに頭が下がります。
■「自分はこれだ!」の芯を見つけるためには
「自走する人間」を育てるために必要な、もうひとつ大切なことは、「『
自分は、これだ!という芯』を子どもの中に見つけてあげることです」(高濱さん) そのために必要なことは、子どもを感じること。「感じる」というのは、人工知能にはできないことですものね。
「目の前の子どもを感じることを大切にできるか。教育者としての力量の違いは、結局感性の差だなと思うことが多いんです」(高濱さん)。
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いま、アメリカでMBAをとるような一流のビジネスパーソンたちの間では、こぞって絵を描いたり、音楽に親しんだりなど、アートへの関心が高まっているそう。イギリスでは、教科のなかに国語や算数と並んで演劇もあり、先生になるために演劇学を学ぶところもあるのだとか。
高濱さんのエネルギッシュなお話しを伺って、「これからの教育」に対しての「希望」「熱さ」を感じました。
ひとりの母親として、まずはわが子を感じることから始めよう。そのためには、親子でたくさんの芸術に触れ、心のあかを落とし、感性を研ぎ澄ませたいと思いました。
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「紙教材こそ正しい」と思っていた私が、タブレット学習に驚いた理由