はじめての言葉に触れたり、感性を刺激してくれたり、子どもの世界をぐんと広げる
「絵本」は、子育てに欠かせないツールのひとつです。
でも、絵本の対象年齢に合っているのか、成長のためになっているのかなど、ふと疑問になることも。
そんなときに出会ったのが、
指先をトコトコと動かしながら年齢問わず遊べる絵本
「ゆびさんぽ」(KADOKAWA 刊)。
以前ウーマンエキサイトで「
ズボラ母のゆるゆる育児」の連載をしていた、瀬戸内海在住の人気イラストレーター
まつざきしおりさんの絵本デビュー作です。
絵本を指先でたどりながらものがたりが進んでいくのですが、はじめての感覚で、子どもはもちろん大人でも楽しい! しかも、自然とさまざまな動かし方が身につくので、手指と密接な関係がある
脳の発達もうながすのだそう。
企画から1年以上を費やしたというまつざきさん、どんな想いで制作されたのでしょうか? 先般おこなわれた「道づくりワークショップ」の様子とともにご紹介します。
■探し絵要素も!
遊び心をギュッとひとつに
絵本の主人公は、赤と青のとんがり頭巾をかぶった
2人のこびと。
子どもたちはこびとと一緒に森のみんなとピクニックをするために、“ぐらぐらいっぽんばし” “ふわふわたんぽぽのみち”など、
13のステージを進んで行きます。
そこに、まつざきさんならではのキュートでやさしいタッチの絵の
うさぎやヒヨコ、キノコやおばけなど、子どもの興味をさそうキャラクターがたくさん登場するので、
ページを開くたびに新鮮なワクワク感があふれてきます。
さらに、細かく見ていくと“こんなところにこんな子が!”という
探し絵の要素もちりばめられていて、繰り返し見ても楽しめる工夫がされているんです。
「最終的に指でさんぽをするという案に落ち着くまでに、本当にさまざまなアイデアを出したのですが、それもボツにするのではなく作中に活かしています。
たとえば、川のぐらぐらいっぽんばしのステージでは、“ザ〜〜〜”という擬音をテキストで川に描いているのですが、これは
オノマトペの絵本にしたら? というアイデアを取り入れたもの。
モグラのページにある“宝石ゼリー”はお菓子がたくさん出てくるものがたり絵本という発想から。完成に至るまでにセリフが足されたりと作品自体がさまざまに変化して、最終的に私らしい絵本ができたのではと思います」(まつざきさん)
担当編集さんいわく、リクエストするとアイデアを10倍にも100倍にも膨らませて返ってくるのだとか。そんな遊び心にあふれたまつざきさんのアイデア1つひとつがリレーのようにつながって、一番おいしいところをギュッと集めたデビュー作に仕上がりました。
■指先以外でも遊べる!
成長とともに育っていく絵本
そんな自由な発想から生まれた絵本だからこそ、
自由に遊ぶ余白があるので、指で
さまざまな遊びが生まれていきます。
実際に筆者の子どもたちも
年の離れた兄妹同士で違った指先の使い方をするだけでなく、ミニカーを走らせたりお気に入りのフィギュアでごっこ遊びをしたりと、
毎回違う遊び方で夢中になって楽しんでいました。
「それぞれご家庭ごとに違う遊びをしてもらえたらと思っていたので、うれしいですね。
絵本ってアルバム的な存在だと考えていて。
最初は親が読み聞かせをして、そのうちにいっしょに声に出して読んで、最終的に1人で読むようになって…。そうやって
子どもの成長とともに育っていくような絵本がつくりたいと思っていたんです。
この絵本をきっかけに、ご家庭ごとの思い出をたくさんつくって欲しいですね。あと、親御さんはお子さんが小さな手でテクテクしているかわいい姿を見てニヤニヤして欲しいです(笑)」(まつざきさん)
■「余白」が
自由な発想を刺激する
絵本の出版を記念しておこなわれた「道づくりワークショップ」では、子どもの自由な発想にまさしく親の私がニヤニヤしてしまいました。用意されていたのは、スタート地点とゴール地点だけが描かれた紙。このあいだにオリジナルのゆびさんぽ道を描いていこうというもの。
クレヨンやカラーペン、シールやカラフルな毛糸などを使いながら、個性的な作品が次々とできあがっていきます。
最後に参加者の作品をつなげて長くなった道をみんなでテクテク。みんな夢中でゴールまでたどっていく姿に、余白を与えることで子どもの主体性や可能性がぐんと広がることを実感しました。
■最後に
まつざきさんから
絵本はもちろん、まつざきさんご自身も明るく前向きなエネルギーでいっぱい。しかし、産後はバセドウ病で心身ともに思うようにいかない日々も過ごしました。
最近は症状も落ち着き、12年目になった直島での暮らしを小学4年生になった娘さんのみーたんと旦那さんの協力のもと、楽しんでいます。
「12年経ちましたがいまだに慣れないこともあります。日々悩みもあるし、もともとメンタルがゆし豆腐(※やわらかいおぼろ状の豆腐)なので、ちょっとしたことで悩んだり考えすぎちゃったり…。
落ちるときは深海レベルまで沈んでしまいます(苦笑)。
ときはしばらく地面と一体化してぼーっとしたり、娘を抱っこしてぬくもりを感じながらじっくりエネルギー回復させています。
好きなことを生業にしているというのもそれしかできないくらい不器用だからで、毎日アワアワしているし…。
ちなみに今朝も寝坊して学校まで車で送りました(笑)。お母さんってみんな毎日すごくがんばっていて、本当にえらいなぁと思っています。みなさん、本当にお疲れさまです!」(まつざきさん)
取材中もじんわりと温かく柔らかなオーラで私たちを包んでくれたまつざきさん。そんなまつざきさんの一歩一歩自分らしく前に進んでいく様子は絵本からも感じ取ることができます。
新しい親子のコミュニケーションのひとつとして、ぜひ手にとってみて欲しい絵本です。
「ゆびさんぽ」作・絵:まつざきしおり(KADOKAWA)
※試し読みもあり
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