■家でも学校でも、教育の目的はたったひとつだけ
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―「子どもにどんな人になってほしいか?」…ですか?
木村:たとえば、教員になる人たちは、教員養成課程で「自分がどんな先生になりたいか?」ばかりを勉強させられています。「子ども理解ができて、授業がうまくてなんとかかんとか…」と。
そうしたら、自分がそういう教員になることが、すべての「目的」になってしまい、
子どもは目的を達成する「手段」になってしまうんです。「目的」と「手段」が逆になってしまっているんです。
高山:家庭でも、同じことが起きています。
木村:「どんな親でありたいか、どんな教員になりたいか」ではなく、
「自分は、どんな子どもを育てたいのか」ということだけを考えていればいい。
もっと、言ってしまえば、「家庭や学校での教育の目的とは何か?」という話です。家庭や学校での教育の目的は、
その子がその子らしく育つこと。
それ以外にありません。
高山:おっしゃるとおりだと思います。私は、アメリカの大学院で、教授法には「教師中心法」と「生徒中心法」があると学びました。「教師中心法」は、文字通り、教師中心の教授法で、従来の日本の一斉教育のイメージですね。
一方で、生徒中心法は、子どもありきの教授法です。この「生徒中心法」の考え方が、これからの教育で、非常に大切なのだと私も思います。
■親が変われば子どもも変わる
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―大空小学校には、保護者の方、ボランティアで来て下さる地域の方など、たくさんの大人がたくさんいました。学校に多様な大人がいて混乱はありませんでしたか?
木村: 私たち教職員がすごく大事にしていたのは、「私らが子どもを一番見ていて、わかってへんかったら、給料返さなあかんで」ということです。
「この子にとっていい関わりか? いい関わりでないか?」。そこを判断するのは、教員の仕事です。授業中に、地域の方がその子にとってプラスにならないような関わりをするときは、やっぱりキッチリ言わないと。専門家である私たちが、「いま、ちょっと邪魔やねん」と言う。それが教員の仕事です。
高山:「この子にとっていい関わりか? いい関わりでないか?」を判断すると思えば、親も自分の感情に流されることは減るかもしれませんね。でも、そこまでキッパリ言って、気を悪くされる方はいらっしゃいませんでしたか?
木村:そういうこともあるでしょう。「邪魔やねん」と言われて、「そんなん言われたし、もう行かへん」と思われる方は、それ以後、自らいらっしゃることはないでしょうね。
一方で、「邪魔やねん」と言われたときに、「あ、そうか。いまの私の関わり、あかんかったな」と学んでくださる方は、それ以後、同じような関わりはされません。
高山:なるほど。その方自身を否定するのではなく、その方の言動がNGなのですから、そこを変えればいいのですね。
木村:自分の意思で学びつづけようとする。そういう人が増えて、そういう方が、どんどん学んでいってくだされば、家庭や学校、ひいては地域全体の「学びの場」としての空気が変わっていくわけです。ですから、大空の校門には、こんな看板をかけていました。
●大空小学校の校門の看板
(『「みんなの学校」から社会を変える(木村泰子・高山恵子著/小学館)』より抜粋)
木村:大人が
「主体的な深い学び」を行えるようになってくれば、子どもたちも自然に「主体的な深い学び」を獲得していきます。
親が変われば、必然的に子どもも変わっていくんです。
高山:本当にそうですね。それにしても、木村先生は、行動の人ですよね。
木村:「誰が、いつやるか?」というだけの話なんです。私の話を聞いて、「いいのはわかっているんですが、私の現実はそうではないんです」ではなく、「そうするためには、どうしたらいいですか?」なんです。
「自分自身を、まず変えようよ!」と。自分自身を変えることからしか、何も始まらないのです。
■今、自分自身を変えることから始めよう!
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いかがでしたか? 筆者は、「私の生きづらさは、どこからくるのだろう?」 そんなことをよく考えます。
私が子どもだった頃、「その子がその子らしく育つこと」を最優先に考える大人に囲まれていたのなら、「私は、私であっていい」と、力みなくストンと思えたのかもしれません。
そう思うのであれば、いま、自分が、そんな大人になればいい。「その子がその子らしく育つこと」を保障できる大人に、自分がなればいい。そんなふうに、考えるようになりました。
下記の対談本は、筆者が取材・執筆を担当しました。取材を通じて、木村・高山両先生と多くの時間を過ごさせていただくなかで、実践してきた人しか持ちえない、「言葉の力」を体感しました。本書を通じて、それが少しでも読者さまに伝わるとうれしいです。
<親の意識を変えるポイント>
1)自分が持っている画一的な価値観を子どもに押しつけていないかセリフチェックを!
2)教育の目的は、その子がその子らしく育つこと。
それ以外には、ない
3)大人が主体的な深い学びを獲得すれば、子どもも自然とそれに続く
■参考文献
『「みんなの学校」から社会を変える: 障害のある子を排除しない教育への道』
(木村泰子・高山恵子 著/小学館刊 本体800円(税))
●木村泰子(きむら・やすこ)先生
文部科学省特別選定にもなったドキュメンタリー映画「みんなの学校」は、2015年2月に封切られてロングラン、今もなお全国の自治体などで自主上映され続けています。木村泰子先生は、この映画の舞台である大阪市立大空小学校の初代校長。2015年に退職後は、全国各地で公演活動を行っています。
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「『みんなの学校』流「生き抜く力」の育て方」
●高山恵子(たかやま・けいこ)先生
NPO法人えじそんくらぶ代表。保育所・幼稚園などへの巡回指導を通じて、子育ての現場支援に携わっています。著書に『しからずにすむ子育てのヒント(高山恵子/Gakken)』など、子育てのスキルをのわかりやすい解説に定評があります。「ママのストレスを少しでも減らしたい!」が、活動の原動力。
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「ママのためのアンガーマネジメント」
【保育士が明かす】登園しぶり解決法 〜”魔法の言葉”と絶対避けたいNG対応〜