■赤ちゃんの離乳食「月齢別、不足しがちな栄養素」
――月齢別に栄養面で注意したほうがいいことなどはありますか?
上田先生:そうですね。生後5~6カ月頃、赤ちゃんは母乳やミルクから8~9割、離乳食からは1~2割の栄養をもらっています。この時期はおかゆがメインの離乳食となります。
7~8カ月に入ってからは、先ほど説明したようにエネルギー源、ミネラル・ビタミン源、たんぱく質源といった3つの栄養素がバランスよくとれる食事にシフトしていく必要がありますね。そして9~11カ月目から意識してほしいのが、カルシウム不足と鉄分不足です。
――カルシウム不足と鉄分不足…。
上田先生:そうです。まずカルシウム不足について説明しますね。
カルシウムは骨や歯の材料になったり、神経や筋肉の働きを調整したりと成長に欠かせないものです。
母乳やミルクの時期は不足しませんが、1歳過ぎから幼児期に不足しやすいとされているので、食事から積極的にとるように意識していきましょう。
手軽に摂取できる方法としては、1~2歳であれば牛乳を1日3~400ml、牛乳が苦手な場合は、スライスチーズやヨーグルトなどの乳製品をとりいれるといいですね。
――カルシウム不足には乳製品。なんとなくイメージがわきやすいですね。牛乳が苦手な子はチーズですね。
上田先生:そうです。それからもうひとつ注意してほしいのが鉄分不足。
鉄分は、不足すると病気にかかりやすくなってしまう傾向があります。
鉄分不足になっているかどうかは判断が難しいのですが、症状のひとつとして、発育・発達の遅れがあります。たいてい保育士さんなどが「ちょっと発達がおそいかな」と気づき、そこから貧血検査をして鉄分不足が判明するケースが多いようです。
この場合、医師の指示により食事療法や鉄剤の服用等により、改善していくことになります。
――そうなんですね…。発育・発達の遅れを感じたとしても「この子の個性だろうから」と見逃してしまうこともありそうですね。
上田先生:鉄分不足は、鉄剤をとっていれば1カ月程度で改善されます。ただし、鉄分不足の状態がどれくらいの期間続いていたかによって、発育・発達に影響があるようです。
例えば、貧血を発症して1カ月で鉄分不足が判明した場合と、発症して6カ月たってから判明した場合では、後者のほうが発育・発達への影響が大きいのです。特に、2歳未満の貧血はその発見が遅れるほど、成長後も心身に大きな影響を及ぼす可能性があるといわれています。
――早くに見つけて、早くに対処することが大切なんですね…
上田先生:そうなんです。だから生後5~6カ月の頃は、小さな鉄鍋で小松菜やほうれん草などの青菜をやわらかく煮たり、7~8カ月に入ったら赤身の肉や魚、9~11カ月からはレバーやかきなど、鉄分を豊富に含む食材を離乳食に活用して、常に補給することを習慣づけていきましょう。
こうした食材をとり入れていくことで、鉄分不足は予防できます。不足しがちな栄養素を知っておくのと知らないのでは大きく違いますからね。
子どもの離乳食は、エネルギー源、ビタミン・ミネラル源、たんぱく質源の3つをとり入れることを意識する、不足しがちな栄養素があることに注意するなどのお話をうかがったことで、シンプルながら大切な栄養素について知ることができました。
上田先生のアドバイスを元に、正しい知識を持つことで栄養面から子どもの成長をサポートしていきたいですね。
最終回となる次回は、栄養や量が足りているかどうかのチェック方法や、子どもが食べない理由は実は「かむ力」にあったなど、離乳食に疑問や不安をもつママに役立つお話を引き続き、ご紹介していきましょう。
参考図書:
『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』(主婦の友社)
監修/上田 玲子 イラスト/あらい ぴろよ 1,296円(税込)
子育て中に遭遇する離乳食の「どうしたらいいの?」にわかりやすくマンガで答える一冊。乳幼児栄養についての第一人者である上田玲子先生が監修し、ゆるかわ、ポップ系を得意とするイラストレーター・あらい ぴろよさんのイラストでママたちの素朴な疑問を解決してくれます。マニュアル通りにはいかない離乳食のリアルなモヤモヤ、不安にもあたたかく寄り添う、悩めるママの離乳食解決本。