不登校問題にも取り組み「教育推進プラン・江東」とは? 一人ひとりに向き合う教育を目指して【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.37】
子どもたち一人ひとりの個性に寄り添い、「自分の足で生きていく力」を育む教育を―。江東区の大久保区長はそう語ります。急増する不登校への対応や、地域と連携した学びの場づくり、そして未来を見据えた学校運営。教育者の家庭に育ち、自身も教員免許を持つ区長だからこそ描ける、江東区の教育のこれからとは。
お話を聞いたのは…江東区 大久保朋果区長
1971年8月生まれ。元東京都職員。都立三田高、早稲田第一文学部卒業。都庁でのキャリアは全て政策部門・福祉衛生部門。政策企画局 政策担当課長、福祉保健局 生活福祉部 統括課長、政策企画局 政策担当部長を歴任。義父母の介護の経験から「高齢者になっても安心して暮らせるまちづくり」を目指す。2023年12月10日に行われた江東区長選挙において5万7,029票を集め初当選。
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―まず、江東区の教育については、どのようにお考えをお持ちかお聞かせください。
大久保区長:私は、教育の最終的な目標は、自分の足で生きていく力を身につけることだと思っているんです。そこへ向けて進むステップは、一人ひとり違うので、これまでのような画一的な教育ではなく、一人ひとりの子どもに寄り添う教育を目指しています。ですので、江東区の教育方針は「みんな、かがやく!」というキャッチフレーズですが、ビックリマークをつけたところがポイントです。
―具体的にはどのようなことをなさっているのですか。大久保区長:一例ですが、不登校のお子さんが増えていますが、どうやって学校に来させるかではなく、どうやって学びの機会が提供できるかという方向で考えることが大切なので、難しいけれど、やっていかないといけないことだなと思っています。
―不登校のお子さんのための「ブリッジスクール」は、学校に代わる居場所、また活動の場という位置付けなのかもしれませんが、「自らの進路を主体的に捉えて、社会に自立すること」を目標としていて、教育の本質が謳われているなと思いました。そのための活動がさまざま用意されていますが、これはどの学校でも行われていくことではないかと思いました。
大久保区長:そうですね。「ブリッジスクール」だけでなく、「校内別室指導」と言って、学校には来られるけれど、教室に入れないというお子さんを別室で指導するというものですが、どこの学校でも必要に応じて行っています。その子の将来にどう繋げていくのかということをしっかり考えていくということが必要かと思います。
―一人ひとりに寄り添うという教育ですね。
大久保区長:そうですね。ブリッジスクールに関していえば、今年、七夕の時に、短冊に自分の夢を書いてもらって、将来を考えるきっかけになればという考えでやったのですが、中学生は高校進学に関することが多かったんです。やっぱり、将来について不安に思っているんですよね。
―例えば高校も普通科だけではないとか、一度働いてから、また学びに戻るなど、多様な選択肢を示したりもするのですか。
大久保区長:そうですね。学校現場では、国の方針でもありますが、教室に入れないお子さんについても出席に配慮するなど、高校進学の内申も不利にならないように配慮するなどしています。ただ、私個人としては、不登校の問題はとても難しいと思っています。
―というのは?
大久保区長:社会に出て生きていくためには、社会そのものも集団行動でもあるので、どこかのタイミングで社会と関われるようにならないといけないと思うと、単に学校に来ないでもいいということだけでは、本当はその子のためにならないのではないかと…。
―そのために、何か取り組まれていることはありますか。大久保区長:学校だけではなかなか限界もあるので、全ての区立学校にある地域学校協働本部を活用して、町会や青少年委員など地域の方々に学校の運営を支えてもらいながら、子どもたちと社会の接点が作れたらいいなと思っています。
―江東区は人口も多いので学校数もとても多いですが(小学校45校、中学校23校、義務教育学校1校)、学校設置者としてはどのようなマネージメントをされているのですか。
大久保区長:教育委員会が作る「教育推進プラン・江東」と区の長期計画を整合させて、区の将来を作っていくのは、今の子どもたちという認識に立ち、その子どもたちのために、将来像はこうあるべきではないか、そのための学校はこうあるべきというような、逆算の形で、かつ一体的な推進をしています。
―区長ご自身も教員免許をお持ちで、ご両親も教員でいらしたということからも、教育には思い入れは強いですか。
大久保区長:はい、強いと思います。当区の教育長は校長先生をご経験されて学校現場をよくご存じですし、教育長とは子どもの可能性というものを追求できる、そんな環境を作っていきたいという話を、よくしています。
取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生
政治ジャーナリスト 細川珠生聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
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