コミックエッセイ:夫婦・子育ていまむかし

あなたは理解できる?禁断の恋を暗く美しく私小説化した「島崎藤村」〜文豪クズ男列伝〜【夫婦・子育ていまむかし Vol.17】


最高傑作と呼ばれる…問題作が誕生
姪を妊娠させた体験を小説に!

藤村にはもう一つ、週刊誌の見出しになってしまいそうなクズエピソードがあります。

それが『姪っ子孕ませ事件』!!
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藤村は身内の不幸に苦しめられた人生で、30代ではなんと3人の娘を次々と亡くし、その後妻も亡くなります。

その悲しみは計り知れませんが、妻に代わって身の回りの世話をしにきてくれた姪のこま子を妊娠させてしまうという…うわぁ…この時代だから許されてしまったのでしょうが…。

現代の感覚だとそれはダメ絶対!! ですよね…。

しかもこの後、関係を終わらせるためにフランスに高飛びですよ?(言い方)

優雅に(かどうかはわかりませんが)『仏蘭西だより』なんて新聞連載をしながら、騒ぎが落ち着くのを待っていた…とも見えちゃいまして…身勝手感がすごい。

さらにすごいのは、その後この体験をまた赤裸々に小説化しちゃうんですよ…。
こま子さんも納得の上で作品化されたそうですが、これって純粋に『自然主義派』って言っていいのかな…と個人的にはモヤモヤが止まりません。

のちに書かれたこま子さんの手記には

「ほとんど真実を記述している。けれども叔父に都合の悪い場所は可及的に抹殺されている。」

とあります。そうですか…きっとそうですよね。

晩年は文壇の重鎮として落ち着いた?

身近な人の不幸を多く見送り苦しんだ前半に比べ、晩年は文壇の重鎮となり『日本ペンクラブ』の初代会長になったり帝国芸術会員になったりと優雅に過ごした島崎藤村。

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過去に取り上げた他の文豪はやらかした上に若くして亡くなったり自ら命を絶ったりした人が多い中、若い時に現代なら大炎上間違いなしの事件を起こしても晩年は悠々自適となると、まぁなんというかいかにも明治生まれのクズ男って感じが…。

「若い時の苦労が報われましたね、先生!」

とは手放しで言えない自分がいます。

社会問題の闇に切り込んだ作品『破戒』

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そんな私が学生時代に初めて読んだ島崎藤村の小説は有名な『破戒』でした。

わかってはいても目を背け見えないふりをしがちな部落差別問題に正面から向き合った社会的にも意義のある作品ですが、当時の自分にはあまりに難しくてうまく読み取れませんでした。

赤裸々自然主義派の藤村、ということはこれも実体験なのかな?と調べたところ彼自身のことではなかったのですが、実在の教員大江磯吉という人物が差別と戦う様子を知って生き方に共感したことがきっかけになっていたんですって。

女関係のヒドい赤裸々作品を知ってしまった後だとなんとも言えない複雑な気持ちになりますが、この作品を、3人の娘を相次いで栄養失調で失いながらも断固たる決意で書き上げ社会に投げかけたのですよね。やはり才能のある人は…とにかく色々すごいのでしょう。

父の狂死を30年以上経って見つめ直した『夜明け前』と合わせて、私も読後30年近く経た今『破戒』ももう一度読み返したくなりました。ぜひご一緒に秋の夜長に読んでみてくださいね。

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