連載記事:横峰沙弥香の「まめあるき」
元気になれるおいしい築地さんぽ~「築地クリトモ商店」さんのお惣菜【横峰沙弥香の「まめあるき」 Vol.31】
夫にがんの転移が見られ、手術のため国立がん研究センター中央病院に移ることになったのは、2022年の秋頃のことでした。
転移の状態を見る限りさほど大変な手術ではないと聞いてはいても、気持ちは沈んでしまいます。
病室から見る景色が大変素晴らしいのが救いで、その景色をSNSにポストしたところ、メッセージの通知が。
「そこからうちの店歩いて5分くらいだよ。遊びにおいでよ」
築地で鮮魚店を営む料理研究家の
栗原友さんでした。
子ども同士が同じクラスだったこともあって交流を持つようになった仲なのですが、そういえばまだ彼女のお店に行ったことがなかった。
国立がん研究センター中央病院は築地市場の目の前にあり、病院から一歩出ると別世界です。
びっくりするような賑わいに心も浮き立つよう……パパを心配して少し元気のない子どもたちのフォローだって私の仕事! そう気持ちを切り替えて
築地で食べ歩きを楽しむことに。
元気な場所にいるって大事ですね。賑やかな場所ですから何を買うにしても声を張らないと伝わりません。そう言えば久しぶりにちゃんと声を出したなぁなんて思いながら、じわじわと体に血が通ってくるのを感じます。そう、私たちは凹んでいたのです。口には出さないようにしていてもやっぱりパパの病気は悲しかった。
落ち込んでいる時ほど
「日常」は大切。辛くても日々は続くのだから、できるだけ笑っていなければと、
美味しい生牡蠣を頬張りながら思ったのでした。
築地・波除神社の目の前にある
築地クリトモ商店は、そんな喧騒からは少し離れた場所にあります。友さんのお惣菜が並ぶのは
土曜日。
一度でも味わえばあれもこれも食べてみたくなる、そしてそのどれもが美味しい! やさしくてあったかい魅力に溢れています。
じゃこと自家製の糠漬けのおにぎりを頬張りながら、元気を取り戻すきっかけをくれたあのメッセージに感謝!
その後、夫は無事に手術を終え、すっかり元気になって帰宅。あれから2年経ちますが今のところ体に異変は起きていません。
辛かった時期に元気をくれた築地は、私たちにとって大切な街となり、今では元気をもらいたい時に訪れるパワースポットのような存在です。