■月齢別の離乳食1回分「どんなバランスでどれくらい?」
――私の子どもが離乳食期の頃、身近に同じくらいの月齢の子がいなくて、1回分の食事量がよくわからなかったんです。先生の『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』では、月齢別に1回分の食事内容と量、大きさ、かたさの変化の目安が写真で掲載されていますね。すごく参考になります。
上田先生:そうですね。こうして写真で見るとわかりやすいですね。
――食事内容について月齢別にくわしくお聞きしてもいいですか?
上田先生:まず生後5~6カ月頃のスタート時は、10倍がゆのすりつぶしから始め、だんだんつぶし方をあらくしていきます。
1週間ほどしたらペースト状にした野菜かフルーツ、それに慣れたら豆腐のすり流しを加えていきますが、離乳食を始めたばかりなので、ひとさじずつゆっくり増やします。スタートして1カ月たった頃には、これぐらい食べられるでしょう。
生後5~6カ月頃の離乳食1回分
写真では、1品ずつお皿に取り分けてますが、3週間ぐらいして慣れてきたら何品かを混ぜてあげてもいいですね。別々だと食べなかったのに混ぜ合わせたら食べることもありますから。
例えば、おかゆ単体では食べなくても、かぼちゃのほんのりした甘さが加わると喜んで食べる、なんてこともあるんですよ。
――そうなんですね。では、7~8カ月になると、どんな違いが出てきますか?
上田先生:7~8カ月の頃になると7~5倍がゆ、野菜をマッシュ状につぶしたもの、豆腐、魚、肉、納豆などをやわらかく煮てあらくつぶしたものを、舌とあごでつぶして食べるようになります。
この頃は同じものばかりを食べる「ばっかり食べ」が出てきたりしますが、これも心配することありません。
生後7~8カ月頃の離乳食1回分
ばっかり食べも、ある時期になるとあきて、急にほかのもの食べるようになったりするので、いろいろなものを食べさせようと固執しすぎず、楽しく食べられるよう雰囲気づくりに目を向けてみるといいかもしれません。
――ばっかり食べ、私の息子のときもありました(涙)。あんまり心配しすぎることもなかったんですね。
上田先生:そうですね、大丈夫です。それで9~11カ月になると3回食になるので、食べ慣れたものを中心に量も徐々に増やしていきます。かむ力を育てるために、メニュー例のようにかたさ、大きさの変化を考え、5倍がゆ~軟飯やゆでた野菜、お豆腐炒めなどをイメージしてみましょう。
生後9~11カ月頃の離乳食1回分
上田先生:そして1歳~1歳半で軟飯~ごはん、ソテーした野菜、豆腐のステーキ、固形のフルーツなどをお手本に。大人の料理から取り分けるときは、味つけが濃い場合、2~3倍ほどに薄めます。
味がちょっとあるくらいの「薄め」が赤ちゃんに最適な味つけです。
1歳~1歳半頃の離乳食1回分
――なるほど…。大人の食べる食事に近づいていくので味つけも大人に近づけたくなってしまいますが、見た目が大人の食事に近づいたからといって、同じ味つけでいいわけではないんですね。
上田先生:そうなんです。それと注意してほしいのが「かたさ」です。生後5~6カ月の頃と1歳~1歳半の頃の食事を比べると、食材が固形化していきますよね。そのため、どんどんかたいものを与えていいと思うかもしれません。
でも、まだ奥歯が生えていないので、「かたいもの」は食べられないので注意しましょう。
2歳半~3歳くらいで20本の乳歯が生えそろいますが、それよりも前にかみ切れない食材を与えると丸のみしてのどにつまらせたり、その危険を感じて不安から口から出ししまうことがあります。
赤ちゃんが「食べてくれない」のは、単純に味が嫌いという以外に「かみ切れなくて不安を感じて」ということがあるんですね。
――そうだったんですね…。そういった理由もあったとは…。
上田先生:乳歯が抜け始める時期もまた咀嚼(そしゃく)力が落ちるので、お肉のこま切れ肉などが食べにくくなります。子どもが、ちょっと前までは食べていたのに急に食べなくなった…というのは、歯がグラグラして生え変わっている時期だから、ということもあるんですよ。
大人と同じ咀嚼(そしゃく)力をもって問題なく食事がとれるようになるのは、実は16歳くらいといわれています。
――そ、そんなに遅いんですか…!
上田先生:そうなんです。
大人と同じようにかめるのはそのくらいからです。だから「食べられるようにするため」食材の繊維を断ち切る方向で薄切りにしたり、かたまり肉なら叩いたり、さいの目状に細かく包丁で線を入れたりしてあげてほしいですね。
手間はかかってしまうけれど、飲みこめない事情があることを知っておいてほしいと思います。
――それは知らなかったです…。おいしくないから食べないんじゃなくて、かめなくてつらいから食べないってことも頭に入れて、子どもの食事づくりをしていこうと思います。
発達曲線カーブの新たな見方や、食べすぎ、食べなさすぎも1カ月単位で見ていくこと、月齢別の食事内容や量など、栄養指導ではなかなか聞けない内容ばかり。
これから離乳食に挑戦というママや、離乳食期真っただ中だけれどうまくいかない…とお悩み中のママにとって、価値ある金言ばかりだったのではないでしょうか?
離乳食が終わり、大人と同じような食事が食べられるようになったからといって、咀嚼(そしゃく)力まで同じになったわけではないということは、小学生の息子を持つ筆者にとっても新しい発見でした。これまで食事面で息子に苦労をかけていたのかも…と泣きたくなりましたが、上田先生からのアドバイスを元に、これからは子どもの咀嚼(そしゃく)力も意識しながら食事つくりにのぞめたらと思います。
参考図書:
『マンガでわかる離乳食のお悩み解決BOOK』(主婦の友社)
監修/上田 玲子 イラスト/あらい ぴろよ 1,296円(税込)
子育て中に遭遇する離乳食の「どうしたらいいの?」にわかりやすくマンガで答える一冊。乳幼児栄養についての第一人者である上田玲子先生が監修し、ゆるかわ、ポップ系を得意とするイラストレーター・あらい ぴろよさんのイラストでママたちの素朴な疑問を解決してくれます。マニュアル通りにはいかない離乳食のリアルなモヤモヤ、不安にもあたたかく寄り添う、悩めるママの離乳食解決本。